HQ 黒尾
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
本番当日
*ミョウジナマエ
あとにも先にもあんなにも不慣れな環境で行った合宿は今後二度とないと思う。結局梟谷、森然、生川、烏野の子たちとも仲良くなれた。私はダンスに命をかけて、皆はバレーに時間と労力と…全てをかけてる人たちに囲まれたのはかなりいい刺激を貰えた。何かにひたむきに頑張る人って素敵だよね。
セキュリティなんかはさすがにしっかりしてる。衣装は基本ロッカー保管で持ち帰って間違えてもメルカリとかに出品されたりしないように管理されてる。一応予備にもう一着ある。1日1回しかないとはいえ1ヶ月間毎日やるしね。
「で、明日はどう過ごすの?」
『え…地蔵』
即答。研磨…、なんかアトラクション1個くらいは乗りなよ…と言ったけど首を縦に振らない研磨。研磨はもうYouTubeで上げられてる動画を見たみたいで、本当は出場から見たいけど…って残念そうに言ってくれた。
『そうだぜ、孤爪ェ…せっかくのディズニーなのに』
『せっかくだからこそだよ、年に1ヶ月ちょいしかなくて例年より今年はハロウィン期間短いし…1日に1回しかやらない上に完全に新しい内容なのとナマエが可愛いってネットでも話題、早めに席取らないとナマエのこと見れないから』
早口すぎて途中の私が可愛いって話題なのにツッコめなかった。
うん…まあアレだよね、パレードによっては化粧や装飾が強すぎて顔が見えないものあるけど、キャストの顔が見えるパレードは特にキャストフォーカスの動画があげられやすい。
ダンサーやキャスト目当てでパークに来る人もいるみたいだし…キャラが大好きで会いに来る人もいるし、内装や建物が好きな人もいるし、アトラクションがとにかく好き!って人もいるし、食べ物食べ歩きしてるだけの人もいるし…。
私は目立つ位置にいるから切り抜きされやすいんだろう。
『じゃあ俺と孤爪で席取りしてますから、木兎さんたちは30分前くらいまでアトラクション乗ってたらどうですか?』
「明日って10時まででしょ…?明日は他のパレードとかの予定もないから終わったら上がる予定なんだ、その後合流して何か乗ろうよ」
『え?!ナマエちゃん一緒に回んの?!何乗りたいとかある?』
木兎くんに尋ねられるけど、そんなこれを乗れないなら帰れません。みたいなのないしなあ…?
「ん〜…あ、ホーンテッドマンションは乗りたいかも…ジャックだし!」
じゃあそれは絶対のろうな!と木兎くんが言ってくれる。今日はスクラブしてパックして、もうご飯も食べたし寝る前のストレッチも終わってる。明日は木兎くん、赤葦くん、研磨、黒尾くんの4人がわざわざパークに来てくれる。頑張らないとな…。
*黒尾鉄朗
朝イチで起きてほぼ始発でディズニーランドへ向かう。研磨も俺もしょっぼしょぼでちゃんと起きてたの赤葦くらいだったけど無事についた。定期的に来てるナマエちゃんに教えてもらったとおりによく見える場所をキャストさんにも確認して陣取る。有料席はたしかに全体がよく見えるだろうけど、席がこちらで指定できないから全然遠くの場所に当たってしまう可能性が高いため断念。
「いい場所取れたな」
道路目の前の歩道沿いだ。ほぼ一列目と行っても過言ではない。研磨が動画で確認した皆で踊るときにナマエちゃんたちがやって来る場所らしい。
「てか…ほんとにこんな時間から場所取りしてる人ちらほら居るのな!!!すげ〜楽しみ!!」
ぼっくんがぴょんぴょん跳ねるので落ち着かせる。とりあえず飯食うか、と俺と研磨で適当に出歩く。
「……クロ、ナマエ…すっごい張り切ってたよ」
「…え、あぁ…?」
「ナマエも気付いてないし、赤葦くらいしか気付いてないだろうけど…俺は分かってるから。」
思わず歩くのを一瞬やめてしまう。柄にもなく顔が熱い。
「…今日、ナマエが張り切ってたのって…まあディズニー好きだし、毎年見に来てるパレードだし、そもそも大抜擢っていうのもあるけど…仲良くなれたクロとか…木兎さんたちもだけど皆が見に来てくれるのが何より嬉しいんだと思う。
抜擢されたことに対して全員が肯定的かって言われたらそうじゃないみたいだし…」
「…そうなの?」
「そりゃ、アルバイトしててずっと狙ってた人はいると思うよ…それを抜擢されたナマエがいきなりセンターってなったら僻みや妬みはあるよ…まあ、そういう場面でナマエは陰口とか言われるのは慣れっこだから気にしないようにしてるみたいだけど」
「…そうなのか…全然そんな素振り見せないから知らなかった」
「見せなかったんだよ、わざと…今日の乗り物も2人の時はクロが隣座りなよ」
この幼馴染には一生頭が上がらねえわな…。空いてるうちに逆に2人ずつで別れて乗りたい乗り物下見してきたり、ワゴンの食べ物とか買い漁って時間を潰す。意外とそうして過ごす夢の国も悪くなくて、キャラと会えたりもした。
「いよいよだな!でも入場こっからだからちょっと時間かかるんだよな?」
そわそわと落ち着かないぼっくんを赤葦が宥める。大体始まって15分くらいかかる。特設サイトで掲載されてた作品は全員一応履修してきた。そのことを昨日ナマエちゃんに話したら大笑いしてたな…。
最初の停止位置でショーをしてるうちに交通整備役のキャストのおにーさんたちで見に来てる観客たちとダンスの練習を始める。
「なんか…あの人おかしくない?」
「…どいつ?」
「あの一眼レフ持ってる人…さっきから道に入って歩道に上がれって何回もキャストに注意されてる」
研磨が見つめる先には…熱心なオタクなのか?と思う男。でも確かに挙動がおかしい。キャストに何度も注意されてるのにやめないのが怪しい。
「あ、きたきた!」
「ぼっくん、せめて優雅に指し示してヨ」
ナマエちゃんはフロートの前の先頭の5人組ダンサーのセンターだ。研磨が1番切り抜きが多いダンサーだから知名度も凄いと言っていたとおり、ナマエちゃんや他のダンサーへの歓声が凄い。
「ねぇあのセンターのお姉さん動画の人だよね?!」
「めっちゃ美人かわいい〜!!てか全員の衣装良すぎない?!」
後ろの立ち見のオネーサンたちにうんうん、と頷きながら衣装がとにかく可愛すぎる!!!とナマエちゃんが言っていたのを思い出す。後ろの方だから見えないけど、マレフィセント専属ダンサーたちの衣装もかわいいって言ってたな…。
夏合宿のときに見せてくれたのここの振り付けか…。1歩ずつゆっくり、丁寧に歩いて踊りながらやって来る。衣装を着てメイクをしっかりして、あれは…ウィッグ?かなりロングな黒髪ヘアになってる。作り上げられたナマエちゃんが浮かべる笑みはあまりにも妖艶でカメラを構えるのも忘れる。
あともう少しで停止位置、というタイミングでどよめきが起こる。さっき研磨と動きがおかしいと言っていた一眼レフを構えた男がナマエちゃんを押し倒すように襲いかかったからだ。
「ナマエ…」
研磨が飛びかかる勢いなので肩を掴んで止める。余計に混乱を招くだけだ…。すぐにキャストさんが男を取り押さえてナマエちゃんから引き剥がされる。思い切り死角から俺くらいの図体に襲いかかられたナマエちゃんはしばらく動かずキャストさんに手や足を触られて確認されていた。
「…私に触っていいのは偉大なるファシリエ様だけよ、ルールも守れない愚か者!」
ナマエちゃんの凛とした声が通る。そう怒鳴りつけたかと思えばすぐに立ち上がり表情を崩さず歩き出した。
「すげ…プロだ」
ぼっくんが漏らした声を皮切りに拍手が起こる。フロートに乗ったファシリエがナマエちゃんを見て心配する素振りをしたかと思えば恭しくお辞儀をしている。プロだ、世界観を壊さず演じきってる…。5人組のうちのひとりのダンサーのオネーサンにエスコートされるように歩いて俺らの前までやってきた。
カメラを構える研磨やぼっくん、そして俺にウインクし、後ろのオネーサンたちには投げキッスをして一旦通り過ぎて行く。歓声が凄まじい。
「すっご…何今の?!?」
「クロ、落ち着いて」
「孤爪も落ち着いて、カメラがあらぬ方向向いてるから」
「カッケー!!!つーか取り押さえてから連行するまで早かったな…」
そう感想を言い合ってるとすぐ停止位置での演目に入る。この演目中は先頭の方からこちらへやって来るから目の前にやってくる。よく見たら手を擦りむいて少し血が出てるし、痛いのか少し手が震えている。
手拍子をしてナマエちゃんのダンスを目に焼き付ける。表情もだけど、指先まで拘った動きですっげえ綺麗だ。
「さぁ、手を上げて!」
動画で見たやつだ。研磨と赤葦は撮影に徹してるので俺とぼっくんが踊りに徹する。他のダンサーも絡みに来てくれる。
「もっともっと!ファシリエ様への気持ちを捧げて!」
おお、悪い顔してる…。
「あ…」
目があったと思えばしゃがみこんで一緒に踊ってくるナマエちゃん。やっば…心臓がめちゃくちゃギュンギュン動いてる気がする。最後の最後までプロ根性でやりぬいたナマエちゃんは次の停止位置へと進んでいく。
「あのお姉さん凄かったねえ〜」
「あんなすぐに立ち上がってあんなセリフ言える??」
「今年のハロウィン超カッコよかった…追っかけて見ようよ!」
口々にそんな感想が飛び交ってるのが聞こえる。
「すごかったな……」
「…ッフ、ハハハッ…黒尾さんずっとソレしか言ってない…!」
赤葦が腹抱えて笑い出す。笑うなよ、と膝を叩く。
化粧を落として念の為にパーク内に配属されてる医師の元へ行って診察してもらってから合流する、と連絡が来たため入場ゲート近くまで移動する。
「……わ、みんな…うぅ…」
「怖かったね…よく頑張ったね」
俺らの顔を見た瞬間ポロポロと涙を流すナマエちゃんを研磨が抱きしめる。
「すっっげーカッコよかったぞ!!アイツは最悪だったけど…」
ぼっくんがそう言うとナマエちゃんは小さくありがとう…と答える。
「せっかく皆見に来てくれたのに……一番かっこいいとこ見せたかったのに…」
「…充分かっこよかったし、なんならハプニングの分いつものよりかっこいい結果になったと思うよ?」
赤葦がそう言う。
「な、襲いかかられて即座にあのセリフ出てくるのはすげえよな…俺らの後ろのオネーサンたちも皆褒めてたぜ」
「ほんと…?あれちょっと偉い人に怒られちゃった…刺激するなって」
「…他の人に抑えつけてたから良かったけど、確かに刺激するのは良くないね。被害に合うのはナマエだから…」
研磨がナマエちゃんの頭を撫でながらそう言う。俺らと話してだんだん落ち着いてきたのか涙が止まるナマエちゃん。
「じゃ、こっからは楽しいことしよーぜ!ナマエ食うかと思ってチュロスは買っといた!」
ぼっくんがそう言ってナマエちゃんにチュロスを渡す。
「あ、ありがと…用意周到…」
「ホンテのパスもとっといた。今からさっと行って乗れるよ」
「わ、すごい用意周到…急いでチュロス食べるね」
ゾロゾロ歩き出した後ろの方に俺とナマエちゃんが横並びになる。鞄持つよ、ともらう。
「黒尾くん…どうだった?」
「…倒れたときはヒヤッとしたしぶっ飛ばしたくなったけど…歩いてるときからナマエちゃんしか見えねえくらい格好良かったよ…あの悪いカオとか」
「鏡で練習した甲斐ある…!手下っぽかった?」
うんうん、と頷く。センターを務めているだけあって本当にしなやかなキレで誰よりも輝いていたと思う。
「にしても、明日からが俺は心配だよ…まだ半月あるじゃん」
「あの人はハロウィン期間中は少なくとも出禁にするしもう少し道路脇のキャストさん増やすって…ん、んま〜!」
期間限定のチュロスを食べて目を輝かせるナマエちゃんに安心する。さっきも怖かった気持ちよりも、ハプニングのせいで100%を出しきれなかったことによる悔しい気持ちが大きかったみたいだし。
「またそんな急いで食べたら詰まらせるよ?」
へーきへーき、と返ってくる。さっきまで悪い顔して男女関係なく沸かせてたなんて思えないくらいあどけないナマエちゃん。
(かわいい〜ジャックと写真撮って!)
(はいはい…俺これ暗すぎて酔うから外で待ってるね)
(研磨乗らないの?)
(うん、4人で乗ってきて…ポップコーン買っておくから)
(分かった…行ってくるね、キャストさんの近くにいてね)
(心配症なんだから…)