HQ 黒尾
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お稲荷さんと猫
*ミョウジナマエ
関西に出張?しに来てから6日目。お昼に通うのがすっかり定番化したけど、今日は日曜日でおにぎり宮さんは定休日。どうしたもんかなぁ……あ、おでん。おでん食べたいかも。昼からやってるところあるかな…。
心斎橋や本町沿いは飲食店がまあいっぱいある。適当にブラブラしてグーグルマップで昼間もやってる居酒屋のランチに入る。おでんおでん!
おでんをたんまり食べて梅田へ移動。今日は阪急百貨店に行こうと思ってちょっとオシャレしてきた。映画に出てくるホテルみたいなこの外装!おしゃれ〜可愛い。
『梅田阪急きた!星ついてるホテルみたいで可愛い』
黒尾くんと研磨に送る。あ、そういえば宮さんのこと言ってないや……いやでも仲良しとか聞いたことないしなあ。言ったところで、ではあるのかな。面識あるもんなのかも分からないや。
ドキドキしながら色々接客を受けてコスメを買い足したりして夜になってそそくさと新大阪方面へ戻る。スマホを確認してると、黒尾くんも用があって大阪に来るらしい。明後日か!明後日は……うん、レッスンが午前だけだから午後ヒマになるって連絡しとこ。
翌日、お昼にすっかり習慣づいてしまったおにぎり宮さんのお店へ。今日は月曜日でサラリーマン風の人が多い。カウンターの端っちょに腰掛けてると、常連さんがいるらしくそこかしこからお兄さんが呼ばれてる。パタパタ対応して大変そうだな……。
何にしようかな〜なかなか変わり種に挑戦する勇気が出なくてオーソドックスなものを選びがち。
すぐきってなんだろ……写真では漬物っぽいけど。奈良漬けとかもある……奈良漬け気になるかも。うんうん唸ってたらスマホを落とした。体をグイッとカウンター下に入れこんで手に取って元に戻ろうとして、思いっきり後頭部をぶつける。
「いだっ!」
「すんごい音したで、お姉さん大丈夫か?!」
「恥ずかしいオンリーなので大丈夫です」
お兄さんがすっ飛んできたし、左にいる隣の人も『大丈夫かな?』みたいな顔でこちらを見ていてひたすら恥ずかしい。
「今日もお疲れさん、何にするん?」
「奈良漬けで、お願いします!」
お味噌汁は日替わりのもので。メニュー表をお兄さんに渡して隣の人に一応謝っておく。
「お騒がせしてすみませんでした」
「あ、いえいえ。……あれお姉さんですか?」
「へ?………」
隣のお兄さんが指差す先を振り返って固まる。なんせ飲食店によくある大きなテレビに映し出されてるのは、私。というかこの間のコンサートのやつだ。もう買ったの??!早くない??!入ってから着席してメニュー決めるまで全然気づかなかった。
ライティングにこだわりまくった光……ってことはこのライブ序盤では……???
「……はい……」
絞り出すので精一杯だったけどなんとか頷く。
「へえ…じゃあちゃんと見よ」
「いや、そんな…私ではなく歌を聞いたほうがいいかと」
狐みたいな人が目を細めて言うもんだからモニョモニョしてしまう。
でも……発表会は公演者の後ろの座席からのスマホだったり、あとはMVなんかが多かったからこんな毛穴まで見えそうなライブ会場のカメラで……もちろん歌手がメインとしてなのは前提だけど、踊りを撮ってもらえるなんて初めてかも。どんなふうに見えてるんだろう。気になる気持ちが強くなって私も画面を見上げる。
顔がほんのり隠れるレースの衣装で良かったなぁと思う……表情管理はかなり大切だな、ちゃんと練習しないと。
「あ、いまのキンハーの動き」
「ご名答です」
「お姉さんが考えたの?」
「自由にやっていいよって特例のステージだったので……彼女とすり合わせながら作りました」
あ、客席映ってる……えぇ、泣いてくれてる……!嬉しいなあ……。
「お〜、仲良う見てんねや」
「……地上波にしませんか?」
「ん?はじめてのおつかい再放送がええ?」
「本当にやめてください」
そう言うとケタケタ笑うお兄さんをじっとりした目で見ることしかできない。完全にイジられてる……!
「うわ〜懐かし、これエヴァの曲じゃん……あ、またお姉さんだ」
左のお兄さんがそう呟く。たしか……研磨がライブ前に徹夜で映画シリーズ見てくれてたんだよね。赤葦くんがハマって、元から好きだったっていう黒尾くんと夜久さんが映画見て号泣して、ここでも泣いてたって研磨が言ってたっけ……。
「おお……」
こんなふうに映ってたんだ。シリーズ曲2曲入ってて、どうしてもファンは2曲目の今流れてるほうが完結まで待った分、そして漫画、アニメ、映画でリメイクのように作成し直された結果一番エンディングが幸せで良かったという感想を持ち合わせる分思い入れが強くなるようで、カメラに映される客席でタオルで目頭を抑えてる人が多くて、見ている私も鼻がツンとしてくる。
「お、映画の再現してる」
「………え、え、え、なんで私のアップ…??」
なんか画面が2分割みたいになってる、なにこれ。次の瞬間には最後の曲に向けてたっちゃんと着替えてきてステージ端で待機してる私達が映されてる。
『え〜………次が最後の曲になります』
『ぇえええ〜!!!!』
『おお凄い、まあまあ…アンコールあるからさ』
あの日の記憶が呼び覚まされる。私このあと号泣してなかった…?え、カメラなんていたっけ?!?やばい混乱してきた。こんな大きなテレビ画面の半分程度とはいえ私の泣き顔が映るの???
『なんか…皆泣いてない?どうしたの?』
『さっきのステージ!よかった!』
『One Last Kiss〜!!!』
メインステージ、客席一番うしろの全体が見えるカメラで時々ランダムな客席、そして私とたっちゃん。3分割になった画面に嫌な予感がすごくする。
『どのステージ?…あぁ、One Last Kiss?…じゃあ、あのステージについての裏話を先にちょこっとだけお話しようかな…皆の涙が落ち着くように』
よいしょっと、と呟きながら彼女が椅子に座る。
『あとできちんと紹介するけど…実はダンサーさんが入ってる曲の構成っていうのかな、あれは全てダンサーさん自身に任せて作ってもらいました。だから…キングダムハーツのポーズとかピンと来た人居るんじゃないかな?ね、あれ面白かったでしょ…』
『ナマエのこと話してるよ!』
『「たっちゃん、しっ!!!」』
まさかの映像内の私と同じこと呟いてしまった。反射的にしっ!と言ってしまったのにポーズまで一緒。その様子に左にいるお兄さんと、宮さんがお腹抱えて笑い出した。
『実はあのステージができるまで結構紆余曲折が合って、彼女は歌も何百回と聴きましたってくらい聴いてくれてたし主題歌になった映画も1から見てくれたみたいで。
でも…ここまで忘れられない人のことを思い浮かべながらとなると、経験がないから分からないって相談されまして…
そう、相談されたの』
「……笑いすぎですよ」
「やって、そんな過去の自分とツッコミ被ることあるん??!?めちゃくちゃおもろいねんけどwwwwwww」
『彼女まだ10代だからね、そんな人いたらびっくりだよって思いながら…悲しいように聞こえるかもしれないけど好きとか大切って気持ちは執着から来るよねって返しました。
ほら、歌詞にもあるでしょ…誰かを求めることは即ち傷つくことだった、誰とも何とも関わりを断てば傷つくことも悲しむこともないけど…誰かを好きになるって痛みを自覚することだと思うって』
『だめだめだめ、次ラストステージなのに泣くな泣くな〜!!すみません、ティッシュください!』
たっちゃんが慌てる声と、メイクさんがすっ飛んできて合間合間にボロボロ泣き崩れに近い私の様子が映される。なんて地獄なの………これが円盤化されて後世に残ってしまうなんて……!!
「ほい、お待ちどうさん……えらい泣き虫なんやね」
「いや、あの………歌を!聞いてください歌を!」
とりあえずお盆を受け取る。いい匂い……。さすがに振り返りながら食べるのは行儀が悪すぎるのでちゃんと食べる。おお、奈良漬けってこういう味付けなんだ……なんとなく食べず嫌いで避けてたけど確かにご飯によく合う。今日は付け合せに山椒じゃこを選んだので、なんとなく関西尽くしだ。
『なんと…ダンサーさんがいるのはここの公演だけなんです
ではあるえちゃん、太一くん!』
最後の曲も終わり、カーテンコール。私とたっちゃんが呼ばれてサプライズな報告を受けた客席から拍手が大きくなる。
『あるえ〜!』
「??!」
思わず振り返ってしまった。めちゃくちゃ私を呼ぶ声が入っていたから。いまの……木兎さん?さすがに木兎さんは映ってなかったけど。
「もっかい見よかな」
「勘弁してください……」
「お姉さん凄いんだね、宇多田ヒカリのライブ出るなんて」
「あ、ありがとうございます…?でもメインじゃなくてステージ構成員、として考えてほしいです」
「構成員」
「はい。ライトどうやってあてるかとか、おおよその全員の動き方とか…全部決めたんで。歌とその世界をより濃く演出する構成員って感じ?ですかね」
*黒尾鉄朗
わ、可愛い。レッスン終わりだというナマエちゃんと合流。ナマエちゃんと会うのははじめてのおつかい同時視聴しながら研磨の配信に出た日以来だ。結局あのあと涙目のナマエちゃんに俺も研磨も夜中に起こされ、できる限りナマエちゃんに寄れとお願いされたおかげで、ドキドキして全く眠れなかった。
「ハマってるおにぎりやさんでいい?もしかしたら黒尾くん、知り合いかもしれないんだけど……」
「知り合い?関西に知り合いなんていたかな」
「高校名忘れちゃったけど、春高の………宮って人のお店なんだって」
宮ァ?割といる名字で絞り込むのが難しい。宮、宮………ん?待てよ、関西で宮って確か……。
「こんにちは〜」
「おう、お姉さん!およ……なぁに、彼氏?」
「稲荷崎の宮……??!」
今片割れの宮侑はプロチーム入ってるはず、たしかぼっくんと同じMSBYに……。
「おうおう、烏野に破れた音駒やないの」
「あらら、記憶違いじゃなければそっちこそ俺らより前で烏野に負けてますよね」
「く、黒尾くん…」
「こら、治。お客さんやろ……堪忍してな」
「あ、いえ……もしかしてなんか因縁ありました?」
煽り合いをしていれば海みたいな包容力ありそうな人がお店の中から出てきて宮を引っ張っていく。ナマエちゃん、因縁がどうこうって聞こえてますからね。
「黒尾くんはこっち!しゃんと座る!」
「あ、ハイ……」
「研磨に言うからね」
「ソレは勘弁してほしいなぁ……」
ごめんね?と上目遣いをするとナマエちゃんは割りかし許してくれる。カウンターの奥の端っこに指定されて座り、二人でメニューを覗く。
「どれオススメとかあるの?」
「ぜーんぶおいしいよ」
「いいねえ…朝から何も食べてねえから腹減った」
「なんならもう5個くらい頼んでも食べられるんじゃない?」
あり得そう。そのくらい腹減ってる。周りのお客さん全員関西弁の中にいるとなんかドラマみてぇ。非日常感がすごい。
「周りが関西弁だとさあ、なんか映画みたいじゃない?」
「分かる、今ちょうどそれ考えてボーッとしてた」
「ちっちゃい子がスーパーとかで関西弁でお菓子買って〜って叫んでるの見るとそれだけで珍しくて見ちゃう」
「あの子も買ってほしいのかなってなるから辞めなさいネ」
「違うもん、聞いてるだけだし」
「ほいよ、お待ちどうさん…こっちアンタか?」
鮭といくら、そんで追加の大葉みそ。3つもあるから俺だ。返事をして受け取る……いい匂い。腹減った。味噌汁も大盛りにした。確かに美味そう。握ってるやつはアレだけど。
「はい、お姉さんの分」
「「いただきます」」
手を合わせて実食。ナマエちゃんは味噌汁、俺は鮭のおにぎりから頬張る。……美味い!なんか悔しいけども。
「美味い」
「ね、実はお米を定期契約したんだ」
ブイ、とピースしてくるナマエちゃん。お米?と俺の席の後ろに積まれてる米袋を見る。『ちゃんと』……聞いたことない米のブランド名だ。
「せやねん、米作ってくれはるのが俺らの元主将の北さんやねん……北さんのお米美味しいやろ」
確かに米めちゃくちゃ美味い。甘みがしっかりしてて、炊きたてだからってだけの美味さじゃない……と思う。炊き方もありそうだけど。
ふたりでご飯を平らげ、どこに行こうかとスマホを覗き込む。
「奈良もいいし京都もいいし……黒尾くんどこ行きたい?…あら」
ポロ、とスマホをカウンター下に落としたナマエちゃん。随分体柔らかいのね、そんなとこに入るなんて。
ゴンッッ
「あだっ!!!!」
「お姉さんまた!??!頭割れてまうで……」
「痛そうな音したね……平気?」
頭を撫でて尋ねる。またって言われてるってことは前もやったんだろう。たんこぶだらけになっちまう、こんなカウンターに頭打ちつけてたら。
(……あ、そうだ。大阪滞在の最終日前日、この商店街沿いのイベントに出るんですよ)
(あ!なんや盆踊りみたいな阿波踊りみたいなんするって回覧板回ってきたわ)
(なんていうか……まあ列をなして踊ってくのでイメージはそんな感じ??ですかね…ぜひ!)
(黒尾くんも時間合えば見てってね)
(ほか誰か出るの?急に決まった感じするけど)
(急に決まったの、こっちいるならおいでよ〜みたいな。服どうしようか迷ってるんだ)
(私服でおいでって?)
(アレなら貸すけどって感じで結構……ザ!衣装!みたいな感じで来てってリクエストのみ)