HQ 黒尾
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ちゃんと美味しい
*ミョウジナマエ
今日は仕事で初めて関西へ。遊びには何度も何度も来たことあるけど、仕事で来るのは初めてでよく使う東京駅の新幹線乗り口も違って見えるくらいだった。
新大阪駅で降りて、ひとまずホテルへ荷物を預けに行く。今日は移動だけで、明日から引き受けた代理のレッスンがてんこ盛り。まさか一週間と4日も代理でレッスン代わって〜と言われると思ってなかったし、代理ですというもののちゃんとクラスが満員で埋まると思ってなかった。
小さい頃お世話になった先生の代わりに自分が…というのもなんだか感慨深い……けど先生はぎっくり腰でのお休みだからあんまり喜べない。ご自愛ください、と心の中で思いながら同様のメッセージを送って、さて。どうしようか。今日は知り合いが捕まらなかったから適当に久々の大阪を散策しようかな。
やっぱりまあまずは道頓堀でしょ!と心斎橋へ向かう。お〜こここんなに服屋さんとかブランドもんあったっけ?ゴチャゴチャした雰囲気は変わってないけど、こんな清楚です…みたいな小綺麗なブランドもお店を構えていて、街全体のイメージが変わった感じ。だけどお昼から飲み歩いてる陽気な人たちは多くて、治安の意味ではあんまり変わってないかな。夜は早めにホテルに戻ろうっと。
お腹空いたけど、10日以上も滞在するから食べるものはきちんと選ばないとあっという間に太る……。それくらい粉もんは美味しいから。出汁のきいたたこ焼きと少し甘いおうどん、それにおでんなんか馬鹿みたいに食べすぎてしまう。明石焼きもいいな〜……お腹空いた。
「おにぎり屋……おいしそ」
外に立てかけられた看板にでっかく映るおにぎりとお米の匂いがものすごい惹かれる。やっぱり米が一番よね。おかかとかもあるんだ、ちょっとしたおかずと味噌汁とセットの定食もある……。
「お、お姉さんお昼迷っとんの?そっち陽ぃあたるからもっとこっち入ってきいや」
「あ、お気遣いすみません」
「お気遣いなんてそんなそんな……関東の人?畏まらんでええで」
「東京からきたんです」
随分と体格のいい……お兄さんがずいっと店の中から出てきたと思いきや、あっという間にほぼ店内の敷地へ通される。さすが大阪……色々と強い!でもなんか、どこかで見たことあるような……?気のせいか。
やけに向こうも私を見てくるなあと思ったけど、この髪色だろうなと思う。派手髪と言われる部類の今は紫に近いブルーのハイトーンカラーだし。まぁ、見られるのは職業柄慣れてはいる。
『大阪ついた?』
研磨だ。
『ついたよ、美味しそうなおにぎり屋さんあってメニュー決めてる』
『俺の母さんからナマエのままに伝言してほしいことあるらしくて、いま電話平気?もう食べてる?』
「ごめんなさい、電話するんで外行きますね」
「え?えーよえーよ、別に電話くらい。座って電話し」
椅子まで出してくれたからお礼を言って気持ちちょこんと座り、研磨にいいよ〜のスタンプを押すとかかってくる。
「もしもし研磨?」
『あ〜ごめん、なんかおばあちゃんの今度の誕生日のプレゼント決めよって話で……何歳だっけ?とか好きなものとかの目星つけてほしいって』
「ふんふん」
『あと、米寿のお祝いの会場抑えてほしいってさ…その日写真撮ろうって。俺は嫌だけど』
「研磨、ヨレヨレのジャージで来たら怒られるからなんか服用意しときなよ……分かった、年齢と、好きなものの目星と、米寿の会場ね」
『ん。どこのおにぎりやにいるの?たこ焼きじゃないの珍しいね』
「んーとね……おにぎり宮さんってとこ。10日以上こっちいるから、たこ焼きばっか食べたら太るじゃん。たこ焼きはレッスン終わりのご褒美にする」
『そんな量食べないんだから毎食たこ焼きでもいいと思うけど』
「小麦粉のカロリーを舐めちゃだめだよ……そうだ、黒尾くんとかへのお土産何がいいかな?……無難にお菓子?なんとかおじさん?」
『おじさん…?目についた安いのでいいよ、俺は。クロは……ん〜…あ、ポテチとかそういうお菓子喜ぶと思うよ』
限定ポテチか。分かったと答えて電話を切る。食べる決心がついたので振り返ってカウンター席に案内される。
「こんぶだしの塩むすびと……ん〜…卵焼きって甘いですか?しょっぱいですか?」
「しょっぱいで」
「じゃあ卵焼きで、あおさのお味噌汁でお願いします!」
わくわく。平日だけど昼間だからか、結構人が多い。この辺はお店も多いし、従業員さんたちのお昼休憩で賑わいそうだな。
待ってる間にさっきの要件をお母さんにLINEしておく。席の端っこに米袋が重なっていて銘柄が書いてある。……ちゃんと、ってお米なんだ。聞いたことないな…。
「ほい、お待ちどうさん」
「おぉ……!ありがとうございます」
めっっちゃめちゃに美味しそう!写真を撮るのも忘れてあおさのお味噌汁に手を付ける。……うまー!!!!何これ!この店はあたりだ、毎日のお昼ご飯ここでもいいかもしれない。なんせおにぎりの種類は10種類以上ある。
美味しい確定の塩むすびも塩加減が絶妙で、昆布だしがほのかに香ってお米が甘くてすごく美味しい。ちゃんと、っていうお米、通販とかで取り寄せようかな……。
美味しいから次から次に口に運びたくなるけど我慢して、味わって大事に食べる。美味しかった〜!明日また来よう。
「随分美味しそうに平らげてくれるんやね」
「あ……ご、ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さん」
そうだここカウンター席だ……。うまー!ってしてた顔全部見られていたかと思うとものすごい恥ずかしい。緑茶のサービスもくれて、お会計。
「定休日いつですか?」
「日曜お休みやねん……あれ、また来てくれるん?」
「お昼ご飯ここにしよって思って」
「そりゃありがたいなぁ、おおきに」
「……あ!あの、お米!お米通販とかしてますか?」
「あ〜…どうなんやろ…?してるんかな……明後日くらいに丁度作ってる農家さん納品してくれるから聞いとくわ」
お願いします、と頭を下げてお店をあとに。……美味しかったな〜!お米、食べすぎないように最近は特にセーブしてたから久々に食べた分も相まって美味しかった。
次の日もその次の日も通って、3日目。電車が遅れてランチタイム過ぎてしまった。ドアの前にはお昼は14時まで……今は13時45分。大体のお店はラストオーダー30分前が多い。不服だけど別のお店探すかぁ…。入り口から避けてグーグルマップをポチポチ操作してるとドアが開いた音がした。
「あれ、お姉さん何してはるん?はよ入り」
「え、あ……ラストオーダー間に合わないなって」
「え?あ〜!えーよえーよ、気にせんで」
いやいや気にするよ、営業時間外で会社員とは違って残業とか出ないんだから…。ええからええから、と言われて店内に入ると誰もいない。よ、より一層気にしてしまう…!!
「今日いつもより遅かったね、何かあったん?」
「なんか……電車が
「ふは、
「摂津本山って言うんですね。はい、スタジオに…あ、でも昨日は淀屋橋でした」
「あっちゃこっちゃ行っとるんやなァ……お姉さんなんのお仕事しとるん?」
「ダンサーです、今回は代理のレッスンで呼ばれてて」
「へぇ、ダンサーさん!どおりでイケてる見た目してると思たわ」
イケてる見た目……?と思ったけどとりあえずお礼は言っておく。今日はめんたい大葉!話してるうちにお昼の営業時間を過ぎたため、扉の営業中の札を裏返しに行った店主さんはそのままキッチンへ。ご飯食べたら早々に帰ろう……。
おにぎりを待っているとがらっと扉が開いた。帽子を被った作業服の人と目が合う。向こうは明らかに『あれ?』って顔をしていたのでとりあえず会釈。
「北さんお疲れ様ッス」
ん?
「おう、治。お疲れさん…お客さん?」
なんかちょっと砕けた口調のお兄さんがキビキビしてビシッと挨拶してる。も、もしかして……舎弟?
「あぁ、そうなんです。このお姉さんが北さんのお米美味しー言うて通販できひんかって」
「そうなん?…気に入ってくれておおきに。ご飯中にどたばたして堪忍な」
「あ、や……遅刻したのこっちなので…すみません」
「お米、通販できひんこともないけど……大体の住所どこら辺ですか?」
「東京都武蔵野市吉祥寺…」
「アカンアカン、それ以上は言い過ぎや…吉祥寺…東京ならええか。ええで」
「え!いいんですか!やったー」
「あとで綺麗にしてから名刺持って来るな……治、いつもんトコ積んどくで」
「ありがとうございます!」
ずっと返事がキビキビしてる……やっぱり舎弟なのかも。でも堅気の雰囲気はするからヤクザとかじゃなさそう、一番程遠い気がする。ヤクザとお米農家って…年単位の仕事だし。
でもなーんか……この北さん、と呼ばれてる人も見たことあるような……ないような……。
「………あっ!!!」
「おわっ!??!何、どーしたん??!」
「……春高の人、ですよね?」
研磨たちと直接試合はしてない。けど、研磨たちと試合をしたあの烏野高校の皆と試合していたチームだ。なんとなく顔ぶれを覚えてる。
「おお、なんや有名人みたいな扱いされとる」
「お姉さんバレーやっとったん?よお知っとるなあ……もしかして侑も知っとるん?」
「あつむ?」
「あぁ、知らんならええねん。あのアホは知らん方がええ」
な、なんかすごいディスられてる……。
「わ、私はバレーやってなくて……あの、けん……従兄弟が音駒でバレーやってたんです、それで見てて」
「音駒………ん?!お姉さん、初めて来た日『もしもし?研磨』って言っとったよな?!もしかしてKODZUKENか??!」
「あ、は、はい」
圧がすごくて素直に言ってしまった。
「こら、治。女の子にそない大きな声出したらアカン……萎縮してしもうてるやろ」
「あ、ごめんな…びっくりして大きい声出てもうた」
「いや、私も相当大きい声出したので……」
「そうか、どっかで見たことある思うてたら……ちょっと前にはじめてのおつかい出とった子ぉやんな?」
「恥ずかしいのでそれは忘れていただけると………」
「俺も見とった〜、なんやアレお姉さんやったんや!」
最悪なことにお兄さんがハムソーセージの歌を鼻歌で歌いだしてもう恥ずかしいどころではなかった。
「はい、お待ちどうさん!」
「ありがとうございます、いただきます!」
おぉ、おあげのお味噌汁美味しい!なんかふっくらしてる気がする……!今日は卵焼きじゃなくて唐揚げを付け合わせに頼んだ。うま……揚げ物なんて久々に食べたかも。やっぱりお米が美味しいおにぎりをぱくぱく食べていると前と左から強烈な視線を感じる。
「あの………」
「あぁ堪忍、美味しそうに食べてくれはるなぁと思って」
「やから言ったやないですかぁ、北さん。食べっぷりええ子やって」
は、恥ずかしいんですけど……。夜は居酒屋としてやってるみたいだから夜も来たら?とお兄さん…たぶん宮さんに誘われたけど、お酒あんまり飲めないしと断る。
「関西に何人かダンサーの友達もいるんですけど、『アンタみたいな関西慣れしてない東京人が夜に
「……?…あぁ、
ことごとく地名を読み間違えてる。漢字弱いみたいでちょっと恥ずかしい。
「確かに夜女の子が一人でウロチョロするモンではないわな……ホテルは大阪なん?」
「シャッて行けるように新大阪駅の近くです」
「(シャッ?)そおなん、途中の梅田も酔っ払いのおっちゃんたち多いから気ぃつけてな」
(ごちそうさまでした!)
(どうもお粗末さん……お、これお姉さんちゃうん?)
(あ、はい……結局円盤化したんだ)
(宇多田ヒカリって日本におったんや、懐かしいなあ)
(久々の日本ツアーって言ってました、このとき)
(俺これ買おうかなぁ、店で流せるし)
(か、勘弁してもらいたいです……)
小声でいいますが、こんな出会い方したら北さんや治くんのこと気になっちゃうと思います……だってあんまりに紳士…黒尾くん頑張れ…!