HQ 黒尾
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
はじめてのおつかい
*黒尾鉄朗
「………は!?」
「おぉおぉ凄い大声」
ケラケラ笑うばあちゃんにごめん、と言い直し席に座る。
「もっかい」
「研磨くんのお母さんから聞いたんだけど…研磨くんとナマエちゃんのはじめてのおつかいが今度放送されるんだって」
いや何回聞いても分からん。でも確かに研磨のママから聞いたことあるな……。双子のように育ててたからはじめてのおつかいも一緒に行かせたって……まさか撮影されてたとは知らなかったけど…。
「最近あれからウン年…って大きくなったあとの密着も撮影したらしいよ」
「は〜…全然知らなかったワ」
「研磨くん凄いねえ、なんだっけ?ゆーちゅー…なんたらもやってるんでしょ?」
YouTuberね、とばあちゃんに訂正してご飯を食べる。
「鉄朗はしっかりしててぐずりもしなかったしさっさと行ってきたもんなあ…撮影してても没だな」
はいはい、と懐かしむ父さんに返事をしながらスマホで二人に問いただす。
『俺だけ仲間はずれですか』
『研磨、ママたちに口止めしといてって言ったじゃん!』
『言ったよ』
『見てほしくないからナイショだったのにー!』
どんな様子だったかは大まかに聞いてはいるけど、詳細な中身は放送で知ることになるから2人とも知らないらしい。だから見られたくなかったと返ってきた。
『じゃあ放送日一緒に放送見る配信ってことで』
『はあ?嫌すぎるんだけど』
『私もやだ……研磨のリスナー、研磨のこと彼氏みたいな扱いしてる人多くて正直バレるの怖い』
『あー……』
研磨からのこの返信の数分後、決めたと続いて返ってくる。
『やっぱやる。注意喚起込めて…クロもナマエも付き合って』
『研磨聞いてた???』
『うん。聞いた上で』
『敢えてはっきり説明するってこと?』
『うん、住所特定とかそういうの多くてうんざりしてたとこだし……リスナー同士の喧嘩とかも気にはなってたからこの際はっきりそういうのやめてってこととか全部言おうかな』
『それ研磨が危なくない?』
『いいよ、危なくなったらその時考えるし今以上に酷くなったら法的措置も考える』
研磨のその発言で放送日は俺らも配信に交じることに。KODZUKEN配信に出る日が来るとはな…研磨は顔出ししてるときもあれば雑談枠では出してないときもある。チャンネル登録者数すごいし大人気だ。
研磨がSNSで告知をし、俺らも研磨の部屋に集まる。ナマエちゃん、また髪色変わってる…今回は青色になってる。
「なんかめっちゃ緊張するんだけど…」
「分かる」
「何言ってんの…ちゃんと注意書きはしたから。度が超えた発言きたら全部証拠とって訴えるから大丈夫」
研磨を挟むようにして座って、と言われたので研磨の右側にナマエちゃん、左側に俺が座る。
放送開始30分前に配信がスタートする。
「すげ…こんな画面なんだ」
「これコメント?早すぎて何も見えないんだけど」
「はい…じゃあ始まってるからね2人とも。こんばんは、KODZUKENです。各種SNSでコメントしたとおりの説明するよ」
「この子が俺の従兄弟のナマエ…可愛いでしょ。んで、こっちが幼馴染のクロで中学高校ずっといっしょにバレーしてた…今日放送されるのはナマエとのおつかいだよ」
「研磨、どこ見ればいいの?」
「KODZUKENね?ここ」
「…?どこ?」
「これ、カメラ…見えた?」
しかめっ面をしてカメラ目線にはならないナマエちゃんが数秒続く。
「ダメだ、分かってないよ」
「分かってないね……ま、コメント見ときなよ。……ナマエ?ゲーム下手だよ」
「ムカつくね〜〜???」
「まだクロのほうがマシ」
意地悪そうな顔で笑う研磨に俺も釣られて笑うとナマエちゃんが笑うの禁止!と怒りだす。
「結局クロとナマエでゲーム対決したことないよね…放送終わったら一緒にやる?」
「なんのゲーム?」
「んー…怖いやつ」
じゃあ無理!と即答するナマエちゃんに研磨が笑い出すとコメントの量がどんどん増えていく。あんまり笑うことないだろうから珍しいんだろう。
「そんで…30分も前にやったのは大事なお知らせというか、認識合わせをしたいから。
他のチャンネルの人の配信で俺の名前を出したり、俺の配信の中でもリスナー同士喧嘩したりとか、住所特定とかプライバシーに関わることを平気で晒そうとしてくる人が最近増えたから改めて。
俺、今彼女とか居ないから。匂わせしてる人全員知らないから皆も反応しないで…超だるい。そんで、ちらほら見えてるけどナマエとかクロに関する侮辱のコメント全部スクショ取ってるからね。そういうの含めて誹謗中傷してる人弁護士から通知いくようにするから」
「え、あった…?」
「しっ、まだ途中だから」
ナマエちゃんが右にある画面を見ながら研磨に尋ねると、話の途中だった研磨に怒られてる。マイペースなナマエちゃんぽくて笑える。
「毎日しつこいDMとかもそう、やめて
このあとの放送でも距離近いみたいなコメントきたらその人たちブロックしてくから……こんなもんかな…ナマエ、そんな画面近く見てたら目悪くなるよ」
「研磨はならなかったじゃん」
「KODZUKENだってば」
「ごめん……」
苦虫を噛み潰したような研磨の顔にまたコメントが早くなる。
「KODZUKENは芸名みたいなもんでしょ、そう考えたらいいんじゃない?」
「なるほど!KODZUKEN」
「何」
「KODZUKEN〜」
便乗して俺も呼ぶと鬱陶しいという感情が顔に全開になってる。
「もう2人ともうるさいんだけど…追い出すよ」
「冷たいってコメントされてるよ」
「味方につけなくていいから」
そんなほのぼのした会話をしながら放送を待ちスタート。3組目くらいにやってきて、結構長尺だ。
「3歳って…なんのとき?幼稚園?」
「そうだね、年少クラス…1番ナマエが人見知りしてたときじゃない?」
「俺初対面のとき凄かったけどネ」
「も〜また掘り下げる……」
「あ、ぐずり始めた」
初めてのおつかい定番あるあるの何か料理をしようとしたときに具材がないパターンだ。今回はお雛さまとこどもの日をくっつけたナマエちゃんと研磨主役のお祝いパーティで、錦糸卵を作る卵とハム、海苔と牛乳、お刺身など2人だからとたくさんある。
覚えきれないナマエちゃんが行きたくない〜!とひっくり返って駄々をこね始めてる。
「まって、これさ…めちゃくちゃ公開処刑じゃない?」
「いいじゃん、小さい頃なんだから」
ぐずり始めてお母さんもあらあら…と笑いを堪えてるところに研磨が遊びにやってきた。
『けんま!』
『うぉ』
すごい勢いで研磨に抱きついてるせいで研磨が尻もちついてる。
『ナマエ、けんまとお留守番してる。ママが買い物してきて』
『またそれみるの?』
ナマエちゃんが引っ張り出してきたのはピーターパンのDVD。もうおつかいに行く気は早々無いようでリモコンをお母さんに渡してる。
「全然行く気無いじゃん」
『ナマエ、おかあさん困ってるよ』
『研磨くん、覚えられる?卵とハムと海苔と牛乳とマグロのお刺身』
『まぐろ?…ナマエまぐろキライじゃん』
『あら知ってるの?ナマエが好きなのはあるんだけど、研磨くんが好きなお刺身がないのよ…覚えられそう?』
『卵とハムと海苔とぎゅ…にゅと、のりでしょ』
すげえ、全部覚えてる。ワイプに映るスタジオも凄い凄い!と歓声があがる。
『ナマエちゃん、研磨くんおつかい行ってくれるって。一緒に行ってきて?』
『いっしょ…?』
『うん、いっしょ。行こ』
研磨が手を差し出してナマエちゃんが手を繋いでる。めっちゃかわいい……さっきまでぐずって機嫌悪そうな顔してたのにニッコニコだ。研磨もニコニコしてる。
お揃いのお守り(音声マイク入り)を下げて、お揃いのリュックを背負って手を繋いで研磨とナマエちゃんのママに見送られた2人は意気揚々とおつかいスタート。
『研磨、こっち』
『え、サミットいくんでしょ?道こっち』
『おはな見る』
『……はな?』
『はな!』
こどもの日をくっつけてパーティをするけど季節は雛祭りで3月の中旬、桜がちらほら咲き始めてる頃でナマエちゃんはそれが見たかったらしい。
「お、研磨なんか考えてる顔してる」
「なんて言ったんだろ…マジで全然覚えてない」
「こんなに知らない人が明らかにずっとついてきてるのになんにも気にしてないもんね」
『……やめようよ、桜の木にはナマエの嫌いな毛虫いるよ』
「ブッハ!!!お前なんちゅー酷え理由言うんだよ!!」
「仕方ないじゃん子供の頃なんだし」
嫌いな毛虫、と告げられたナマエちゃんは研磨がドン引きするときと同じ顔で桜がある道を振り返ってる。
『じゃあやめる……』
あまりにしょぼくれた様子にナレーションまでしょぼくれちゃいました。とツッコんでる。
『こっちにもいる?』
『いない』
『いきたくないぃ〜』
あ、また駄々っ子始まった。まあ毛虫って言われたらそりゃ行きたくないよなあ…。
『おんぶする?』
『けんまが刺されちゃうよ』
押し問答の末、覚悟を決めたナマエちゃんが研磨に引っ張られる形で道を進んでいく。無事にスーパーにたどり着き、ナマエちゃんが背伸びしてカゴを手に取る。
『うお』
あ、尻もちついた。
『はんぶんこ』
カゴを2人で持ってる……カゴがすんげぇデカく見える。
『ナマエ、何買うかおぼえてる?』
『………ハムソーセージ!』
『食べたいだけでしょ……まずたまご』
はあ、とため息つく研磨は今と変わらない。ちら、と画面を見ると悪質なコメントはなく可愛い〜!で埋め尽くされている。
『ハムソーセージおーいしそう〜ハムソーセージたべたいな〜!』
『たまご、まぐろ、ぎゅにゅ、ハム、のり…』
大声で歌うナマエちゃんの口ずさむ歌で忘れないようにブツブツと呟く研磨が面白くてツボに入る。
「私邪魔しかしてなくない?」
「まあまあ、ご愛嬌ってヤツよ」
卵、ハム、海苔、牛乳をカゴに入れ研磨が刺し身コーナーへ戻る。カゴを引きずるナマエちゃんが追いつけずスーパー内で迷子になってしまっている。
『けんまぁ〜!!!』
眉を下げてキョロキョロしていたナマエちゃんはついに泣きだしてしまう。今は飲み物や惣菜コーナーにいるせいで、鮮魚コーナーにいる研磨には流石に声が届かないようですごい勢いで走っていってる。
「わあすっごい大声」
「大人4人くらい振り返ってる…」
「2人ともちょっと引くのやめてくれる??」
自分の好きなやつでいい、と言われていた研磨は赤身の刺し身パックを即決で選び振り返ってフリーズ…やっとナマエちゃんがいない事に気付いたようだ。口をあんぐりと開けて固まってしまってる研磨にスタジオは大爆笑。
『……あの、すみません…白い服のかわいい女の子みませんでしたか』
「「………」」
店員さんに至極真面目な顔でそんなことを聞く研磨に大人になった二人が画面を見たまま同じ顔して固まってる。
「アッハッハッハッ!!!!ヤバ…っ!!ひ、はっはっは!!」
『白い服をきた女の子?』
『ちがう、かわいい女の子…いっしょにおつかい来てるから』
聞き返してきた店員さんに『可愛い』を強調する様子に見ている全員がほっこりしてるんだろう……この二人を除いて。コメントもめちゃくちゃ草が生えてる。鮮魚コーナーに行く前の道を店員さんと歩き始めた研磨は通路の真ん中でしゃがみこんで大泣きしているナマエちゃんを見つける。
おつかいスタッフに話しかけられても、見知らぬ誰かのお母さんに話しかけられても、うまく答えられずギャン泣きしていたナマエちゃんを見つけた研磨が駆け寄っていく。
『ナマエ!』
『…ゔ、どこいってた!!』
「……研磨、私もう帰っていい?」
「だめだよ、俺だってめちゃくちゃ恥ずかしいんだからね」
「も〜…さっきから黒尾くん、どんだけ笑うつもり??」
「だって怒りすぎてカタコトなんだもん……っふは、あっはっはっ!あ〜…腹いて…」
『ごめん、まぐろ取ってた』
『ばか!』
『なんでそんな怒るのなきむし!』
アララ、喧嘩し始めちゃった…子どもの喧嘩ってなんでこんなかわいーんだろうね?
『なき虫じゃないもん!』
『ぼくだってバカじゃない』
『ふ、2人とも喧嘩しないで?仲直りできる?』
ここで一番可哀想なのはこのスーパーの店員さんだ。巻き込まれにもほどがある。
(最後に喧嘩したのいつなの?)
(………え、研磨記憶ある?これだって小さすぎて覚えてないし…喧嘩した記憶ない)
(……俺もないかも、年長くらいから記憶あるけど………ないね)
(じゃあこれが最初で最後の喧嘩かもなんだ、貴重じゃん)
(喧嘩っていうか私が一方的に逆ギレしてるだけなんだけどね…申し訳ない)
(まぁ俺もマグロに浮かれて走って置き去りにしてるからおあいこ)