HQ 黒尾
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ライブ当日
*黒尾鉄朗
ついにやってきたライブ当日。
昨日はやっくん、ぼっくん、赤葦、研磨も交えて宇多田ヒカリが主題歌である映画シリーズをイッキ見した。赤葦が思いの外ハマったようで最後の作品はまた俺とやっくんが泣いて終わった。
ゲームの方も解説動画を見たりしながら曲を改めて履修しながら当日を迎えたから情緒がやばい。どうしても悲しかったり切ないストーリーの映画やゲームの主題歌だから感情がぐちゃぐちゃだ。
赤葦とは会場内で別れる。ステージに向かって左側の2列目というものすごいいい席を引き当てたみたいで、一生分の運を使い果たした気がすると言っていた。チケットを見せて関係者席へ。
「意外と近いなー!」
「よく見える席だね」
いいとこ用意してくれたんだ、と研磨が笑う。
「なんか俺緊張してきた」
「分かる俺も」
そう言っていると暗転しライブが始まる。さすがに1曲目からはいないとナマエちゃんが言っていたとおり1曲目はしっとりした曲から始まる。宇多田ヒカリもデビューから時間が経った。デビューの時から落ち着いた曲も多いけど、こう……アイドルのライブとかみたいに大盛り上がり!!って感じではない落ち着いたライブもいいなって思えた。
俺も研磨もぼっくんでさえも今日までに一通り曲はほとんど聞いてきた。やっくんもランキング上位のはひとまず全部聞いてきた!とさっき話してた。だから聞き覚えのある曲が数曲続き、ライティングが一層暗くなる。
「…夜久さん、木兎さん。ナマエ出てきた」
「これ昨日見たやつじゃん…!」
宇多田ヒカリを最大限に明るく照らして淡い光の中ナマエちゃんが踊りだす。なんて言えば近いか分からないけど…妖精みたいな服着てるからか、ものすごい神秘的だ。
「え!?アレ?!髪色変えたの?」
「うん、染めたって言ってた」
真っ黒な髪色から真っ白になってる。光という曲名通り光の演出がすごい。運命の仮面をとれ、という歌詞でナマエちゃんが明らかにゲームキャラの動きをする。それを少し微笑みながら宇多田ヒカリが歌っている。隣のゲームファンであろうお姉さんが泣き始めた。
演出もダンスもものすごく良かった。1曲終わるごとに拍手がすごかったけど、ものすごいたくさんの拍手が聞こえる。
「なんて言えばいいか分かんねえけど凄かったな…」
「俺もう泣きそう」
「途中キーブレード持ってたよね?」
持ってた持ってた!とぼっくんが反応する。その後も懐かしいヒットソングが並び、ナマエちゃんの友人と言われる子が出てきたりして進み、次の曲。
イントロがなると同時にナマエちゃんが照らされる。
俺とやっくんが顔を合わせ、やっくんが泣き出すのをぎょっとした顔でみる研磨。
映画の曲だから……昨日見返したこともあり、流れるだけで涙腺に来るのめっちゃ分かる。しかも最後の作品にあわせてレコーディングし直したほうだ。前のエヴァの服を着ていたお兄さんも真剣にナマエちゃんを見ている。
君のそばで眠らせて、という歌詞に合わせてナマエちゃんが振り返り宇多田ヒカリに走り寄って手を握るも、宇多田ヒカリが立ち上がりステージの中央へ歩いていく。
「研磨、ティッシュ貸して」
「泣くの早くない…?」
やっくんもうボロボロになっちまった……許してあげて、と研磨に告げる。
ずっとあの主人公のように気弱そうな…不安で仕方ないような表情で踊るナマエちゃんに目が釘付けになる。歌もいい、まさかこれ生で聴けるとはな……高校のときは思いもしなかった。
中学の頃、ナマエちゃんのダンスを見に行ったときにトラウマをテーマにして踊ったというあの踊りを思い出す。何を持って上手い下手とか俺は素人だから全然分かんねーけど…やっぱりナマエちゃんのダンスは目が惹き付けられるものがある。
ナマエちゃんがずっと苦しみもがくように踊っていたが最後のコーラスのときに宇多田ヒカリが再び椅子に座り、後ろからナマエちゃんが肩を乗せて顔を寄せた2人が目を瞑る…魅せ方があまりにも良くて鼻を啜る音が至るところから聞こえてくる。
「黒尾、俺もうダメ」
「やっくん、もう少し頑張って」
「昨日見た映画思い出すわー…」
ぼっくん、それでいいんだよ…と返す。泣いてる人の大半がそれだろう。まるでカヲルとシンジのようだった。
文字通り情緒をかき回されながら、今度はナマエちゃんの友人が出てくる。これも切ない歌詞のものだ。三人で話し合って泣かせにきてるのか?と聞きたいくらいだ。なんかブチ上がる明るい曲がないと俺らのメンタルが死ぬ。
次に衣装をチェンジしてきたナマエちゃんが出てきた曲は俺が好きな比較的明るめの曲調の恋愛ソング。先程と打って変わって明るい表情でライティングも明るい。
何回この曲に当てはめてナマエちゃんのことを考えたか分からない。今よりもいい状況を想像できない日も私がいるよ、と何度も何度も共感した歌詞の部分でステージ端まで移動していたナマエちゃんと確実に目が合ったあとに頷かれる。
「ふ、クロ…よかったね」
「厄介オタクみたいなこと言っていい?今俺に向かってやった?」
「めちゃくちゃ厄介勘違いオタクじゃん」
やっくんと研磨に笑われる。その後振り返ると現時点でナマエちゃんは3回、友人は4回ステージがある。もうそろそろアンコールに続くと思うので、ナマエちゃんはあと1回だろう。そのあと2人のステージか…?
「ナマエ次なにやんだろな?」
「いや……まだあの曲来てないじゃん、昨日見たやつの最後のやつ」
「アレも生で聞いたら俺死んじまう」
「やっくん気を確かにネ」
そんなことを曲の間に言い合ってたらまさか、その曲のイントロが流れ始めた。流石に盛り上がった会場でこれは歓声が上がる。
「しかもナマエじゃん!」
「あーコレは俺も泣くかも、研磨ティッシュちょーだい……」
もう涙出てる。映画の内容でも泣けるのに歌詞がまたいいのだ。何度やっくんとMV見ながらパンフレット広げて泣いたか分からない曲だ。前のお兄さんも肩を震わせて泣いてるのが分かる。
なんて綺麗に踊るんだろう。抱いた感想はそれだった。光の当たり方も動きにあわせて広がる服や髪も計算し尽くされているような綺麗さだ。ステージを目一杯使って踊るナマエちゃんを目に焼き付ける。
あー、最後のサビ前のいいところ赤葦の方で踊ったしステージ下を覗き込むような仕草をしていたから赤葦を振付けの流れで探してたんだろう。あいつ泣き崩れてないといいけど…。
最後の歌詞のあとゆっくりとナマエちゃんが宇多田ヒカリの後ろに近寄りそっと両手を目元にあて、笑顔で顔を見合わせている。
「映画のやつじゃん゛…」
やっくんが我慢の限界を迎えてそう泣き出すと、隣のお姉さんと前のお兄さんもで声をあげて泣き始めた。今日1番にも近いくらいの拍手が鳴り響くし後ろの方の席からは「ありがとー!」って声が聞こえてくる。
最後の曲です、とアナウンスが入った。えぇ〜!と惜しむ声があがるとまあまあアンコールあるから、と笑いながら言われ和やかな空気になる。
「なんか…皆泣いてない?どうしたの?」
そう宇多田ヒカリが笑いながら客席に向かって尋ねると、さっきのステージ!と誰かが返す。
「どのステージ?…あぁ、One Last Kiss?…じゃあ、あのステージについての裏話を先にちょこっとだけお話しようかな…皆の涙が落ち着くように」
「あとできちんと紹介するけど…実はダンサーさんが入ってる曲の構成っていうのかな、あれは全てダンサーさん自身に任せて作ってもらいました。だから…キングダムハーツのポーズとかピンと来た人居るんじゃないかな?ね、あれ面白かったでしょ…。
実はあのステージができるまで結構紆余曲折が合って、彼女は歌も何百回と聴きましたってくらい聴いてくれてたし主題歌になった映画も1から見てくれたみたいで。でも…ここまで忘れられない人のことを思い浮かべながらとなると経験がないから分からないって相談されまして…そう、相談されたの」
凄えな……ナマエちゃん、直接聞きにいったんだ。
「彼女まだ10代だからね、そんな人いたらびっくりだよって思いながら…悲しいように聞こえるかもしれないけど好きとか大切って気持ちは執着から来るよねって返しました。
ほら、歌詞にもあるでしょ…誰かを求めることは即ち傷つくことだった、誰とも何とも関わりを断てば傷つくことも悲しむこともないけど…誰かを好きになるって痛みを自覚することだと思うって」
痛みを自覚すること……拍手が鳴り止まぬ中最後の曲が始まり、1度ステージ奥に入っていくのを見守る。座って待っているとアンコールのコールが大きくなっていき、いっきにステージのライトが照らされる。
最後にもう一度衣装が変わったナマエちゃんはもう一人とお揃いの衣装になっている。一番最近の最新曲……そしてデビュー曲で終わる。
拍手喝采の中、バンドメンバーの紹介に入っていく。
「なんと…ダンサーさんがいるのはここの公演だけなんです
ではナマエちゃん、太一くん!」
「ナマエ〜!」
ぼっくんが大きな声を出して言うもんだから、割と近い距離にいたナマエちゃんは肩を跳ねさせて驚いてる。
ポーズを取ってステージ奥へ帰っていく2人を見送りライブ終了のアナウンスがなる。
「ちょっとクソでか感情すぎて言葉に言い表せねえんだけど…」
やっくんが開口一番そんなこと言うもんだからぼっくんと大笑いする。いいライブだったなー……見に来れてよかった。
「夜久さんたち泣きすぎだったけどね」
「だってエヴァファンからしたら2曲も代表みたいな曲入ってるもんだからさ、アレ泣いちゃうよねえやっくん」
「入ってねえといいなって曲入ってなくてよかったな!」
桜流しのことだろう……あんなん流れたら会場の4割泣き喚くだろう。規制退場を待って人が減ってきた頃に赤葦とは合流。鼻と目が赤くて泣いたんだなってバレバレで面白かった。
「いや……最高でした」
「珍し〜赤葦が語彙力なくなってる」
そう揶揄うと揶揄わないでくださいと怒られた。研磨のスマホがなり電話になる。
「もしもし…?………すっごい電波悪いね…」
お互い声は聞こえるがラグがありすぎて会話にならない為通話を切り、LINEでの連絡に切り替える。アンテナ全然立ってないけどなんとか送り合えた結果、入り口を大きく回って裏口に近いゲートに来るように言われるので会場を出る。
「いやーめちゃくちゃいいライブだったな!黒尾ありがとなー」
「いや俺は誘われただけだし……それはナマエちゃんに言ってあげてね」
「あ、皆〜!」
「おーお疲れ!めちゃくちゃ良かったぞ!俺泣きかけた!」
「えーほんと?頑張った甲斐ある……!あ、ごめんあと数分だけ待ってて!たっちゃんとの写真とらないといけなくて…」
「SNS用?」
そうそう!と返ってくる。事務所なんかに入ってないナマエちゃんはそういうの全部自分でやらなきゃいけないから大変そうだ。三人での写真はたくさん撮ったみたいで、大きなバナーの元で撮りたいらしく友達を待ってるんだとか。
(たっちゃん遅いよ)
(ごめ〜ん、お待たせ!たっちゃん着替え時間かかんのよ)
(知ってる…なにやってんのそっち立ってよ)
(え、ツーショでしょ?)
(まずバナーの端と端に立って遠目から撮るってさっき言ったでしょ…すみません、撮影お願いします。縦と横で10枚くらいお願いします)
(すげ〜インフルエンサーみたいだな)
(今日のはサプライズだからナマエも投稿しないとダメっぽいからね)
(打ち上げとかないんですかね?)
(流石に宇多田ヒカリとはないんじゃね?バンドメンバーとかならともかく…未成年だし)