Marco Papa
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
花束を
*イゾウ
「ニアもお花ほしい」
そう呟くニアの視線の先は、モデルルーム。でかくて貿易も盛んな島だ。家やらなんやら売ってる区画もあり、商業施設が連なる場所にインテリアや家具を売る店のモデルルームにわくわくしたニアがテーブルの上にある花瓶に目をつけた。きれいなオレンジと緑色がマーブル状に混じったような色味の花瓶だ。
「……ふむ、サイズも大きすぎないから中々いいな……しかしなァ、ニア。船は揺れるだろ?こういうガラスや陶器のモンはちょっと大時化来たりしたら割れちまうんだよ」
「……あれは?」
そっかあ、と肩を落とすや否や壁を指差すニアが見つけたのは壁に固定できるタイプの花瓶。金具を壁にネジで止めて、花瓶をここで止めてるのか……。少し揺すってみたが落ちなさそうだ。あとは吸盤なんか追加で買えば落ちはしなさそうだ。
「これならいいかもな」
「やったー!マルコにおこづかい貰ったからそれで買う」
「そうかい、マルコも喜ぶだろうよ」
ニアは拾われた身でロクな食生活を送ってなかったこともあって、初めて食うもんには警戒してなかなか口にしなかった分お気に入りのモンを食い続けてた時期が長かった。かぼちゃにハマればかぼちゃのモンしか食わねえし、プリンにハマったときなんかは毎食プリンをデザートにしてマルコを大変に心配させてたもんだ。
仕方ねえっちゃ仕方ねえが、やっとそういうもんより娯楽に目が向いてきたのは喜ばしい。頭が痛くなりそうな航海図、天候、海の生物、星座、医学書ばっかり読みあさってるニアにもようやく…ようやく!可愛らしい趣味ができたんだな。
「おお、3つも買うのかい」
「マルコとイゾウとハルくんのお部屋に飾るからね」
「へえ、俺にもくれるのかい…ハルタもひっくり返って喜びそうだな」
なんと俺の部屋にも花を活けてくれるらしい。折り紙で花をくれたことはあっても、生花は初めてだな。
そのままの足で花屋に向かったニアは今度は大量の花にウンウン唸ってる。
「イゾウのお花がない」
「ダリアか?あれは秋ごろの花だからなァ……花にも野菜みたく旬と育ちやすい季節があんだぜ。だから今ある中から探してみろ」
「う〜ん………」
そう言うとニアは濃い黒にも見える紫のキキョウ、真っ白なカラーを選択し、あとの枝や葉物は店員に任せていた。
「これは、イゾウのお花」
「へえ、お嬢はセンスがいいな」
2つとも目を惹かれる花で、とにかくでかくて映える。色やらパッと見のイメージで決めてくれてるんだろうが、遠回しにめちゃくちゃ褒められてるようでこっ恥ずかしい。
「ハルくんは〜あじさい!」
「いい色だな」
次に手に取ったのはピンクと青の紫陽花。いいチョイスだ。確かにハルタは百合やら薔薇なんかの1つあるだけで映えるような大きな花びらを持つ花よりも、小さいほうが好きって言ってた。それを覚えているのか、たまたまチョイスがそうなのか……分からねえが、まぁハルタはとにかくひっくり返って喜ぶだろう…気絶しないといいが。
「最後はマルコか」
「うん、マルコはこれとこれ!」
オレンジやら黄色のサンダーソニアと、淡いブルーのデルフィニウム。透き通るブルーが綺麗なデルフィニウムだ。よく手入れされてんな。
「これはマルコとニアなの」
目の色か。マルコに海の色と言われて喜んでいたもんな。花瓶に入れるように小ぶりな花束を3つ抱えて嬉しそうなニアの頭を撫でる。花っつうのは割りかし高い。贈り物への感謝として俺が払うと言うと、あげたい人に払うのはおかしい!とニアに阻止されちまった。マリーの教育の賜物だな……。
「帰ったぞ〜お土産付きでな」
「ハルくん、どうぞ」
「え……?えっ??…っえ!??!ぼ、僕に??!ゔ……っ」
やっぱり泣き出した。胸を抑えて泣くからニアが心配して駆け寄ってる。
「おら、べそ泣きしてねえでニアが花瓶まで買ってきたんだ。部屋に飾ンぞ」
「か、花瓶まで…?!わあ、可愛い!ニアありがとう!!僕すっごく嬉しいよ」
「ハルくん、泣きやんで…」
号泣しながら言われたらそう返すしかないよな。腹を抱えて笑いながらハルタの部屋に向かって花瓶を設置する。日常大工ならお手の物だ。
「おおぉ〜!かわいい」
「華やかになるねえ!綺麗」
「エースとかにも買ってやりゃよかったのに」
「エースはお部屋汚いし、お水すぐ乾いちゃいそうじゃない?」
まあ……確かに。気づいたら花瓶の水が蒸発してそうだ。次は俺の部屋に向かい花瓶を設置する。
花があるだけで見違えるな。マリーが嫉妬してきそうだ。
「マルコ〜、今ちょっといいか?」
「おう、なんだよい……ニアもいるのかい」
おーおー、ニヤけちゃって。仏頂面からニカリと目が垂れ下がるマルコに随分丸くなったモンだと痛感する。
「はい、マルコどうぞ」
「花…?ニアが買ってきてくれたよい?」
「花瓶付きでな。俺とハルタにもくれたんだが、ハルタが部屋から出てきやしねえ」
「……っふ、想像できるよい。枯れるまで眺めてそうだねい。おお、いい花瓶だねい」
マルコの部屋にも設置してサンダーソニアとデルフィニウムを飾る。綺麗な黄色とブルーだ。
「お前さんとニアの色だそうだよ」
そう言うとニアは照れて俺の後ろに隠れて出てこなくなっちまった。
「お礼を言いたいのに見えねぇよい」
「イチャつくなジジイが」
「それはお前もだろうが……よっこいせ」
マルコがニアを抱き上げるとニアはケラケラ笑う。擽って遊んでいたときの笑い声みたいだな。ごきげんなニアと、ニアからプレゼントを貰って機嫌のいいマルコはそのまま甲板に行ってかけっこを始めた。
………そういや、ニアの足の速さはそこまで変わんないものの逃げるときのすばしっこさと逃げ先の判断力が上がってる気がする。見聞色の覇気のコントロール力が上がってるんだろう。オンとオフもできるようになったし、どんどん強くなってるんだな。
「……マルコ〜、動き読まれてんじゃねえか」
「ニアに限っては仕方ねえだろうよい……ニア、力あげたねい。誰とこっそり特訓してるんだよい?」
「エースとジョズ!!!」
おお、アイツらか。こっそり特訓なのに名前出していいのか?と思ったが隠し事が苦手なニアが隠しとおせるわけないか。今度は対海軍や敵意のある市民との対話の際に使うように、あえての嘘のつき方でも教えるかね。
*マルコ
「なぁ、マルコ…ハルタが食堂来てねえんだよ、知らねえか?体調悪ィのかな」
「……ハァ……あの馬鹿…」
心配そうにそう声をかけてきたサッチに昼間のことを告げる。おそらくニアから貰った花ずーっと見てるんだろう…。
「ハルタ、入るよい……お前飯くらいは食え」
「分かってる、あと30分見たら行くよ」
どうしてニアが絡むと誰よりも馬鹿になるんだよい、コイツは……。倒れたりしたら何よりもニアが悲しむんだぞと付け加えて、食堂に戻る。ニアもニアでハルタが居ないのを気にしてたから、部屋でもらった花をガン見してたと伝える。
「お花ずっと見てるの?」
「よほど嬉しかったみたいだよい……あと30分したら飯食いにくるってさ」
ふうん、と呟くニアの頭を撫でて膝の上に乗せる。行儀はよくないが、誰かの膝の上で飯を食いたがる甘えん坊なのは無理に辞めさせられないでいる。あと数年もしたらやらなくなっちまうだろうからねい。
「これなぁに?」
「それはみぞれ煮だな」
イゾウが答える。ニアの専用プレートを見れば、鶏肉のみぞれ煮だ。今日初めて見たのか。
「みぞれ??」
「あぁ、大根を細かくすりおろしたモンだが雪が溶けかけたみぞれに見えるだろう?だからみぞれ煮」
「みぞれ……」
まだ雪すらそんなに見たことないからみぞれが分からないようで考え始めた。天候の図鑑に載っていたか思い出してるんだろう、飯が冷めちまうよい。
「ニア、答え合わせはあとにして早く食っちまえよい…サッチが心配そうに見てるよい」
そう呟くとぱくりと一口。おぉ………食わず嫌いもあって初めて目にするモンを食べるまで時間かかってたのに。成長したねい。
「んま!」
「美味しいだろい……」
「変わんないよ」
「意味は確かにそうだが……」
「ジャリジャリしてる」
「ふは、面白い食レポだな」
たとえば紅茶を飲むときの溶けきってない砂糖、クッキーについてた粉砂糖、少し固めのクッキーも総まとめでジャリジャリしてる、と言い表すニア。擬音の幅が広がったのはいいが、たまにちょっと間違えてるのが可愛い。可愛いから誰も指摘しないせいでずっとそのままだ。
(お待たせ〜)
(ハルタ、お前どんだけ花見てたんだよい)
(仕方ないだろ、ニアがくれたアジサイとってもキレイだったんだから)
(良かったなあお嬢、ハルタが心底喜んでるぞ)
(ふふふ〜)
(あの花、永遠に枯れないようにできたりしない?マルコの能力とかでさ)
(無理に決まってんだろい………)
(ハルくん、次のお花一緒に買いにいこうね)
(それってデート?楽しみだなぁ!…マルコは留守番な)
(へいへい、言われなくても邪魔しねえよい)
お花を見て楽しむって海賊…ましてや男の海賊だとなかなか楽しさや良さが見いだせなさそうですが、白ひげならナースのお姉さんたちがいるし、何よりニアちゃんがお花など好きなおかげでお花を活ける人がチラホラいたりしそうだよな…と思いついた小話。
拾われた先がシャンクスの船なら間違いなく広まらない趣味だし、ルフィの船なら大いに盛り上がりそう。
