29 素敵なハロウィン
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Halloween is Dream
*マルコ
クリスマスよりハロウィンが好きなニアが以前オカルトショップから繋がった異世界、魔法が使える学校の生徒からハロウィンのイベントに招待された。
俺が行ったのはエースが燃やしかけたカフェにと世話になった礼をするために向かった以来だが、相当広かった記憶がある。ただでさえ興味あるものが目移りしやすく迷子常習犯のニアを連れて平気だろうか、とかなり親父とも話し込んだが今の楽しそうにはしゃぐ様子を見れば連れてきてよかったという気持ちが占める。
あっちこっちで声をかけられ、お決まりの文句を言ってお菓子を大量にもらっているサマは合意の上のカツアゲみてえだよい。
「さ、次はいよいよお前の大好きなトランプたちだよい」
先程図書館で青く燃えてるような髪が印象的な根暗なイデアに地図を描きこんでもらっていた植物園が見えてくる。
なんとなくだが、海賊仮装をしていたラギーとジャックという獣人、イデア、狼男仮装のカリムとジャミルは全員子供なれしていたのでおそらく下にチビがいるんだろう。ニアが懐くのもよく分かる。
植物園に入るとまっさきにダイヤのマークのケイトを探し当てたニアが飛びかかる勢いで足に抱きついてる。
「わっ!?…あ、ニアちゃん!久しぶり〜!うわ…可愛い〜仮装超似合ってるじゃん!!」
「へへ、ナースの皆が作ってくれたんだよ〜」
「うんうん、髪の毛もかわいいねぇ!」
おお、何回か気に入らなくてやり直してるニアのこだわりポイントに気づくとは…。さすが目ざとい。気づいてもらえて嬉しそうなニアがもじもじしてる。
「けーくんたちは何の仮装?お花ついてる…」
「ふふ、スケルトンだよ!本当はスケルトンには心臓はないけど…薔薇の花で心臓モチーフにしてるんだ!カワイイでしょ?」
随分ゴシックなスケルトンだねい…。似合ってるからなお凄い。
「エースさんとマルコさんもお久しぶりですね、俺でよければ案内しますか?ちょっとニアちゃんには怖いかもだし…」
「ええ…」
「ウチのエースちゃんデュースちゃん、2人とも張り切ってたからね〜」
二人で手を繋いで歩き出す。普段は温室なのか植物が満載だ。そのせいで視界が悪く、不気味さを出している。
「……ぅわ…」
ニアの小さい声に反応して視線をやるとデュースが半身埋まってる。埋めてるのは…エースとトレイだったか。
ザク、ザクというシャベルで土を掘り返す音が響いている。たしかにこれはニアには怖いだろうねい。
「…お、悪がきニアじゃん!」
「っ!!!」
「アララ〜…ちょっと怖かったかな…」
シャベルを肩に担いで来たエースから隠れるように俺の足元にやって来たニアの肩を擦る。
「演出だよい、ニア」
「いや!!!」
踏ん張って前に来やしねえ…。顔を覗き込めば今にも泣きそうだ。抱っこも嫌がる、困ったよい。
「オレだよ、オレ!エース!トラッポラの方の!!」
「うう〜…」
「あーあ、エースちゃん泣かせた〜!」
結局泣きだしてしまった。慌てて取り囲もうとするもんだからニアがどんどん後ずさる。
「待てよい、ニアに鬼ごっこさせたら誰も勝てねえんだよい…そっちのエース、一旦止まれ…んでしゃがめよい。ニア、どうしたよい。」
「いやだ、いや…」
「……シャベルか?ハサミとかと同じ反応してんぜ」
エースがそう言うとニアが震える手で指差す。ほぼあっちのエースを指差してるが、恐らくシャベルだろう。
「悪ィがそれを遠ざけてやってくれよい……ニア、見てみろよい。もうないから」
「…うっ、…っひ…」
泣き痙攣を起こしてるニアの背中を軽く擦るとだんだん落ち着いてくる。
「元気になったかよい?」
そう聞くと一応頷いてはいる。ひっつき虫になっちまったが…
「ほら、やるから元気だせよ…」
すっかりしょげてしまったトランプのエースはニアが決まり文句を言う前にお菓子を渡し始める。まさかこんなに泣かれるとは思ってなかったんだろう。
「気ぃ悪くしないでくれよい……昔ひどい目にあったみたいでねい、注射器とかそういうのに過剰反応するんだよい。」
「嫌なこと思い出しちゃったかな?そしたらほら、今日は楽しい思い出で塗り替えちゃおうよ…けーくんまだニアちゃんからアレ聞いてないな〜??」
「トリック・オア・トリート…」
「え〜?よく聞こえなかったなぁ??」
「トリック・オア・トリート!」
「ふふ、は〜いトリート!わ、カゴいっぱいじゃん」
相変わらずニアの扱いが上手いケイトが話しかけるとニアもようやくニコニコと釣られて笑い始める。降りる、と言われニアを下ろすとしょげちまったエースのもとへと走り寄ってる。
「エースくん、あの…トリック・オア・トリート…」
「えっ!?さっき渡しちゃったし!!!」
「おや、エース予備のお菓子用意してなかったのか?じゃあ…トリックされるしかないなあ」
トレイが意地の悪い顔でニヤつきながらニアにペンを渡す。
「え〜?…しゃーねえな…手加減してよ」
「……おでこ出して?」
いつになく真剣な顔でペンを握るニア。5分かけて描き上げたのは薔薇の花だろう。ニアくらいの年齢が描いたにしては上手いスートのようにある。
「うお、イケてんじゃん!!」
「ニアもシール剥がれたしペンで描くか?これかぶれにくいはずだぞ」
「じゃあエースくん描いて?」
「うわプレッシャー…じっとしてよ」
シールじゃなくてペイントだとピエロ感が増す。さっきまで大泣きしてたとは思えないほどニコニコと笑うニアを見てこちらのエースとほっと胸をなでおろす。
注射器以外にも鎖や紐状のものに過剰に怖がる様子はあったが、シャベルもとなると、捕まっていたときに何かしらの道具による暴力を受けていたとしか思えない。話したくないしうまく話せないニアから直接聞けたことはまだないが…。
「おや、楽しそうだ…ふふ、ずいぶん可愛いピエロだね?」
「おー、リドル!久しぶりだなぁ!」
だらしのないエースとしっかりもののリドルはこの間モビーに誘ったときに意外にも仲良くなっている。年も同じとは思えねえが…嬉しそうに手を差し出すエースの手を握るリドルに口角が上がる。
「エースさん、マルコさんも…お久しぶりです」
「見かけなかったがどこか行ってたのかよい?」
「今年の運営委員長として巡回をしてました。どうしてもこの学園は血の気の多い生徒が多い…来場してくれたゲストとトラブルなんて今後の開催にも関わってくるので。」
「リドルくんもパレード出るの?」
「うん、その予定だよ。…あ、フロイドが君のことを待ちわびてたよ。早く行っておやり」
エースとニアに手を繋がせ、案内役にデュースを引き連れて先に行かせる。
「そのパレードっつうの、そのシャベルは持っていくのかよい?」
「え?いや、基本的に仮想姿だけで……何かあったんですか?」
不思議そうな顔をするリドルを始め、トレイ達に大まかな予想と現状を話す。
「でもクル先のムチは反応してなかったよーな…」
「あの人はあんな小さい子に鞭を振るう人じゃないだろう…あと鞭を知らないのかもしれない。薬品室のオクタヴィネルも特に小物は使用してないですし、ディアソムニアやポムフィオーレ寮もそういった小道具の申請は受けてない…なので、もうNRCの生徒を見てパニックになることはないかと…」
「…そうかい、助かるよい。まさかシャベルにあんな反応するとは思ってもみなかったよい」
また少ししょげるエースの頭を軽く撫で、後でなと薬品室へ向かう。薬品室の前でニアたちが待っていてくれたので入ると、机に突っ伏していたフロイドがムクリと起き上がり凄まじい速さでニアを抱き上げる。
「も〜〜稚魚ちゃんおーそーい〜!!!オレ超待ってたんだけど〜!!!」
「フロイド、ニアさんが天井にぶつかるのでやめなさい」
「ちぇ……あ、つか仮装超かわいいじゃぁん!!ピエロ?頭もキラキラしててカワイイね」
「ふふふ、くすぐったいよ〜」
「はいじゃトリック・オア・トリート!おかしちょーだい」
お前が言うのか?とニアを除いた全員がフロイドを見やる。どう考えてももらう側だしお菓子なんか用意してない。
「な、ないや…ごめんね?」
「え〜じゃあいたずらしちゃお…ん〜、何にしようかな〜」
見る人が見れば震え上がるような表情のフロイドがニアを抱えてくるくる回る。
「あ、いいこと思いついた。稚魚ちゃんじっとしててね〜」
頭につけてたビーズを増幅させたかと思いきやニアの左目の下にどんどん貼りつけていくフロイド。右目は涙のマークなので明るくて陽気なピエロぽい。センスあるねい。
「じゃじゃーん、完成〜!…うんイイ感じ〜ほんとはぎゅーってしたかったけど、たぶん稚魚ちゃん潰れちゃうからね〜…はいじゃトリック・オア・トリート」
「俺らもかよい…誰も持ってねえよい」
「はいじゃぎゅ〜!!!」
すっげえ力で抱きしめられる。ジョズ並のパワーだ、こんな細いのにとんでもねえよい…。
「いでででっ!!!!どんだけバカ力なんだよ…」
「え〜?鱗みてえな筋肉しといて痛いの〜?稚魚ちゃん、何持ってんのお?」
興味がコロコロと変わるフロイドはまるでニアのようだ。ジェイドにもらったマップを見てウツボの絵を見てアズールにドヤ顔で見せてる。
「え、てか待ってめっちゃ映え〜!」
「うわっ」
エースくらいの女たちがズカズカと入ってきて薬品棚を撮影するためにニアを押しのけるようにしてバランスを崩した。
「稚魚ちゃんヘーキ?」
「うん……フロイドくん、可愛いお顔が台無しだよ?」
「え〜?でもムカつくじゃん…つーかそこ立入禁止ラインなんだけど〜勝手に入んなよテメーら」
感情がジェットコースターのように変わるフロイドをニアはなんとか宥めようとしたが、失敗に終わる。パーテーションを踏み越える勢いで撮影してる女たちの首根っこを掴んで引き離すフロイドを慌ててアズールが声をかける。
「フロイド、ゲストには丁寧にですよ。相応のもてなしはその後です」
エースから聞いてはいたが、こいつらほんとマフィアみてえだよい…。
「ヴィルお姉ちゃんはどこいるの?」
「あ〜ベタちゃん先輩?鏡舎の鏡の間だよ、オクタヴィネルからハーツラビュルに移動したときの鏡の部屋」
「へえ、面白いとこ担当してんだねい。」
「鏡で寮移動するのは学園ならではですからね…おや、ここへは向かわないのですか?マレウスさんたちがいらっしゃいますよ」
マップに二本の黒い角と、校舎に王冠マークを描き出したニア。ウツボの横にもタコをしれっと描き足している。
「フロイドくん、またね〜」
「稚魚ちゃんたちばいば〜い、また後でね〜」
すっかり機嫌が治ったらしいフロイドたちと別れる。
「どっち行くよい?」
「オンボロ、気になる……」
オンボロ、と書いてあるらしいこの昔使われていた寮の名残の建物の方へ。華やかなランタンとは違う提灯のようなものが飾られており、どことなくイゾウの故郷を思い出す飾り付けだ。挿絵でしか見たことねえけど、似てるよい。
「お揃いじゃなあ、ハッピーハロウィン!」
木の上からぶら下がってきた小さな人影にニアは地面から浮くくらいびっくりしていた。
「びっくりした……リリアくん、やめてよ〜」
「くふふ、少し刺激が強かったかの?して……こやつが兄上のエースか!して…?そこの若造も兄上か?」
「わかぞう…?マルコって言うんだよ」
「ほお、マルコか。よろしくのう、わしはリリアじゃ」
「お、おう…丁寧にどうもよい」
どう見てもリドルたちと変わらないが年上なのか?ニアによれば確か妖精族なんだよな…?
「……龍?」
「おお、分かるか?マレウスが考えてのう、あやつさぞかし喜ぶぞ〜」
「イゾウの妖怪図鑑で見た!神聖な生き物なんだよね、リリアくんは龍見たことあるの?」
「ドラゴンはあるが龍はのう…言い伝えの国を行ったことはあるぞ、東の方の国で少し変わった文化があってな…この飾りもそれをイメージしておる」
仲睦まじくニアとリリアが手を繋いで歩き出した途端に雷鳴が唸るように聞こえてくる。ニアは雷が大の苦手だ、いきなり大きな音がなるから心の準備ができなくていつまでも慣れることができない、とこぼしていた。
「おや…マレウスや、機嫌を治さんか。ニアたちが遊びに来たというのに…そんで、この小童たちはなんじゃ?」
「再三注意しているのに僕の角に許可なく触れた、飾りも引っ張り無礼極まりない」
おお、でかいねい。あいつがドラゴンのマレウスか…ニアが前に描いたイラスト通りだ。怒り心頭なのか、こちらには目もくれず腰が抜けた男女を睨みつけている。さっきの薬品室でもそうだが、一部モラルに欠ける招待客がいるみてえだねい…。
(言葉で分からないなら頭に分からせるべきだ)
(ま、待ってマレウスくん!)
(……人の子、なぜそいつらの肩を持つ?)
(け、けーくんが楽しい思い出にぬり変えようって……もっと良くなくなっちゃうから…)
(……)
(マレウスよ、せっかくの学園祭に死者を出すつもりか?…あの子の言うとおりじゃ、伝え方を変えねば人間と分かり合えんぞ)
(……そうだな、頭に血が上りすぎた。人の子、怖がらせてしまってすまない)
