Marco Papa
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試練
*ハルタ
さて12番隊員のたるみきった精神と身体鍛え直してやろうかと甲板に集まった時、ニアの珍しいくらい大きな鳴き声が響く。
隊員のケビンから「ハルタさん」と声をかけられたので様子を見てくる、と伝えてマルコの部屋へと向かう。
「……マルコ、ニア、失礼するよ…どうしたんだいそんなに顔真っ赤にして泣いて…」
「やだ!!こっちこないで!!!!」
涙も鼻水も垂れ流して泣いてるというより、癇癪を起こしてるニアが、手を伸ばしたボクを拒絶する。この分じゃあマルコも拒否られてるな…。
「…どうしたのさ、マルコ」
「ワガママだよい」
ハア、と眉間に皺寄せてため息をつくマルコ。なんだ、ワガママなんかいつも喜んで受け入れてんだから今日ものんでやればいいのに。
「ワガママじゃない!!!」
地団駄を踏んで主張してくるニア。珍しい、ワガママだとしたらここまで聞き入れないなんてことは今までなかった。
「分かったよ、ニア。マルコに何お願いしたの?」
しゃがみ込んであまり近寄らずニアに話しかける。肩で息してるから落ち着かせないと。痙攣起こしちゃう。
「きのう、…昨日マルコが言ったのに、今日はニアとあそんでくれるって、マルコが!約束ねって言ったの!!」
「ほら、タオル使いな。…で、マルコは天使とのデートの約束をなんで破って泣かせてるわけ?」
「突発的に発生したバカエースの報告書だよい。よりにもよってカウンターと冷蔵庫壊しやがってねい。デケェ支出になるから急ぎの対応が必要だよい。」
マルコが頭をぽりぽり掻いて僕に言う。あ〜2日前の馬鹿騒ぎした時のやつね…。しかも冷蔵庫まで壊しやがったのか、あのバカ末っ子は…。食材腐ったらどうしてくれるんだ。
「だから、明日遊ぶって言ってるだろいニア」
「今日がいいの!いや!!」
「マルコ、もう少し言い方。… ニア、大きな声出すと辛いよ。フーフーてしよ、ね?」
意固地スイッチが入ってしまった。ニアは賢いから、冷蔵庫がないと例えばニアの好きなココアを飲むためのミルクが腐るとか、そもそもカウンター大破してるから食器乗せる場所が少なくなって不便とか、急いで直さなきゃいけないのは理解できるはず。
「……聞き分け悪いよい、ニア。そんな怒ってるニアとは明日になっても遊びたくねえよい」
泣き出して癇癪が起こるまで朝からずっと説明し続けてウンザリしてるであろうマルコが、爆弾のような一言を放つ。
「マルコ、」
それは言い過ぎと言う前にニアのもっと大きい泣き声が響く。
「……ここまで悪化させたのはマルコのせいだかんね、バカ野郎」
涙を拭っても拒絶する元気もなく、ただ泣き叫ぶニアを抱き抱えて背中をさする。しばらく頭でも冷やしてろ、とマルコの部屋を離れる。
「……今までで1番泣いてね?」
昼飯を頬張るエースが肉を刺したフォークをニアの口の前に持ってくが、顔を背けて拒否。しゃくりあげて泣き続けていて、声量は落ち着いたけど機嫌や情緒は多分荒ぶったままで、いつもみたいに頬をつついたサッチの指を軽く叩いていた。今は鬱陶しかったみたい。
「ニア、お水は?」
「いい」
「みかんゼリーは?僕同じの食べてるけどおいしいよ」
「いらない」
僕の膝の上に乗ってお腹にひっついてるけど、何も口にしようとしない。
「冷たいココアもあるってよ、ニア」
エースがサッチから言われるも、それもいらないと。甘やかし担当のイゾウが隣に座ってくる。チラ、と見てすぐ僕の服に顔を埋めてくる。
「あら、フラれちまった。…ニア、何が嫌だったか教えてくれるか?俺でも、ハルタでも、オヤジでも。」
誰だったら言いやすいかな、と考えてるとお腹の辺りがモゴモゴ動いて擽ったい。
「ニア、擽ったかった。…もっかい教えて?」
「今日がよかったの、」
「うん。約束してたもんね」
「マルコが今日って言った」
「うん、今日が良かったよね」
「今日、遊びたいの」
何度も何度も同じことを主張してくるニア。もう少しこの単語単語の奥にある気持ちをわかってあげられればなあ…。
「僕らじゃダメかな?」
「マルコがいい、マルコと約束したの!」
だよねえ。そうじゃなきゃこんなに泣いてないもんねぇ。
「…マルコが約束してくれたから、どうしても今日がいいってことかい?」
イゾウがまたポロポロ泣き出したニアの目元をガーゼで拭う。
「……あ〜なるほどね。今日は今日しかないもんね。ニア、そういうこと?」
無言出されるがままのニア。嫌なことは嫌、いらないものはいらない、と即答してたのでアタリかな?
「……」
「ニアは、マルコがエースがぶち壊したカウンターと冷蔵庫を早く直さないと、モビー全員が大変だから、マルコが今日は遊べないって言ったのは分かる?」
「…うん」
よしよしいい子。頭を優しく撫でる。
「じゃあ、それでもニアが諦められなかった気持ちは、マルコが…マルコから明日遊ぼうねってした約束を破ったから?」
「…ちがう」
「マルコから言われた今日じゃないと意味がないとか?」
「…うん」
癇癪起こして疲れたのだろう、顔がグッタリしてる。これを言えたらマルコも楽だし、ニアも楽だったよなあ。
5歳児には自分の気持ちを大人が理解できるように伝えるのは、とっても難しいだろう。
「…そうか、それで俺らや明日じゃ意味ないんだな。」
イゾウが呟く。意味がない、それだけだ。
だから必死に嫌だと言ってたのか。
「…あ、ニアは別に聞き分け悪い子なんかじゃないからね。いつもちゃぁんとここに座って、嫌いなのもなるべく食べて、カトラリーを正しく使って、食べ終わったら片付けて…。ご飯だけでもこんなにお願いを聞けていい子だよ。」
ポロポロ泣いてる可愛い末っ子を揺するように抱っこしていれば、泣き疲れですぐに眠りだす。
「……ハルタ、」
「…落ち着いた?マルコも朝から何も口にしてないだろ、寝てるうちに食べちゃいなよ」
ヨレヨレのマルコがやって来る。少しげっそりした表情はマシになってる。
「悪いよい…」
パパは大変だな、とサッチがマルコの隣に座る。
「意外、ハルタてっきりキレるかと思ってた」
エースがまだ食いながら言ってきた。
「…まあキレたい気持ちもあるけど、癇癪起こす前にマルコのことだから、軽く2時間くらいは言い聞かせてたんだろうなって。
ニアにはニアの譲れない理由や気持ちがあるから一切妥協しないし、そんな子を前にして、僕は泣かせちゃうまでに、30分ももつかなって思うから。
…ただ、聞き分けが悪いって吐き捨てたのは良くないよ」
「…言い過ぎたよい」
うん、言い過ぎ。
「あと、これをワガママって決めつけてたとこも。やっとこさ時計が読めるようになって、カレンダー使って日付の感覚が分かってきたんだよ?
僕らの時間感覚と、ニアの時間感覚は違う。この子は賢いけど子供なんだから…」
「………ハァ…」
「フフ、ハルタは厳しいな。」
楽しそうにイゾウが笑う。
「……マルコが今日って約束してくれたっていうことが大事だったんだって。遊んでくれないとか、約束破ったとかじゃなくて、今日が大事だったって。だから明日でもその先でも、代わりに僕らでもダメって。」
「……起きたらちゃんと謝るよい」
モソモソ朝食兼昼食を食べるマルコ。昼寝を交えた泣き疲れ寝だと思うから、目覚めるのは夕方かな。それまでにエースが破損したカウンターと冷蔵庫の修理と買付け手配を済ませて終わらせる、と早々に席を去って行った。
「…まったく、僕の方が落ち込みたいよ、こんなに癇癪起こして泣き叫んでる子どもを満足に泣き止ませられないし、そもそもこっち来ないでって言われたし…マルコは本当に贅沢だ」
「何言ってんだよ、お前だからようやく泣き止んだんだろ。俺なんかさらに不機嫌を加速させちまって叩かれたんだぜ」
サッチが苦笑しながらコーヒー出してくる。
「…本当申し訳ねぇ…俺が酒に酔って暴れなければ…」
「「それは本当にそう」」
反省しろ、バカエースと背中を叩く。
「……これは俺の推測だが、起きてマルコと仲直りしたら『ハルくん、来ないでなんて言ってごめんね』って泣きながら謝りに来るだろうねェ…どこかの不死鳥みたいに気にしいだから」
*マルコ
後ろでむくり、と起き上がった気配がして振り返る。
「ニア、起きたよい?」
「……だっこ」
目開いてるか?レベルだが返事をしたってことは起きてると判断して、手を伸ばすニアを膝の上に乗せる。
「…ニア、約束守れねえですまねえよい」
「……今日、おわっちゃった」
「約束し直してもダメかい?」
「……いつ?」
頬を撫でると思いの外熱くて驚く。このあと熱出たりしないといいよい…。
「今日、エースが壊したカウンターと冷蔵庫の件は片付きそうだよい。明日はもともと隊ごとの訓練があるから、その次の日の明後日よい。」
ハルタの時間感覚が違う話を聞いてハッとした。今日は今日でしかない、同じ船に乗る以上よほどのことがない限り明日はやってくる。どうしてそんなに聞き分け悪いんだ、と思ったが「今日」約束していたから、か。
「……分かった」
「ありがとうねい。…ニア、ワガママだとか聞き分け悪いとか言ってすまねえよい。……思ってねえよい」
「もういいよ、マルコ。痛い顔しないで?」
情けない表情をしていたんだろう、逆に心配されてしまった。
「…ニア、どうしたよい?」
ひと段落、仲直りしたと思ったら眉を下げてまた泣きそうなニアの顔を覗き込む。
(ハルくん、ごめんね?)
(サッチも叩いてごめんね)
(良い!!良いんだよニア!!!僕はニアの悲しい気持ちが終わっただけで!!ん〜天使ちゃん、泣かないで?)
(サッチさんもお前に叩かれた記憶なんざねぇけどな?)
(フフ、ほぅら俺の言う通り。)
(…賭け事でもしてたのかよい?)
(まさか。…でもひとしきり泣いて、マルコと仲直りしたら来ないで!って拒絶したハルタと、キゲン悪ィ時にちょっかい出されて、指を叩いたサッチに泣きながら謝って来そうだって言ってたんだ。どこかの不死鳥さんみたく、あの子は気にしいなところあるからなァ)
(揶揄うなよい、イゾウ…)
(マルコ、俺しばらく悪酔いするほどの酒やめるわ…マジごめん…)
大人には明日も明後日も、1週間後一ヶ月後があっても、子供はイメージしにくい…そういうすれ違いってあるあるな気がします。
