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83 中傷
*神代くましろ
外に出られなくなって3週間。
きっかけは週刊誌のゴシップだった。
『ヒーロー Neutral、夜な夜なクラブに出歩き浮気か』っていう嘘も甚だしい記事から、そこのクラブから結婚詐欺してるとか薬やってるとか、いろんな記事がいきなり立て続けに書かれた。
記事についてはほぼほぼダメージはない。問題は企業だ。CMやらなんやらの広告担当の人たちが急に態度を変えてきた。イメージが何よりも大事だから契約を切るまでは分かる、オレがショックだったのは契約を切る際の態度だ。
『どうせやると思ってた』『結局女の方がいいんだ』『若くしてモテて、お金も持ってたらまぁ破滅に行き着くよね』『弄ばれたイレイザーヘッドもお気の毒に』『もしかしてショートやダイナマイトともそういう仲なんですか?』……と散々なことを対面で長々と言われた。
メールのときから刺々しい文章だったから、満を持して録音したから名誉毀損で訴えることもできるけど…そんな気力なかった。
契約してたときは笑顔で話してたし、気のいい人だなと思って結婚おめでとうといってくれた人が裏ではそんな風に思ってたことが何よりもショックだったし人間不信になりそうだった。
「……くましろ、起きた?」
「……はい、なんとか」
「…お前が言われっぱなしなのを俺は黙って見てるつもりないよ」
「……言ったところで…もう…何も変わらないじゃないですか、知らない浮気相手も出てきてるし、オレから薬買ったらしい人もいるしっ、詐欺に加担させられた人もいるし…っ!!」
「違うなら違うと言え、オレは最後までお前のことを信じてる。逃げるな、くましろ……諦めるな、見てる人には伝わるから」
頼む、と手を握られる。消太さんからのお願いは滅多にない分オレは基本断れない。それをわかった上で言ってるんだろう……ずるいなあ。
「…分かりました。」
「そうか、くましろ…大丈夫。お前がもし誰のことを信じられなくなっても俺はずっとくましろを信じてるからね」
「……ずるい…」
「やっと俺の前で泣いたな…マイクや根津さんが必死に相手方を調べてくれてる。塚内さんは弁護士紹介してくれた」
連絡してみろ、と名刺を渡される。
オレが動けるようになってから早かった。顔も知らない自称浮気相手や一緒に詐欺行為をした人たちがオレが事を及んだ日時のすり合わせから一つ一つ地味にアリバイを出して潰していき、最後薬を買わされたと主張をひっくり返すためにレコーダーを提出した。
「…これは?」
「3月12日、15時〜17時の間に行っていた契約解除の話し合いのときのものです。暴言ばっかりですが…この日時に会社に居た事の証明にはなるかな、と…」
「なるほど、有力な証拠ですね。中身を聞いてもいいですか?」
「嫌です」
「…くましろ?」
相澤さんに肩を掴まれる。
「聞きたくもない言葉の数々があるので、その…オレが居ないときでお願いします…すみません」
「い、いえ!こちらの配慮が欠けておりました、すみません…。…アレですかね、イレイザーヘッドも一緒に確認しますか?」
「します。……何言われたんだ、お前…」
「ちょっと……色々…」
「…こいつも追加で訴えろ、俺の気が済まない」
逃げれられない圧で被告人が増えた。でももうはいしか言えない空気だったし、別室でレコーダーを聞いて戻ってきた消太さんは弁護士さんが慌てるくらい怒ってた。
声明を出していよいよ裁判の日。ものすっごい数のマスメディアに囲まれる。結婚会見の時くらいだな…。すごい眩しい。
「恋愛対象は女性に転身したんですか?!」「結婚詐欺までしていたという証言もありますが!」と次々マイクを向けられる。好き勝手言いやがって、とブチ切れそうな気持ちをなんとか抑えて適当なマイクを受け取る。
「事前に出した声明文はお読みいただけましたか?」
「今はそのことでな「声明文は、お読みいただけましたか?」……あ、いや…」
…だろうと思った。なんのための声明文なんだか。
「そのことについて裁判をするので、お互い無駄なやり取りがないようにと思って簡単な時系列のまとめと、こちら側の意思を記載してます。答えは裁判で出ますので、今は質問されても不明瞭なためお答えできません」
それだけを告げ立ち去る。ゼンマイにはよくやった!!!と褒められた。
今オレには余罪がいろいろある状態だから、1回2回で裁判は終わらないから気楽にね、と根津さんに言われる。結構長いことやらなきゃいけないのか〜…。
事実確認を双方からして、状況や証言、裁判所での様子を鑑みて最終的に裁判官が判決を言い渡す。裁判が始まったことで注目度が上がったものの、3ヶ月位経ったらメディアは飽きたのか裁判所前にから人がいなくなる。
「……3ヶ月でこの程度ならもう少し我慢してればよかったかな…」
「却下、俺が絶対に許さねえ」
鬼の形相の消太さんにそう言われ、4回目の審理へ。誰がどう見てもクラブやら結婚詐欺やらをした場所に赴いてない証拠があるこちら側が有利だ。
でっち上げの証拠をいくつか出されたものの、カメラがある場所や人といた事で嘘だと判明されてる。弁護士さんにも次回あたり判決が言い渡されると思う、と告げられる。
そして待ちに待った判決の日。
週刊誌に書かれたことに対する内容が事実無根なことが立証された。そしてCM契約解除の際に数々の暴言を吐いてきた社員を会社名義で訴えたところ、会社から示談の申し入れがあり、話し合いを重ね真摯な謝罪を受けたので示談を受け入れることにした。会社事態に恨みはないしね…オレに暴言を吐いてきたあの社員はなかなか問題児だったらしく、即刻解雇されたと聞いた。
「……直接お伝えしたかったんですが、伝言を頼んでもいいですか?彼に」
「はい、勿論です。」
メモを取る様子を見て、本来なら直接言いたかったことを告げていく。
「…初めてのCM撮影前の打ち合わせで、ド緊張してたオレに打ち解けるために新婚生活の話を聞かせてくださいと言ったのを覚えているんでしょうか?オレの気持ちはあの頃から何も変わってません、ショートもダイナマイトもいいライバルで友達で、イレイザーヘッドはオレの大事な人です。何よりショックだったのは、その話をした人にどうせ女性の方に行くと思ってたと言われたことです」
そう伝えると、再度会社の方から謝罪があった。
SNSでもやっと色々報告できる!と思い、言葉を選んで呟く。
『判決出ました。誠実に生きててよかったです、証言してくれた人、オレとの予定を築一確認してくれた人、協力してくれてありがとうございました。正直引退を考えるほど心が折れそうでした。
さて、大々的に証拠もない(裁判中に出した証拠は俺とは無関係で事実無根と判決結果が出ています、いくつか虚偽の証拠もありました。)嘘を書いてオレの活動を邪魔した〇〇社と記事を書いた△△さん、□□社と〇〇〇さん、☆☆社と◇◇さんからは特にこの数ヶ月間音沙汰なしですが、どうしましょうか。名誉毀損で訴えるか弁護人と相談中です、今後を話し合いたいのでぜひ紙面ではなく直接連絡ください。』
オレだけ散々色々言われて記事を書いた人は隠れて静観してるのが少し腹立って出版社名を出した。
この呟きは大反響を呼んでいる。滅多に怒らないイメージのオレがキレてる、と野次馬が多いが応援メッセージも多い。
「キレッキレだな」
「感情が戻ってきた感じがします。…消太さん、色々ありがとう…あと、あのとき…当たってごめんなさい」
「なんのことだか…くましろ、よかったな。」
ぎゅ、と抱きつく。やっと安心して眠れるかも…。
「ふふ、いー匂い…」
「それ多分加齢臭だぞ」
「だとしてもいい匂いです」
すーはー嗅いでると恥ずかしくなったのかやめろ、と引き剥がされた。
「色が祝勝会やりてえってよ。知り合いの中で1番キレ散らかしてたから、顔出してやってくれ」
キレ散らかしてたんだ…色さんも怒ると怖そうだもんな…。ゼンマイも怖いくらい無言だったしこの世代の人たち怒るとみんな怖い。
(くましろくん!久しぶり〜あ〜こんなやつれちゃっても〜〜!よく頑張ったね!あとは俺が片付けとくから!)
(何する気ですか???ふふ、お肉食べたいです)
(なんでも作ったげる!!消ちゃんもよく我慢してたね)
(何回かブチギレそうになったがまあ……我慢した)
(神代〜!この間ぶりじゃねえか、少しやつれたの戻ったか?)
(ゼンマイ重い重い……っ!)
(マイク、色々助かった…今日は奢る)
(何言ってんの今日は俺が祝勝会やるって持ちかけたんだからいいよ!)
(そしたら前回も久しぶりだからって対して払えてねえだろ、今回はだめ)
(ゼンマイ、重い……腰折れる…っ!)
(ヘイそのまま鍛えろ、筋肉落ちすぎだお前)