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79 誹謗
*神代くましろ
体が凍りつく感覚。SNSをやらないのも、自分のことを必要以上に人から聞きたくないのもこういう感覚を味わいたくないからだ。避けられないとは分かってるけど、やっぱりぶつけられるとダメージが積み重なってズシンと心が重くなる気がする。
「死神ィ!親子揃ってとんでもねえな!」
「なんとか言ったらどうなんだよ、トラブルメーカーさんよぉ!」
なんでこんな目に…チンピラみたいな敵に絡まれて助けを呼んでたから、敵を捕縛し終わったあとに絡まれてたおじさん2人に詰め寄られる。
「ちょ、っと落ち着いてくださ…っ!?」
胸ぐらを掴まれ、宙にプランと足が浮く。土方のおじさんたちなのか、筋肉ムキムキでオレのことなんか簡単に持ち上げられてしまう。
「まともに親から愛情もらえてねえとこんな風になっちまうんだなぁ、オイ!」
「ちやほやされてるみてえだけどよ、俺らはお前の母親もお前も大嫌いなんだわ!」
思い切り壁に向かって投げ飛ばされる。背中の衝撃がいたすぎて視界がチカチカする…。
「はっ、何泣いてんだよガキが!泣けばなんでも言うとおりになると思うなよ!」
「被害者ぶってんじゃねえ!!」
「いっ!?」
おでこに痛みが生じる、石…?違うな…コンクリートの欠片というか…野球ボールよりは大きくて、バスケのボールとかよりは小さいものを人にやすやすと投げてきたおじさんたちに足がすくむ。怒りで我を忘れてるのか、何を言っても聞き入れてくれる気がしない。スマホも手元になくてお店の中だし、警察が来るまでこのまま…?
「おいおい、いい年したおっさんが寄ってたかって高校生に詰め寄って何してんだ?そこに縛られてる敵のお仲間かァ?」
「プ、プレゼントマイク……!」
「はあ、怪我までさせて?傷害・暴行、ンで脅迫と……余罪たくさんだなぁ?おーい、こっち4人逮捕だ!」
ギャーギャー騒いだおじさん2人を手早く縛り上げたゼンマイが警察にオレが縛り上げた2人と合わせて引き渡そうとする。
「ま、まって…その人たち、敵に襲われて…」
「いい。庇うなよ」
「イイコちゃんぶってんじゃねえよ、ヒーローごときが!お前らまとめてくたばっちまえ!」
「オーオー、聞いてりゃ酷ェな?お前とは裁判所でまた会うかもなァ…」
見たことないくらい怒ってるゼンマイが二人を凄む。パトカーに入れられたのを見届けて、ゼンマイがオレの方へ振り返る。あ……いつもの顔だ。
「よお頑張ったな、神代。怪我の手当してやるから雄英帰るぞ」
「うん……」
「コンクリのブロック投げられるたぁ思わんわなァ」
「……見てなかったオレが悪いよ、止めればよかった」
「それは違うな、神代」
ぐい、と繋いでた手を引っ張られる。
「あの場面においてお前が悪い箇所なんて1個もねえよ」
「……相澤さんには言わないで…」
思ったよりも小さくて震えた声になってしまった。返事が返ってこなくて見上げると、気まずそうな顔をしてるゼンマイ。
「……後ろにいるから無理カモ」
「え゛っ!?!」
「………マイク、何泣かせてんだお前…」
オレと目があった瞬間すごい剣幕で詰め寄ってきた相澤さん。早すぎて見えなかった。締め上げられてるゼンマイがあまりに気の毒で、ゼンマイのせいじゃないと訂正する。
「……じゃあ誰だ?…何言われた、ケガまでして…」
「…なんか…いろいろ…」
一言で要約できる気がしなくてそう伝えれば詳細を言え、と頬をつねられる。
「死神とか…なんか気に食わないとか…くたばれとかいろいろ…?」
そう言うと相澤さんが悲しそうな顔をする。
「そうか。……よく耐えたな」
オレ以上に怒ってるゼンマイと、オレ以上に悲しんでる相澤さんの後ろを歩く。雄英までこんなに遠く感じた日はなかった。
リカバリーガールに飴を貰って包帯を巻かれる。朝から災難だったね、と言われた。そうだ、登校途中だったんだ…なんかすっかり忘れてた。
「おはよ〜」
「…わ、くましろくんおはよ…ケガ大丈夫?朝から敵退治なんて大変だったね」
出久くんにそう声をかけられる。
「あれ、なんで知ってるの?」
そう聞くとSNSで写真が回ってきたと返ってきた。周りに人居ないように思えたけど…意外と居たんだな。
「プレゼント・マイクが気付いて入るとこもあるぜ、見るか?」
上鳴くんに肩を組まれ動画を再生される。ワーワー言ってる声が聞こえてきて拒絶反応が出てスマホを手で払ってしまった。
「…聞きたくない…ごめん」
「…なんか言われたのか?」
「……言いたくない…」
悪かったよ、と上鳴くんに謝らせてしまってもっと心のもやもやが重くなる。
「……っ」
腫れ物を扱うような空気に耐えきれず入ったばかりの教室から出ていく。中庭はだめだ、相澤さんお気に入りの場所だからバレる。今日は晴れてるから猫もいるだろうし…。
どこなら誰もいないんだろう。今日ほど人に見られるのがストレスに感じるのは初めてだった。
A組の皆は心配してくれてるんだろうけど、その目すら嫌だった。…屋上、屋上なら誰もいないはず。
ズカズカと階段を上がっていって最上階へ。もちろん鍵は閉まってるので、個性を使ってドアノブを力いっぱい蹴って壊してドアを開ける。
津波とかの非常時しか来ないであろう屋上は広くて、誰もいなくて張り詰めた気が緩まる。
見渡しても森しかない…。フェンスの前まで行って座る。空高…。雄英、高校とは思えない校舎の高さだな…グラウンドまであんなに遠い。大きい大学と張り合えるくらいの設備数と後者のデカさだ。少し深呼吸したら落ち着いてきた。帰ったら上鳴くんに謝らないとな…。
「……いつからンな不良になったんだよ」
「…っび、っくりした…」
思い切り肩が跳ねた。ゼンマイが壊れたドアノブを持って笑ってる。
「相澤にバレたらお前めちゃくちゃ怒られんぞ」
そこまで考える余裕なかった…。まあでも壊したし、授業サボってるし怒られても仕方ないな……。
「そうだね……鬼だろうな」
「ここじゃなくても外見れるだろ、どうしたんだよ」
「…上鳴くんに…動画見てみろよって言われて…さっきのおじさんの声が聞こえてきて…スマホ叩いて落としちゃった。
その時の皆の目が嫌で、誰もいないところに来たかったんだ」
「…そうか、じゃあ屋上くらいしかねえわなぁ」
「やな奴だねえ、オレ……はあ…」
「しょうがねえよ思春期なんだから」
それ関係ある?とツッコむ。関係大アリだよと返ってきた。
「……なんか間違ってた?」
「なにが?」
「…チンピラみたいのに掴みかかられてて、助けてって言うから助けたのに…親子揃ってとんでもないって助けたほうから言われたから…意味が分からない」
「何も間違ってねえだろ、逆恨みだ」
「……逆恨み…」
「そ、逆恨み。人気者っつー証だな」
「ゼンマイもある?」
「あるある、いっぱいある!俺がこんなにイケてるから嫁とうまくいかねえとかな」
「………」
「ほんとだっつの!!失礼だな…」
嘘なんて言ってない。
「嘘なんて思ってないよ、だってゼンマイはモテそうだもん。」
「…お前が言うか…?」
「ゼンマイは優しいし、気遣いがさりげないし…モテる人ってこういう人なんだなって思うよ」
そう言うとアメリカの人が呆れたときにやるポーズされる。ナチュラルにこの仕草が出るゼンマイ、ほんとに外国人みたいだな…。
「へーへー、どうも。…謂れのねえ誹謗中傷言われるようになったら1流の証なんだとよ」
「……内容的にゼンマイのは謂れないけど、オレはちょっとあるじゃん…」
「何言ってんだ、ねえだろ。体にアザ作って守ってくれたヒーローのどこが死神で謂れがあるんだ?」
「…死神が親でまともに育てられてないってなったら?」
そう呟くと、ゼンマイが大きい声でわざとらしく睨んでくる。
「おーおー、お前に毎日こんなに愛を注いでんのに受け取ってくれねえのかァ〜?俺はショックだぜ、神代…。
典型的な人間から愛を貰えてなくてもお前の周りにはいっぱい愛をくれる人間いるだろうがよ…そんでお前はまともだから、気に病むな」
「……うん…」
ゼンマイの言葉が嬉しくてポロポロ涙が溢れると、ゼンマイに顔を掴まれる。
「泣くな!つられ泣きすんだろうが!!」
えぇ、なんて理不尽な…。
「気にしなくなれるかな…」
「そりゃいつかは気にならなくなるさ…いや、どうでもいいに近いかもな。知らねえやつからネットでも対面でもわーわー言われても、近くには俺らがいるだろ。」
「…そうだね……ありがとゼンマイ、授業戻る」
「その前にドアノブの説明をしろ」
「すみませんでした」
振り返ったらもう居た相澤さんに土下座する。忍じゃない?まじで…気配消して立ってるの多すぎるよ、絶対前世忍者か末裔だよ…。
「説明を、しろ」
鬼の形相で立ち塞がっている相澤さんが1歩ずつゆっくり歩いてくる。コワ……どんな怖いゲームや映画よりも怖いかもしれない。
「……し、思春期だから…」
「…ブッ、アッハッハッハ!!!」
隣でゼンマイがひっくり返って笑ってるのを軽く相澤さんが小突くように蹴ってる。
「笑うなバカマイク…!お前の入れ知恵か?ちゃんと説明しろっつってんだ。除籍になりたくなきゃな」
青筋立てて怒ってる怖い相澤さんに観念して朝のことから順を追って話していく。
「……理由は分かった……が、学校の備品の破壊は見逃せない。1週間の謹慎だ。ヒーロー基礎学の授業の欠席」
「そんな………」
「自宅謹慎より軽くしてやってる。……あと…謂れのねえ言葉に振り回されすぎるなよ、素直に相手の言葉を受け取るのはお前の良いところで悪いところだ。」
「……なぁ相澤、お前だいぶ最初から聞いてただろ」
「さぁな?不良の考えることは俺には分からん」
だいぶ最初から居たのでは…?!?したり顔の相澤さんを見てるとおでこを叩かれる。
「上鳴と緑谷がすごい落ち込んでるから早よ行ってやれ」
「うう…はい」
(素直じゃねえなぁ、話入ってくりゃよかったのによ)
(…俺はあんな風に誹謗中傷向けられたことねえから、上手いこと言えない。お前が適任だと思ってな)
(今回は凄かったな、神代…途中で完全に足が竦んでてな)
(みたいだな……引きずらねえといいが)
(学校生活に慣れたら、カウセリングとか行かすのも手じゃねえか?夢で魘されたりもしてんだろ)
(あぁ…それで良くなるなら…。思い出す機会が増えてしんどくならねえか心配でな)
(……神代が気にしなくなるならそれが1番だけどな…難しいわな、こればっかりは。)
(大丈夫そうに見える轟も心配だ、俺は)
(……エンデヴァーさんトコか…。それぞれ内情は違うにしろ、重いな。上鳴と緑谷はなんて?)
(自分が余計なことしたからスイッチ入れちまったかもしれねえって眉毛下げてしょげてた。…スイッチは別のやつが押して、甘えられるここで爆発しただけ、巻き込まれ事故だって説明しといた)
(そうだな…あいつら優しいんだなァ!クラスメートの不機嫌や落ち込みにそこまで気にかけてやるなんざ)
(くましろの愛され具合がよく分かるよな…本人はいつ気づくんだか。)
(気づいたら泣いてそうだな)
(間違いねえな……これ、根津さんに説明するから一緒に来てくれ。あの人もくましろの事でキレると歯止め効かねえから)
(壊すとこまで黙って俺が見てたって言えば俺に責任回ってくるだろ、そう言え)
(……黙って見てたのか?)
(おぉ。すんごい思い詰めた顔してたからな、フェンス飛び越えるつもりなのかと思って後ろついてた。)
こういうやり取りでマイクへの信頼度が上がって、プロヒーロー後の関係があるんですよね…。大人になったくましろちゃんは弟のようにかわいがってくれてるマイクからの愛をしっかり噛みしめて受け取っています。