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78 먹방
*轟焦凍
「モッ…パン?」
パンの名前か?と聞くと目の前のくましろは違うよ、とYouTubeを開く。そこには大量の…カップラーメンか?やら、なんか寿司やらを頬張る人たちが映っている。
「大食いってことか?」
「惜しい。ご飯を食べる様子をモッパンって言うんだって…この人とか…すごい大量のご飯を美味しそうにきれいに食べるからなんかお腹空いてくるんだよねぇ」
「へえ……すげぇ一口デケェな」
真っ赤で辛そうなラーメンをどんどん食ってく女の人を二人で見る。…確かに、食いっぷりが良くてなんか腹減ってくるな…。ぐうう、と腹が鳴る。
「最近轟くんとゆっくり話せてないのと、フォロワーからすごい轟くんに会えって連絡くるし…二人でモッパン、やってみない?!」
楽しそうじゃん!とくましろに言われ、飯を食うだけの様子なんかにそんな人が見に来るんだろうか?と思ったが承諾。
「よし、じゃあつけよ…ここのボタンでいいんだっけ?」
「たぶん。映ってるぞ」
「……コメントきた?」
「きた」
ちらほらと画面の右下からコメントが流れてくる。
『くましろくん!?』『ショートもいる…!』『ショートとくましろくん?!久々じゃん…!』とすごい勢いだ。
*モブ(ショートとNeutralのフォロワー)
え!?待って待って、インスタライブの通知くましろくん…?珍しいと思って開いたら隣に轟くん居るんだけど??!
『今日は轟くん家にお泊りだから、ふたりでモッパンやってみよーよって話してたんだよね〜…といっても作るところからだけど』
お泊り…?!?モッパン…!?作るところから…?!!一気に来た情報量に頭が追いつかない。しがないOLの水曜の夜がこんな楽しく色めくことになるとは…!ビール買っといて良かったァ!!!!
「ていうか、くましろくんもショートも…モッパンって単語知ってんだ…」
『何作んの?』
『………何ある?この家』
そういって配信を見てる私達を置き去りにして二人が画面外へ消える。冷蔵庫見に行ったんだ…かわいい…!!全然配信慣れしてないの本当にかわいい…!
コメントを見ると、日本以外にも中国語(多分)、韓国語、英語、フランス語?の言葉が飛び交ってる。
そりゃそうだよねえ、この二人は雄英の在学中から敵連合との戦いもあるけどほんとにイケメンで可愛くて目立ちまくってた。在学中に立ち上げられた非公式のファンクラブ確か一万人とかじゃなかったっけ…?
『ただ〜いま!』
ニコニコでぼすん、とソファに座るくましろくんが可愛すぎて動悸してきた…ただいまだって…!!!可愛いね…!
くましろくんがずっと在学中から憧れのヒーローとして名前を挙げてたイレイザーヘッドと「結婚しました イェイ」って声明出したときはひっくり返った。
大好きな人と結婚おめでとう、の気持ちは大半のフォロワーが抱えつつも、まるで恋人…いや違うな、家族のようにフォロワーを扱ってくれるのでガチ恋勢が多いんだよね。私は不倫してる気持ちになるから、ガチ恋にはなれない。
『轟くん家何もない!オレは怒ってる、普段ベビースターとか食べてんでしょ』
『せんべいだって食ってるぞ』
『お菓子じゃなくてご飯を食べなよって話してんの…!』
ショートは相変わらずドがつく天然で、そこそこ天然のくましろくんとの相性がとってもいい。二人が揃うとふわふわ優しい空間になるから大好きだ。ダイナマとも仲がいいみたいで、一見不仲そうなのにくましろくんは…そう、お兄ちゃんにくっつくみたいに接してるのが印象的だな…。
『買い物行くか?』
『え、10分くらいここ無人になるのやばくない?』
このグダグタさもいい。
『も〜卵と…キャベツ…ん〜…あ、豚肉あったから…お好み焼きとかどう?』
『美味そうだな』
『あと乾麺でそばもあったからそれも作って…ん〜あとは出前しよ!』
『分かった、何食う?』
コメントしてみようかな…。モッパンか…。
「ふたりでシェアできるものとかどう?」
『……シェアできるものか、確かに…。』
待って、コメント読まれたんだけど??!画面録画しておけばよかった…!!!私のコメントが反映された結果、唐揚げとサラダを頼んでた。
ぱぱっと作るものを決めたくましろくんの主婦力の高さについてのコメントが読み上げられ、くましろくんがドヤ顔してる。…めっちゃ可愛い、スクショしとこ…!
『ふふん、ほぼ毎日イレイザーに作ってるからね!』
『偉いな』
ぱちぱちと拍手してるショートの手を頭の上に乗っけて撫でろ!と頭を突き出すくましろくんに心臓が止まりそうになる。わ、私達は一体何を見せられているの…??
『轟くんもお好み焼き手伝って〜、あ、スマホも持ってきて!』
『おお』
カメラがキッチンに移動し、二人が料理する映像が流れる。
『キャベツ切れるようになった?』
『キャベツくらい切れる』
『丸めろっつってんだろ!!て爆豪くんにキレられるよ』
『ぶっ、ふ……全然似てねえな』
『似てるよ!!!見ててね……轟ィ!テメェ手首から先切り落としてェのか手を丸めろっつってんだよ!!!…ほら似てるでしょ??!』
『くっ…はっはっは、ふ…っ、全然似てねえ…っ』
一旦包丁をまな板において膝から崩れ落ちながら大笑いしてる珍しいショートの様子にコメントの流れが一段と早くなる。え〜、ショートってこんな爆笑する人なんだ…!意外…。
『お前…絶対あとで爆豪から怒られるぞ』
『え〜?見てんのかなあ…あんま見ないって言ってたよ……ん??あれ!?!居るんだけど?!!』
そうくましろくんが言って轟くんの背中に隠れる。可愛い…全然意味ないのに…。コメントの流れを目を凝らしてよく見ると、確かにオフィシャルマークがついたダイナマがいる。
『爆豪くん、ラーメン奢るから怒らないでね……んで轟くんいつまで笑ってんの…』
『悪い、全然似てなくて面白かった』
そう言いながら危なっかしい手つきでくましろくんに怒られながらもキャベツを刻み、液と混ぜて肉を刻んで…と手際よく進んでいく。
『マヨネーズ取って〜』
『隠し味?』
『…に近いかな、ふわふわになるんだよ』
へえ、と言いながらショートは冷蔵庫をあける。ほんとだ…冷蔵庫スカスカだ…。プロテインの粉とかは見えたけどあんまり食材が入ってなさそうだ。
『またディズニー行かねえのか?ってきてるぞ。俺は行きたい』
『いやオレも行きたいよ?休みがねえ、合わないよねえ…今度なんの仮装する?』
『……ベイマックス?』
くましろくんは大のディズニー好きとして有名だ。在学中、まだSNSをやってなかったときに轟くんがあげた二人でのディズニー旅行の写真は未だにファンの間で可愛いとよく見かける。ウッディとバズの概念コーデで遊びに行ったあどけない顔の二人は確かにいつ見ても可愛い。
最初はそうでもなかったらしいけど、ディズニー作品をくましろくんに勧められるうちにだんだんショートもハマっていったとか。
『最近見たディズニーある?…か…あ!あれ見たよ…ねえ!ブルーノ怯えて暮らしてたの、呟き今も聞こえてくるの 落ちる砂のようなあの声〜ってやつ。歌良くて毎日歌ってたらノイローゼになるからやめろって怒られた』
ミラベルだ…サビの方じゃなくてそこをチョイスするんだ…!ドロレスが好きなのかな?
『俺はベイマックス見た。可愛い』
『ベイマックス欲しいよねえ』
なんって可愛い会話なんだ…!ジュー、とお好み焼きを焼く美味しそうな音が聞こえてくる。私もなんか食べようかな…。
その後もテキパキと蕎麦まで茹で上げて、ちょうど届いたデリバリーのご飯も机に並べる二人。構図はかなりモッパンらしい、ご飯のカテゴリーがぐちゃぐちゃで面白いけど。
『おおお〜!モッパンだ…よし、いただきま〜す』
『うまそ…いただきます』
なんて可愛い空間…。ショートは大好物の蕎麦から食べてしれっと半分以上を自分の方に寄せてる。
『ちょっと轟くん、蕎麦に夢中になってないでオレが作ったお好み焼きも食べてよ』
『悪い。…美味ェ』
ショート一口でっか…びっくりしたのかくましろくんも口をあんぐり開けてる。
『…もしかしてめっちゃお腹空いてた?』
『空いてた…めっちゃ』
パクパクとどんどん食べ進めるショートと焦って自分の分を確保し始めるくましろくん。
『このあとポップコーンあるのにそんな食べて平気?』
ポップコーン…?と思ってたら、このあと二人で映画を見るらしい。何見るんだろ?ディズニーかな…??
『何見るの?だって』
『怖いやつがいい、あの台湾のやつ』
『え〜〜!!!!寝れなくなるんだけど』
くましろくんは虫や暗いところなどの大半の人が怖いと感じるものはしっかりと怖いと感じるらしく、嫌そうな表情だ。
『別に怖い映画見なくても俺の布団の中入ってくるだろ』
えっ…?!今…大分すごい発言しなかった…?!!
『だって轟くん夏は冷たいし冬はあったかいんだもん』
『寝相悪くてすぐ蹴るのに入れてやってるんだぞ』
淡々と当たり前のように会話が続いてるけど、二人…一緒の布団で寝てるの…?!くましろくん寝相悪いって分かるくらいの回数を……!!?コメントはどよめきたっているが二人は気付かない。
『ん…?一緒に寝てるのかってコメント凄えぞ』
『ほんとだ……早くてほぼ読めないんだけど…』
二人が画面を覗きこんでる。イケメン二人が並んでる…眼福すぎる…!
『皆が知るとおり、くましろは甘えん坊だからな』
それは…たしかにそう。ひとりっ子というのが信じられないくらいくましろくんは弟属性だ。誰との組み合わせでも弟…人によっては妹のように可愛がられてるイメージ。
女子のプロヒとも仲良くて、特に同期のpinkyとは女子の中では一番仲がいいんじゃないかな…手を繋いで熱愛報道出たこともある。会見で「友だちと手を繋ぐことで、何か悪いことでも起こるんですか?」とマスコミを黙らせ、名シーンとして語られている。
『イレイザー、やきもち焼かないの?だと』
『やきもち……ふふ、妬いてくれますか?見てるでしょ…』
え、イレイザーいるの!??!こてん、と首を傾げてカメラに向かって尋ねるくましろくんは誰がどう見ても好きな人にしかしない表情をしていた。ラブラブじゃん…惚気を聞かせてくれて全力でありがとう…
『イレイザーのどんなとこ好きか…?え、聞いちゃう?皆寝れなくなるよ??』
『ほどほどにしろ』
『最近あざといんだよあの人、オレの予想はね…出久くん!絶対出久くんから可愛い仕草教わってると思う』
『緑谷から?』
『うん、出久くんって天然記念物じゃん』
『…知らなかった』
ツッコミ役がいないからどんどんボケまみれの話が進んでいく。デク…のことだよね、デクはたしかに普段はのほほんとほんわかしてる人だと思うけど、天然記念物なんだろうか…。私達からしたら君ら二人のほうがよっぽど天然記念物だと思うけどな…。
『それか雄英の生徒に入れ知恵されてると思う、最近ふとした仕草がほんっっっとに可愛くて心臓止まってる』
『ふとした仕草…?』
『この間さあ、リビングでうとうとしてて。こうやってガン見してたんだよ、可愛かったから。そしたらハッ!て起きたあと照れて天井見てたのめっちゃ可愛かった』
『……あれだ、くましろの場合なんでも可愛くなるからな。あんま参考にはならねえな』
わ、ショートめちゃくちゃすっぱり言い切ったな…。まあわかる、好きな人って何してても可愛く見えるもんね。ずっとニコニコしながらイレイザーのことを話すくましろくんと、そんなくましろくんを微笑ましく見守るショートの配信は2時間続いた。
(今度轟くんが操作側で怖いゲーム配信しても面白そうだね)
(俺はゲームできねえよ)
(何いってんの、ボタン何個か押すだけでしょうよ…オレは見る専!)
(やりたくないだけだろ)
(そんなことないよ!)
(俺はダンス配信が見たい、もう踊らないのか?)
(あ〜…配信かどうかはおいていても、またやりたいなあ…)