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75 守護霊
*神代くましろ
以前出会った3年生の惑蛇招汰(わだしょうた)さん。ヒーローを通して自分の個性から出現することができる妖怪に近いものたちを大使として広めたい、と話してくれた。
かなり気さくでどちらかというと轟くんに近いぽやぽやした感じの人で、お互いあんまり気を遣わない関係がとっても楽で仲良くしてもらってる。
「くましろちゃ〜ん、今日も付き合って〜?げ、相澤先生じゃん…」
「性懲りもなくお前は…」
「チッ、幻覚クソヤローとっと帰れや!!!!」
以前ゴジラのようなものを見せられた?爆豪くんは大変に嫌っているみたいで、いつも中指立てて猫みたいに威嚇してる。ゴジラサイズで大きくて踏んづけられたらしい。
幻視なので周りの建物が倒壊しても現実では何も起こってない、骨折とかしても現実はアザすらできてない割とたちの悪い個性だ。
「爆豪くんも見てみる?コマちゃんはかわいいよ!目がちょっといっぱいあるけど…」
「「怖ェよ」」
上鳴くんと瀬呂くんに突っ込まれる。確かに初見はぎょっとするけど…。とっても大人しくていい子なのにな。
「新しい個体を出してみたいんだよねえ、ハイジっとして〜」
「ちゃんと可愛くなるおまじないしてくださいね」
「なるといいな、の気持ちの反映だからそんな効果ないのよ。君の好きなけろけろけろっぴは版権的に無理」
え〜。ホームルームが終わり、もう帰る子もいる中惑蛇さんはA組に入ってくる。
あのあと、相澤さん立ち会いのもとコマちゃんの呼び出しに付き添ってくれているのでコマちゃんの敵対心のなさは相澤さんの折り紙付きでもある。
「はい、監視役も座って〜教職員会議ねえからヒマっしょ?先生の好きな猫の飴ちゃん持ってきたから」
爆豪くんの隣に椅子を用意する惑蛇さん。なぜか爆豪くんも参加することになっており、本人は大変不服そうだ。
上鳴くん、切島くん、瀬呂くん、爆豪くん、オレ、相澤さん、惑蛇さんで円になるように座る。新しい式神もときをだして個性を発動する。
「うっわ!!!何こいつ…!」
上鳴くんが上擦った声でそう言い放ったあと、ガタガタと席を立つ音が聞こえる。…聞こえるけど、見えない。なんか黒いものが顔面に張り付くように居るのはわかる。
「虫じゃね?!?」
「は!??!待って無理触覚あるぎゃああぁあ!!!!」
「うるさい、落ち着け!虫じゃねえから!!」
相澤さんにゲンコツされる。最初に虫だって騒いだのは瀬呂くんなのに…!!
ゲンコツ痛すぎて頭を擦ると、虫に見える虫もどきが顔面からずり落ちた……これは…グソクムシ的な…?
「…なんか……震えてる?」
「お前がクソでけえ声出すからだ」
「瀬呂くんが虫じゃね!?とか言うから勘違いしたんですもん、マジででかいゴキブリだったらどうしようかと…」
「ゴキブリじゃねーの?これ」
上鳴くん…触覚長い虫は皆ゴキブリ換算してそうなのでグソクムシの説明をしておく。
「海のお掃除屋さんだよ、確か。んで甲殻類のはず…」
この子は濡れてもいないし、死肉を食べる本来のような匂いも恐らくしない。海のお掃除屋といえば聞こえはいいけど、腐ったりしてるものを食べてくれるわけだから相当匂いはきついと思う。
「ハチで大騒ぎしてんのによー平気だな」
「ハチは下手したら死ぬじゃん…騒ぐよそりゃ…」
まあ虫っぽいけど、逆にここまで大きいと虫感は一周回って薄れる。柴犬くらいあるんだもの…感覚はポケモンに近い。
「グソクムシだからグクちゃんにしよう…グクちゃん、言葉わかるかな?」
震えがようやく止まったグソクムシ?に手を伸ばすと大きく震えてダンゴムシみたいに丸まってる。おお、丸まるとちょっと可愛いかも…。
「怖がりだ…」
「…なんか、くましろちゃんみたいだね」
「…えっ、どこが…?」
惑蛇さんに怖がりなところ、と即答される。
「怖がりなくせにすぐ相手を信用して腹を見せる警戒心も似てんじゃねえのか?」
「…コマちゃんのことですか?ていうか…誰も信じない!うおお!って感じより良くないですか」
「警戒心がカケラもねーのもアホだろ」
爆豪くんに言われて詰まる。
「なるほどなあ…相澤センセは何見たんだっけ?」
「普通に貞子」
「コワ…貞子……先生の怖さの現れ?」
「いい度胸だな上鳴、お前に特別課題をやろう」
ほらそういうとこ!と上鳴くんに指さされて笑う相澤さん、あまりにキュート…。貞子…って…確か井戸に落とされて殺された人の呪いの拡散の話だよね。だとしたら、執着心の強さとか…?でも執着からは最もかけ離れた人だと思うけどな…。
「なーなー、コマちゃん?がお前の人懐こさだとして、こいつが怖さの表れならさ…お前結構図太いってことだよな?!」
切島くんに言われるけどピンとこない。
「…狛犬のほうがでかいからな、シンプルに」
「じゃあ爆豪くんのゴジラってなんなの…?果てしなく大きいじゃん…」
「俺の強さに決まっとるわ」
シンプルな答え帰ってきた。でもゴジラ…最近のゴジラならそんじょそこらの武器が効かないって描写あったし、打たれ強さとかで考えると確かに納得いく…。
「怖がりな部分か……」
リズムを取って指をトントンして徐々に近づくとこっそりこっちを見てる。…確かに、こどもの頃のオレに似てるかも。人差し指と中指を足に見立てて周りを駆け回ったりしてるとグクちゃんの丸まりがなくなる。最後は触っても大丈夫なくらいになる。懐かない猫が自分だけに懐いた…みたいな気持ちになる。
*相澤消太
3年の問題児、惑蛇。幻視を見せる個性で、見せる内容は人によって異なるびっくり箱方式。幻視から生まれた個体によって受けたダメージはちゃんと痛いし、感じるのに個性を解いたら何にもなってないという活かしどころが悪ければ最悪な力になる個性だ。
本人はプロを目指すとともにその個性に大影響を与えたという妖怪の認知に務めたいらしいが、いかんせん生み出されるものの見た目と攻撃性が妖怪を軽く上回ってる。むしろ呪物では?というレベルなので、認知されて仲良くなるには程遠いと俺は忠告してるけど諦めやしない。
そんな惑蛇に転機が訪れた。それがくましろの存在だ。今までは妖怪といえばイタズラ!と思いついた惑蛇が仕掛けた個性たちはほんとに質が悪いびっくりアイテムのようなものばかりだったのに、比較的友好的な生命体が生まれている。個性を発動させる惑蛇以外の人間の気質や性格、精神状態に大きく関わるのか初対面のプールの授業のやつの見た目は最悪なエイリアンみたいだったが、友好的ではあった。
くましろの性格の一つを象徴した生き物みたいだ、と切島の言葉で思い返してみたが…確かに納得がいく。
一体目、くましろは見えない空間や何かをものすごく怖がる。何かいるんじゃないかと想像を掻き立てる場所がとんでもなく苦手だからこその得体のしれない何かが形として出てきたんだろう。
二体目、狛犬のコマちゃんと名前をつけて可愛がってる。見た目も狛犬ぽくてかなり妖怪よりのそいつの人懐っこさはくましろの性格そのもの、と言っていいだろう。目が多いのは相手をよく見る癖があるからか?
三体目、深海生物のダイオウグソクムシにそっくりなグクは人見知りだったり怖がりなくましろぽい。人懐こさが勝つので、コマより小せえのも言われりゃかなり納得できる。
恐らくだが、爆豪の言ってたゴジラっつーのはあいつの勝利への執着や自尊心、負けず嫌いなのが反映したんだと予想。
悪戯にしか使ってなかった個性がこうも……そいつの人となりの守護霊チックなものを生み出せると分かるとなかなか面白い。
もうすっかり怯えの様子がなくなったグソクムシが俺のところまでやってくる。
「なんだ?」
「ちょっと、俺以外に優しくするの禁止です」
「お前………ダイオウグソクムシに嫉妬してんのか?」
「しっかり溜めて言わないでくれますか?」
くましろがヤキモチ妬くなんてな…。意外とA組の連中にはヤキモチ妬かねえのに。自分に似てる、と言われたグクには妬くのか。
「くましろのヤキモチ、こんなふうにでてきたらどんな見た目なんだろうな?」
「ヤキモチってことはイライラしてるだろうから…ブチ切れてる猿とか?」
「それオコリザルじゃね?ポケモンに引っ張られすぎだろ」
手のひらサイズくらいの何かが出てきそうだな、とは思う。言ってやらないけど。
「ねえねえ、久しぶりに相澤センセにもやってみていい?」
「……変なの出すなよ」
「それセンセ次第なんだけどぉ〜…くましろちゃんと同じように、なるべく可愛いのっておまじないつけるねえ」
式神のようなものを額につけられ、ふさふさした何かに顔中を覆われる。
「すげーデケェ猫だ…!」
「フシャーッッッ!!!!」
「すっげえ威嚇しとんぞ」
「やんのかステップだ…!ほんとにやるんだ…!」
威嚇されてなぜか喜ぶくましろを引っかかれないように一応離す。大きい茶トラの猫だ、コマと同じくらいのサイズが出てきた。こんなにでけえ猫に埋もれたら窒息しそうだな…。
上鳴、瀬呂、切島、爆豪には毛を逆立てて威嚇しているが、くましろにはしないようで、鬱陶しそうな顔をしつつも嫌がってはいない。仕方ねえな…と言わんばかりの顔で撫でられている。
「ニャンコちゃん!」
「ンナ」
「すげ〜懐いてる!」
懐いてんのかこれは…?一方的に近寄るくましろは無視されてるようにしか見えねえが…。
「決めました、この子はショウタって名前にしましょう」
「俺と被るだろ、却下」
「じゃあザワちゃん?」
「なんで俺の名前からもじるんだ」
くましろはずっと尻尾でベシベシと顔を優しいビンタをされてる。…くましろが隣で騒ぐことに満更でもないんだな、この猫…。
切島がみたらし団子の色、と可愛いことを言っていたので満場一致でくましろはみたらしに決定した。デカイ猫は正直めちゃくちゃ嬉しいのでこいつもサンプルにしろと惑蛇を半ば脅した。
惑蛇とともに自販機に向かったくましろたちがクラスを出たあと、瀬呂が隣に座ってくる。
「……なんだ?ニヤニヤして…」
「あの猫、先生そっくりだったなあって」
「やんのかステップがか?」
「違ェわ…くましろに対する態度だろ」
「仕方ねえな〜みたいな顔して撫でられてるのめっちゃ相澤先生ぽかった!」
あぁなるほど。
「犬もそうだが……ほら、他の猫犬と仲良くできねえやつでも赤ん坊とかには手を出さねえってあるだろ。多分それ」
「え、何?つまりくましろ赤ちゃんに見えてんの?」
「すぐ泣くし当たってんじゃね?」
(みたらしちゃん飼いたいんですけど)
(ダメだ。たとえ猫でも飼わない)
(ええ〜!!!コマちゃんは?)
(騒音問題に発展するからもっとダメ)
(……)
(まだやきもち妬いてんの?…くましろ、おいで)
(コマちゃん見たときよりも嬉しそうな顔してたんで!)
(しょうがねえだろ、俺は猫派なんだよ)
(犬だって可愛いですけど)
(既に例外がいるし、んなこと知ってる)
(例外…?)
(くましろは犬の中で1番かわいい)
(待って待って、オレ犬のカテゴリにいるんですか!?)
(擬人化だと思ってる)
(正真正銘人間ですからね…?!)
守護霊とは異なる、けどその人間の性格や気質の一部が擬獣化するみたいなお話書きたくて…。
本人の好きなものも反映されるので、相澤先生は猫ちゃんです。茶トラモチーフなのは、新十傑からイメージというかそのままです。
猫ちゃんの中でも王道なので、テリトリーに厳しく迂闊に人間やらなんやら入らせませんが、元の相澤先生が気を許してる人などにはみたらしちゃんも気を許してます。
なのでA組のメンツともすぐ仲良くなれますがくましろちゃんは別格で子供のようにお世話される姿を目撃され、ゼンマイにイジられててほしい。