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65 VSネコちゃん
*武田一鉄
半月前ほどに突然僕の部屋にやってきたくましろくん。きけば異世界からやってきた、とか超能力のような力を持ってヒーローという職業に就いてると話されたときは頭が混乱したが、至極真面目に話す彼の目つきとどこか理解されなくても仕方ないと言わんばかりの諦めたような表情が忘れられない。
彼自身の個性というものを見せてもらったこともあるし、前述のこともあって彼を信用すると伝えたけど、暖簾に腕押しのような…くましろくんがこちらを信用してないような反応がずっと気になっていた。どうせ、というよりも仕方ないに近い諦め。
人との距離の詰め方が驚くほど早いし近いのに、相手から近寄ろうとすると分かりにくいが逃げている。食堂にいて一心不乱にコップを落として止めたり、水だけ動かしたりしているくましろくんに声を掛けても反応すらしない、物凄い集中力だ。肩をたたいてようやく気付いたみたいで、誰かに見られたらどうするんだと注意したら思ったよりしょげてしまった。
そこで、僕は再度君を信用しているから君もこちらを信用してほしいという気持ちを伝えてみた……んだけど。結構わかりやすいくましろくんの考えてることや、不安に思ってるであろうことを言い過ぎたのか怖がらせてしまったようでくましろくんはぼろぼろ大きな涙を流している。な、泣かせてしまった……!
「や、あの…な、泣かせるつもりも怖がらせるつもりもなくてですね…!?」
「ゔゔ……」
ど、どうしよう…慌てていると烏養くんが入って来てギョっとした様子でこちらを見ていた。
「何やってんだアンタら…」
「くましろくん……烏養くんにも話していいですか?」
もう隠しきれない気がしているので、一応尋ねるとくましろくんが頷く。ので、くましろくんは従兄弟ではないこと、異世界…というよりかは並行世界からやってきたことを告げると烏養くんは空いた口が塞がらずタバコをポロ、と落としていた。
「……マジ?」
「マジです…ぐす…」
「だとして、どうしたら先生はこいつをこんな泣かせたことに繋がるんだ?」
「泣かせるつもりはなくてですね……」
くましろくんの癖のような人との距離感の話をすると、烏養くんも心当たりがあるのか黙り込む。
「先生の言いたいことはまぁ分かる…アンタお節介だもんな、見てられなかったんだろ」
「ゔ…そう言われると…」
お節介…僕のよく言われる長所できっと短所でもあるところだ。
「ただこいつにはこいつのペースがある、アンタは1歩くましろに近寄ったつもりでもこいつにとっちゃ…なんだ、肩と肩がくっつくくらいの距離に感じたんじゃねーの?…分かんねえけどよ…お前もんなベソベソすんな、もともと距離縮めてきたのはお前だろーが」
「だって考えてること全部言ってくるから怖くて…」
「お前…まさか自分が傍から見たら日向とか影山くらい分かりやすい単細胞って気付いてねえのか?」
烏養くんの言葉はいつだってストレートだ。単細胞と言われたくましろくんはちょっとだけショックを受けてたが、彼の言いたいことは理解できるし、実際くましろくんはとても分かりやすい。
「読まれてるとかじゃなくてダダ漏れなの。……先生は脅したいんじゃなくて、もう少し……つかなんで俺が仲介役やってんだよ!!!アンタ現国の先生だろ、馬鹿にも分かるようにアンタが言えよ!!」
「すっ、すみません!!!えーと…烏養くんの言う通り怖がらせたくて話したんじゃなくて…元のところにいつ帰れるか分からない不安とかもどかしさとか…そういうのじゃなくても今日あった楽しかったこととか…話してほしいってことです!!」
「待ってください、しれっと馬鹿に同意してませんか??!」
「今引っかかるの絶対ソコじゃねえだろ!!だから馬鹿だっつってんだよ…!」
急に元気になったくましろくんと烏養くんの口喧嘩のようになってしまうので、なんとかその場を収める。
「生徒除いたらお前一番下なんだから少しは頼れっつー話だよ……つーかその…個性?っつーのなんなの?」
「うゔ…ここでもオレ弟みたいな扱いか…」
「いいじゃないですか、少しは年上に甘えないと!見てる限り甘やかすのは上手ですもんね」
くましろくんがまた水の入ったコップを手に取る。一応振り返って見て誰もいないのを確認してからコップを傾ける。…水は放物線を描いて途中でピタリと止まっている。何度見てもすごい…。
水の下に再びコップを向けて水を受け止めたりするのを烏養くんも興味津々で見ている。
「お前……もしかしてこの間の影山との速攻もこれ使ったのか?」
「え、いや…何もしてないです。物体の時間ごと停止するイメージで止めたりするので、誰がどう見ても不自然な止まり方するんですよ。…だから勘付かれたくなくて皆の前では使わないようにしてます」
「結局身体能力はバケモンなのかよ…」
「なんとなく…ですけど。オレあともう数ヶ月ここに居るような気がしてて。ここで3つめなんで、帰れるって分かってはいるんで、ホームシックとかじゃなくて…」
ぽつぽつと言葉を選んで話すくましろくんの様子を見守る。
「さっき武田さんにも言ったけど…全く同じなんですよ、流行ったものも時代の流れもほとんどの歴史も…ヒーローを除いては。そこだけがない世界だから、なんか……なんかたまにすごく嫌なんです」
「ここにいてもお前が消えることはねえし、向こうに俺らがいてもそうだろ……羽伸ばすつもりでせいぜい楽しめよ」
「…ヘヘ、優しい」
「どおりで自分の事全く見せねえやつだと思ったよ…」
烏養くんが抱いていた違和感のようなものがようやく理解して満足したのか、お茶飲んだら寝るとお湯を沸かしてくれるので僕らも飲もうか、と湯飲みを用意する。
*神代くましろ
「……」
ぱち、と自然に目が覚める。目覚ましかけた時間より5分前。起きるか〜…。今日はちゃんと自分の布団で寝てる。烏養さんにもオレの事情を話して、少し夜ふかししたからちょっと寝不足で眠い。
ストレッチをして準備をすすめる。朝ご飯食べたら市民会館みたいな会場に移動して音駒ってとこと練習試合。顔洗って化粧水叩き込んで…。
「あれ、くましろさん!おはざーっす!」
日向くんだ…元気だな。
「おはよ…ふぁ」
「今日は早いんスね!」
うう…グサグサ刺さる。早起きくらいできますとも!日向くんに尋ねてみる。
「日向くん、今日は緊張してない?」
「ゔっ…ちょっとしてますけど、楽しみです!」
おお、緊張を楽しめるようになるとは…!すごいなァ。
下に降りて元気よくご飯を食べる皆とは打って変わってもそもそご飯を食べる。確か今日で合宿最終日のはず。色々片付けとかは帰ってきたらやるみたい。
「……武田さん、これ食べて…いらない」
「おや、ピーマン嫌いなんですか?」
「肉詰め以外でのピーマン嫌い…烏養さんもこれあげる」
「ふざけんな何歳だテメェ!」
ひょいひょいと嫌いな野菜を避けていくと、めちゃくちゃ怒号が飛んでくる。
「25歳」
「好き嫌いすんな肉ばっか食いやがって!!!」
もそもそとお米を口に運ぶ。あ、味噌汁美味しい…。朝はどうしても体全体が起きてないから食欲がない。
荷物が多いのもあり車で移動。市民館に着いて準備してると、見覚えのある赤いジャージ。
「あ!孤爪くんじゃん…おはよお」
「わっ、くましろさん…眠そうだね」
「すんごい眠い」
わかる、と返ってくるので孤爪くんの頭を撫でてると、先日見かけたクロ…と呼ばれてた大きい子がやってくる。
「烏野のマネージャー?今日はどーぞよろしく」
わ、めっちゃニコニコしてる。
「ううん、違うよ。正確に言うとオレ部外者」
「「……は?」」
わ、ハモった。左右からちゃんとしたは?って声が聞こえてつい笑う。
「あのメガネの人が顧問。隣のジャージのオールバックの人がコーチ。オレは二人の手伝い係。マネージャーはあのマイナスイオンを発してる子」
「マイナスイオン…?くましろさん、外部コーチとかじゃないの…?」
「え、つーかアンタ何歳なの?コワ…」
怖がられちゃった…詳しい自己紹介をしようとしたら整列の声が掛かるのでまたね、とだけ言っておく。
「すごい、田中くんと西谷くんに似てる子がいる」
双子みたいですね、と武田さんに言うと確かに…と言われた。なんか雰囲気がそれぞれ似てる子がいる。
猫又監督、というすごいご利益ありそうな名前の監督は烏野が強豪だった頃の因縁がある時からの監督なんだそう。こっちの繋心さんのおじいちゃんとライバル。で、コーチを務めてるのが繋心さんの同級生でライバル同士。ライバルっていう縁で結ばれた高校なんだな…面白い。学校名も猫と烏でライバルだ。
「そこの子は?」
「僕の従兄弟で、今日はお手伝いしにきてもらいました」
「神代くましろです、よろしくお願いします」
頭を下げて戻すと猫又監督と目が合う。
「マネージャーみたいなもんか、繋心…そいつちょっと貸してくれや」
「?」
「こっちにはマネージャーいねえんでな…代わりにスコアとか書いてくれると助かるんだが」
いいか?と確認される。ルールとか完璧じゃないけどそれでもいいなら、と了承する。
「…というわけでくましろは向こうな…影山、ンな睨むな。人手不足なんだから仕方ねえだろ」
「影山くん、可愛い顔が台無しになるからもっと朗らかに!」
「可愛くないッス」
可愛いんだって…。一旦烏野にまたね、と別れを告げて音駒チームに入れてもらう。
一年生の普段マネージャー業を兼業してる犬岡くんと芝山くんにサポートしてもらいながら仕事を教えてもらう。ドリンクは基本この二人がささっと作りに行ってくれるらしいのでタオルの受け渡しとかスコアの写しがメインか…。
「今日代理でマネとして入ってくれる神代さんだ、挨拶!」
「「「ざっす!!!」」」
「吹き飛ぶかと思った…神代くましろです、お世話になります」
「マジで生徒じゃねえんだ…」
クロ、こと黒尾くんがそう呟いたのが聞こえた。音駒か…どんなプレーをするところなんだろう。
試合が終わり、チームが集まってくる。結果は音駒の勝ちだ。最初は日向くんと影山くんの速攻に気圧されていたこの子達の順応性の高さと言ったら…。孤爪くんの繰り返すうちに慣れていく、と発言したのが現実となった。
猫又監督、直井コーチの講評が終わると同時に猫又監督とまた目が合う。
「神代…と言ったか、見ててどうだった?」
皆の顔がこちらへ向く。…未経験って始まる前に言ったよね…?
「いやぁ、試合を見る様がまるで研磨みたいでな…ちょっと感想が気になると思ってよ」
今度は孤爪くんと目が合う。
「感想…ですか…。ん〜オレは…烏野のヒナたちに頑張って欲しいんで、皆の癖とかなんかないかな〜って見てたんですね。攻撃特化の今の烏野と、正反対に近い繫いで守って決め時まで見極める音駒…。穴がないなって思えたけどいくつか見えたので、皆ちゃんと人間なんだなって感じました………待って顔コワ」
「教えてもらいたいなァ、その穴」
ダメダメ、企業秘密だから。
(ほんとだな)
(…?)
(監督の言うとおり、俺らを見てるときの顔研磨そっくり)
(夜久さんまで言うの…?)
(あの人なんなんだろうな、未経験って言う割にあの謎のオーラ…)
(はいはい、呑まれないでやることやる!)
(一発そこ叩かれたらオシマイってやり方じゃねえしな)