MHA
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
64 心の開示
*菅原孝支
モゾモゾと右横から誰かに抱きつかれる感覚で起きる。誰だ…?寝ぼけて布団入ってきたか…?眠い頭を起こして布団をめくると、まさかの人物過ぎて目が冴えてくる。
「くましろさん…?」
「……ん…」
辛うじて返事をしてはいるけどもう9割寝てるんだろうな…。俺を抱き枕のようにしてグリグリとおでこを押し付けられる…ちょっとくすぐったい。
「くましろさん、布団間違えてませんか?」
「…ぇ…?」
軽く肩を揺するけどこれはダメそうだな…このままにしておくか。くましろさんは寒がりみたいで靴下はいてるしモコモコのパジャマ着てるのちょっと可愛い。
つーか…虫が出て大騒ぎしたときにちらっと見えたお腹とか背中の傷が気になりすぎて…大地には絶対聞かない方がいいって言われたけど、くましろさんはヤクザとかじゃない気がするから(何より武田先生の従兄弟なら尚更…)聞いてみたい気持ちが強い。
何したらそんな傷がつくんだろうって思う。いくら警察でもあんな…なんなら刀とかで斬られた?みたいな傷痕はつかないと思うんだよなぁ〜…。
てか…めっっちゃいい匂いする…。すんすんと頭を嗅ぐと、めちゃくちゃフローラルな感じのシャンプーの匂いがする。……やば、変態っぽかったかな!??!
「…さむ…ぃ…」
さらに擦り寄ってくるくましろさん。烏野でめちゃくちゃ噂になってるのは知らないんだろうなぁ…。坂ノ下商店に見たことないくらいのハンサムな美人がいる!と学校中の話題だ。
実際、アルバイト初日に誰かがTwitterで書いたから大量に押し寄せて在庫がすっからかんになった…と言ってた。今は押し寄せすぎて逆に迷惑になるから、と学校側から注意喚起が出される異例の事態になってる。バレー部のマネに近いから、俺もクラスの女子にめちゃくちゃ質問攻めにあった。
くましろさんの体温が高くて俺も眠くなってくる。起きたら大地とかに揶揄われるんだろうな…あ〜やだ。
「スガ…スガ!」
ゆさゆさと起こされる。目を開けるとまだくましろさんは俺に抱きついて寝てる…のを皆が覗きこんでる状況だった。
「…そろそろ朝練準備始めるぞ…さて…くましろさんも起こすか…」
「あ〜ごめん…起きる…くましろさ〜ん、朝ですよ…」
ぐぐぐ、と伸びてくましろさんの背中を叩く。
「…やだねむぃ…」
苦しい…
「くましろさ〜ん、朝練始まりますよ…」
そう言うと目を閉じたままムクリと急に起き上がるくましろさんに俺らが1番びっくりする。コマンド打たれて起動したロボットみたいだったから。
「あされん……」
「頭だけ起きてないですね」
月島が起き上がったくましろさんの向かいにしゃがんで顔を覗き込む。
「……んえ……あれ…?」
「あ、起きた。…朝練始まりますよ〜」
「……やばい、オレ部屋間違えてた…?誰の布団はぎ取った…?」
「菅原さんです、布団は剥ぎ取ってなかったですケド」
「あ〜…ごめんね…寝づらかったでしょ…」
寝起きでまだフラフラしてるくましろさんに頭を撫で回されるので平気ですよと答えておく。くましろさん、すごい寝癖ついてる…。
*神代くましろ
顔を洗って化粧水やらを叩き込む。頭も少し濡らして櫛を通して寝癖を直す。やたらあったかかったと思ったら菅原くんの布団にお邪魔してしまったらしい。トイレいって、帰りに寝惚けて部屋どっちか分からなくなったのはなんとなく覚えてるけど…。
「ごめんね…マジで…」
「いいです、寝てるくましろさん可愛かったし?」
完全に揶揄われてる…やめてよ〜とおでこを押して烏養さんに連れられて皆と走り込み。烏養さんはチャリ。
「すごい、明日のジョーみたい!」
「随分懐かしいの出したな…だぁ〜!日向!道逸れてんぞ!聞いちゃいねえ…」
「オレ回収してきま〜す」
早さを上げて日向くんを追う。なんかめちゃくちゃ叫んでてオレの声が全然届いてない。ピタ!と止まったタイミングで日向くんに声を掛ける。
「日向くん…やっと雄叫び終わった…?」
だいぶ道逸れたな…。ここどこだろう…。
「あ、くましろさん!…ここどこですか?」
「わかんない…日向くんがオレのこと無視してずっと走るから!」
「わ、す、すみませんしたァ!!!」
すごい勢いで頭を下げる日向くんの頬をつまみ、帰るぞ!と意気込む。逸れたらやだし、そしたらもう探せる気がしないので手を繋ぐ。
うーん、全然人がいない…これは困ったぞ…。そう思ってキョロキョロしてると日向くんが手をクイクイ引っ張ってくる。
「ね、くましろさん…あそこ誰かいます」
ほんとだ。真っ赤なジャージだ。学校指定のジャージってなんで原色多いんだろうね…?俺が今まで見たことあるやつはメロンパンみたいな黄緑(蛍光マーカーみたいな色)とか、真っ赤!真っ青!真緑!…みたいな原色が多い。烏野も黒色だしね…。まあ黒は使いやすいからいいけど。
「ねえ、君ここらへんの高校の子?」
なるべく驚かさないように、座ってスマホを触ってる子の隣にしゃがみこんだんだけどめちゃくちゃ驚いてる。失敗した…。驚かせてごめんね、と謝っておく。
「違う…県外から来たから」
そうなのか。孤爪研磨くんというこの子も迷子らしい。迷子三人が集まってしまった。同じバレー部ということで日向くんが子犬のように絡んでいる。孤爪くんのポジションはセッターだから違うし、何よりこの温度差…。バレーが楽しくて仕方ない!の日向くんと、友達に誘われたからバレーをなんとなくやってる孤爪くん。
二人の会話を聞きながら、孤爪くんの背中に寄りかかる。
「…なに…?」
「ちょっと疲れた…なんのゲームやってるの?」
「…別に…ただの暇つぶし。もうすぐクリアするし…」
ゲームか…。
「孤爪くん、ゲーム好きならアレ知らない?moonっていうプレステ初代のやつ」
「知ってる。プレミアついてるやつでしょ?」
「え!?moon知ってるの?!やったことある??」
「急に声デカ…ないよ、高くて買えないから」
え〜貸すのに…!
「そうなんだ…」
「でもプレイ動画見たことはあるよ」
そうなんだ。日向くんがmoon?と聞いてくるので、昔の超いいゲームだよと返す。ゲームやらなそうなのに…と二人に言われるので、まあゲーム漬けってわけじゃないからノーマルだと思うけど、ゲーム好きだよと返す。
「フィクションって分かってるから、ちょっと重くて悲しい話が好き…孤爪くんポケモンは?今度バトルしようよ」
「別にいいけど…あ、負けた」
日向くんと挟むようにして孤爪くんのスマホを覗いてると後ろから声が掛かる。
「研磨!……何してんのアナタ」
「あ、クロ…じゃあまたね、翔陽…くましろさん」
おお、さすがバレー部あの子もデカイなあ。威圧感がすごい。
「もう迷子になっちゃだめだよ、孤爪くん」
肩をポンポンして送り出す。またね〜と手を振り、見えなくなったころ日向くんが呟く。
「なんでまたね、なんだろ?」
「また日向くんに会いたいからじゃない?」
「〜っ!!」
おお、めちゃくちゃ嬉しそう。また会いたい人にはバイバイじゃなくてまたね〜って言っちゃわない?って言うと確かに…って納得してもらえた。そうこうしてオレらはどう帰ろうか…って歩きだしてたら菅原くんが迎えに来てくれたし怒られた。
日中も練習、自主練を挟みつつとにかく練習。一年生が主力に混じるチームだからレシーブ…ボールを受けて上げる力がとにかく足りない!とめちゃくちゃ鬼のようなレシーブ練習をこなす皆は流石だと思う。
「…日向くん、その手の角度でうまくいかないなら…もう少しこうしてみたらうまくいくんじゃない?型だと思ってやってごらん」
疲れもあるし、毎回ボールの軌道は違う。同じようにボールを受け止められたら上がる…んだろうけど、日向くんにはそれが難しい。なら、空手とかの型のようにこの角度ならうまく上がる角度を見つけて、そこに持っていく方法を確立したほうが日向くんには向いてると思う…と予測して声を掛ける。明らかに成功率が上がったので、正解だったようだ。
「ほんとに未経験者かよお前…とんでもねーな」
烏養さんにはバケモンって言われた。流石に試合に混じって動けるほどではないのにな…。多分他の人にぶつかってめちゃくちゃ迷惑かけて終わりそうな気がする。
夜ご飯は今日は豚肉の生姜焼き。ウインナーみたいに並べてこんなに大量の生姜焼きを焼いたの初めてだ。面白い光景…。
今日もご飯の争奪戦のようにしてモリモリ食べてる一年生の影山くん、日向くん、2年生の田中くんと西谷くんに詰まらせないでねと声を掛ける。
武田さんと烏養さん、清水さんの分もごはんをよそって食べる。…うん、美味しくできたな。
「自動でお肉が油に漬かってくれたらな…唐揚げとか食べたい…」
「また唐揚げか?この間しこたま油淋鶏食ってただろ」
油淋鶏は油淋鶏、唐揚げは唐揚げなんです。と返すと一緒だろ…と返ってきた。全然違うよ…!
ご飯を食べて、お風呂に入る。布団を敷いて目を閉じるけどなかなか寝付けない。すこし散歩しようかな…。階段を降りると烏養さんがコーヒー飲んでた。
「夜ふかしか?」
「烏養さんもでしょ…」
隣に座る。
烏養さんはスターティングメンバーとしてセッターに影山くんを起用するか、菅原くんを起用するかで悩んでいるらしい。
影山くんは技術がある。それはオレでも分かる。ただ一年生で、実力があるがゆえにすこし…自分勝手なプレーをしてしまう癖があるみたいで入学して間もないのもあってプレーヤーたちとの信頼関係は構築中。そういうときに光るのが周りをよく見て合わせることが出来る菅原くんだと言う。
元々OBである烏養さんは3年生なのに試合に出れない辛さがよく分かる分、どうしたらいいのか分からないようだった。
「ん〜………影山くんじゃないですか?じゃあ」
「…考えを聞かせてくれ」
「バレーを経験していて、強豪時代いた貴方は目が肥えてる。青葉城西での練習試合でも向こうの選手の分析の早さから、選手の特徴や得手不得手をよく理解してる。
そんな貴方が技術力があると判断したなら、影山くんを起用すべきでは?だって、一回でも多く勝てるなら菅原くんが光る場面の確率も上がるってことですよね」
「…!」
「オレが接した上で抱いた印象と……自分の学生時代を鑑みての判断ですが。
自分より強いの見て悔しくないわけないですよね。しかも相手もストイックだと自分がどんどん小さく見えるし…でも菅原くんも影山くんも、意図を説明してあげれば腐らず諦めないで努力できる子だと思いますよ。」
「何でもできそうに見えるお前より優れたやついんのか…?」
そこが引っかかったんだ。つられて笑う。
「いますよそりゃ…悔し泣きして鍛えたりして勝ったり負けたりですもん。ふふ、子供をナメちゃだめですよ」
外散歩してこようかな〜と呟くとだめに決まってんだろと頬を抓られた、痛い。
「なんか寝付けなくて…とりあえず食堂で水飲んで寝ますね」
もう少し悩む、と続けた烏養さんに挨拶して食堂へ向かう。暗くて怖いから電気つけて冷蔵庫から水を出す。誰もいないのを確認してコップを落として止める。水だけ止めてコップをキャッチしたり、重力止めて浮かせたりして個性がちゃんと使えるか確認。集中して精度上げてれば眠くなるかな…。
「…こら、くましろくん。」
「っうわ!?!」
びっくりしすぎて椅子から立ち上がる。振り返るとニコニコしてるけどちょっと…怒ってる?武田さん。
「僕が何回か呼び掛けても気付いてなかったですよ、誰かに見られたらどうするつもりだったんですか?」
「す、すみません…」
「…寝付けないんですか?」
「え、あ…はい…」
目がマジで怖かった…武田さん、仏のように心が広くて優しいけど実は逆らっちゃいけない人だ…。
「……君は人に頼らないですよね、少しは本音を言ってくれてもいいんですよ?」
「…気持ちはありがたいですけ、ど……」
「言ったところで変わらない、とか?」
う、バレてる…。見透かされてるみたいでちょっと怖くなる。
「たしか…行き先ごとに滞在日数があって、それを超えないと帰れないんでしたよね。君が経験してきたことだから、君の言うとおり言ったところで変わらないんでしょう…でも、気持ちを伝え合うというのは動物の大事なコミュニケーションですよね。僕は君の気持ちが知りたいです」
「……う、……ヒーローが…いないのって…なんか違和感がすごくて…」
「うん」
「オレの人生には、ヒーローの存在が大きく関わってるから…オレも…母さんも、結婚相手もヒーローだから…それがまるごとないのに、他が全く同じのここにいると……なんか…自分の存在価値がなくなるみたいで…」
(…ゔぅ……泣きたくないのに…)
(ふふ、いつもそうやって我慢してるんですか?それじゃあ溢れて当然ですよ…たまにはガス抜きしてあげないと)
(ガス抜き…?)
(えぇ…信頼の置ける人に自分の気持ちを伝えるんです。自分の心を開示するというのは怖いですよね、開示したあとの相手の反応はその時になるまで分かりませんから)
(でもその怖さを飛び越えて開示してくれたら、開示された側も気持ちを伝えやすくなります。お互いがお互いのことを信じやすくなるし、お互い少し楽になる)
(君は…人との距離を自分から詰めるのに相手に一歩近寄られると突然に感じて、混乱するんですね。元のところでは君の好きなように近寄れているか、相手が近寄ることを許可されてるのかな?)
(……や、だ武田さんこわい…)
(え?!な、なんでですか…!?)