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63 合宿
*神代くましろ
早朝から起きてて眠い…。体力は落としたくなくて、走り込みはしてるけど実践練習できないのはキツい。ボクシング教室とかあれば行きたいけど…お金かかるしなあ。
なんとなく、まだまだ帰れない気はしている。勘だけど…数ヶ月単位の滞在のような気がする。バレー部はオレの知らない間に、2人見たことない子が増えていた。2年生の西谷くんと3年生の東峰くん。
「やっぱ…アレだね、バレー部とかバスケ部って大きい子多いね…!威圧感が凄いや」
「くましろさんはバレーやらないんですか?」
「体育の授業でやったことあるくらいだな…でもオレすごい運動音痴なんだよね…」
練習終わったあとの自主練前の休憩タイム。弟のように懐いてくれてる日向くんと影山くんに誘われる。
「モノマネは得意だから…あ、日向くん。打つ前の足ってダダダ?ダダダッドン?」
「ダダダッドンが近いです!」
ストレッチをよ〜くして…烏養さんも興味あるのか怪我すんなよとだけ言われた。
「日向くんのと同じやつやってみよーかな…速攻だっけ」
「え、アレやってみよーかな…で出来るんスか!?」
田中くんにネットの向こう側から言われるので、ともかくマネはしてみるよと返す。
「じゃあ上げます…」
実戦じゃないからいつもの日向くんのようにコートの左端から右端へ、みたいな移動コストがないし精度は落ちるだろうけど…。
対角線上に走って行って、打つ前のステップを意識最後でジャンプ…!お、目の前にボールある!
「ぅおっ??!」
高く飛びすぎたのか手のひらじゃなくて手首あたりにボールが当たってスピードも威力もないスパイクになった。そんで着地もうまく行かなくてなんか足がしび〜〜てなった。高いところから落ちたらなるアレ…久々だな…。
「なんで出来んだよ…」
烏養さんのそんなつぶやきが聞こえた。
「出来てなくなかったですか?手首に当たったし…着地シビ〜ってなったし…」
「…加減しました?」
「どこを?」
「飛ぶ高さです」
影山くんに聞かれ、うーんと答える。
「ステップのことだけ意識してたから…飛ぶ高さだけ考えたらもっと飛ぶかも?」
「すげ〜!どうやったらあんな高く飛べるんですか!!?」
「ボケ日向今俺が質問してんだ!!!」
どうどう、喧嘩しないの。
「しかも片足で飛んでましたよね」
月島くん、よく見てるねぇ。
「日向くんのいつもの速攻と、スラムダンクイメージしたんだ」
「「それ、バスケじゃないですか?」」
「分かってるよ、流石にスラムダンクがバスケの漫画だってことは…!!!高く飛ぶじゃんあれも…!!」
影山くんと日向くんに至極心配そうな顔で言われたので訂正だけしておく。バスケとバレーの区別くらいつくからね!?なんならルールも最近ちょっとずつ覚えてきたし…!!
「運動音痴とか嘘じゃ…?」
山口くんにしれっと言われたので、嘘じゃないよ。泳げないもんと返す。泳ぐのだけはどれだけ練習してもダメだった。自分一人なら消太さんに「犬かきのぐちゃぐちゃ」と称された泳ぎ方でなんとかなるにしても、救助の場面になったらマジで役立たずになる可能性のほうが高い。そのくらいひどい。
「それ、運動音痴っていうかカナヅチですよね」
「……え、運動センスがないから泳げないんじゃなくて…?」
「じゃあ他の球技もダメなんですか?球技に限らず体力テストとか」
「体力テストは頑張って上位維持してたけど……あ、卓球できない!距離感わからなくてラケットに当たらない」
「…微妙…」
微妙か…また眉間のシワがすごい月島くんのシワを伸ばしておく。そうやって雑談かましてると武田さんがすごい勢いでドアを開けてGW合宿に練習試合決まったよ!とテンション高めでやってきた。
昔…強豪と言われていたときに因縁の相手校が東京にいるらしく、その音駒高校との練習試合だそう。皆ワクワクしてる様子を見て、A組の日常を思い出す。
「あと商店のことだが…GWは休みだ。畑の収穫と近所の人の定期の買い物だけに対応する予定」
「はーい。じゃいつもの時間に畑ですね」
「くましろくん、君さえ良ければ合宿中もこっちに来てもらえないかな?」
「いいですよ!メチャウマなご飯作ります」
武田さんのお誘いに二つ返事で了承する。
「くましろさん料理できるんですか?」
菅原くんだ…よしよしと撫でる。菅原くん、尾白くんを思い出すんだよなあ。
「こっち来るまでは旦那に毎日ご飯作ってたからね」
「いいなあ〜ラブラブ」
茶化さないの!と返して、菅原くんの好きなもの作ろうか?と尋ねると渋い顔をしている。
「そ、それはちょっと…控えてほしいです…」
東峰くんが申し訳なさそうに申告してくる。どうしたんだろう、そんなに眉尻下げて…めちゃくちゃしょげた顔をしてる。
「え、なんで?」
「スガの好物、激辛の麻婆豆腐なんですよ」
えぇ!??!爆豪くんと好みが同じ…?!まさかすぎる、こんな尾白くんみたいなほわほわなのに…?!?
「こんな…シマエナガみたいな菅原くんが??」
「シマエナガ…?」
好きな食べもの教えてくれた澤村くんはシマエナガ知らないか…首傾げてた。
「え〜?俺あそこまで可愛くはないべ〜!」
多少の可愛さの自覚はあるのか…やはり尾白くんタイプだ…。
「激辛がつくと難しいねえ…」
合宿かぁ…。朝から晩まで個性無限に使う訓練したことを思い出す。一応毎日こっそり武田さんの見えないところで個性が使えるか、確認はしてる。集中力を上げるために瞑想も始めた。体術や手合わせがない分、質を上げるしかないかな〜って思って。
GWはすぐやってきた。日給でもらえるお金を全然受け取ってくれない武田さんに頭を下げてスキンケア用品を買いにいった。元々使ってたものがこちらでも売られていて、大変に安心した。
色々泊まり込むし肌に合う元々使ってたシャンプーとかを買い直して合宿所へ。彼らが練習中の間はひたすらご飯作りだ。夜ご飯の調達から調理開始、1日目は王道のカレー。ランチクックになった気持ちでひたすら具材を刻んで煮込んでいく。
「終わったあぁぁ…」
飲み物も冷蔵庫に用意してあるし…と机に突っ伏す。教朝早かったから眠いな…。
「慣れないから疲れたでしょう?」
「寮母さんってこんな気持ちかな〜って料理してました。…めちゃくちゃ眠いです」
「少し寝ていいですよ」
*影山飛雄
な、なんで食堂の真ん中で寝てるんだこの人…。
武田先生の従兄弟さん…のくましろさん。エプロンつけたまま腕を枕にして寝てる。寒いのか鳥肌立ってるのでバレー部ジャージの上着を肩にかけておく。寝てると余計に女子みたいだ。及川さんも女子に中学の頃からキャーキャー言われてたけど、及川さんがイケメンだとしたらこの人は…清水先輩みたいな美人…なんだと思う。
坂ノ下商店でバイトしてるっつってたけど…。最近は早朝に烏養さんと一緒に畑の収穫がどーたらっつってたな…。
日向より先に合宿所に来たので、いま俺以外誰も居ない。
「う……あれ…?」
「おはようございます、くましろさん」
「んん…?」
パッ、と起き上がったと思ったくましろさんの目はほとんど空いてない。撫でられたかと思うと俺の肩におでこを置いて寝始めた。なんて器用な寝方なんだ…。
「ちょ、くましろさん…落ちますよ?」
「ん〜…じゃあぎゅってしてて…」
「ぐえっ!!!」
どこからそんな力出てくるんだってくらい強い力で抱きしめられる。この人…月島くらい細いのにどこからパワー出てくるんだ…???
この間の日向の真似をして速攻スパイク決めたときもとんでもないジャンプ力だった…ちゃんとフルスイングの手のひらにボールが当たれば、東峰さんくらいのパワーだったんじゃないか…?同級生で、バレーやってたら良かったのに。
「影山ァ〜何して…いやほんとに何してんの?」
「日向、剥がすの手伝え。布団運ぶぞ」
「え゛っ、くましろさんそれで寝てんの!??」
結局起きなくて、バレー部の面々に見られて続々と揶揄われた。くましろさんが起きたのは武田先生がカレーを準備し始めてからだった。
「ごめんね影山くん…いい匂いしたから枕にしちゃって……大盛りにしてあげるから許して?」
「ゥス…」
撫でられまくって髪の毛がぐしゃぐしゃだ。いっぱい食え!とよそってもらったカレーはめちゃくちゃ美味かった。
「くましろさん、おかわりください」
「俺も俺も!!!」
突っ込んでくる日向と押し合いながらくましろさんと武田先生の前へ並ぶ。
「はいはい順番〜影山くんは?どのくらいご飯よそう?」
「さっきのと同じくらいで」
「2杯目も大盛り??凄いな…」
はいよ、と渡されたご飯を受け取る。よく食べるねえとまた頭を撫でられる。
「くましろさんたちは食べないんですか?」
「今から食べようかって話してたとこだよ」
そう言って俺らのテーブルの方に来てくれたけど、席が遠い。いろんな質問攻めに合うくましろさんを遠くから見る。
「警察官!?マジで??」
「ちょっと〜、税理士とかよりは想像つくでしょ〜」
くましろさん、警察官なのか…。ならあの身のこなしの軽さは分かる……ような…?警察官の中でもなかなか居ねぇか。
ぼーっと聞きながら食べてたせいで口に入れすぎたご飯が喉に詰まる。やべ、水ねえ…。かといって日向のコップの水は飲みたくねえ…!!
「はい影山くん、君少しゆっくり食べなね…ハムスターみたいだよ」
くましろさんに左手を捕まれ水の入ったコップを渡される。
「…っ、アザス…!」
「ここの二人は早食いアンド大食いのユーチューバーでも目指してるの?」
「「違います!!!」」
日向とカブると面白そうに笑うくましろさんに二人で頭を撫でられる。
「清水さんとオレと…料理に慣れてない武田さんが頑張って作ったんだから…もっと味わって食べてほしいな?」
「「ハイッス!!!!」」
「味わってね??!」
顔をのぞき込まれたとき少しドキ、としたのは気のせいだと思いたい。
*神代くましろ
清水さんは合宿所から家まで近いのと、男子バレー部との合宿なこともあってお家に帰る組。
「え?結構暗いよ…?送っていこうか?!分かんないけどイノシシとか出ない?」
「イノシシはこのへんは出ません」
そうなんだ…清水さん、口数は少ないけどちゃんと聞いたこととかに答えてくれるから優しいなあと思う。
「じゃあクマ…?」
「クマもいませんよ…心配症ですね」
「だって暗いじゃん…近くに山もあるしさ」
武田さんが送っていくことに。そうか、烏野高校教諭って名前がついてる人が送ったほうが親御さんも安心だよな…と思って二人を見送る。先にお風呂入っててねって言われるので、バレー部皆入った頃かな?と思って入る。
シャンプーしてトリートメントして…顔洗って体洗ってたとき。鏡に蠢く何かを発見。
「う、わ、うわぁああっ!??!キモいキモい無理ぎゃあああぁぁあっ!??!」
ゲジゲジ2匹もいる。転ばないように、かつ最速で風呂場を出て脱衣所まで出るをタオル体に巻いてどうしよう…と考えてると足のすぐ横にナメクジがいるのに気づいてしまった。
「ぎゃあああぁぁあ゛あ゛っっ??!!?」
脱衣所から出ようと後ろを振り返るとオレの様子見に来たバレー部たちとぶつかる。
「くましろさん、どうしました?!」
「すげえ悲鳴…!!幽霊出た??!」
「え!?幽霊まで出るの???!マジで無理なんだけど…!??!」
目の前にいた菅原くんの背中に隠れる。
「落ち着いて!!!はい…静かに!どうしたんですか、くましろさん」
澤村くんの号令で一気に静かになったバレー部の統率力たるや…
「そこにナメクジいて中にゲジゲジいた…2匹も…、2匹も!!!」
「すごい強調してくる…虫だめなんですか?」
菅原くんが手を握ってくれるので握り返す。
「無理。おばけも無理。だからもう上がる」
「いや背中泡だらけっスよ!??!」
田中くんに突っ込まれるので水道で泡流すと言ったら澤村くんにダメに決まってるでしょ!!てめちゃくちゃ怒られた。
「鬼!悪魔〜!!!」
「なんとでも言ってください…見ましたけどもう居ませんよ、さっきいたやつは流したんで」
「サタン!!澤村くんが死んだときに閻魔大王にこのこと言いつけてやるからな!!!」
「どんだけ根に持つんですか…」
「まって、背中流したら終わるから皆いて!お願い!ふとした時の虫が無理なの!」
即行でシャワー浴びて熱いお湯をかぶって冷えないようにしてタオルで体を拭く。もう背中やお腹の傷はさっき見られてるだろうから気にせずぱぱぱっと服を着て完了!
「よし…3年生たちありがとう〜!これで寝れる!」
(まさかそのまま寝るつもりじゃ…??)
(ううん、このまま寝たら乾燥して肌裂けてやばいことになるから、化粧水とかを塗る)
(化粧水…)
(オレ、学生の頃からダメだったんだよね〜。乾燥して粉吹いちゃったりして…あと髪の毛乾かして寝る!)
(俺らとの季節感全然違いますね)
(東峰くんも暑がりなの?寒がりかと思ってた〜)
(寒いなら俺のジャージとか貸しますよ)
(なんてイイコなんだ、菅原くんは…!明日麻婆豆腐にしちゃおうかな〜)
(勘弁してくださいそれは…!)
(明日以降俺らを使い物にさせなくする気ですか?)
(菅原くん、君どんな辛いのこの二人に食べさせたの?もうトラウマになっちゃってるじゃん)