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61 片田舎の僻地で
*神代くましろ
授業中の学校をこっそり武田さんと抜け出し、朝は締まってた坂ノ下商店へ。異世界から来たっていう事情は伏せて、武田さんとだけの秘密にする約束。
「……あ、の。ちょっと待って」
ずんずん歩く武田さんの手を掴む。
「どうしました?」
「いや、あの……う〜ん…信じてくれてるの、すごく嬉しいです。有り難いんですけど…、その…小さくない秘密だと思うんで…武田さん一人に抱えさせちゃって申し訳ないなって…謝ったって変わらないんでアレですけど」
「なぁんだ、そんなこと気にしてたの?…優しいんですね、君は。大丈夫ですよ、だって別にバレたところで捕まるわけじゃありませんし!変な人なのかな?って思われておしまいですよ」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。器が大きいなあ、武田さん。消太さんのことを思い出す。先生ってどうしてこうも優しい大きい人が多いんだろうな…。
「さ、着きました。烏養くん…居ますか?」
ガラガラ、と戸を開けて声をかける武田さんに対して中から返事が聞こえる。すごい、子供の頃近くにあった駄菓子屋さんみたいだ…!あ、駄菓子もおいてある…!まさか売る側に回るとなあ…ちょっと感激。職業体験の気持ち。いつかは農家もやってみたいんだよね、虫苦手だけど…。
「お……?お前か?武田センセの従兄弟っつーの。なんつーか……全然似てねえな!」
おお…!本物のヤンキーだ…!
ジャージにスウェット、サンダルのラフな格好できた金髪のお兄さん。烏養繋心さん、と言うらしい。歳はなんとひとつ上。お互いに驚いた。
「そのナリで歳いっこしか変わんねえのか…?マジかよ…まあ店番はありがてえけど…ちょいと先生、希望とはいえタダ働きっつーのは……」
「お手伝い程度しかできないんで…」
「いや、労働が生じたら賃金を支払うのが義務だろうが…つーわけでアルバイトっつう形で雇うからな。口座とかのアレは面倒だから手渡しでいいか?」
「あ、えと…」
「すみません、無理を言ってしまって…。」
武田さんがそう頭を下げると今に始まったことじゃねえだろ、と返されてた。とりあえず日給制にしてもらって、頂いた賃金は武田さんのご飯代や電気代に当ててもらうことにした。
「じゃあ僕は戻ります。何かあれば職員室まで来てください、電話でもいいし…。頑張って!」
エールをもらって武田さんを見送り、業務を教えてもらう。思い返すと、アルバイトとかしたことない。できるかどうかガッチガチに緊張したけどお客さんは近所の人たちしか来ないから平気だと言われた。
文字も同じ、同じような漫画雑誌もある…。ケータイはスマホだし、テレビのチャンネルも同じだ。本当にヒーローが居ないことだけが差の世界なんだな…。
すっごい気になってしまうのでお店中掃除する。特にこの会計台周り、タバコの灰やホコリが隅に溜まってる。アルコールスプレーとティッシュを用意して拭きまくってると、奥から戻ってきた烏養さんにギョッとされた。
「うお、なんだ…!?もしや綺麗好きか?!禁煙家か??」
「タバコは別に…吹きかけられさえしなければ平気です、ちょっと潔癖なので埃が気になっちゃって…」
「掃除のしがいがあるだろーな……聞いてもいいならお前、突然宮城なんかの従兄弟の家来てなんかあったんか?」
ま〜聞かれるよねぇ…!気になるもんね…しかも25歳の成人男性だし…。
「お仕事をお休み中で…。その…ただ休むってことが苦手で。戻れるようになるまで、武田さんにお世話になるつもりでは…います。」
「訳アリね。…なんの仕事?土方とかじゃなさそうだけど」
ん〜なんの仕事にしようかな…。下手にかけ離れた職業だと突っ込まれたときに答えられないし…。ヒーローの言い換えって何になるんだ…?!
「警察官…です」
不自然な間にならないように、且つ少し専門的なことも話せてヒーローに近い業種を1.5秒で考えた結果、警察官になった。塚内さんという存在が身近に居てよかった…。
「警察ゥ?!!…はあ、国家公務員かよ…」
よかった、納得してもらえた。見た目だけだとぽいのかな…?
そうこうしてるとおばあちゃんとおばさんが入ってきて目が合う。
「こんにちは」
「あらやだ、繋心ちゃんこのハンサム君誰?」
「俺の知り合い。今日から店番変わってもらうの…この人たち3件隣の須原さん家のミヨさんと智子さん。…今日は何、醤油?」
3件隣の須原ミヨさん智子さん…、醤油醤油。高い棚に置いてるので代わりに取る。
「これですか?…神代くましろっていいます、お世話になりますね」
「は〜、芸能人みたいねえ」
「繋心ちゃんのお友達なら安心ねェ、この子夜遅くまで遊んで寝てないのよ」
「遊んでねえし寝てるっつーの!…あ、酒と味醂も合わせてあるから、重いから配達してやってくれ」
分かりました、と返す。
「重いけど平気かしら?」
「任せてください!」
いいなあ、こういう近所が近い付き合い。烏養さんが烏野高校在学中の頃の話をたくさん聞かせてもらった。バレーに熱中してて、そのときは学校自体が全国強豪に入るくらい強かったんだとか…。小さな巨人、と言われる伝説の強いプレーヤーがいた頃もあるらしい。
なるほど…武田さんから今の部の状況とか、なんで外部コーチとして烏養さんに頼むことになったのかとかは予め聞いた。その時の熱意もそうだけど、評判が落ちてしまった今盛り上げようと必死なんだな。
「戻りました〜」
「おう、おかえり。迷わなかったか?」
「なんとか!…ふふ、烏養さんのことたくさんお話してくれましたよ、ミヨさん。」
「あのばーさん……要らねえこと言ってなかったか?」
「歴代彼女の遍歴聞きました」
「ババァ…!!!!」
ギャルギャルしい子が多かったみたいで、とにかく派手で…と言われていたのを思い出して笑う。
「いいですね、ご近所さんって。ちょっと憧れます」
「そうかぁ?…あ〜東京とかに住んでんだっけ?」
「全然静岡です…でもご近所さんと会話したことなんて……あ!結婚の挨拶回りしたときくらい…?」
「は!?お前結婚してんの?!」
つーか親戚でもねえのに挨拶回りってなんだよ!!と突っ込まれる。
「はい、5年前に…。ちょっとメディアに出たりしてて、マスコミ張り付いたりするかもしれないんでそのお詫びと理由の説明で回ったときくらいしか話してないかも…」
「メディア…は〜、なるほどな…いや結婚してんのびっくりしたわ…二十歳で結婚したのか?早ェのな」
「確かに…同期と比べてもいちばん早かったかもしれないです。…でもオレ、その人のこと15?くらいのときから好きだったんですよ」
「色々すげぇなアンタ…」
ブイサインしておく。夕方になると下校する生徒たちが肉まん買いに来たり、ジュース買い食いしたりするから溜まらないように注意しつつ用意しておくように指示される。
夕方になって恐らく帰宅部の生徒たちが先に何人かお店に入ってくる。ほんとに肉まんめちゃくちゃ売れる…。
「…え!?坂ノ下商店にこんなお兄さんいた!?」
「今日からのアルバイトです、よろしく〜。あ、自転車広げないで〜車通れなくなるから!」
女の子たちにすごい囲まれる。もう対応は慣れたもんだ。しかもヒーローとしてメディアに出てるわけじゃないし、サインくださいとかは言われないから凄く楽。
やば、すごい行列になってる…。多分生徒が生徒を呼んで、オレのこと見に来た冷やかしもいるんだろうけどこんな小さな商店にいるような数ではない人数がレジに並ぶ。困ったな…。
「ごめんなさい、繋心さんのお母さ〜ん、助けてください〜!!」
何かあれば奥にいる母ちゃん呼べ、と言われてるので遠慮なく呼ばせてもらう。この人数を捌く自信はない…しかもジュースとかなんやらの品出しもしないと。
「あらあらすごいね…こりゃ大変だわ」
手伝ってもらってなんとか捌いて品出しもする。疲れた…。すっかり暗くなってもうすぐで店に戻る、と烏養さんから連絡が来る。
人が押し寄せたときにズレにずれた棚の位置を戻していると戸が開く音がする。
「も〜、聞いてくださいよ…一気に30人とかレジに並んじゃって……あれ、菅原くんだ!」
振り返ったら烏養さんじゃなくて朝に会った菅原くんたちが立ってた。
「おわ、ほんとだ!ほんとに店番してる…!肉まんまだありますか?」
「なんと……あります!ピザまんもございます!ラッキーボーイだねえ」
「武田先生の従兄弟さん、でしたよね?」
皆ワラワラと群がってくる。おお、でかいでかい。
「コラガキども!店の前で群がるなっつってんだろ…!お前も群がらせるなよ、母ちゃんから聞いたぞ…生徒大量に押しかけてきたんだって?」
「凄かったですよ、誰かが呼んじゃったんでしょうねえ。おかげで在庫すっからかんです」
「あ〜発注しねえとな…」
肉まんやピザまんを手渡して配っていく。
「くましろくん、お疲れさま!」
「武田さん!」
今日は早く上がれたよ、と言われたのでお疲れさまですと声をかける。
「メシでも行くか?」
「「え、いいんですか!?」」
「……あんま似てねえっつったけど訂正するわ」
同じタイミングで返事しただけじゃんね。バレー部の子たちをバイバイ、と見送ってお店仕舞い。今日は売上すごかったので、念入りに計算してお金をしまう。
「…金庫ないんですか?」
「あ?ンなもんねーよ」
「なんて不用心な…!!!だめです、明日買ってきますからね」
お金を扱うお店な以上、絶対に要りますと力説しておく。そりゃこんな平和な土地なら盗みなんて起きなさそうだけど紛失するリスクも減らせるし、万が一ってことがあるし…。
三人で近くにあるという中華屋さんに行く。
おー美味しそう!
(おい、ビール一杯でそんな酔うか?)
(酔ってないれす)
(どう見ても酔ってますね…)
(先生も酒弱いもんな)
(僕より弱い人は初めて見ました)
(オレあれたべたい)
(どれですか?)
(あのからあげ!)
(それ胡椒入れの容器だ、だめだ水飲んどけ)
(肉が食いたいんです!)
(分かった油淋鶏でいいんだな!?はい水飲め)