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56 幻肢痛
*相澤消太
下半身から力が抜け、思いきり倒れる。まただ、幻肢痛…。切断したはずの右足に痛みを感じる。切断したあとから悩まされているが、こんなに痛むのは初めてだ。
いままではタオルか紐みたいなモンでキツく縛り上げられたみたいな鬱血に近い痛みやビリビリと感電したような痛みだったのが、今回はうまく言い表せないがとにかく痛い。
授業中の廊下で良かった、誰にも迷惑かけずに済みそうだ。廊下の壁になんとか這いずり、背中を壁に預ける。
脂汗まで出てる、重症だな…。医者に言って強い鎮痛剤処方してもらうか…。
痛みはズキズキと酷いが、時間が経てばいずれ収まる。雨の日に古傷が痛むようなモンでそこまで騒ぐほどじゃない。
「…っ消太さん!!」
「…お前、なんでここに…?」
ヒーローコスチューム姿のくましろが駆け寄ってくる。授業はあと15分で終わる…そしたら生徒に囲まれるだろうな。
「…くましろ、も、終わるから…人来んぞ」
「どうでもいいです、そんなの…足?息はできますか?吸って、ふぅ〜て吐いて…うん上手ですね、そうそう」
顔を確認されたりして背中を擦られる。
「……お、い…個性使ってんじゃねえぞ…」
くましろの左手で瞼を閉じられ、個性が使えない状態だが明らかに痛みの引き方がおかしい。スッとスイッチが切れたように痛まなくなるのはどう考えてもくましろの治癒で痛みを肩代わりしてるんだろう。
「ヘーキ、だから……消太さんは?もう平気…?足の付け根マッサージする…?」
右足の付け根にくましろの手が触れる。血流が悪くなってるわけでもねえのに、残っている痛みや違和感のようなものが薄っすらと和らいでいく感覚に強張る力が抜けていく。
「っは…ぁ…」
「…保健室行きましょうか、持ち上げますね」
軽々と俺を持ち上げられるようになったくましろにしがみつく。
「お前も痛えだろ…」
「ふふ、愛の力を舐めないでください」
なんだそれ、と笑いが溢れる。痛みなんて感じてないかのようにスタスタ歩くくましろ。前も幻肢痛を治癒しようとして、目に見える傷ではないことと脳が錯覚を起こして痛みを引き起こしているからかうまく治癒ができないと申し訳なさそうに謝られたことがある。
側にいるときに痛みが出ればくましろは何度も治癒してくれてたおかげか、だんだんと痛みが弱く生じるようになってきた。が、普通の怪我のように治癒を開始して痛みが完全になくなるのではなく、あいつの個性の効果の波があるように、痛みが生じるときとじわじわと痛む時間が交互に現れるようになった。
それでも長引くと数時間痛むときもあるので、数時間ずっと痛むより波状であっても大変こちらとしては助かる…が、結構しんどいので肩代わりしてほしくないという気持ちもある。くましろは聞く耳持たねえが。
保健室につき、空きベッドに下ろされる。
「今回、結構強いですね……」
「痛えだろ……いいよ」
「やだ…何かいりますか?水とか…なんか…」
またズキズキとないはずの脚が痛み始める。
「ゔ…ッ、ぐ…」
痛みが強すぎて声が漏れるなんて初めてだ、くましろも不安そうにこちらを覗いている。
「来てよかった…何かできることありますか?何でもします」
「……手、にぎって」
「はい…いくらでもどうぞ」
痛みの逃げ場所として使っちまって悪いと思いつつ、痛くて痛くて握る手にどんどん力が入る。くましろもかなり痛えと思うが顔色一つ変えずに背中を擦ってくれる。
「…っは、ぁ…は…おい……くましろ、」
「ん?」
「……肩代わり、すんな…」
「オレは平気です、貴方が苦しそうな方が辛い」
言うこと聞きやしねえ…ばあさんも笑ってる。
「相澤先生、くましろちゃん。一応ここに鎮痛剤やら置いておくからどうしてもの場合飲みなさいね。くましろちゃん、相澤先生の鎮痛剤これで合ってたかしら?」
「リカバリーガール…神…!うん、これこれ。ありがとう…長引きそうなら飲んでもらうね」
「…いつの間に薬の名前なんて覚えたの?」
「はい、ちょっとだけ薬学の勉強もしました。んで…今消太さんがもらってる薬結構強いんですね。これ以上強いのにすると、継続的に飲むことを考えた場合に体に悪いなって思って…
そっから脳神経の錯覚で幻肢痛って起こるので、脳神経に治癒の個性作用できないかなって思って今勉強中なんです。
だから、薬に頼らなくてもいいようになるまでもう少しだけ待っててください」
「……お前が痛いだろうが、馬鹿」
「ふふ、種明かしすると今回のはちょっと痛いんですけど…それもなんて言い表せばいいかな…骨がずれてる違和感みたいな感じなんですけど、不思議なことに消太さんの幻肢痛、オレは足がちゃんとあるからかあんまり痛くないんですよ」
「…そうなのか…嘘かどうかはあとで聞くが……いつもありがと、くましろ」
俺の後遺症ごと治そうと勉強してると聞いて驚きを隠せない。マイクが聞いたらまた惚気てると言われちまうだろうな。
次の授業には登壇できそうにないので、ばあさんに職員室への伝言を頼み天井を見上げる。
「痛み、ひいてきました…?今多分治癒の個性あんまりちゃんと効いてないと思うんですが…」
「感覚が開いてきた…あと10分そこらで収まるかもしれん…くましろ、こっちきて」
「はい」
「背中さすって…落ち着く」
「はい」
くましろに抱きつくようにして背中を擦ってもらうと気にならなくなってくる。
「消太さん、少し寝ますか?」
「少し…」
くましろの胸もとあたりに顔を埋めると汗臭いですよ、と咎められるので臭くねえ、いい匂いだと返しておく。
ばあさんに声をかけられ目を覚ます。30分ほど経ったようで、痛みはすっかり引いていた。
「…すまない、くましろまで爆睡しちまった」
「フフ、仕方ないわよ…相澤先生のトコ来る前に敵20人とっ捕まえてきたみたいだからね。疲れてたんでしょう、くましろちゃんも…顔色も大分いいわね」
「…くましろ、くましろ。起きれるか?」
「……足は…?」
「引いたよ、ありがと」
くましろのまだ半分も開いてない瞼やおでこにキスして起こす。イチャつくな!とばあさんの理不尽な怒りを受ける。
「眠そうだな、もう少し寝るか?」
「やだ…今日消太さんとかえる…えいがみる…」
レンタル今日までのがあったな確か…。もうフニャフニャのくましろの上体を起こし、少し揺さぶって起こす。
目がしょぼしょぼしてるくましろの手を引いて職員室まで歩く。この様子じゃ仮眠室行きか?
ヒーローコスチュームでバレバレのくましろに生徒たちが次々と声をかけようとして、その眠そうな姿に声を小さくして手を降っている。ばあさんが言っていた事件も速報として上がってるようで、お疲れ様!と声をかけられてくましろも手を振り返してる。……寝ぼけすぎて床に対してだが。
「Neutralだ!サイン頂戴!」
バタバタと後ろから走ってくる生徒が数名。注意しようとしたらくましろに抱き寄せられる。
「消太さん足怪我してるから、万が一のためにも走らないで」
「痛み引いたつったろ…子供相手に凄むな」
「凄んでない…」
凄んでるだろそんな顔して…。ビビって止まった生徒に近寄ったくましろは眠そうにサインはないから書けない、と謝っていた。
「サインないから……あ、最近買った可愛いシールあげる…これ」
「え、Neutralシール持ち歩いてんの…!?しかもばつ丸くん好きなん??」
「母さんに、小さい頃のお前に似てるって言われてるやつ」
「…どゆこと?」
思わず聞き返してきた生徒がくましろを見上げる。…俺もそれは少し気になる。隣に立ってシールを見てみるが似てねえぞ。
「ふふ、人見知りで…母さんの同僚とかが遊びに来てもこんな顔して父さんの足の間から見てたって…」
「え〜っ!めっちゃカワイイ何それ…!!SNSあげていい??」
「…ん〜……これ怒られますかね、ばつ丸くんから…」
もう眠すぎて考える気力もないのだろう、何故か俺に聞いてきた。俺はサンリオじゃないぞ。
「いや、たぶん怒られない。好きなんだろ?」
「好きです、前から消太さんに似てるなって思ってたんですよ…だから好き」
犬のようにもたれ掛かってくるくましろに分かった分かった、と返す。サイン用のノートにばつ丸くんのシールを貼られた生徒は嬉し涙?を流しながらお礼を言っている。
「生で惚気が聞ける日が来るなんて…!!!相澤先生ちっとも教えてくれないんだもん…!」
当たり前だろ、と返す。
「他にもシールあるんですか?ばつ丸くんオンリー?」
ツレの男子生徒が尋ねると、どこにそんなしまってたんだと聞きたくなるくらいシールが出てくる。
「あとは…どれがいい?たまごっちと…エンジェルブルーのやつ」
「Neutralお気に入りのやつほしいです!…つかシール交換したほうが早くないですか?」
「え、またそれ流行ってんの…?ん〜…お気に入りのあげるからちゃんと飾ってね?…そのばつ丸くんだって特に消太さんぽい可愛いやつだし…」
「「飾ります!!!」」
声でけえよと二人の頭を軽く叩く。
「はい、これ。アイス持ってるみみっちあげる」
際限なく集まるのでもう終わり、とくましろの手を引き職員室へ向かう。
「お〜、神代と相澤、おかえり。バズってんぞ」
廊下の出来事か?と聞くと肯定の返事が来る。とりあえずくましろを膝の上に座らせ、マイクと画面を覗き込む。さっきの2人か…サイン用のノートに貼られたシールの写真と、さっきのやり取りが書いてある。
『くましろくん、お母さんに小さい頃人見知り凄すぎてばつ丸くんに似てるって言われてたんだって!本人はばつ丸くんはイレイザーぽいから好きらしくて、持ち歩いてたシールサインの代わりにくれた……このシールは特にイレイザーぽくて可愛くてお気に入りのシールと教えてもらいました、
友人はたまごっちとエンジェルブルーのシールの中からこれまたくましろくんお気に入りのアイス持ってるみみっちのシール貰ってました…』
10分もたってねえのにすごい数のコメントやらがついてる。
「お前がばつ丸くんねえ…って寝てら」
「この2人相手にしてるときもフニャフニャしてた」
仮眠室運ぶ、とマイクに告げ次の授業は出れそうだから出ると伝えておく。
(……?ここどこ…)
(あ、起きた?ここ雄英な)
(ゼンマイ……消太さんは…?)
(いま授業中、足は完全に痛み引いたってよ)
(そっか……ねむい…)
(もう一眠りしてくるか?)
(しない…)
(ナチュラルに俺の足枕にしてんじゃねえかよ…30分経ったら起こすぞ、相澤ヤキモチ妬くから)
(ん…)