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41 魔法の限界
*神代くましろ
ツイステッドワンダーランド、そしてナイトレイブンカレッジに来て早1ヶ月。1ヶ月経っちゃった。
事務員…補佐の仕事は相変わらずで、トレイくんと食堂のご飯のおかげでだいぶ本来の体型に戻せて体力も元に戻りつつある。
1ヶ月間いろんなことがあって、面倒事はごめんよ!とため息をついていたヴィルくんにスキンケア用品を見繕ってもらったり(顔がピリピリして乾燥して肌が切れてるのを見兼ねて声をかけてくれた)、お礼を兼ねて手料理を振る舞ったら大好評だったり、そのせいでモストロラウンジというカフェ経営をするアズールくんにバイトの引き抜きされそうになったり、マレウスくんとお茶しようねの軽い気持ちで放った一言が、従者であるシルバーくんやセベクくんを交えての超大事イベントになっちゃったり‥。
今はトレイン先生の魔法史の授業。今日はかつてあった光啓の島が滅んだ原因と言われている「弱みを映す魔道具」について実践を交えながら授業するらしい。
なんでもこの…ハリポッターでも見たことあるような、その人が一番怖いと思うものをモノマネで出してくる魔道具の取り扱いが原因で国が一つ島ごと滅んだんだとか。
これはレプリカだから、同じようにその人が一番恐れている存在がモノマネとして出てくるけど、モノマネの精度や攻撃してくるものの威力が低いらしい。
本物はまだどこにも見つかってないんだとか…海の底にでも落ちちゃったのかな。
最初授業のメモは母国語の文字で書いていたんだけど、一ヶ月も経てばこちらの文字で書けるようになってくる。いまや暗号ノートと言われてるオレのノートは、母国語とこちらの言語が入り混じってるわけわからないノートになってる。バイリンガルやトリリンガルがこんがらがるっていう感覚がよくわかる。
意図してないのに混じって出てくるからこんなことになってる。
「では……立つ者はルチウスに選んでもらおう」
今日は皆比較的起きてるな。
「…ん?」
ルチウス、オレのノートの上にめちゃくちゃくつろいで寝てる。
「え…嫌だ無理無理、特大のゴキブリとか出たら泡吹いて倒れて死ぬ。オレが」
「出やしない、早く前へ」
なんて遠慮のない…少し前まで優しかったのにトレイン先生!!!
「どうするんですかムカデとゴキブリのコンボとかだったら!!!」
「レプリカだ、本物ではないんだからなんとかできるだろう」
なんて脳筋…バルガス先生より脳筋だと思うわこの人…。オレが魔法使えないの分かってるから鏡に映らないようにして隣に立ってくれてる。
この鏡に映ってる人の、怖い存在が出てくるんだって…。異世界人で事務員のオレが選ばれたからざわついてる教室に、どこか胸騒ぎを覚えつつも立って扉を開けると魔道具のクロゼットのようなものがバラバラに吹き飛ぶ。
「え、あれ壊れていいんですか?!」
「…魔法で修復すれば元に戻る…ただの箱だからな…それよりアレは一体なんだ…!??!」
振り返って見ると、喉が絞まるような感覚に陥る。
「久しぶり、くましろ……」
「弔……」
弔と、脳無。脳無の手元には、わざわざ45歳の消太さんが血まみれで倒れている。
「一歩も動くな、子どもたち殺されたくないでしょ…?」
「……悪趣味なモノマネなことで…。これ痛みは本物でも…ここにいるのはニセモノなんですよね?!」
「あぁ…そうだ」
「弔、皆と話をさせて…?全員後ろの壁に避難して。…早く!」
教室の生徒、そしてトレイン先生を後ろの壁沿いに避難させる。できるだけ入口が近いところに。
「くましろ、会いたかったよ…なんでオレのとこ来てくれないの?ねえ」
「く、るし…、かはっ」
動くなと言われてるので動かないでいると個性で喉が壊される。治癒ですぐに元に戻るけど、呼吸のしにくさは変わらない。ヒュー、と細い息だけが喉を通る。
「お前が約束守らないから、イレイザーヘッドは殺したよ」
「生きてるよ」
「死んだ!お前が敵連合に来ないから、あいつ死んだんだよ…っ」
ギロリ、と睨まれる。出会った日の弔に見た目は近い。
「一番嫌いな脳無まで連れてきて…なんのつもり?今イレイザーと結婚してんだよ、オレ」
手元にあった椅子を脳無に向かって投げる。弔は止めたまま、脳無を止めずに殴る。
「ビンゴ…」
ちょうどそこに倒れると目の部分に教室に飾ってるレプリカの槍が刺さるんだよね。トレイン先生に目で合図して魔道具をこっそり直してもらう。入り切るか分からないけど、しまえばこっちのもん。
「くましろ」
「!!!」
血まみれの消太さんが立ち上がる。
「くましろ、お前のせいで何人死んだ?」
「…耳を貸すな、レプリカだ!」
トレイン先生言葉で我に返る。危な……こいつのペースに持ち込まれるところだった。
「お前は…ヒーローになんかなれないよ、人殺しだ」
後ろへと下がり続けていたら机にぶつかったせいで、血まみれの消太さんに近くで言われる。呪詛のようにブツブツと呟いててこれはこれで怖い…し、一番オレの可能性を信じてくれてた人に言われるのは嘘であってもキツイものがある。
「USJの時何人殺した?」
「いった……随分雑に扱うんですね消太さん」
顎の骨折れるんじゃないかという力で顔を掴まれる。魔道具の修復はまだだろうか。
「ステインのとき巻き込まれた市民は何人いた?」
「答えなきゃだめですか?」
「……お前が死柄木と精通してるせいでこんなこと起きたんじゃねえのか?」
「くましろさん、さっさとそいつぶっ飛ばせよ!」
エースくんの声が聞こえてくる。無茶言わんでくれよ…。レプリカであっても偽物であっても消太さんのことは殴りたくない。
「トレイン先生、まだそうですか?」
ちら、と先生を見るけどまだそうだな…。
「あと10分以内には完了する」
10分か…。
「消太さん、血凄いですよ。立ってられないんじゃないんですか?」
こちらの問いかけはほぼ無視してる。ほんとなんか…精巧な人形に近いぽいな。
「貴方もオレも怪我ばっかですね…もう右足切断したあとですか?髪の毛短いし……うわ顔面かっこよ」
レプリカですらこのハンサム具合っておかしくない?
「くましろ、」
「はい……えぇ消太さんのままでいてほしかったな…」
母さんに変わってしまった。最悪だ、なんかキーキー言ってる。それと同時に痛みを感じない脳無が起き上がってくるので距離を取る。
「逃げんのか?弱虫」
「言っとくけど、本物の母さんだってソイツ相手にできないだろうからね…体力・パワー馬鹿ほぼ無限再生で痛覚ゼロなんだから…」
ドゴドゴ殴ってくる脳無を避けながら止める。10分か…長いな〜!
母さんは相変わらず罵詈雑言を言ってくるだけなので無視、産まなきゃよかったとかは割と最近も聞いた言葉なので(ほんとに陣痛痛くて産まれるまで長くて未だにそう思ってるらしい、せんべい食べながら言われた)気になんかしない。消太さんの姿で色々言われる方が心にきたので余裕。
問題は脳無だ。彼ほどのデカブツを弔と同時進行で止め続けるのはキツイのでちょいちょい止める方法を選択してるけど生徒たちの方へ行かさないようにするのが大変。
「オラよそ見すんな脳無!」
誰かのテキストを投げてこちらへ視線誘導する。動きがどんどん早くなってる…?目で追えなくなってきてる。
「捕まえた」
「くましろさん!!」
脳無に組み敷かれて弔が歩いてくる。あれ…?個性が切れた?まだ使えてる感覚あるのにおかしいな…。
USJでの襲撃を追体験させる気なのか、あの日消太さんがやられていたようにパキ、と両腕を折られる。痛すぎて声にならない。
「脳無、目も潰せ」
弔のそんな指示が聞こえてきたかと思えば頭を掴まれ地面に叩きつけられる。衝撃でクラクラする。異世界からやってきた本物の弔と脳無…と母さんではないくせに、与えるダメージは本物なのが質悪い。
本物の弔の脳無は捕まってるし、母さんはたぶん家で茶飲んでる。
「……ふ、流石レプリカ…目ェ潰したってなんの意味もないよ」
目が見えなくたってお前らのこと止められるんだから。治癒のスピードを最大限にしてまず目を治す。両手もなんとか骨同士をくっつけて、止めずに最大限脳無を殴る。本物より軽くて教室の外へ吹っ飛ぶ。
「人生の汚点の追体験って感じ…?USJの襲撃でも、夏合宿の誘拐でもその先の敵連合の戦いでも……負けるのは弔の方だよ、ほら帰りな」
トレイン先生が直してくれた魔道具に母さん、弔のレプリカを黙って押し込め、入るか心配だった脳無も皆が魔法で押し込んでくれた。
「だーーー疲れた…」
「いますぐ保健室へ向かいなさい」
「え?自分でな…はい、行かせていただきます!先生大好き!」
すんごい怖い顔してたから急いで立ち上がると貧血でフラついて余計にトレイン先生の顔が怖くなる。今のところ真顔が先生たちの中で一番怖い人なので逆らえない。お説話のタイプも消太さんと似ていて、余計に怖い。
お目付役としてエース・デュースくんに付き添いしてもらいながら歩く。
「ごめんねえ、授業あんなんにしちゃって…」
「いやいや…自分の体心配してくれない?!」
「あんなクソでかい筋肉の塊みたいなのに何遍も殴られて、アンタ平気なんスか…?」
「まあ両腕折られたし目も潰されかけたから平気ではないけど……節々の会話聞いてて勘づいてると思うけど、アレ追体験だから。」
「追体験……」
「そ、15歳のときの……いやもうホント人生で戻れるならあの日を選ぶくらいのやらかした日。」
今回は魔法攻撃ではないからか、治癒がよく聞く。治せる部分は治しておく。
「15歳であんな死にそうな修羅場経験したワケ?」
「まあ想定されてない襲撃だったけどね?…そんで、オレ含むクラスメートも初めてやる演習の授業で敵と初対面。
ヒヨッコの子どもたちに太刀打ちなんかできなくてね……途中までいた黒ずくめのハンサムいたでしょ?あの人がオレの結婚相手なんだけど、あの人がさっきのオレみたいに子どもたちをかばってあのデカブツにボッコボコにされてね…
当時は弔……敵に泣いて懇願するしかできなかったんだよね」
「…え、あんな強かったアンタが…?」
おお、デュースくん嬉しいくらい褒めてくれるね?あの時よりかは格段に強くなってると思うけど…。
「うん、お願い殺さないでって泣くことしかできなかったよ…まああとで市民がああやって巻き込まれてもお前はピーピー泣くしかできねえのかってそりゃもう回し蹴りされてチョップされながら2時間3時間怒られたけどね…」
そう話しながら階段を登る。キツ…ヨロヨロと登ってるとエースくんが肩を貸してくれる。
「…血、ついちゃうよ?」
「いーよそんくらい…」
ありがとうね、と血のついてない腕の部分でエースくんの頭を撫でるとぐしゃぐしゃにしないでよ!と怒られた。猫みたいだ。
「さっき、こっそり魔法使ってたんだけど…効いてる感じもちゃんと魔法使えてる感じもなくて…まじで見てるだけだったから」
「え…助太刀してくれてたの?気づかなかった…オレには効くけど、あのレプリカが真似した異世界の存在には効かないのかも?」
なんとか保健室につき、沁みる消毒液ばっか使われて半泣きでいたら寝ていたらしいレオナくんがやってくる。
「……ンでそんな血みどろになってンだ…」
「レオナくん、お昼寝邪魔した?っだぁ〜!!!いだいいだい……!!!」
「大袈裟な……」
大袈裟じゃないんだよほんとにもう…容赦ないなここの先生。乱闘してきたと思われてんのかな…。
「トレイン先生の授業のモノマネ妖精のレプリカ使った授業で、とんでもない化け物出てきて……魔法効かねえし一人で戦ってたんですよ」
デュースくんがレオナくんに説明してくれる。魔道具の存在にピンと来たようで、アレか…と呟いていた。
「化け物っつーのは?」
「なんか…脳みそむき出しのバルガス先生15人分くらいの筋肉ダルマみたいなやつと…」
エースくんの説明に思わずツボる。
「めっちゃ失礼じゃ、ない?…んフッ、あっはっはっ…筋肉ダルマ…」
「何にツボってんだよ…」
レオナくんがオレが腰掛けてるベッドの背中側に座ってくる。あ〜面白かった、筋肉ダルマって表現がよかった。
「脳無は…敵連合のリーダーが、色んな人をかけ合わせて作った改人。本来個性ってだいたい1人1個なんだよ、複合は珍しいの。それを何個も何個も掛け合わせるために人と人くっつけちゃったんだよ…そんで痛みに無自覚。
だからアレは…人間兵器だね。」
そう言うとびっくりしたのか固まる3人。
「あ、もう敵連合は捕まえたから!もうあいつらいないからね!」
「いや……うん…」
「あーごめん、重い話をサラッとするもんじゃなかったね…申し訳ない…」
「途中の母親も?」
「母さんはそりゃもう図太く生きてるよ、今年1で会ってるし…まあ振る舞いはあんな感じだけど。あんなトゲトゲしなくなったかな…」
「なんであのとき好き勝手言わせてたの?ぶっ飛ばしちまえば良かったのに…」
「あぁ、あれ?アレ…現実で言ってきたの母さんだし、オレをヒーローにしてくれたのは消太さんだからね。…レプリカであっても消太さんのことは殴りたくなくて…」
消毒を終え、両腕を包帯ぐるぐるにされた。もう骨くっついてるのに?と確認したら鬼のような形相で睨まれたから黙ってされるがままにしといた。
(お風呂入りたいのに…)
(血生臭ェ)
(レオナくんがいじめてくる…)
(包帯とったらぶっ飛ばされるかな?)
(だめに決まってるでしょ、両腕パキって折られたんだよ!?)
(でも骨くっつけたよ?あと神経とか筋肉構造とかも勉強したから元通りに戻せてる筈だし…)
(そういう問題じゃなくないスか…?)