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36 新人教育
*神代くましろ
『そこを動くな』
シンプルだけどブチギレてるのがよく分かる通知がスマホに表示される。やばい、どう考えてもバレてるなコレ…
「……あ、イレイザーヘッド…珍しいな…」
他のプロヒーローたちに手早く挨拶を済ませた鬼の形相の消太さんがこちらへゆっくりと歩み寄ってくる。
「…おい」
「ヒィ、殺さないで…!」
「「「(何やらかしたんだ神代は…)」」」
憐れみの視線を向けられる中、止まってくれないどころか腰を掴まれて持ち上げられる。下から見上げてくる消太さん、めちゃくちゃ眉間にシワ寄ってて偉いことになってる。怒っててもカッコいい…。青筋立ってるからオレの命はもう終わりかもしれないけども…
「動きが変だ。そんで……何キロ痩せた?」
「う……お見通しすぎてコワ…」
「最近帰って来れてねえし、その間にバテたか?」
じ、と猫みたいに見上げてくる彼には本当のことを打ち明けないとおろしてもらえないだろうし、このままインタビュー受けてもいいぞとか言われかねない。
「…い、胃腸炎…なっちゃって…熱は下がったし、いつものお医者さんからもいいよって言われました。ただ…胃の調子がまだ戻らなくて」
無言で下ろされたあと、思い切り頭にチョップが降ってくる。
「へぶっ!!!!」
「へえ、本調子じゃねえと?」
「……」
気まずすぎて目を合わせないオレの顎を掴まれる。無理無理、怖いよ…人を目で殺す顔してるよぉ…。だって今日の敵だってオレのこと指名して引きこもり起こそうとしてたんだし仕方ないじゃん…!
「本調子じゃねえのに前線にいたってことだな?」
「……誰かお助けを!!!」
「悪い」「すまん」「ご自愛しろ」と口々に皆去っていくし、口裏合わせたマスコミの人たちも解散していく。裏切り者…!!誰か一人くらい仲介役してくれたっていいだろうが!
「俺はバカな弟子に再教育が必要だと思うんだが…くましろはどう思う?」
「いっそ殺してください…」
そんな怖い顔で凄まないでよ…ていうかハイしか言えないじゃん…。
オレはまだ、プロヒーローとして活動してまだ1年も経ってない。警察との連携や、個人事務所・大型事務所のヒーローたちとの動き方なんかもようやく分かってきたぐらいだ。
事務所も立てず、属さず一人でやってるからってそんなに怒られたりとかしたことないけど…なんていうのかな、慣れるのに必死な時期過ぎて…2ヶ月、消太さんのとこに帰れてなかった。
胃腸炎のときも死にかけていて連絡取れなかった…。からこんなに青筋立ててキレてるんだろう。本当に一思いに殺るなら殺ってほしい。
たいとに見た目を変えてもらったあと誰がどう見ても怒り心頭の消太さんに手を引かれ、マスコミを撒いて家に帰る。
オレが好きなちょっと煮込まれすぎて、もはや箸で掴めない鍋焼きうどんを作ってくれた。お礼を言って食べてるんだけど、もう呪詛のように嫌味とお説教が止まらない。こんなに別の意味で胃が痛むご飯の時間は二度とないと思う。
「…すみませんでした…」
「全くだ、オレはかすり傷で号泣されるのに胃腸炎でぶっ倒れてたこともそのあと治ってねえのもこんな形で知らされるとはな」
「ゔ…」
「俺が大事にしているくましろ自身は大事にしてくんねえのか?」
「そうじゃなくて、」
「…泣くな、馬鹿。…一人前も食えねえのか、なんで1ヶ月間も無茶した。引きずってる間、どうせ病院行ってねえんだろ」
ギク。行く時間がなかったのと、もう体が動かせなくてホテルの部屋で死んだように寝ることしかできなかったのを伝えるとめちゃくちゃため息つかれた。
「…くましろ」
「…」
「お願い、大事にして」
「…はい…」
「休んだって誰も怒らないよ、敵がお前を指名してても」
「…わかりました」
「俺もいるしお前の同期も先輩もいる、何とかなるから」
消太さんが思い切り頭を撫でてくる。
「…おかえり、しばらく休め」
「…お風呂…は…」
「ダメに決まってんだろ、ドライシャンプーとシート買ってあるからそれ使え…んで薬飲んで寝ろ」
言われたとおりにしてなるべく硝煙臭い体をきれいにして布団に入る。熱ないから本当はお風呂入りたかったけど…あの顔の消太さんには逆らえない。
夢をみる暇もないほど爆睡して、目を開けると夕陽。これいつの夕陽…?寝た当日?それとも翌日になってるだろうか?ていうか逆に朝焼けの可能性はない?
重くてだるい体をなんとか起こして、水のために部屋に移動するとリビングで異様な存在感を放つ寝袋に気づく。
「…猫みたい…」
寝てる猫の背中みたい。しかもカーテンの陽のさす範囲内のところで寝てるから尚更猫みたい。こっそり近寄ったら寝息が聞こえたので起こさないようにコップに水を注ぐ。
「……あ…」
やば、間違えた。ミネラルウォーターあったのに、そっちじゃなくて水道から入れた水を口に含んだ瞬間、カルキと鉄の匂いで胃液が上がってくる感覚がする。
やばい、これ吐く。
え、どこに!?床はもちろんダメだし、シンクに吐くのもちょっと今後のこと考えたら嫌だし、かといってトイレ…間に合うか?この距離…。
寝起きで動かない頭を精一杯動かし、どうにかトイレ、無理ならその前の洗面台で!と結論付けて走る。
なんとかトイレにたどり着いたけど、えずくだけえずいて全く吐けない…気持ち悪いのに…。
ドタドタ走り回ったし、えずく声で起こしてしまったらしく消太さんがドアを開けてくる。
「…吐けねえのか?」
頷く。
「しんどいな、くましろ。」
「…起こしちゃった?」
「いい、そんなの気にするな」
背中をさすってくれる消太さんのおかげで少し気持ち悪さと目眩に近い症状が和らぐ。結局えずきまくって、吐けたのはだいぶ時間が経って足が痺れたくらい。
「くましろ、これで口ゆすいで」
ぐったりしてるオレをよそに水をくれる消太さん。なんとか口をゆすぎタオルで口周りを拭く。ほんとは歯磨きしたいけど、マウスウォッシュ使うので限界だった。
「水じゃなくてこれ飲んで」
ポカリを出されるので飲む。甘…うま〜。
「あと数回吐くようなら病院行くぞ、脱水になるから…もう吐き気ない?」
「いまのところは…オレどんくらい寝てました?」
「丸一日寝てたよ、何回か起こしたんだけど起きやしねえ」
「1日……雄英休ませちゃいましたよね?」
「気にすんなっつってんだろ…根津さんから休むように言われたよ」
これに懲りたら無茶するなよと頬を摘まれて伸ばされる。
(今日はお風呂入りたいです…)
(…長湯すんなよ)
(はい…あと寝るの一緒がいいです…もう吐かないから)
(吐くから違うとこで寝てたわけじゃねえよ…けど分かった)
(あと…)
(なんだ甘えん坊)
(ただいま、消太さん)
(はいおかえり。…次はもっと元気に帰ってこい)