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35 副作用
*相澤消太
くましろが大怪我をして帰ってきた。
片腹を抉られるように斬られ殴られ…出血多量で。自分の個性で治せるというのと、大勢の市民たちに見られていており病院に人が殺到するかもしれないので本人が帰りたいと我儘を言ったこともあり、運ばれた先の病院で治療を受け大量の鎮痛剤を処方され帰ってきた。
俺の前では強がって痛いなんぞ言わなかったが、夜中寝る前に多めに薬を飲んでいたのを見ていたし、飲みすぎるなよと忠告はした。あとでダメージとなって残るのはくましろの体だからだ。
突然起き上がり、ふらふらと玄関へ向かうくましろの背中に慌てて声を掛ける。トイレかと思って見ていたが、靴を履き始めた。
「くましろ、どうした?」
「…のとこ…」
いつも以上にふわふわと話すくましろに顔を寄せる。
「消太さんのとこ行く…」
「…ここにいるだろ」
「いない、出てったから…っ」
眉が下がり、今にも泣きそうなくましろと目を合わせようとするが合わない。…怪我のせいで熱出てるな、鎮痛剤二回分飲んでたし、そもそも体と合ってなかったのか?
「いるよ、くましろ。出てってねえ」
「なんで、オレのこともう嫌い…?なんでおいてくの…」
目に涙がじんわりと浮かび始めたので指で擦るように拭う。自分以外の熱が体に触れたからか、くましろがこちらに反応する。…見えてなかったみたいな反応だな…。一種の幻覚のような状態になってるんだろうか。
「大丈夫、ここにいるから…落ち着けそうか?」
拒絶や混乱はなさそうなので、そのまま引き寄せて抱きしめると背中に腕がおずおずと回ってくるものの、返事はない。
「俺のこと分かる?」
まず俺のことはきちんと俺と判断できているだろうか?と思い尋ねる。顔を覗き込み、ようやく目が合う。
「消太さん…」
よかった、偽物とか言われたらどう理解させようかと案じていた。
「うん、そう。…どこ行こうとしてたの?」
「消太さんのとこ」
「外に行ってないから靴脱げ…ベッド戻るぞ」
そう言うとすんなり靴を脱いだくましろ。偉いね、と頭を撫でると手を取られ、指を軽く噛まれる。
「…いて…どうした?」
「あれ……ホームランバーじゃない…」
至極残念そうにそう言われ、思わず笑う。ホームランバーに見えていたらしい俺の指をさすさすと撫でられるので痛くねえよとだけ返しておく。つーかホームランバーで人の頭を撫でるわけねえだろ、元に戻ったら笑ってやるか。
「消太さん、ここいる?」
「ずっといるよ、お前の隣に」
暑いだろうと思って離れようとするとくっついてくる為、抱きしめたまま横になる。
「傷、痛くねぇか?」
「痛くない…」
そうか、と頰を撫でるとだんだん瞼が閉じていく。
「明日もその先もここにいるから、今日は寝なさい」
「うん…」
傷口の左側の腹には触らないように抱きしめ、部屋の温度を少し下げる。
ようやく寝れたらしいくましろが起きてきたのは昼過ぎのことだった。
「……消太さん、夜すみませんでした…なんか変でした」
「いいよ。…ただ決められた容量守らずに飲むからだ、今後は控えろよ」
「う…痛くて…」
「強制入院がいいか?」
そう脅すとわかりました!と返事が返ってくる。
「嫌です…だって救急車から降りたら何人か市民の人たち居たんですもん…」
「分かってるよ…医者が帰すってことはまあ家でも問題はないレベルだからってことだろ。
…ただ昨日のは完全に幻覚だな、俺の指ホームランバーって噛んでたし」
「え!?ホームランバー…???」
手を取って指を見てくるので、そんな本気で噛まれてねえよと言う。大方痛みが強くて寝起きなのもあって力が入ってなかったからだろう。今みたいな寝起きの状態の幻覚じゃなくて助かった。
「全然覚えてない…」
「残念そうで可愛かったよ。…医者には薬合わなかったって言っとけよ…で、怪我は?」
そういい服の裾を捲ると、包帯に血が滲んでいる。ガーゼと血の匂いがうっすら匂ってくるので、座らせて新しい包帯やらガーゼやらを用意する。
「……キモ…」
傷口がとにかく苦手なくましろ、人にやってもらうより自分でやるほうが痛くなくできるはずだし、怖くもなくなると俺には触らせてくれねえが傷口をロクに見れないせいで全然消毒ができてない。
「…貸せ、このままじゃ膿むぞ」
「…うう…」
「痛くしねえから、じっとしてろ……随分深くやられたんだな」
こりゃ痛みで夜眠れねえはずだ。手早く消毒し、ガーゼを当てて包帯を巻く。鎮痛剤の効果時間が切れて痛かったようで、歯を食いしばって痛みに耐えるくましろの頬を撫でる。
「ん、終わったぞ…飯食って薬飲め。…1回分な」
「…今飲んじゃだめですか…」
「だめ。胃が荒れる…2回分飲んだだけで幻覚見るんだぞ、ちゃんと言われた通り飲まなきゃ長引く可能性もある」
くましろが体調を崩したときに食いつきが良い方の茹できって伸びたでろでろのうどんを出してやる。
もうほぼ食感のない時点でおかゆやそこらと何が違うのか俺には分からないが、これが好きらしい。
よそってやった半分をなんとか食べて薬を飲ませる。顔色が悪い、血を流してるだろうから鉄分が入ってるココアを出して少し飲ませる。
「消太さん…」
「ん?」
「すみません、せっかくのお休みなのに」
「ンな事気にしないの…くましろ」
べそべそと泣き始めるくましろの頭を撫でる。最近休みもなかったし、ストレスもあって少し不安定なんだろうか?
少し泣いてあっという間に眠りついたくましろをベッドに運び、心配の連絡を寄越していた根津さんに様子を返信しておく。あの人も心配性だな、と連絡を返しているとくましろが再び起きてくる。
「どうした?痛む?」
「…いるか見にきた」
ここにも心配性が1人。
「いるだろ?」
「いた…ねる…」
ここで寝るなっつの…。近くで寝ていたいようなので、リビングのソファに横にさせ、布団をかける。こっちも後回しにしたいがそうもいかない。今年うけもった生徒たちのヒーロー基礎学のVを見て、講評コメントをまとめておく。
「…オレいない…」
少し声色が低いくましろが後ろから話しかけてくる。
「起きたか?」
「…なんでオレの見てくれないの」
まだ寝ぼけてる。お前卒業してるだろうが…拗ねてるのが可愛いのでそのままにしておく。
「…相澤さんてば…」
呼び方まで学生の時に戻っているくましろに思わず笑うと、背中を突かれるので振り向く。
「なんだよ…お前卒業してるだろ、プロヒーロー」
「んぇ…?」
寝ぼけやがって、と頰を摘むとヘラヘラ嬉しそうに笑う。ほんと…俺が絡むとなんだっていいのな。
「なんか飲む?」
「ココア飲む…」
起き上がろうとする馬鹿を抑え込み、起きるなと静止する。
(待て、どこ行くんだ)
(おふろ…)
(大バカ、まだ入れねえよ)
(え〜…)
(頭は洗ってやるから我慢しろ)
(わかりました…)
(はい、いい子。アイス買ってあるから)
(スパダリ…消太さん、オレ平気だから休んで?)
(俺もアイス食ったら休むよ)