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28 マインドケア
*神代くましろ
サインを考え始めて早3時間。なんにも浮かばない。笑っちゃうくらい浮かばなくて人のサインの練習し始めた。
消太さんには根詰めすぎるなとすでに4回釘を差されてるのでここらへんで休憩しようかな。
ゴロン、と寝転がるとちょうど様子見に来た消太さんと目が合う。
「出来たか?」
「全然です!今特に思い浮かばないんでもういいかな〜って諦めの境地に入ってきました」
「清々しいほど他人のサイン書いてんだな」
「シュシュシュって書く流れで自分のポンと生み出せないかなぁって思って…サインって難しいんですねえ」
まあな、と言いながら隣に座ってくる。正直、今のオレの立ち位置はヒーローと芸能人が5:5くらいだと思う。
先月は保湿クリームのCMとってきた。4ヶ月前はシャンプー、その前はアイスだったかな?
最初CMは断ろうと思ってたんだけど、あまりにも皆床にオデコ着けそうな勢いで「お願いします!!!!なにとぞ!!!ぜひ!どうか…!!!」って来るから、もし断ったらこの人たちクビになってしまうのでは…?と不安になってOKした。
ヒーローメインなら正直芸能人じゃないからって言い訳が通るんだけど、今のオレだとそれは通らない。サインか〜…。たいとの個性のおかげで外出時は顔変えてるから気付かれないけど、たしかに必要だよなあ…。
でもモチーフになるものあるわけでもないし…何がいいかな…。
「寝るか?」
「いえ…やっぱり今日手合わせしてくれませんか?こんな廃人みたいな生活してたらおかしくなりそう…」
「待て、座れ」
立ち上がろうとした右手を掴まれるので渋々消太さんの前に座る。
「何故休むことになったか忘れたか?」
「連勤のしすぎで体が限界超えたから…」
分かってるなら休めと怒られる。
「確かに人間はストレスにめっぽう弱い、…弱いが2日3日の無理のし過ぎでなった体調不良じゃないだろう。
何ヶ月も続けてた無理が一気に来たんだ、数日じっとしてたところで治らない
あと、治ったあとも前みたいな無茶してみろ、資格剥奪するように掛け合うからな」
「脅しだ……分かってますって…」
消太さんの足を枕にして寝転ぶと猫にやるように頭を撫でられる。落ち着く…。未だにあのベッドじゃなくて消太さんの使う寝袋が一番落ち着いて眠れると言うと、でっかいため息が返ってくる。
*相澤消太
やはり眠たかったようで、すぐ眠りに落ちるくましろを抱えてベッドへ戻る。
プロヒーローデビューしてから結婚を挟んだが、今の今まで休みらしい休みをとってこなかったくましろ。今年に入ってからは厄介な敵が増え、駆り出されては別の現場に呼ばれることがあまりにも続き、ついにストレスでボロボロ泣き出したかと思えば味覚障害のオマケ付き。
何しても味がぼんやりしていて、だから美味しくないと食欲が減りどんどん痩せてる。
急に活動を止めると憶測や噂、そして心配をかけるということでくましろには昨日正式声明としてSNSでだけでも短期間の休止宣言を出させた。
しばらくスマホの通知はなりやまず、通知のせいでバッテリーがなくなる騒動は起きたが、包み隠さずスケジュールや自分自身の体調を鑑みず活動しすぎて体を壊した、それを治すために休むとはっきり書いたのでまあマスコミにもこれで通せるだろう。
快方の見通しがだんだんできてきたものの、最悪少しの味覚障害は残るかもしれない状況だ。そうなった場合の体型維持はどうしようかと考えているが、本人はどこ吹く風。
テレビを付ければ人気絶頂のくましろが激務で体調を崩し一時活動休止ということで、ヒーローの働き方についてコメンテーターたちが好き勝手に言い合っている。マイクからの連絡的にも否定的だったり、休むことに文句を言うアンチは少ないそうだ。
こんなに若いのにクマが濃いくましろの顔を見やる。少し休みつつやりゃあいいものを…つい最近、学生時代にずっと手合わせに付き合ってくれてたじゃないかと俺も休んでないかのような口ぶりで責められたが、お前と違って徹夜で何連勤もそもそもしてないと返したのは記憶に新しい。
くましろの左手を握ると、体温が高いのかめちゃくちゃあったかい。
数時間後、昼寝から起きてきたくましろがノロノロとリビングへやってくる。
「寝れたか?」
「寝ました…」
目がしょぼしょぼしている。慢性的な寝不足でずっと眠いんだろう、猫かってくらい1日中寝ている。
水飲んどけ、と渡すと素直に受取り飲み干している。実験的要素として砂糖を小さじ2杯ほど加え、常人なら甘い…?と気づく程度のものにしてみたがどうか…と様子を見ているが気づいてなさそうだ。やはり薄味にはまだ気付けないほど鈍感なんだな…。
こんな状態で料理も作れなくなってしまったため、本人はどうにも手持ち無沙汰のようで机の上をひっきりなしに拭いたりホコリもないのに掃除機稼働してみたり、落ち着きがない。
「本でも買いにいくか?」
「本……あ!レンタルDVDがいいです、久々に映画みたいかも」
「待て、座って。…俺はお前のことを多少なりとも理解してるつもりだ、作品絞ってから行かねえと何借りたいかよく分かんなくてパニックになって泣くだろうから…何観たいんだ?」
大量にある作品を前に、決定打に欠けて何時間もウロウロし結局一つも借りられず大泣きする未来が見えたので引き止める。
「話が難しくないやつ…」
相当疲れてんだな、最初にその希望が出るとは。頭をボーっとして流し見しても楽しめるモンということか…もう幼児向けの映画とかでもいいんじゃないか?とも思う。
好みを聞いていくと、ジュブナイル映画や寝れないと騒ぐくせにホラー(特に台湾やタイなど)も好きだというくましろに驚きを隠せないでいると、YouTubeなどのゲームの実況でハマったのだと言う。
「怖いんですけど、オレがゲームやってるわけじゃないしコメントで画面小さくして読みながら見たり、配信してたらリアタイでコメント流れるからなんか他にも誰か見てるって思うと、面白くて…」
「意外だよ…今回はナシでいいだろ?」
頷くくましろ。あとはミステリー系も好きというので適当にここ数年で映画からレンタルになった一覧から数個をピックアップしていく。
「ポスターとかの雰囲気でばったり決めるのも好きなんですけどね…」
「映画館か……何年行ってねえかな」
「今度行きましょうよ、オレ映画館で食べるポップコーンとチュロス大好きなんですよね」
特別美味しく感じる!と笑うくましろの頭を撫でると犬みてえに頭を手のひらに押し付けてくる。また休みが合えばな、と返しサングラスと帽子をかぶせ、マスクをつけさせレンタルビデオ店へ。
「…あ、ありました!」
ピックアップした4作品が無事に見つかりレジに並ぼうと歩いていると書籍コーナーでくましろが表紙の雑誌コーナーを見つける。結構売れてんな、残りが少ない。
「……この撮影すごくやでした、」
「聞こえるだろ、静かに話せ…何か言われたのか?」
「なんか…良く分かんないギャルみたいなモデルの人に手触られて…男の子なんだし、ホントは女の子がいいよね?みたいな…」
「…それでこいつとこのページの写真こんな顔で撮れたのか?お前すげえな…」
カップルのような距離感でそのギャル…なのか?分からないモデルの女がくましろの肩に腕を乗っけて少しくっついている写真だ、そして普通に笑ってる。
「嫌だったんですけど、すごいムカつきましたけど…長引くほうが嫌だ!って思って、さっさとOKもらって帰りました」
もうこの出版社のものは断ります、と口にするくましろにそれでいいが、立派なセクハラだから公にしていいんだぞと伝える。
「じゃあ今日…あとで更新します」
そうしろ、と頭を撫でる。レンタルして適当な惣菜をいくつか買って帰る。味がするか分からないが、マカロニサラダと冷奴が食べたいと申告してきたくましろの分もいくつか買う。チョイスは謎だが、まあこの際なんでもいい。
家に帰り、あみだくじでどれから観るか決めくましろが1番気になっていたジュブナイル系の映画を見る。
なになに、あらすじは…フランスの片田舎にいる女のような容姿をからかわれている子どもと、転校してきてなじめない子どものひと夏の家出の話か…。
(観て良かった……)
(泣きすぎだろお前)
(ハッピーエンド刺さる…)
(ほら、飯食え)
(集中して全然食べてなかった……)
(…味する?)
(大葉の香りを感じます、おかゆの卵より強く)
(おお、よかったな)
(マカロニサラダは…なんかムニムニしてるだけに感じる…)