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25 大切なお友だち
*相澤消太
「み、3日も休んで除籍されちゃう」
「されねえし担任がしないっつってんだが」
熱のせいもあってかぴーぴー共有スペースで泣き喚くくましろに上鳴たちは大笑いしてる。微熱に下がったとはいえ、やっぱりダメージ2倍の体的にはまだ高熱くらいに感じてしんどいんだろう。まだ微熱で治りかけだから明日も念の為休むようにと言えばくましろは退学になると大泣き。いきなり泣き出すもんだからA組のやつらが目を真ん丸にして驚いていた。
「午前中だけ」
「だめだ、絶対悪化する……元に戻った緑谷たちとプリントやりゃいいって先生方言ってたから寝ろ」
「ゔぅ〜……」
何をぽろぽろ泣いてんだこいつは……ひっつかれてわんわん泣かれるので背中をさすっておく。タオルを八百万からもらい、くましろの顔に押し付ける。
「ほら、緑谷来たぞ」
「センセー、緑谷くんに押し付けないでよ!」
「仕方ねえだろ、話聞かねえんだから」
芦戸に怒られたが俺は悪くない。担任が除籍しねえっつってんのに「除籍になる」「成績下がる」とぴーぴー泣かれたらなす術無しだ。
「くましろくん、また熱あがっちゃうよ?また明日熱測ろうよ」
「おー……すげー!緑谷もうくましろの扱い方マスターしてんじゃん!」
小6にここまで扱われる高校生ってなんなんだよ……。熱が上がってきてしんどいのか、くましろは頷いて緑谷に手を引かれて部屋に行く。心配だから寝るまではついていく。
「くましろくんのお部屋、植物いっぱいでキレイだね」
「ゼンマイがくれたんだよ、殺風景だって」
「そうなんだ!プレゼント・マイクって優しいね」
「相澤さん、明日……」
「ん?熱次第だ、他の先生にはちゃんと口添えしてあっからちゃんと治せ。熱でフラフラなのにヒーロー基礎学できるわけねえだろ」
「………」
「返事くらいしろアホが」
「いだだだだ!!!はい!!!はい!!!!」
よろしい。いつもよりも全然力入れてねえのに痛がる様子を見るに、やっぱり本調子じゃない。
「緑谷、見張っといてくれるか?」
「はい!」
「よしよし……泣くな、大丈夫だっつってんだろ…早く治せ」
また泣きそうなくましろを横にして布団を被せる。寝かせちまえばしばらく起きねえはず。ものの数分で寝息を立て始めたくましろに安堵しつつ、冷えぴた貼り替えて氷枕も差し込んで部屋をあとにする。
「はえー!もう寝たの?」
「あぁ、のび太もびっくりの入眠速度」
「センセー泣かせてばっかでくましろちゃん可哀想!」
「バカ言え、爆豪たちの分もプリントと小レポート作成でなんとかって交渉してんだぞ……ほら、お前らも早く寝なさい。そんで切島と上鳴はお腹しまいなさい、冷える」
散った散った、と共有スペースから部屋に帰らせる。
*爆豪勝己
隣の部屋からぐすぐす泣いとる声がずっと聞こえて眠れねえ。クソが。何起きとんだアイツは。さっきまで微熱まで下がったんだから授業に出るとぴーぴーガキみてぇに泣き喚いとったくましろの部屋に入る。
「………おい」
「…ぇ?」
「泣くな、うるせえ」
寝ながら泣いとったらしい。デクは何やっとんだと思えば口あけてアホ面晒して寝てやがる。このクソデクが…
「……ねれないの?」
「オメーのせいだわコラ、寝ぼけんのも大概にしろ」
なんで!!!オレが!!寝れねえから甘えに来たみたいになっとんだ!!!!お前が泣きべそかいとったからだろ!!!ぱちぱち手のひらから火花が出かけてなんとか抑える。
「ぎゅー」
「あっちぃなお前……おわ!?」
ひょい、と体が浮いてデクと反対側、壁際に寝かせられる。オレとデクでくましろを挟むように寝転んでる。
……は????
は????????
気付いたら朝になっとった。くましろが両手でオレらの手を握っとったせいで抜け出すこともできねえで、エンデヴァーの息子から声かけられて起きた。
「ふ、仲良しだな」
「ちげーーーーわヤメロ」
「……やっぱりまだ熱あるな、くましろ。くましろ、起きれるか?熱測ってくれ」
寝ぼけてフニャフニャのくましろが測った結果、37.8℃。やっぱり今日も寝とけと色んな奴らから言われてくましろは不服そうだった……が点滴前より飯は食えとるし意識もハッキリしてる。
イレイザーヘッドに休むよう言われて渋々ながらも頷いたくましろとオレらが寮に残る。テレビとかはあっけど普通に暇だ。
「……図書室行く?」
「寝てろっつわれただろ、動くな」
「だって暇じゃん、ね、出久くん」
「オメーこういう時にデク使うな」
「あはは……ニュース見ようよ、今のヒーローランキングとか見れないかな」
確かに……数年後のニュース先取りできるかと思えば貴重だ。くましろからリモコンを貰って共有スペースのテレビをつける。この時間はワイドショーばっかで、ニュース特番みたいなのはない。
「あ」
「?……あ、母さんだ」
ミズコだ。再放送だが、バラエティ番組出とったらしい。当たり前のようにくましろも知らなかったみたいで見ている。変えるか、否か。
「……見んのか?」
「うーん、別に興味ないけど…これいつ頃のなんだろ」
もしもオレも親がプロヒーローでババァがテレビなんぞに出とったら何言われたもんかと気になってたまんねえと思う。勝手にガキの頃の写真とか出されてたらマジでブッコロス対象だかんな。
『ミズコさんは…確かお子さんいらっしゃるんですよね?今年いくつになるんですか?』
『あ〜最近会ってないからなー』
『『『会ってない???!』』』
わっかりやすい『え〜?』ってSEと笑い声が聞こえてくる。
『数ヶ月お家空けてるとか?プロヒーローと一般職の旦那さんと…ってなると家帰れない日もあるでしょ』
『いや、もう何年も会ってない……息子もそうだけど、私も息子に興味ないから』
『興味ない?!どういうこと?!』
空気が凍りかけたスタジオをなんとか芸人たちが場をもたせてるんが嫌でも分かる。ここまであけすけに発言するやつは芸能界ではいねえからな。
『居ないもんとして扱ってるからなんとも。たしか高校くらいだったと思うよ』
『えぇ?喧嘩とかですか?可愛い〜って思ったこともあるでしょう?』
『いや、ないね』
あんまりにはっきり言い切るもんだからスタジオ観覧のモブ共も、芸人たちも静まり返ってる。
「かっちゃん…」
「……」
デクと目が合う。『なんで消さなかったの?』って顔で見られる。…ミズコの発言予測できるわけねーだろ。くましろの顔を見れずにいるとテレビがブチン!と真っ黒になった。
「……マイク」
「おー爆豪、緑谷!そろそろ戻るはずだから体に異変ねえかリカバリーガールんとこ行くぞ〜」
プレゼント・マイクにデクと一緒に手を引っ張られる。くましろの顔はイレイザーヘッドで見えんかった。
*相澤消太
事故も事故だ。暇だからつけてたんだろう。リモコンは爆豪が持っていたが明らかに困惑した表情だ。意外や意外、あいつ少し幼いと結構表情に出るんだな。
テレビは再放送で数ヶ月前に放送されていたおそらく片手に数える程度しかメディアに出ない神代さんのバラエティ番組の放送事故と呼ばれた回のもの。放送事故と呼ばれた理由は単純、我が子を世話してないことを名言し『居ないものとして扱っている』と発言し、MCやらスタジオにいた芸人でさえも言葉を失ったからだ。
まさかよりにもよってそれを見てるとは。マイクに緑谷たちを任せてくましろの隣に座る。思わずテレビの配線ぶち破っちまったが、職員室に予備あっただろうか……。くましろは泣きそうな、怒ってるようなそんな表情だ。
「くましろ」
「………」
「くましろ、そんなに握りしめたら血が出る……手、出して」
「………いやです」
「くましろ、お願い」
公共の電波にのせてわざわざ『興味ない』『可愛いと思ったことない』『どうでもいい』と言い放たれたくましろがどう思うかなんて、興味ない神代さんからしたら本当にどうでもいいんだろう。アンタがどうでもよくても、自分に興味ないように見えても、くましろは中学生までずっとたまにしか帰ってこない両親をあの家で待ち続けたというのに。
あまりに一方的な振る舞いに反吐が出そうだ。こうやって何度も善意や純粋な好意を、心をなじられてくましろは何度『何でもないふり』をしてきたんだろうか………あぁ、だめだ。表情が固くなりそうなのをなんとか抑える。
「………」
言葉もなく泣き出したくましろを抱きしめる。今回ばかりはカウンセラーんとこ連れてったほうがいいかもしれんな。
「母さんなんか大嫌い」
「うん」
ぽんぽん、とあやすように背中を擦る。
「…あんな、イジメと変わらないじゃないですか…」
「そうだな、ほらタオル」
「ゔぅ…っ、生まれてこなきゃよか「くましろ、それはだめ。約束しただろ」…」
「寂しいこと言うなよ、頼む……俺はお前を拾えて良かったと思ってるんだから」
「……でも前手ぇかかるって」
「手はかかるが可愛いよ……くましろ、俺は……くましろが嬉しそうにしてたら自分の事のように嬉しいし、悲しんでたらどうしようもなく落ち込む。少し前までは諦めてたヒーローになるためにできないことだらけだったお前が…泣き言言わずにいろいろ習得してるのを見るのは誇らしい。まぁ、まだまだだが」
「上げて落とす………」
「甘いことだけ言うんじゃ先生は出来ねえからな」
真っ赤に腫れ上がった目元に指をやる。ゴシゴシ擦りやがって……腫れるからやめろっつってんのに。雄英に入って、試験も一位で。同じようにヒーローを目指す同世代からいいように刺激を受けて、プロヒーローである教師陣からも認められて。
プロヒーローの母親に無理だ無理だと刷り込むように言われて諦めていたくましろが認められることで、出会った当初よりも目がいきいきとしている……カウンセラーんとこ行くのは変えねえが、敵に堕ちるっつーのは避けられそうだ。自己肯定感が少しでも育ってくれれば何より。くましろの頭を撫でるともっと撫でろ、とぐいぐい頭がやってくる。
「……落ち着いた?」
「はい……爆豪くん、気にしてないといいけど」
「そうだな……もう少し目を冷やせ」
「はい」
ぽふ、と俺の胸元に頭を置いてきたくましろ。頭を撫でてると体が脱力して寄りかかってくる。ひとしきり泣いて寝ようとしてるのか。そろそろマイクたちも戻ってくるはずだ。
「お……寝た?」
「あぁ……まだチビのままか」
「おー、そろそろ戻りそうなんだけどなあ」
緑谷たちもマイクの腕ん中で寝てる。こいつほんとに子供から好かれんだな……。
(平気だったか?)
(持ち直しはしたが……はぁ、あんな言われようじゃ誰だってくるだろ)
(あちゃ〜…まさか再放送当たるとはな……あの放送酷かったもんな、オールマイトさんも珍しくキレてたし)
(そりゃキレるだろ、俺だってキレてんだ)
(ま、そうか……お、起きるか?)
(う……)
(くましろの横置いとけ、くっついて寝るだろ)
(お〜……爆豪起きたか?)
(ねてねぇ…)
(すっげぇ眠そうだけど…ちょっとくましろと一緒にいてくれるか?)
(ん……)