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24 どこか懐かしいお友だち
*神代くましろ
………??
なんかあったかい。相澤さん?と思って目を開けると金色のきれいでふわふわの髪の毛。爆豪くんだ……反射的に抱き寄せて頭に顔を埋める。髪の毛ふわふわ、でもつんつんしてる。なんかくすぐったい。
「……おい、起きたんか」
「……起きた…あれ…なんか爆豪くん小さくなった?」
「個性事故で戻ったんだわ………体調は」
ぐる、と寝返りをうってきた爆豪くんと目が合う。ほんとだ、なんかちょっと……目が丸い!幼いってやつか。ほっぺももちもちしてる気がする。
「おお」
「人の話聞けやボケ」
そんで口癖は変わらないんだ!熱でぼーっとしてるからか、ここで寝る前の出来事があんまり思い出せない。リカバリーガールに話しかけられたりしたような気がするけど……
「吐き気は。あと食欲」
「どっちもない」
「食欲は出せアホ」
おでこをツン、と押された。ダメージ2倍のこと、相澤さんあたりから聞いたんだろうか?わざとじゃないって分かってたけど昨日の夜は痛かった。なんか………虫歯がズキン!って急に痛んだとか偏頭痛みたいな瞬間的だけどしっかり痛いって感じ。
「……わ、めっちゃ連絡きてる……」
「気持ち悪くなんぞ、見ンな……お前、なんで夕方来たんだよ」
「夕方?」
「モブが何か言っとった時に来ただろうが」
「あー……普通科のあれね。そりゃ、おれと爆豪くんは切磋琢磨し合う
向こうから攻撃仕掛けといて、こっちは反撃も許されないんだよ。だからヘイトを自分に向けただけ」
ズルいよねえ、ヒーロー科に入る=すごい個性で力を持ってるって図式になるみたいで、正当防衛のためであっても大きく騒がれる要因になるって相澤さんが前に言ってた。いつもの爆豪くんや出久くんなら対応できただろうけど、6年生に戻っちゃってるから…気の強い爆豪くんならやり返してパンチしかねないし。
「……クソお人好だな」
「へへ、ヒーロー向きでしょ」
そう言うとちょっと鼻で笑われた。そういえばなんで爆豪くんがいるんだ?
「爆豪くんなんでおれの部屋いんの?」
「……よく見ろ、節穴か?」
痛い。ほっぺ無遠慮に抓られてる。部屋を見渡すとゼンマイに貰った植物たちがない。……あれ、ここ爆豪くんの部屋?
「……隣だから寝ぼけたとか?」
「ちっげーわ、お前がフラフラで来て帰れっつったら『ここで寝る!』『ダメなら廊下で寝る!』とか駄々こねやがったんだろが」
「……ごめん、マジで全然覚えてない」
飲めとアクエリを出された。冷たくて美味しい。ご飯全然食べれてないから薬飲んでも効いてないのか、熱が全然下がってる感じがしない。熱いから寝汗相当かいてるぽくて、アクエリが美味い。染み渡る………喉カラッカラだったんだ。
「爆豪くんはご飯食べた…?出久くんも」
「食ったわ……つかなんで無個性のデクが雄英いんだよ」
「さぁ?おれは個性ある出久くんしか知らないから……仲良くしてよね、おれの友達なんだから」
「知るか」
「あ〜ひどーい爆豪くんはおれの友達に酷く当たるんだぁ」
「うるせぇ、さっさと寝ろ」
「ふふ、もちもちだね。爆豪くんが作った麻婆豆腐また食べたいなぁ」
「あ?」
「ちょっぴり辛くて美味しかったんだよ」
辛味をだいぶ抑えてくれたあの麻婆豆腐本当に美味しかった。おかわり!ってお皿出したらなんでおかわりがある前提なんだって怒られたっけな。
*爆豪勝己
くましろが寝落ちた5分後くらいにプレゼント・マイクが様子見に来た。
「さっき一瞬起きて寝た」
「おーそうか、吐き気がとかなんか言ってたか?」
「いやなんも…これ飲み干した」
空になったペットボトルを見せるとオレの部屋の冷蔵庫にゼリーやらなんやらが補充されてく。
「ん〜熱下がんねえなぁ……点滴考えねえとな」
「ミズコは来ねえんか」
「まぁ〜、そうだな。息子が誘拐されかけたときも来ねえ人だ、熱では来ねえわな」
「……起きる前泣いとった」
「そぉか、助かったぜ爆豪。お前らみたいな距離感の友達にコイツどんだけ救われてっか…枕変えるか」
わしわしと遠慮なく撫でられてプレゼント・マイクを睨む。変なあとつくだろが。昨日、オレとデクだけがガキの時は雄英は随分一人の生徒に贔屓すんだなと思った。それがNo.1ヒーローじゃないにせよ、トップのヒーローの息子ともなれば尚更。
けどA組の奴らが溢してたくましろの家庭環境と、モブ共が色々言っとった噂が本当ならこいつは間違いなく保護対象だ。虐待も虐待、ネグレクトだ。保護がイレイザーヘッドかプレゼント・マイク担当なんだろ。
「お前も早く寝ろ、明日かそこらには戻るらしーしなぁ…じゃ、オヤスミ」
「おう」
横になるとくましろが後ろからすかさず抱き枕みてぇにぎゅうぎゅう抱きしめてくる。あっっつ……コイツどんだけ熱出してんだ。
*緑谷出久
かっちゃんたちが朝になっても降りてこない。イレイザーヘッドに二人分の朝食を部屋まで持っていってほしいと頼まれて部屋に向かう。くましろくんの部屋は誰もいなくて、かっちゃんの部屋に入る。
…あれ?くましろくんこっちに居る!
「かっちゃん、おはよう……朝ごはん運んできたよ」
「………おぉ…おい、くましろ起きろアホ」
「……」
顔が真っ赤なままのくましろくんは反応がない。寝てるだけだよね…?一応冷えぴたの替えとスポーツドリンクを枕元に置く。
「チッ…起きやしねえ」
「熱、下がんないね」
「そろそろ点滴だとよ……デク、これ一口でもいいから食わせろ。叩き起こせ」
「えぇ……くましろくん、くましろくん。朝だよ?」
あまり強く揺さぶりすぎないように肩を揺する。手も顔も肩も熱い。冷やしたほうがいいんじゃないかと思って手にペットボトルを握らせる。これ結構冷たいからきっと気持ちいいはず…。
「…ぅ……?だれ…?相澤さん…?」
「出久!」
「いずく……?」
「起きたんなら飯食え、そんで薬のめ。」
「ん……」
かっちゃんの声掛けで、教室にいた時よりもふわふわした話し方のくましろくんはムクリと起き上がり、ゆっくりベッドから降りてゆっくりお粥を食べ始める。だるくて仕方ない、って感じだ。
「ぁ゛ー……味しない…」
「お腹減らないの?」
「うん…お腹空いてない」
「入るぞ……起きたか、熱は?」
「測ってねえけど下がっとらん」
「参ったな……点滴視野に入れんぞ、くましろ。緑谷も爆豪もありがとな、看病大変だろ」
「寝てばっかだからなんもしとらん」
「ぼ、僕も特には…」
「言われてんぞ、くましろ……脱水なるからまずこれ飲め。ほら、左手」
「だるい……」
「あぁ、分かってる。あんま動けねえんだろ……何口なら食える」
「………3なら、たぶん」
イレイザーヘッドがスプーンをくましろくんの口元へ持っていく。なんとかおかゆを咀嚼して、3回だけ食べたら薬飲んでくましろくんは抱えられて行った。
「くましろくん、大丈夫なのかな…」
「症状的にはただの風邪だっつっとったから治るだろ」
そうなんだ。それでもあそこまで重症化してるのを見ると、個性の反動って馬鹿にならないな。
「おい、デク」
「?」
「お前、いつもみたくミズコのことあいつに聞くなよ」
「…え、な、なんで?なんかマズかった?」
「……昨日ン時もだけど、明らかに顔つきが変わる。気まずいとか後ろめたいとかそーいうんじゃねえ……なんつか…ぶっ殺すって気すら感じる目つきしとる」
「くましろくんが…?」
「それに、イレイザーヘッドたちの贔屓ぶり見てりゃ訳ありなのアホでも分かんだろ。プレゼント・マイクは呼んどるが……他のヒーロー科の教師でアイツのこと神代って呼んどる奴が一人もいねえ。クラスの奴らでさえもだ」
「確かに……」
「ヒーロー科通ってるつったって高校の間は未成年で保護対象だ、プロヒーローたちに共通で保護されるってよっぽどだろ」
何がトリガーになるか分からないから迂闊な行動はするな、とかっちゃんに釘を刺された。確かにミズコはインタビューでも結婚も出産もオープンにしてるのにくましろくんや家庭の話を全くとしていいほどしない。最初から隠しているなら分かるけどあっけらかんと旦那がいる、この間子供生まれたと発言したのは彼女自身なのにその後インタビューで突っ込まれても『知らん』『子ども?さぁ、元気なんじゃない?』って感じだった。マスコミに巻き込まれないように、憶測で書かれないように敢えてあんな言い方してるんだと思ったけど……かっちゃんの言うとおりなら、くましろくんは……長い間ずっと一人だったのかもしれない。
くましろくんとイレイザーヘッドが帰ってきたのは夕方で、すっかりくましろくんの顔色は良くなっていた。ぐったりしたままなのは変わらずだったけど。
*相澤消太
驚いた。当時の記憶に戻っている状態の緑谷と爆豪にここまで懐かれているとは。本当にくましろは天性の人たらしだ。点滴からの帰り、寮で二人が心配そうに出迎えてきた。絶賛問題児である爆豪ですら、小学6年とはいえ思春期に差し掛かっていて人当たりは若干きつい。その爆豪でさえくましろを気にかけている。
「また寝とるんか」
「点滴でだいぶ良くなったみたいでな。ようやく回復の眠りに入ったんだよ」
「熱下がったんですか?」
「あぁ、まだ微熱だが…もうぶり返すことはないはず」
「そうなんだ」
「うん。二人ともくましろのこと気にかけてくれてありがとうな……個性事故とはいえ、お前らは今の年齢当時に一時的に戻ってるからくましろとの記憶はない……知り合いですらない状態なのにベタベタくっつかれてびっくりしただろ」
「撫でくり回されて大変だったわ」
「そうだな、爆豪は寝かしつけてくれたんだろ?」
「押し入られたからな」
「偉い偉い…緑谷も定期的に様子見てくれてたってな、助かったよ」
「へへ…」
(でもなんか、不思議で。さっきかっちゃんとも話してたんですけど…なんかどこかでくましろくんと会ったことあるような気がするんです)
(もしかしたらその、大きくなったときの記憶がぼんやりあるからなのかもしれないですけど……なんか懐かしい感じ?)
(ほう、興味深いな)
(昔会ったことあんのか?……コイツの家どこなんだよ)
(あー……保育園とか幼稚園、小学校の通学圏内は被らない距離だ。梅園の方だから)
(梅園………知らねえわ)
(本当に人懐っこいからな、そのせいかもしれん……あ、これ。おみやげのドーナツ)
(ガキ扱いすんなや)
(ガキでしょうよ……ほら、マイクがセレクトしたお菓子だ)
(わ、いっぱい…)