MHA2
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22 ずっと会いたくて
*轟焦凍
「あ!轟くん!」
目が合った瞬間ブンブンと手を大きく振るくましろに俺も手を振り返す。あいつ元気だな。
「ちょ、くましろくんしーっ!バレちゃうから!」
隣にいた緑谷がそう言うも、何人か周りの奴らは2度見してから明らかに距離を取ってるからもうバレバレだと思う。俺とくましろと緑谷が仲いいのはメディアでもよく流れてるから、わざと放っておいてくれてるんだろう。
「2ヶ月ぶり〜っ!ずっと会いたかったんだよ、元気だった?!背伸びた!??なんか出久くんも身長伸びてる気するしさぁ」
「お、おぉ……緑谷も久々だな。多分伸びてはねえぞ」
ぴょんと飛び込んできたくましろを落とさねえように受け止めて背中を擦っておく。ダメージ二倍なのに俺が受け止めるの前提の動きをしてくる。
「ほらぁ、僕も伸びてないって。くましろくんの気のせいだよ……轟くん、久しぶり!海外出張お疲れ様だね」
「おぉ、ありがとな……いてて、くましろ抓るな」
「おれを!置いて!行った!フランスは!さぞ楽しかったんだろうね!!」
両方の頬がちぎれるんじゃねえかってくらい伸ばされた。まだ拗ねてんのか。事務所で名指しされたら行くしかない。くましろは個人で動いてるし、まあでも申請すれば一緒に行けたかもしれねえが急を要する任務だったからくましろにはフランスついたあとに連絡した。ほかの奴らは事務所の連携もあって事前に知らされていたからくましろだけあとで知る形になったのが嫌だったみてえで、ずっとチクチク刺されてる。
「悪かったって謝っただろ、機嫌直してくれ」
「ふーんだ」
「ほら、フランス土産色々持ってきたんだ」
「え!僕にも?ありがとう、轟くん」
「あぁ、あとワインなんかも買ったからそれは郵送した……くましろは酒弱いからワインはなしだ。先生が大変だからな」
「なぁにこれ、塩?」
「あぁ、スパイスとかも有名らしくてな……くましろの作る飯うまいから調味料買ってきた」
「なんかいいにおいする」
俺に寄りかかりながら座るくましろはそのまま袋をガサゴソ漁って、好きそうだと思ったマカロンにテンション上がってた。
「石鹸!?フランスって有名だよね、マルセイユ石鹸」
「あぁ」
「轟くんありがと〜!最近消太さんの義足のとこ、かぶれやすくてさ……無添加の石鹸いろいろ見てたとこなんだ」
「そうか……先生元気か?」
「うん、今日も喧嘩してきた」
「喧嘩したのか?」
「轟の顔見てえなとか言うから、おれが長いこと家帰れない時だってそうやって言ってくれないくせにってお腹突いてきた」
「何言ってんだ、言いまくりだぞ……なぁ緑谷」
「そうだよ、言うなって口止めされてるんだから僕たち……職員室ですごい寂しそうにしてるんだから。プレゼント・マイクが慰めてるの何回も見たことあるし」
「そうなの!?ふふん、ツンデレだ」
気分が良くなったのかくましろが俺の頬を擦ってくる。さっきめちゃくちゃ伸ばされたからな。
「どんなお蕎麦でも奢るよ」
「ふは、いいのか?」
「今日のために1ヶ月前から蕎麦抜いてきた」
「本当、変なところストイックだよねくましろくんって…」
緑谷も呆れてる。飯田がそろそろ合流するはずだ。……ん?何だこのキーホルダー。猫?
「これね、飯田くんのお兄さんが作ったんだって!イレイザーキャット」
「すげえ、手作りなのか?」
あの人器用なんだな……くましろは先生が褒められると自分が褒められるよりも嬉しそうにする。イレイザーキャットも凄い凄いと言えば誰よりも嬉しそうに笑ってる。可愛いから頭を撫でているとガションガション、と飯田の歩く音が聞こえてきた。
「すまない、待たせてしまった」
「久しぶりだな、全然待ってねえよ」
「飯田くん、そろそろお兄さんの口座番号教えてよ」
何を?と振り返るとイレイザーキャットのお金を全然受け取ってくれないのだと俺に愚痴ってきた。飯田は事あるごとに何十万も振り込むだろうから教えられねえと。確かに想像できる。
「封筒で渡せばいいんじゃねえか?」
「受取拒否するの」
「じゃあもう郵送で送りつけちまうとか…」
「轟くん、お金を郵送で送るの法律違反だからね?!」
そうなのか…知らなかった。緑谷にだめだと言われて確かに渡すすべがもう無えなとくましろの頭を撫でていると思いっきりお腹がぐう、となる。
「轟くんのお腹が限界迎えて泣いてる」
「泣いてねえ」
「可哀想に……ひもじいよぉって」
「くましろ、茶化すな」
ニヤニヤしてるくましろの腹をくすぐると子供みたく爆笑するくましろを足で固定してくすぐり続ける。
「店って決まってるのか?」
「うん、予約してあるよ」
「いつもすまないな、緑谷くん」
擽られて爆笑してるくましろをスルーして会話できる緑谷と飯田にA組だったころを思い出しながら例を言う。力が抜けてぐったりしてるくましろの肩を軽く叩く。
「歩けない」
「おぶってやるからちゃんと掴まれ」
「轟くんが擽ってくるからじゃん!」
「くましろが俺の腹で勝手に吹き替えするからだろ」
「はいはい、二人とも喧嘩しないの!予約時間に遅れちゃうよ!」
緑谷にストップをかけられて歩き出す。
*モブ(ショートのフォロワー)
「い、いらっしゃいませ!」
ダメだ声震えてるしひっくり返った。フランスから1週間前に帰国したってニュース見た…ショートが!!!!目の前に!!!!帽子かぶってるけど全然変装できてない!!!しない派なのか???してるつもりなのか…???
「緑谷で予約しました、4人です」
緑谷って……デクだったの??!!待ってインゲニウム!!?!え!??neutralもいるじゃん!!!!
「ひゃ、はい、こんにちは!」
限界過ぎてよく分からない挨拶を返してしまった。
「出久くん、店員さんいじめないでよ!震えてるよ」
「い、いじめてないよっ!」
「出久くんを怖がってるようにしか見えないけど……?お姉さん、大丈夫ですか?」
バイト4年目だけど、私の挙動不審な様子なんて初めて見た店長兼ヒロオタが助っ人にやってきてくれる。ちなみに店長はneutralとダイナマを勝手に息子にしてる。
「も、申し訳ございません!この子ショートのフォロワーで固まっちゃって……イケる?」
「い、いけます!!予約席までご案内しますね」
「轟くんのフォロワーだって、すごいねえ」
「チャート2位だもんねぇ………あっ!べ、別にくましろくんがどうこうって訳じゃ!」
「緑谷くん、そのフォローだと余計怪しいぞ……」
インゲニウムにツッコまれてる……デクの前をるんるんで歩いてたneutralがくるっとインゲニウムの後ろに下がってきた。え、ドッキリテレビで見た拗ね方してる…!本当にこうやって拗ねるんだ…!
「いいもん、人気落ちたもん」
「落ちてない落ちてない!違くて!!」
「廊下で騒いだらお店の迷惑だ!まずは席につこう!」
インゲニウムも中継とかで見るまんまだ……確か、ショートたちのクラスで学級委員やってたんだよね。ダイナマとか、ピンキー、セロファンみたいな癖つよヒーローまとめてただけある…!流石だ。個室に近いお座敷に案内してメニュー表を手渡す。ショートが奥側に座って、拗ねちゃったneutralがインゲニウムの横に座ろうとした。
「くましろ、隣来てくんねえの?かぼちゃの天ぷらやるのに」
???!!??!?!?!わ、私は今、何を…聞いて…??見てる…??恋人に甘えるようなショートはneutralを見上げている。neutral、かぼちゃの天ぷら好きなんだ……毎回あげてるかのような口ぶりだし、ショートなら多分あげてそう。本当に仲いいもんね、この二人。
「……だって出久くんが」
「ほんっっっとうにごめん、そういうつもりで言ったんじゃないよ…本当だよ、ごめんねくましろくん」
「くましろは今期体調崩したりあ……イレイザーヘッドに付き添ったりしてそもそも活動休止がちだったんだから、不人気でランキング落ちたわけじゃねえだろ?」
「そ、そうだよ!やむを得ない事情だけど、休みがちにもかかわらずトップ10にいるのは凄いことだよ!!」
す、凄い……ものすごい褒めるじゃん…。褒められたneutralはご機嫌になったのかニコニコ笑顔になってショートの隣に座った。
「出久くんに褒められた、轟くん来る前は筋肉落ちすぎって怒られたんだよ」
「確かに細くなったな」
「怒ってないよ!僕は心配しただけで……」
「嘘、顔めっちゃ怖かった」
「緑谷くんは昔から怒ると結構怖いものな……さ、席についたらメニューを決めよう!」
流石インゲニウム……!お茶を受け取ってもらい、おしぼりを渡していく。さらっと惚気みたいなのを見せられた気もするけど、ショートとneutral……というかneutralがいたらもう仕方ない。公認の皆のneutralだから、確か烈怒頼雄斗とチャージズマがインタビューneutral取り合って喧嘩してるのも見たことあるし。
ショートは天ざる、neutralは温かい天そば、インゲニウムはとろろそば、デクはうんうん悩んでneutralと同じのにしてた。
「皆さん、アレルギーとかありますか?」
「?ないです!蕎麦湯飲めます!」
「そしたら……今春の山菜の天ぷらを期間限定でやってて。私から奢らせてください、一生のお願いです」
「え!?!サインとかじゃなく!?!」
デクの慌てた声がしたけどとりあえず頭は上げないでおく。サインなんてそんな、図々しいにもほどがある。この四人は今日プライベートで来てくれたんだし。テレビのロケならお願いしてたかもしれない。
「実は……私の母は足が悪くて。先代インゲニウムに助けていただいたことがあるんです。それに、ショートがフランスに行く前にあった銀行強盗の火災の事件……人質には取られなかったものの、口座開設しにいった弟と付添の母がいて。逃げ遅れた二人をショートが助けてくれました。あと、私の従兄弟がデクにもneutralにもお世話になってますし…全員!私の人生において直接的、間接的に助けていただいてますので!ささやかすぎるんですけど……」
「え、全員と関わりあるのすごくない?!」
neutralがぱちぱちと拍手してる。か、可愛い反応……。従兄弟の名前をデクに教えたらすごい驚いてた、学年でとかじゃなくてデクのクラスの生徒だからね。neutralも個性を伝えたらあの子か!って覚えててくれた。
店長に無理言って4人分の山菜天ぷらとプラスアルファで作ってくれた。
「わ!見て、かぼちゃいっぱい!」
「良かったな」
「出久くんにたけのこあげる」
「いいの?ありがとう」
な、仲良しすぎない…??ほわほわしてる…空気が浄化されてる、ここ。
「轟くん、湯葉好きじゃなかったか?」
「お、飯田ありがとな」
(お姉さん、写真撮ろうよ!轟くんとツーショからね!ほら轟くん、ショートですって顔して)
(どんな顔だ…????)
(キリッと!インタビュー受けてるときみたいな顔!)
(ヒェ………アリガトウゴザイマス!!!!)
(わぁ、なんかお茶子ちゃんみたいだね)
(確かに……)
(次、飯田くん!インゲニウムです!って顔してね)
(なんだか恥ずかしいんだが……こうか?)
(うん、お兄さんに負けてないスマイル!)
(アリガトウゴザッス!!!)
(野球部みたいな挨拶だ…次くましろくん?僕写真とろうか?)
(何を言ってるの出久くん、担任と臨時講師でサンドイッチだよ)
(くましろはピースなのか、インタビューの時の顔じゃないのか?)
(いーの!ちゃんと上から可愛く撮ってよ、轟くん)
((高校生の従兄弟と同じこと言ってる……))
(お蕎麦も天ぷらも美味しかったねぇ)
店長が自分のフォロワーと知り急に恥ずかしくなってもじもじしてしまうくましろくんは轟くんに揶揄われながら写真を撮ります。何故かくましろくんのほうが顔真っ赤ですが、ずっとお店に飾られることになり次に出久くんと相澤さん、プレゼントマイクの三人で来たときに大変に揶揄われラジオのネタにされます。
このほわほわ組は定期的に合って近況報告し合ってるといいなぁ。