MHA2
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12 おじさんは優しいかも
*プレゼント・マイク
「やなの」
「嫌かあ」
「や!」
嫌って言われてもな。相澤は授業だし、もちろんA組の連中に懐いてきたとはいえあいつらも生徒で授業中だ。A組に行きたいと言われても無理なもんは無理。
「なぁ神代」
「?」
「なんで海が青いか知ってるか?」
「うみ?」
「おう、海分かるか?」
「わかるよ」
いまの神代は4歳。幼稚園の年中さんだ。本来の15歳の神代とは全然勝手が違う。まず興味がコロコロ変わるから会話が成り立たないことのほうが多い。それに、神代家の親は機能不全だから対話が少ねえ中育っちまったせいで語彙力がない。単語の意味を知らない、ちょっと認識がズレてるせいで使い方を間違ってるのも多々ある。
突飛な会話口が多いから、こちらも突飛なことを聞いてみるとぴたりとじたばた動くのをやめて考え始めた。お、効果あるなこれ。
「うみが青いりゆう?」
「うん」
「かんたんだよ、お魚の涙でできてるから」
…なんちゅ〜〜可愛い答えだよ!!!
「でもよ、昨日神代がわんわん泣いてた時、涙は青くなかったぞ?」
「ないてないもん」
「泣いてたくせに」
鼻をつまむとやめて!と手が伸びてくる。ちっちぇー頃から美人なのなあ、こいつ。
「なみだもおみずも透明だから、そらの色をうつすんだよ」
「へえ、面白いな…じゃあさ、雲は何でできてると思う?」
「まひゅまろ!」
マシュマロが言えねえの可愛すぎねえ???イレイザーもまだ「イエイザー」つってるし、オールマイトも「オーウマイト」っつってる。超かわいい。まだ4歳なんて赤ん坊みたいなもんだもんな。
「マシュマロにしては透明な雲あるぜ?ホラあれとか」
「どれ?」
「あれ」
窓を指差すと一生懸命見上げてる。どちらかというとちぎったときのわたあめみてえな薄めの雲を指差す。
「それはとけてるからだよ、まひゅまろも食べるととけるもん」
「雨がふって溶けたのか、そうかそうか」
子供の考えてることは不可思議て面白い。ちゃんと神代なりの理屈があって展開するのも面白い。
「太陽があちちなのかも」
「あちち?」
「うん、ぼくたちより近いもん」
そうだなぁと頭を撫でる。頭を撫でると不思議そうにするがすぐ嬉しそうな顔になる。俺と神代が窓際から雲を眺めてると、そわそわして会話に入りたそうなセメントスがこちらを見ていた。
道行く小学生や中学生にビビり散らかしてる神代だが、俺らみたいなおっさんは比較的打ち解けるのが早いような気もする。母親の影響でプロヒーローの存在も知ってるし、何人かには会ったことあるっつってるしセメントスも大丈夫だろう。相澤は甘やかすからダメだっつってるけど。
「じゃあセメントスは何でできてると思う?」
「え〜〜???」
振り返って見てみれば眉間にシワ寄せてうんうん唸ってる。さて、何が出るか。
「……はんぺん?」
「オー、柔らかそうなもん出てきたな」
そんでセメントスが好きそうな丸くて柔らかいもんでもある。思いの外可愛いもんに例えられたセメントスは嬉しそうだ。
「おもち」
「おもちかぁ…ふふ、昨日相澤先生に見つかっちゃって渡し損ねたこれ、食べてみるかい?」
「なぁに?」
「わらびもちだよ」
「もち?」
「うん、プレゼント・マイクにもっと小さく切ってもらってね」
「ありがと!」
わらびもちと言われてピンときてない神代は言われたとおり俺に寄越してくるので袋を広げて、付属の串で練り切るように3等分にしてやる。4歳だしさすがにこの大きさで詰まらせはしねえよな……。
「神代、もちはよく噛むんだぞ」
「ん」
あー、と口を開けた神代の口元へ黒蜜を絡めたわらびもちを運ぶ。美味かったみてえでにんまりしてる……可愛いからスマホで写真撮っとく。セメントスと俺が怒られたときにこれで相澤に許してもらおう。
オールマイトにも見守られて笑顔でわらびもちを完食した神代はもう破棄する予定の印刷ミスしたプリントなんかで折り紙やら落書きで遊び始める。
「何描いてんだ?」
「じっとして!」
ぴた、と動きが止まる。あ……やべ、これ個性使ってんのか?神代に自分の個性が何か自覚あるか確認で聞いたときは操作系と勘違いしてるようだった。まだコントロールも何もかも出来てない、周りに毛嫌いされ始めた頃だ。
言葉も発さない俺を見て気付いたのか、ミッドナイトがすっ飛んでくる。
「あらあら、くましろちゃん…見て?プレゼント・マイク空気椅子でしんどそうよ、座らせてあげてくれないかしら」
相変わらず誘導がうまい。
「あ………ごめんなさい…」
「いーっていーって、これから上手くなりゃいいんだよ」
やっと動けるようになった。すでにもう個性でやらかしたことあるのか、眉を下げて泣きそうな神代の頭を撫でる。
「あー……泣かせたわね」
「え〜、俺かあ?よしよし神代〜、んなしょげんなよ」
頭を撫でても服の裾を掴んで下を向きっぱなしの神代が、教師陣が気にかけていた言葉を発する。
「ぼく、たたいたお兄ちゃんたちも……」
「うん?ゆっくりでいいぞ」
嫌な予感がする……が、一応ネットで調べた分と、塚内さん経由で調べた限り神代っぽい個性事故による死亡事故はなかった。
「いたいから……やめてっていったのに、っ」
「うん」
背中を軽く擦る。
「うご、うごかなくなっちゃった…」
「そうか……起きたことだけ捉えたら個性の暴走だなァ……けどよ、先に神代のことぶってきたのはそいつらなんだろ?1人の神代に対して3人で。
個性が暴走しないようにって話はしても、神代のこと誰も責めねえよ……ここにいる大人はな」
ぽろぽろ大きな目から涙を流す神代は見ていて胸が締め付けられる。……しかし、ここまで罪悪感を背負う神代がこの件を忘れるだろうか?もっと小さい頃、幼稚園で同学年の子を遊んでるうちに興奮しちゃって心臓を止めかけたことがある、というのは聞いてる。そのせいで園内の各家庭から不満や苦情が殺到し、個性の使い方も制御の仕方も分からない神代に個性を使わないようにと約束させられたこと。
「そのあと、その子たちどうしちゃったの?」
「わかんない……車でびょういん行った…」
「じゃあ大丈夫だ、神代が大人呼んだのか?」
そう聞くと頷いてる。4歳で個性事故を起しちまったのに誰かに頼れる冷静さは大したもんだ。神代さんにもしかしたら話が行ったのかもしれねえが、いくらなんでも流石に……実の息子が個性事故を起こして死人だしちまったらメディアも黙ってねえだろうし、あの人自体も黙ってねえだろう。何も言われてないっつーことはそのガキどもは病院で治療されて、事の経緯を警察に聞かれてそりゃお前らが悪いってなったんだろう。
「マイク………何があった?」
「個性の暴走の話だ、あとで話す」
「それもそうだがこの大量の包み紙はなんだ?」
「あ、アタシ授業の準備しなくちゃ。くましろちゃん、またあとでね」
ミッドナイトこのヤロ……!!!見限るの早すぎだろ!??
「今より少食でお子様ランチすら完食できねえくましろに飯の前になんかやったのか?」
「す、すみません……私が…」
蛇に睨まれた蛙みてえに相澤の説教に耐えてるとセメントスが手を上げて申し訳なさそうに申告してきた。
「まったく……甘やかすのもほどほどにと言ってるでしょう。唐揚げもハンバーグも食いてえのに、胃が小さくて入らないのが気に食わなくて泣かれる身にもなってくださいよ」
「悪かった……だってこんな可愛い顔で食うんだもんよ……」
「あとで送れバカ……くましろ、寝るか?」
わらびもちでお腹いっぱいだし泣いちまったしでちょっとぐったりしてる神代に相澤が声をかける。……つかあとで写真送れっつったか?
*相澤消太
「だっこ」
「はいはい……いで…それ髪の毛だよ」
随分あったけぇな……眠いんだろう。背中を叩いていればすうすう寝息が聞こえてくる。寝付くの随分早えな。
「……で?暴走の件は」
「あ〜…憶測だぜ?本人の話だし。……さっき、絵を描いてた時によ、俺が何描いてんだ?って覗こうとしたらじっとしろって個性使ってきてな」
「……ほう」
「自分の個性操作系と勘違いしてるトコあっただろ?だから体が動いてる途中で止まってな……そっから、殴ってきたガキの話になってよ
やめてって神代が言ってるのに構わず殴ってくるガキに対して俺にやったみてぇに個性使っちまって、『動かなくなった』と。」
動かなくなった……なるほど。動き自体を止めたのか?
「そのあとどうしたか聞いたら、大人を呼んで車で病院行ったっつーから、ガキどもは無事だろうな。
ただよぉ…釈然としねえのは、神代が警察に何も聞かれた様子がねえってことなんだよな」
「……神代さんの息子だっつー前に年齢できちんと供述できるかどうかで弾かれたんだろう。
3人にボコボコにされてたならくましろの服や体は絶対に汚れてるはずだ。そこを見落とすような無能は居ねえと信じて、病院で回復した子供たちに確認して……一方的にやられたと言えば監視カメラ、正直に言ったなら指導して帰しただろうな」
「あ〜………そういう」
「中学生が幼稚園の子供に手を上げた訳じゃねえ。おそらく……小学生3年〜5年くらいの子供じゃねえかと睨んでる。そのくらいの年齢なら警察もそこまで大事にしねえだろ、親ともども注意して終わりだ」
神代さんの耳には入ってんだろうか………入っていてくましろを気に掛ける様子がないなら……いや、やめよう。母親代わりはできない。神代さんは神代さんで、くましろの生みの親なのは誰にも変えられない。穴埋めはできねえが、別のモンで代替えしてもらうしかない。
「……で、これはなんだ」
「可愛いだろ?わらびもち美味しいって食う神代」
「……ふ、相変わらず分かりやすいな」
にっこり、そんな言葉が相応しいくましろの写真。あげたくなる気持ちは分かる……分かるが、昼飯で食べたいのにお腹いっぱいで食べられなくて理不尽に泣きながらキレられるのは俺だ。
「こん時からもうコンビニ飯なのか?」
「いや……鍋の卵スープっつってたし流石に作ってるだろ……まあ両の手いかねえ子供に火を使わせるなとは思うが」
1年、2年。そのくらいの差ではあるが、まだ神代さんも家に帰る頻度も多く手料理を食べていた時期だろう……そうであってくれ。
*オールマイト
す、すごく見られている……。集中できないぞ、くましろ少年!今の私はマッスルフォームではないからオールマイトであるとくましろ少年が認識しているかは定かではない。
「おじさん」
「な、何かな?くましろ少年!」
「だっこ」
「だ、??!ま、任せてくれ!……よいしょ」
いきなり抱っこをせがまれて明らかに動揺してしまうものの、抱っこくらいなんのその!軽いくましろ少年の身体を持ち上げて私の膝の上に乗せればニコニコした神代さんそっくりな笑顔がこちらを向いている。
「なに書いてるの?」
「次の授業の計画だよ」
「けいかく?」
「うん、ここはヒーローになるための学校だからね」
「ヒーロー……おじさんも?」
「うん、一応ね!」
「「「「「(一応でナンバーワンになられたらたまったもんじゃないんですけど……)」」」」」
なんだろう、何故か冷ややかな目線が送られているような…??
「レース形式はやったし…想定訓練もやったし。くましろ少年、何かいい案ないかなぁ」
「え〜?………宝さがしは?」
宝さがし!いい案だ、メモしておこう。メモを書く私の腕を枕にしてきたくましろ少年と目が合う。これは……わざと妨害しているな?
「か、書きにくいぞくましろ少年!」
「んひ」
随分いたずらっ子のようだ、このあとも文字を書こうとするたび指を突かれたり、消しゴムで消そうとしたら消しゴムをデコピンで弾き飛ばされたり。相澤くんに怒られるまで小さいいたずらをしてきた。
(すみません、オールマイトさん)
(いいさいいさ、可愛いいたずらだもの)
(くましろ……オールマイトさんが怒らねえからって無茶苦茶やるな)
(イーッ!)
(クソガキが………待てこら!!!!)
(きゃはははっ!!)
(1番ノッてあげてるの相澤くんだよね)
(ダメよオールマイト、それ言うと恥ずかしがってやめちゃうから)
(元々神代の保護者だし扱い慣れてるから必然的に懐くわなぁ……おーおー、笑いすぎて足から力抜けちまってるわ)
(いいわねえ、ここに託児所作らない?子どもの声って癒やされるわ)
(あのなミッドナイト……子どもの声じゃなくて神代だからだろソレは)
(あら、分からないわよ。今回を機に平等に愛せるかも……そういえばくましろちゃんてばマニキュアしてるのね)
(昨日爆豪に塗ってもらったんだとよ……爆豪のぴかぴかと上鳴のきらきら、らしいぜ)
(え〜!かわいい……!!)
(すげ、A組の女子たちと同じ反応)
(爆豪少年たちにも心を開き始めたんだね)