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10 お姉ちゃんがいい
*麗日お茶子
た、大変や……!個性事故で幼稚園生くらいになっちゃったくましろくんがわたしの足に抱きついてしがみついてる。
前にも個性事故で小学校低学年……2年生くらいやったかなあ…そのくらいに戻っちゃったことがあるくましろくん。
今じゃ信じられないくらい人見知りでわたしらはともかく、いっつもべったりなデクくんやら轟くんにもモジモジ照れてたのが印象的で覚えてる。
「え、えと……くましろくん、どうしたん?いっだだだだ……ちょっと力抜いてくれると嬉しいかも…」
「………」
「また記憶ねーパターンか?」
「そうじゃなきゃいきなり麗日の足に抱きついたりしねえだろ……飯田…はもう先生呼びに行ってんのかよ、早ッ」
「くましろくん、もう少しでイレイザーヘッド来てくれるって!」
上鳴くん、切島くん、デクくんがそれぞれくましろくんの前で話す。ぎゅう、と右足を掴む手が強くなる。
「お姉ちゃんがいい……」
「へ?」
「ぼく、男の子きらい」
くましろくんにしてはボソボソした呟きだった。上鳴くんたちは聞こえなくて、デクくんも屈んでいたからぎりぎり聞こえたみたい。
「そっかぁ……じゃあお姉ちゃんと廊下出てよっか?」
私らは女子で、くましろくんは女の子みたいに可愛いけど一応男子。普段はその線引きをしっかり引いてくれてるくましろくんは訓練のときとか緊急時以外私達にぜったい触れてこない。三奈ちゃんからは抱きつかれたりソファみたいに背もたれにされたりしてるのは見るけど逆は見ない。
その代わり男子にも女子にも甘えん坊気質なとこあるくましろくんは轟くんとか爆豪くんとかデクくんに対しての甘え方は凄い。そんなくましろくんが『男の子きらい』って言うのは、何かあったんだと思う。
廊下に出てクラス中の視線から一時的に免れたくましろくんの手の力が少し緩まった。
「くましろくん、誰かに意地悪されちゃったん?」
「……うん」
「そうなんや、嫌やったね。あたしお茶子っていうの」
「オチャコ?」
なんかイントネーション変やな………お茶子、お茶子、と二人で繰り返していると飯田くんと呼ばれた相澤先生がやって来た。足から手を離してくれたから、繋いでた手にまた力が入って私の背中に隠れてしまった。
「くましろくん、君の好きなイレイザーヘッドだぞ…?」
「……」
「前より小せェな……なぁ、名前言えるか?」
「……やだ、こないで!」
くましろくんにしては大きな声。振り返って見てみるとなんていうか………威嚇する子猫、みたいな?可愛いが勝ってあんまり怖くない。やっぱりそういうの慣れてるのか、相澤先生も全然臆せずしゃがんで目を合わせようとしてる。
「俺はここの先生なの、君を保護する義務がある。コイツは俺の生徒だし、授業を受けなきゃいけない」
「……」
「わあ、人見知り凄いねぇ…職員室お菓子あるって言っとったよ?」
背中のブレザーを掴む手が離れないから頭を撫でながら言うと目が合う。あ、お菓子好きなのはこの時からなのかも?
「お姉ちゃんがいい」
「随分懐かれたな、麗日」
「はは……でも何でなんやろ」
「麗日くんはパッと見て優しそうな柔和な雰囲気があるからじゃないか?」
飯田くんの思わぬ褒め言葉に照れ照れしてると相澤先生がまさかのポッケからペロペロキャンディ出してきて2度見した。飴、持ち歩いてるんだ…!!
「好きじゃなかったか?このシリーズ」
「……」
めっっっちゃ見てる!!!!気になるんや……。相変わらず分かりやすいくましろくんに笑いそうになるけど、我慢我慢。
「授業終わったらまた話そうよ、くましろくん。今日移動教室ないし」
「いどう?」
「この教室から出ないよ〜ってこと」
「……時計なんじで会える?」
「ん〜とね、ぐるっと一周したらかな」
「ぐるっと一周……」
長い針だよ、と伝えるとしぶしぶといった様子でくましろちゃんが先生からペロペロキャンディを受け取ってる。前はゴーグルでイレイザーヘッドって確信したくましろくんは先生にべったりだったけど、今回はまだ警戒してるみたい。
「ふふ、前見て歩いて〜」
何度も何度もこっちを振り向いてくるくましろくんについ笑う。
「驚いた……以前よりもっと人見知りになってしまったんだな、彼は」
「ね!デクくんのこともちょっと怖がっとった」
「なんと……」
「たぶん、同じクラスとかの男の子たちに意地悪されちゃったんやと思う……男の子きらいって言ってたんだ」
「そうか………あんな小さい時から……」
「飯田くんが落ち込むことないよ、もう小さい頃に干渉することなんて出来ないし……いま!大きくなったあと!私達がたくさん楽しい思い出でいっぱいにすればいいんだよ」
*相澤消太
「くましろ」
「!」
「……悪い、びっくりさせたな」
見慣れないものばかりで興味が湧くのかフラフラと俺の隣を離れるくましろの襟元を引っ張って寄せると大袈裟なくらい驚いている。……前回の個性事故のときよりも小せえ、下手したらまだ小学生にあがってないくらいのくましろは母親によく似たあどけない顔つき。髪も長いし女に間違われてもおかしくない。
「……それ、あけれるか?」
「……い、いらない」
さっき受け取ったのに?…前回個性事故で子供に戻ったくましろをスーパーに連れて行った時、売り場から離れないから買ってやったいちごやらぶどう味の入った棒付きのペロペロキャンディ。ザ、子供ぽいもの好きなんだなと感動すらした。
「たくさんあるから1個くらい食ってくれると助かるんだが」
「…ぼ、ぼく、…」
「うん」
「……わるいこだから…」
「……誰に言われた?」
顔色が悪い。ただ揶揄って言われただけじゃないな。
「……知らない、小学校のお兄ちゃん…」
「そうなんだ。くましろは悪い子じゃないよ」
「わるいこだって、叩かれたもん」
……‥なんて言った?叩かれた?相手の学年によるが、もし高学年のガキなら子供から子供への暴力とはいえ体格差がありすぎる……飯田のことまで怖がってたのはそのせいか?
「痛かったな…どこ叩かれちゃったの?保健室行こうか」
「い゛っ…」
「……服捲るよ」
手を繋ごうとしたら過剰にいたがるくましろに嫌な予感を覚えながら袖を優しく捲ると大きな青あざ………これは嫌な予感がする。抱っこして急いでばあさんの所へ連れていき、カーテンで遮ってばあさんとくましろの身体を見る。
「上着脱いでごらん」
「いやだ」
「ほっほ、注射なんかしないよ…病院じゃないからね」
ここから10年くらい経っても同じことで駄々を捏ねるくましろの怖いものや嫌がるものを分かりきってるばあさんが先回りしてそう言えば、ようやく上着を脱ぎ始める。インナー代わりのタンクトップから覗く両腕にいくつも痣がある。隙間から見える背中や腹にも。
「………」
「こりゃあ痛かったでしょう、全部意地悪な小学校のお兄ちゃんに?……ママから?」
「おかあさん、お仕事で家にいないもん」
「あらそうなの、忙しいのねおかあさん。お父さんはこのこと知ってる?」
念の為聞いているのだろう。くましろから両親による虐待は聞いてない………まあ、言わせてもらえばネグレクトではあるが。
「お父さんも……3日前にお仕事いった、ながのにいるって」
じゃあやはり、全部ガキがやってんのか。こんな小さいくましろの体中に痣が残るほど、殴ったり蹴ったりしてるのか。
「ちょっと相澤先生、少しは抑えなさいよ」
「……すみません」
「やぁねえ、あのおじさん元から顔怖いのにねぇ……ふふ、これ塗ったら痣の治りが良くなるのよ」
「しみる?」
「しみないわ、ミントの匂いがするけど」
軟膏のようなものを文字通り体中に塗りたくったくましろにご褒美、という名目で飴を袋から出して差し出す。
「いいこだから、食え。」
「……ありがと…」
やっと飴を口にしたくましろを横目にふう、と息を吐く。前回は家に帰ってこない母親と父親に寂しさを隠しきれないくましろを目の当たりにした。今回は……まさか、知らねえやつから暴力を受けてるのを知ってしまうとは。一度も聞いたことない。忘れてるのか?……いや、こんなこと忘れるか?くましろの性格的に隠し通しそうだ。頭を抱えそうになるが、なんとか誤魔化す。
「くましろちゃん、こんなになるまでぶたれて痛かったでしょう…どうしてぶたれちゃったの?」
ばあさんがそう尋ねるとくましろは首を傾げながら困ったような表情で飴を舐めている。
「……わかんない……園から帰ってたら3人で」
「そうなの…それはびっくりしちゃうわねぇ」
腸が煮えくりかえりそうだ。小学生のうちからこんな小さい子供を複数人でボコボコにする奴がいるなんてな……くましろは理由は不明と言ってるが、大方母親関連だろう。
*麗日お茶子
「あ、くましろくん!」
「ストップ……あ〜……5分だけばあさんと居てくれるか?」
「ん!」
とてとて、と駆けて行ったくましろくんを見送った先生がドアを閉める。
「あ〜……不確定事項が多いが、注意点が2つほど。
1つめ…神代の個性事故、今回は長い。個性の持ち主に確認したら最低でも一週間はかかるとのことだ。
2つめ……いまの神代が人見知りはありつつも男子を毛嫌いしてる理由だが…幼稚園からの帰り道、小学生の男子生徒3人に暴力を振られたと判明した。」
「!」
「ぼ、暴力?!」
「あぁ…体中に痣が残るほどだ。だから自分より大きい野郎は怖いんだろ。
爆豪、切島、上鳴、飯田。お前らは特に声が大きい。気をつけろ……あの頃の神代はまだ個性のコントロールができない、2次被害が出かねん」
「……そんな、酷かったんですか?」
「……あぁ、だがあのくらいの年齢でも子供は周りをよく見てる。難しい顔するのはナシだ」
相澤先生に分かったな、と念押しされる。体中に痣が残るほど暴力を振られたって、もうそんなん事件やん……。
その後教室に入ってきたくましろくんはにこにこして私の席にやってきた。
「さっきぶりやね、くましろくん」
「ん!パズルしてた」
「そうなんや……お昼ご飯どうするん?先生と食べるんかな?」
「せんせ?」
「相澤先生、あの人」
先生を指差すとやっぱりまだイレイザーヘッドって知らないくましろくんはうーん…と首を傾げている。
「あら、相澤先生に任せてたらゼリーで済まされちゃうからダメよ…くましろちゃん、おにぎり好きよね?」
「うん」
「話しておくからランチクックのとこで食わせてやってくれ……神代、麗日と…芦戸と一緒に食えるか?」
相澤先生に言われたから、A組の女子で行こう!ってお昼に繰り出す。
「くましろちゃ〜ん、くましろちゃん好きなオムライスもあるってよ」
「ケロ、チーズハンバーグもあるわ…前食べてたのよ」
「おむ……」
「わわわ、皆おすすめしたら悩んじゃうって〜!あ、じゃあ私オムライスにしよっかな」
「ふふ、私はハンバーグにするわ……はんぶんこできるわね」
「いいの?」
「ええよ〜、好きなもんいっぱい食べよう!」
(思ったより少食やったね)
(眠そ〜……6歳なんだっけ?)
(ごぉ…)
(あぁ、4歳かぁ〜!ちっちゃいねえ、くましろくん)
(麗日さん、こちら使ってください)
(モモちゃん、ありがとう!おくるみみたいにしちゃおっと)
(あ〜ん可愛い〜!くましろちゃん決めポーズしてみて)
(ん!)
(何?そのポーズ)
(ぷりきゅあ)
(あ〜…なるほど、好きだもんね)
(ばっちり撮れたよ!A組のLINEに流しちゃお)
(早ッ!……あ、もう返事きとる)
(爆豪だ……あいつほんと素直じゃないよねェ)
(怖がられるかもって避けてるもんね)
(轟さんも気にしていらしたわ、顔で怖がるかもしれないと……)
(普段仲良くしてるメンズたちがダメージ受けてるんだねえ)