MHA2
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2 大の仲良し
*轟焦凍
「……」
空気が重い。先日公共の場で軽い喧嘩して、収束させようとしていたらいつの間にか大喧嘩していた物間とくましろは全く目を合わせない。
『ほんっと君って学生の頃から可愛くない!1言余計だし!!そんな鬱陶しいなら一生話しかけんな!』
そう投げられたくましろはずーっと落ち込んでるし、会うたび……いやほぼ毎日来てたLINEの連絡も元気ないし相澤先生曰く部屋で泣いてることも多いっつってた。泣いたら泣いたで物間を責めてるみたいな気持ちになるから泣かないようにしてるんだろう。
投げかけた物間は3日もすれば何故か俺に『可愛くないのは本心だけど他は本心じゃない』と連絡が来た。言い過ぎたと自覚があるから、気まずくてくましろの方を見れないんだろう。
こうしてこの二人のちっちゃいやつから大きい喧嘩まで何回も巻き込まれているが、どうしてこう素直じゃないんだと常々思う。物間は確かにちょっと煽るような言い方する奴だけど、くましろも物間相手には特に捻くれてる部分が強く見える。
「…黙ってちゃ進まないだろ、ふたりとも」
「……分かってるよ……は、何?泣いてんの…?」
ため息をついた物間が固まる。視線の先を俺も追うと、くましろがボロボロに泣いてた。数秒前まで泣いてなかったのに……びっくりして2度見しちまった。
「泣いてな゛い」
「いや無理あるでしょ……」
「無理あるな」
物間に同意する。こんなに泣いてるのは初めてだ、爆豪と連絡がつかないと相談されたときだってここまで泣いてなかった……と思う。俺が知る限り、くましろが皆の前で心配になるくらい泣きじゃくったのは爆豪が入院したときと、卒業式の日くらいで…。
「も、物間くん、おれのこと…嫌いなの?」
「………はぁ?」
「未だに母さんのこと言ってくるし、ずっと…」
ピンときた。くましろが物間を見るたびに少し表情を固くするのは、始めましての会話のときからくましろの母親のことと絡めて逆上させようとしてきた学生の頃の物間がチラつくんだ、きっと。
くましろはプロヒーローを親に持って、当時は関係が最悪だった同じ境遇を持つ。だからこそくましろはよく俺に弱音を吐きにきていた。相澤先生に零しきれないものを俺もくましろに話したし、くましろも俺によく話してくれた。
俺もくましろも、大戦の後で前進したとは思う。俺も父さんと話すようにはなったし、くましろも必ず正月には帰省するようになったらしい。入学前までの関係と比べると大きく前進したと思う……が、突かれて平気ではないからくましろはずっと気にしてるんだろう。
「や、あれは…」
「くましろ、過呼吸になる…落ち着け」
「っう……、」
「……悪かったって思ってるよ、ずっと」
くましろの手を掴んだ物間が呟く。ちゃんとくましろにも聞こえてたようだ。
「……轟、お前もだけど。入学したときからお前らは有名人だったろ。自覚がないとは言わせないからな、子どもであるお前らにどういう一面を見せるかなんて他人の俺は知らない…けど、肩書で言えば著名なプロヒーローの子で、かたや推薦入試、かたや入試トップで入学。」
ちらりと俺を見て来た物間にそうだな、と頷く。
「そんでそんな何をしてもしなくても目立つお前らA組にお膳立てみたいに敵の襲撃やら、目立つ出来事が入学早々続いてて……
蒸し返すつもりはないけど、俺らだって何もしてなかったわけじゃない。なのに世間や他の学科の連中は口を開けばA組A組……うんざりしてた。だから、対抗心を燃やしてお前らが俺らに舐め腐ってこないようにするために煽ってた。
だから……めちゃくちゃ嫌なこと言ったのは、分かってる。すぐ大戦になって、2年になったら就職やらでなんやかんや動き続けなきゃいけなくて、ちゃんと話す時間がなくて言えてなかったけど……」
「ごめん、くましろ。お前が死体処理得意とか思ってない………ごめん、ずっと」
「………ゔっ」
更にボロ泣きし始めたくましろがなんかうにゃうにゃ言ってたが全く聞き取れなかった。物間も聞き取れなかったみたいで、俺の方を見てきた。
「なんて?」
「悪ィ、俺も聞き取れなかった」
こういうとき相澤先生がいたら完璧に翻訳してくれるんだけどな……。物間の手を握って動かないくましろが泣き止むのをひたすら待つしかない。
*物間寧人
「ごめん、こんなこと言いたくないけど流石にそろそろ泣きやんでくれない???視線が痛いんだよ」
主に店員さんたちの。ここカフェだからな??泣きじゃくって30分経つのにまだ泣きやまないくましろに痺れをきらして進言する。
煽って怒らせて、正面衝突にもっていってB組である俺らだって互角だって証明したくて割と酷い発言をしていた自覚はあるし自負もある。あのまま卒業していたらくましろとは話さないままだっただろうけど、ある日階段下で蹲って泣くくましろを見かけたのが煽り無しで話しかけたきっかけだった。
『……何してんのこんなとこで』
『……物間くん』
『あれ、覚えててくれたんだ?……思いっきり血出てるけど何?喧嘩でもしたのかい?』
『するわけないじゃん……普通科の知らない人だよ』
『……は?喧嘩売られたってこと?』
『売られたっていうか……一方的にって感じ?』
いやいやいや何をそんな呑気に。日本語のニュアンスの違いを話してるんじゃないんだから保健室でリカバリーガールに治してもらいなよ、と至極真っ当なアドバイスをした記憶がある。
『いいよ、どうせ自分の個性で治るし……それに雄英の先生たちってさ……よくも悪くも同業者の母さんのことよ〜く知ってるから、大概はどうしたって俺の味方みたいになるんだよ。
いつもは気にかけてくれて有り難いなって思えるのに、普通科の生徒VS先生たちみたいな状況下になると、なんかさ……えこ贔屓されてズルしてるみたいに感じて、放っといてほしいって思っちゃうんだよね』
『………とりあえず、はい。傷口塞がっても顔がそんな血だらけじゃバレるよ』
いろんな人が色んなものを抱えてる、少し前に緑谷が誰かに話していた言葉を思い出した。
「……うわ、すごい顔……そのまま帰るつもり?俺がイレイザーヘッドに殺されるから絶対やめてよ」
「物間、多分だが先にプレゼントマイクが来るぞ」
もっと嫌な上に容易に想像できるアドバイスどうも〜〜!!!
「……ケーキ」
「何?」
「ケーキで許す」
ぶす、としたくましろがそう呟く。
「ケーキ?」
「物間くんが作ったケーキがいい」
は?手作り!?!メニューをパラパラ捲ってた手が止まる。いや、料理ならまだしもケーキって……。
「……料理じゃだめ?」
「……料理なら3品」
なんで増えてんだよ。どちらにせよ手作りで何かしなきゃいけないのは決定……あれ、ていうか。
「くましろ、手作りNGじゃなかったっけ?」
「知らない人のはやだ」
「…ふは、良かったな物間。お前のなら食えるって」
「何ウケてんの?余裕そうなのムカつく〜〜…いーわ、A組の砂糖に教えてもらうから」
「砂糖くんに教えてもらうならご飯も作って」
「はぁ??!お前なに、腹減ってるの?!どんどん増えてるんだけど」
「うるさいなぁ、仲直りするならご飯を用意するもんなの!」
「そんで何、ビストロスマップみたいにお前が食うの?」
「一緒に食べる」
「俺も?」
「うん」
なんだその儀式………聞いたことねえよ。こうなりゃケーキと料理どっちもめちゃめちゃに美味いの作ってギャフンと言わせてやる。じゃあ1ヶ月後作ってくるから、とその日は別れた。
忙しいって最初門前払いされたけど、くましろと仲直りしがしたいからって伝えると砂糖は協力してくれた。
「しっかしまあ、あのあんまりキレねえくましろをキレさせるのお前くらいだぞ物間」
「……蒸し返すな」
「夏合宿後、寮が建てられただろ?」
「……うん」
「隣の部屋でもなんでもなかったんだけどよ、たまに廊下から泣き声がして……」
「…怖い話?」
「違う違う、最初こんな新築の寮で怨霊なんているのか?って思ってそっと見たらアイツが廊下の隅っこで泣いててな。
廊下で泣くか?って思ったし部屋帰れって言ったら、部屋で泣いたら隣の爆豪が先生に連絡しちまうから嫌だって。
俺からしてみりゃ、あいつの家庭環境って本当にあり得ねえくらい劣悪だったし、育児放棄と何が違うんだ?って思ってたから、事情を知ってる先生たちに多少甘やかされてるの見てもまぁ仕方ないよなって思ってたんだけどよ……あいつはあいつなりに大人や俺らにまで気ぃ遣って無理にひとり立ちしようとしてるの見ると更に責められなくてな」
「……それ、結局どうなったの?」
「その俺とのやり取りを聞いてた障子が相澤先生に連絡して、見回りに来たらばったり……っていう体で連れてかれてた」
「なぁ、なんで手作りケーキと料理なんだと思う?」
「そりゃお前、手間かかるからだろ」
「………」
「まあケーキに料理ってかなり頼んだなって感じだけど。
考えてみろ、育児放棄されてんだぞくましろは。人から作ってもらったご飯なんぞ1番のごちそうだろ…まあ潔癖なところあるからそれも難しいんだろうけど。
プレゼントマイクのラジオで聞いたんだけどよ、あの人がくましろにグラタン作ったら『こんな美味しいの初めて食べた!』って泣きながら食ったことあるって」
「………くそ、ちょっと料理で手抜こうかなとか思ってたのに」
「はは、報告待ってるからな〜……それ、生地混ぜすぎ。膨らまなくなるぞ」
クリームがついたデコレーションケーキは難易度高いと言われたが逆に燃える。1ヶ月毎日ケーキを食べ続けて少し太ったけど満足の行くものが作れるようになった。あとは料理……何が好きとか聞いておけばよかった。分からないから、俺が得意な料理をしこたま作って人にふるまえるレベルに持っていく。
「………俺もお邪魔していいのか?」
「むしろ俺のセリフです、家に上がると思ってなくて……」
「審判ですからね」
なんのだよ、というツッコミは先生ともろ被りした。初めてくましろ……と相澤先生の家に来た。家具は少なくてめちゃくちゃ綺麗にしてる。
「………物間くん、これ買ってきたんじゃないんだよね?」
「1から俺が作った」
すご……と聞こえ、そうだろうそうだろう。とこの1ヶ月間のケーキをひたすら作っては食べた過去の俺が泣いて喜んでいる。
「あと……料理だけど、好きなもの聞くの忘れたからとりあえず…俺の得意なやつ作ってきた。アレルギーとかないよね?」
「ない!これなぁに?」
「テリーヌ」
「テリーヌ……?」
「へえ、フランス料理か。レストランみたいだな」
相澤先生は分かったようだけどくましろはふうん、という反応。口に合えばいいけど…。
「いただきます………うま!」
「美味しいだろ」
「いででで美味しいです!」
美味いならよかった、小さい子が口の悪さを怒られてるみたいに矯正されてるくましろを横目に俺も食べる。うん、うまく出来た。次はピカタとビシソワーズを出して、それもぺろっとくましろは平らげた。
「すごい、中まで……」
全部の料理を写真に撮られてるからなんとも言えない気分になってくる。普通に恥ずかしいんだけど……。
「……!美味し〜!!…これはだめです、あげない」
「ふは、くれねえの?……よかったな物間、いままでで1番美味いケーキだって」
一応見目の問題としてホールで持ってきたから一口くらいあげればいいのに……。相澤先生に笑いかけられてどう反応すればいいか分からなくなる。
「ごちそうさまでした、物間くんありがとう」
「お、う……?」
「おれも可愛げなくてごめんね?」
「………そういうとこが可愛げないっつってんの……はい」
差し出してきた手を握る。相澤先生は静かに笑ってた。
(なあ)
(?)
(なんでこんなカップル写真みたいなのあげんの)
(仲直りの記念)
(困惑してるぞ、お前のフォロワー…ほら)
(ファントムシーフに乗り換えたァァァ?????!!?)
(うるさっ、そりゃ勘違いするだろ)
(こちとら消太さんがイレイザーヘッドって身バレしないように手すら映さないようにしてるのに??!?)
(……アンタも大変ですね)
(分かってくれるか、物間…仲直りできてよかったな)
(……あんまり子供扱いしないでほしいんですけど?)
(子どもだろ、公共の場でギャーギャー喧嘩して……)
(ヴッ)
(おまけに大泣きして帰してくるし?)
(そ、それは…)
(つか在学中に仲直りしとけよ)
(………)
(はは、悪い悪い……まあいいよ、お前に100%悪意があって言ったわけじゃないってブラドから聞いてたしな)
(……すんません)
初対面というかメインの時系列の中では印象最悪に終わってる物間くんだからこそ、くましろたそとある日をきっかけにじわじわ仲良くなって軽口叩ける仲になると思います。
お互いに『そんなに悪い子じゃないのかも?』と思いつつ、お互いに初対面の時の言われた・投げかけた言葉が引っかかって気にして、大人になってから爆発するタイプかなと……。A組同士だったら卒業前に和解してると思いますが、隣のクラスなので大人になってから本音のぶつかり合いしてるといいなと思い書きました。
ちなみに本当に相澤さんに一口もケーキをシェアハピせず食べきり、食べるたびに『ファントムシーフが作ってくれた』と少しずつ減っていくホールケーキの写真を上げるので、ガチでイレイザーヘッドからファントムシーフに乗り換えた……?と世間はざわつき、くましろたそはそれにブチギレます。