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8 求婚
※くましろが卒業し、何年も経った後。
相澤消太は30後半のイメージ
雄英高校を卒業してそのままプロヒーローになり、高校生の頃に逆に戻りたいくらい多忙な毎日を送っている。
ほんとは「相澤さんと同じ職場で毎日顔を合わせたい!」って駄々こねたりしたんだけど、「お前にガキの世話が務まるかボケ、精神年齢下だろ」って貶されに貶されて許してもらえなかったのでこうなってる。酷いよね!?!
相澤さん曰く幼稚園児でようやく対等、とか言い出したからほんとに喧嘩売ってるよね。
事務所に属そうかなとも思ったけどまあ…、俺のポリシーというかヒーローネームに込めた想いはあんまり広く受け入れられるものじゃないし、ヒーロー同士で溝が生まれやすくなるだろうから、個人で活動している。賢明な判断だと思う。
夏は休業しがちでダラダラしてる(余程の緊急じゃない限り動かない)
今日は待ちに待った相澤さんと過ごせる俺の誕生日!!そう俺誕生日なの!成人したんだよ!
結局SNSは轟くんと爆豪くん、出久くんに見守ってもらいながら始めた。けど、呟くことなさすぎてスカスカだなって爆豪くんに笑われた。
朝からずっとSNSでもお祝いの通知がすごい。誰かのプロヒーローや芸能人が誕生日のとき、トレンド入りするんだけど自分の名前が載ってて「おぉ…!」ってなった。
「夜になる前に呟いとくか…」
ん〜なんて呟こう。
『お祝いしてくれるみんなへ
19〜21歳おめでとう!って人によってオレの年齢のバラつきがあるんだけど大丈夫?公式のオレは今日で20歳です、デクくんとかと同い年だよ!デクくん今度遊ぼうよ〜
今年もNeutralにヒーローしていきます、なにはともあれお祝いメッセージたくさんありがとうございます!』
そうポストすると、すごい勢いでコメントつく。呟くのも久々だったからね…。
あ、轟くんだ。『オレとも同い年だろ 遊べ』ってきてる。その後結局A組やもろもろの知り合いの人達のコメントがズラッと並んでて、
『LINEで送ってくれない??読むの地味に大変なんだけど…』と追記したら爆豪くんにドクロマークの絵文字だけ送られてきた。なんなのあの子…。
配信して!とのコメントも多いけど相澤さんに迷惑かけたくないから配信はしない。音声配信だけならいいけど…うーん、それもしないかな。
今日は相澤さんの帰りがちょっと遅いらしい。ご飯はもう作ってある、何して過ごそうかな〜。
『前に爆豪くんにやれよって言われた質問返し?しよかな〜
やり方分からないんだけど…轟くん分かる?』とポストし、速攻『わかんねえ』と返ってきた。
困った。
そうすると出久くんから改めておめでとうのLINEと、さっきの質問返しのポストにたくさん質問してるからどれか選んで1個1個答えてけばいいと思うよ!と連絡くれたのでラブ!とスタンプ送りかえす。
じゃあ順々にやってってみるか…。
『原点のヒーローは?→イレイザーヘッド』
『シャンプー何使ってる→最近はうるるん?みたいな名前のやつ』
『今年の抱負→夏バテで4キロ痩せちゃったからもうバテない!』
『好きな人いる?→イレイザーヘッド』
『ショートとは会わないの?→今度ディズニー行こうって計画してる』
『20歳になった感想は?→早かったナ…て感じ』
『今日何食べるの?→きんぴらごぼうとハンバーグ!』
『機械音痴ってほんと?→爆豪くんでしょバラしたの……』
『一番仲いいヒーローは?→決められないなあ』
『好きな映画3つ!→もののけ姫、トイ・ストーリー、モンスターズ・インク』
『イレイザーヘッドのどこが好き?→雑に言うなら全部』
『学生の頃ファンクラブ認知してたって本当?→本当、手紙を先生たちが保管してくれてて、ファンクラブがあるんだよって教えてくれた。規定とかも先生たちが決めてくれて、管理してくれてたから手紙をたまに適当に選んで読んだりしてた。
数がすごくて全然読めなかったけど、一番最初に読んだ思い入れあるやつは家に持ち帰って保管してます。』
『手紙の送り主認知も本当?→それはたまたま一番最初に読んだ手紙の人だったのと、校内でぶつかって申し訳ないことしたな…の記憶も鮮明だったから合致しただけで、全員は流石に覚えきれてないよ』
『学生時代ダイナマイトと喧嘩したって本当?→顔殴り合って痛かったね、でもダイナマイト超優しいからね』
『ダイナマイトとのケンカの原因は?→確か…贈り物でもらった鞄をダイナマイトが引っ張ったときにちぎれて、オレがそれで怒って飛びかかっちゃった…ような気がする』
『ショートとのツーショットあれいつ撮ったやつ?→どのツーショ?いっぱいあるから分かんないや…』
『ダンスまだやってる?→まだやってるよ〜』
『自分ぽいって思うキャラクターはいる?→賛同を得られなったけど、ロールパンナちゃん。友達からぽいよ。って言われたのはカードキャプチャーさくらの知世ちゃん』
『プレゼントどこに送ればいいですか?→貰わない主義だから自分のことに使ってね!レッツ推し活』
『声を大にして言いたいことある?→イレイザーヘッドのグッズを作ってください。アングラだから顔が割れちゃうポスターとかじゃなくて、ゴーグルとかイメージ香水欲しいです』
こんなもんかな〜。後半はイレイザーヘッドに関する質問多くておもしろかった。
*相澤消太
なんとか仕事を終わらせ、帰路に着いた。
今日はくましろの20歳の誕生日だ。あいつの誕生日を親のような、兄弟のような、恋人のような気持ちで祝うのは今年で何回目だろう。
この間までビービー泣きじゃくっていた(今もよく泣くが)くましろがもう成人した、という事実。マイクはあいつの年齢を聞くたびに目をウルウルさせて、あいつの成長と自分の老け具合にいつも泣いている。
俺も随分歳をとったもんだ。体の動きも嫌でも遅くなり、視野も狭くなり、活動量に限界を感じる日々。
歳だけは取りたくねえもんだな。くましろは「日々ダンディーさに磨きがかかってるのでもう最高です!!!!!」といつも通りだったが。
マイクにはいつ籍を入れるんだ、いつ式をあげるんだ、いつマスコミに公表するんだ、と毎年言われているし、くましろも成人が近づいていたので意識し始めてる。隠そうとしてるけど、めちゃくちゃ分かりやすいからバレてるのに気付いてない。いつものことだ、あいつアホだから。
くましろが大好きなチョコレートケーキを4つ買っていき、あいつの好きなジュースみたいな酒を買ってってやる。料理はいつも通り作ってるだろう。あいつの誕生日なんだから自分の好きなものを作ればいいのに、いつも俺の好みに合わせる。
まあ今年の誕生日プレゼントは考え抜いたものだから大丈夫、とマイクに告げて帰ってきた。卒業後、緑谷たちに見守られながらアカウント作成をし、イロハを教わりながらSNSデビューしたくましろ。
なるべく見ないようにしつつ、煙すら立たせたくないから本人が発信して見てもらえるようにと慣れないながらもSNS更新しているようだ。そのアカウントを見てみると、つい1時間ほど前までフォロワーからの質問に答えていたようだ。
最後の質問が俺のグッズを増やして欲しい、だったが。
「帰っ「相澤さんおかえりなさい!らぶ!!!」なんだ一段とうるせえな…」
俺が誕生日みたいなテンションじゃねえかよ。少しは落ち着け。
「あ!俺の好きなケーキ屋さんの袋…!」
「言っとくけど今年からはホールじゃねえぞ、糖尿病になる勢いで食い尽くすからな」
ホールの9割を一気に食べ尽くす奴初めて見た。去年誕生日だからどうしても食べたい!と駄々をこねられ買ったのが失敗だった。あれ以来禁止だ。
「え~~………」
「3つ買ってきてやったから、それで我慢しろ」
「3つも!??!好きです!!やったー!!!」
玄関だけでこのやり取りの量だ、ほんと元気だなこいつ。ヒーローとして外でろよ。夏だけ休業しやがって。
いつも通りやかましく飯を食うのを怒りながら飯を食べ、歌を歌えと強要されたので心のこもってない歌で反抗しても大感激したくましろ。何でもいいんだなこいつ。
「ほらよ。誕生日プレゼント」
「…?…ネックレス??」
「開けろよ…。お前にはまだちょっと早いかもしれないが…」
ちょっとどころか、20年くらいは余裕で早い気がする。使い方とか知ってるんだろうか。
「なにこれ…???あ!映画で見たことあるやつ!」
「絶対羽根ペンと誤解してるだろ」
人間界出たところのペンと間違えてるだろ。似たようなもんだが違うからな。目の輝きでわかる。
「え!?そんな……ことある…間違えてました」
「万年筆だよ。万年筆」
そう言えばピンときたようで。
「いつ使うんですかこれ…?使い慣れないとかより高そうだから使えない…」
「まあ安くないのは事実だがな。なんかあるだろ、ほら契約書を書かされたりするテレビ関係のとか…」
「あれを万年筆で!?!え~オトナだ~!」
何に感銘したかよく分からないが、まぁ良しとしよう。
「ていうかどう使うんですか?これ」
「だと思ったよ。開けてみろ」
くましろが好きそうなインクの淡めのブルーやグリーンのインクの瓶を並べる。
「収入型だからこうして吸い込んで…傷つけたりこぼしたりしないように気をつけろよ。そんでここをこうして…これで文字が書けるようになる」
「…うわ、相澤さんと万年筆の組み合わせって世界一最強っすね…」
「ちゃんと見てたのかお前」
見てましたよ!とじたばたするくましろを抑える。書いてみたい!と想定通りの返事を寄越すので用意していた紙を机の上に置く。
「じゃあ…書き心地試してみるか?これで」
「…え、」
紙に気づいたくましろが固まるのでニヤリと笑う。
「読めねえか?婚姻届だよ、婚姻届」
「す、すけべだ…!破廉恥…っ!」
どこがだよ。顔を真っ赤にして悶えるくましろが面白くて笑う。
「、かっ、なん、なんて輩なんですかアンタ、!!何!?やばくない!?そこで婚姻届出す!??!えっ!もしかしてプロポーズ…??落ち着いていられないんですけど!?」
案の定顔を真っ赤にして暴れ出すくましろ。
「まあ予想はしていたが落ち着け、そんな騒いだら苦情が来る」
陸に打ち上げられた魚のように床でじたばたしている。
「超キザじゃん…震えて書けない…無理…好きです…」
「お前が結婚しよう結婚しようって言ってたんだろうが、言われて動揺するんじゃねえよ」
「するに決まってるけどこの伝え方はちょっと……心臓が…」
「分かった分かった、じゃあケーキ食えほら」
「食えるか!!ケーキより結婚のことで大変です!」
百面相をするくましろ。ほんとに押しに弱いのな…。
マイクと色が見たら涙出るまで笑い転げてるだろう。
「ううぅ~~この文字を相澤さんから出される日が来るなんて…このまま天国行ける…!」
「早速死ぬなよ」
「ほん、ほんとに?本物…?ほんとに相澤さん、結婚してくれるんですか?」
「そうじゃなきゃ誰が公園で家出してたガキ引き取って、高校入れて卒業させてプロヒーローにまで育てて同棲し続けるんだ。
俺はそこまでお人好しじゃねえのはお前も分かってるだろ」
「そ、そうですけど…」
「なんだ、するのかしねぇのかはっきりしろ」
「するに決まってんじゃないですか喧嘩売ってんすか?」
「婚姻届書けよバカが…。そんで、これ。着けてやるからなくすなよ」
くましろは爆睡したらなかなか起きないからサイズ計測は楽だった。左手の薬指に指輪を通してやる。
「ゆび、わ…」
首まで、いや手先まで真っ赤になったくましろがもたれかかってくる。一気に押し寄せてきた現実に対処しきれなくなったのだろう。
「おいしっかりしろ、マジで死ぬなよ」
「顔見れない…」
「なんで?好きじゃない?」
「まっ、無理……4日待って…相澤さん、」
顔を両手で覆うくましろがさらに赤くなる。相変わらず慣れないやつだ。
「名前で呼んで」
そう言うと手は顔から離れたものの、真っ赤な顔のまま固まる。
「…無理…」
無理じゃねえだろと食い下がる。このくらいのワガママは聞いてもらわねえとな…。
「し、ショ、ショウタサン…」
噛みっ噛みで小さすぎるがまあ許してやろう。頬に手を当てると、また真っ赤になる。このままだと心臓の血液逆流とかするんじゃねえだろうか。
「ふっ、茹でダコみてえだな…」
*くましろ
もう変に言い寄られるの嫌だから、書いていいですか?と確認。別にいいと許可もらい済み。
テレビに呼ばれることも多く、その番組のプロデューサーの娘、とか少し偉い?立場の人とかを紹介という形式でお見合いみたいのに付き合わされることがほんとに多い。
ゼンマイにも電話でようやっとか〜!とおめでとうをたくさん言われた。公表についても相談したら、しといたほうがいいって言われた。今度ラジオも呼ぶって。
「え、なん、…なんて書こう…」
「結婚しました イェイでいいだろ」
あまりに軽くない???引っ越しましたみたいなテンションで…。
かといって重めの文章を出すのもな〜。
「……賛否両論は起こる、仕方ないよ。他の芸能人の結婚妊娠・出産、離婚全部そうだろ?」
相澤さんに頭を撫でられる。
「そうですね…。あんまり長々書くとなんかアレなんで、ちょっとサラッとする感じで書きます」
『念願のイレイザーヘッドと結婚しました!イェイ!』
本当に一文、サラッと。
すごい勢いでLINEが飛んでくる。A組のクラスラインが久々に動いてる。皆の『マジかよ!?』と『おめでとう!』で通知がすごいことになってる。
「LINEの返信だけでも大変だ…」
「俺は構ってくんねえのか?」
スマホの隙間から覗き込まれる。
「う…なんで急にそんな…猫みたいな感じ出すんですか!」
「悪いな、元々こうだ」
「長年住んでますけど、いま初知りですよ!!」
「そりゃそうだろ、未成年の保護相手にグイグイ大人が迫るか。我慢してたんだよバカ」
脳みそが追いつかない、なんでこんなとんでもないツンデレ属性なの!?
「魔性…ほんと小悪魔…」
どっちがだよ、と言われる。
「前…色の店に連れて行ったことあったろ、覚えてるか?」
頷く。そういえばあれ以降まだ行ってなかったな…。
「あのときお前、べろべろに酔ってな。なんて言ったか覚えてないだろ?結局あのあと店に行けてなくて聞いてねえだろうし…」
答えを教えてやる、と言われ相澤さんの顔を見てると、左手の裾を引かれる。
「あいざわさん、チューして?……だ」
「すみませんでした」
土下座する。
「早ぇよ」
「生意気言ってすみませんでした」
「くましろ、照れてるからってそれはずりぃぞ。顔上げろ」
さっきからずっと顔が火照りすぎて暑い。頬とか首のとこから放熱してる気がする。
「だから俺は今のお前は未成年の子供だしきけない、成人して酔っ払ってない時に言えって返した。……くっく、顔赤えな…」
次の展開が分かってしまうから俯くと相澤さんに笑われる。
「言って?」
「う…あ、あいざわさん、「名前」…どんだけ意地悪なんですか…」
意地悪じゃねえと返される。恥ずかしくて死にそうなんだけど…!!!
「消太、さん、……チューして…?」
「いつもの声のデカさどこいったんだよ」
「恥ずかしくて大声なんか出せませんよぉ…」
おでこに相澤さんの唇が当たる。
「慣らしてってやるから、慣れろ」
頷く。
ブーブー、と通知音が鳴り見てみるとトレンド入りしてる通知が届いてた。
「げ、俺まで入ってるのな」
相澤さんの膝に乗るようにしてスマホを2人で眺める。
1〜10位全部オレ関連のワードがトレンド入りしているぽい。凄いなあ、そんなに人の結婚に興味があるのか。
『くましろくんおめでとう!』
出久くんだ。彼は本当に優しい。
「今度ゼンマイがラジオのゲストに呼ぶからなってさっき言ってました」
「泣きそうだなアイツ…大丈夫か」
「涙もろいですもんねえ、ゼンマイ…。あ、そうだ!母さんと父さんからそれぞれ手紙来てて。」
「神代さんから?」
びっくりしてそうな相澤さん。オレもびっくりだからね。
「母さんは…ふふ、なんか偉そうに年一なら会ってもいいよみたいなこと書いてありました。偉そうてすよね」
「偉そうだな」
「父さんはシンプルに20歳おめでとう!の手紙でした。」
良かったな、と頭を撫でられる。
「めちゃくちゃ嬉しい誕生日になりました、相澤さんのおかげです」
まだ名前で呼ぶ切り替えできてないのでそれは待ってください、とお願いしておく。徐々に切り替えていくから…。
「そりゃ良かった」
「イケメンすぎて辛いって呟いていいですか?顔面良すぎ…」
勝手にしろ、と言われるので呟いてやる。
『ガチでイレイザーヘッドこの世のイケメン集約した存在すぎて目が慣れない』
「お前が言うと嫌味に聞こえるよ」
心からの本音ですが!?と答える。
(わ〜指輪…おそろい…)
(まだ見てんのか)
(一生見ます)
(ほんとモノ好きよな)
(なんとでも言ってください)
(ふ、拗ねるなよ)