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93 威嚇
*神代くましろ
ベタベタと消太さんの腕に、『腕をまわして』いかにも猫なで声をする女性をちらりと見やる。
消太さんは変装してないし、メディア避けのために俺だけ変装してる。あれ、なんかこの人……見たことあるような?某ミームに使われてる世界一有名なクマのしかめっ面みたいな顔して思い返していれば……あ、思い出した。次の仕事内容に関わる人だ。
オレにしてはめずらしく切島くんとのチームアップで、どっかの社長令嬢のこの人の護衛だったような。チームアップ…長期任務ゥ!??!と話が来たときは即断ろうと思ったけど、相手が切島くんならと受けた。
「消太くん、昔に比べて随分みずぼらしくなったんだね」
「は?」
「……お前、性格悪いの本当に直ってないんだな」
消太さんに組まれてない方の腕で止められた。さっきから距離近いから元々付き合ってた人?って勘ぐってたけど、まさかの発言内容過ぎてまだ脳が追いついてない。……待って、オレこんな人の護衛しなきゃいけないの?2週間も?
「って事で切島くん、オレ降りたい」
「イヤイヤイヤイヤ、それはオレもムカつくけど流石にドタキャンはしねえでくれ!」
直前打ち合わせの前に切島くんの事務所に先乗りしてそう言えば、一人にしないでくれってきゅるきゅるしたお目目で言われる。捨てられた子犬みたいな顔に弱いから、昔からこの表情で切島くんに『仕方ないなあ』ってテスト教えたりとか訓練付き合ったりしたけど……したけどさぁ!!!
「もっかい再現しようか?…消太くん、昔に比べて随分みずぼらしくなったんだね………申し訳ないけど、降りたい」
「2回言わなくていいから!!!聞いたし!!!」
「Neutral、こちらも困ります……ほんとに嫌味な発言の内容ですが、決まってしまったので…お願いいたします…!」
事務員さんにも頭を下げられてしまう。どうしてあんな人のために周りがこうも嫌な気持ちにならないといけないんだか。
「…そういや、そのあと相澤センセはなんか言ってたか?」
「…中学の頃、同じクラスで。あんまり社交的じゃない消太さんに興味持って一方的に距離を詰められて、辟易しながらも交際しろとうるさいから申し入れた関係。別れるってなったときもいろいろ言われた……とは言ってた」
「おぉ……お前よくその場で暴れなかったな」
「ゴジラかなんかだと思ってる???理性はあるよ」
理性はね。消太さんによれば相当昔から性格が悪い人らしくて、ゴシップ好きで同じクラスの生徒に暴力振るってたりもしたんだとか。
いくら結婚相手でも仕事内容までは言えない。2週間切島くんとのチームアップ、とだけは伝えてはいるけどよりによってその人の護衛とは伝えてない……気が重いな。
打ち合わせの時間になって数日前に見たあの人が入ってくる。
「へえ、
なんで勝手に品定めされたあげく、謎にマイナスポイントまで付けられなきゃいけないんだろう。
主な説明やスケジュール確認の進行なんかは最初に依頼がきた切島くんの事務所側でやってくれてる。2週間………2週間の辛抱……なんとか耐えろオレ…。
今週は映画関係のイベントが多くあり、人が集まることが多い。上記の通りの人格なので人からの恨みも多い(本人は妬みって謎に見栄を張った発言してたけど)からこその護衛役…とのこと。
「2週間よろしくお願いします!」
「お願いします」
「ねえ、Neutralってイレイザーヘッドと結婚したんでしょう?彼陰気臭いし淡白じゃない?大丈夫?」
あの切島くんが表情を固めたのが分かる。
「大丈夫、とは?」
「アタシ昔付き合ってたのよ、その時からヨレヨレしてて不潔な感じだったし、つまんないし?結婚発表聞いたときびっくりしたのよねぇ」
「あぁ……そうですね、彼人見知りなところありますしね。ご心配なく、仲は良好ですよ…あ!ほらもう時間ない移動しましょうか」
「え?まだ…「移動、しましょうか」」
さっさと切り上げて終わりにしよう。切島くんの事務員さんにぺこ、と頭を下げて会議室から出ていく。
「くましろ、顔顔!!!バクゴーみてえになってっぞ」
「それ爆豪くんに失礼じゃない…?」
思わず笑うと切島くんがちょっと安心したような表情になる。そういえば上鳴くんとかにも凄むな!顔怖いから!って昔怒られたことあるな……確かに今の瞬間を記事にでも取り上げられたら面倒くさいかも。
その日から何を言われてもニコニコして彼女の言うことには同意も否定もせず流す日々。家に帰れもしないし、消太さんとはスマホでしかやり取り出来ないのは地味にストレス。
「やっぱりお金がある余裕ってあると思うのよね」
「まあお金がないと焦りますもんね」
「でしょ〜?!アタシ年収800万以下は男として見てないから」
ど〜〜〜でもいい〜〜……。なんのアピールなのそれ。こういう辟易するやり取りももう10日め。…つまり、あと4日でこの仕事も終わる。イベント先のスタッフにもドン引きされるような発言を繰り返して、何度も切島くんと謝罪して回ってる。オレらが悪いわけじゃないのにね。
「切島くん、ちょっと離れる。あそこ人倒れてる」
「おう!」
少し離れたところに地面に倒れてピクリとも動かない人がいる。出血はなし、飲酒の形跡もない。……敵でもなさそう。肩を叩いて呼びかける。
「すみません、聞こえますか?」
呼吸はしてるし意識はあるな…とりあえず救急車呼ぶか。救急隊員に状態を説明して、念の為動かすなということでそのまま待機。
「なぁに、薄汚い……ホームレス?暇じゃないんだし放っておきゃいいのに。税金の無駄じゃない」
「……ご自分は選ばれしものか何かだと?発言を謹んでください」
カチンときてそう言ってしまった。暴言だなんだと騒がれたけど無視。救急隊員に引き渡して搬送してもらう。発作とかで倒れただけ、とかならいいけど……。
「アンタなんて首よ、若くて調子乗ってるみたいだけど!」
「ケガをしているわけでもない状態の離反は契約違反になるので受理しかねます」
こちらもさっさと終わらせたいので不本意ですけどね!!!!
そうして迎えた最終日、もう終わるし気持ちはるんるん。やっと今日消太さんに会える。やたらとオレの写真やツーショットを撮ろうとしてくる宇治さんとなるべく二人きりにならないように切島くんとくっついてる。
「ねぇ、消太くんのどこを好きになったの?」
「秘密です」
「いやいや、そういうのもういいからさ……もしかして大してないとか?」
「あの人の魅力はオレだけ知ってればいいので。…護衛中なんでもういいですか?」
遠回しに牽制してるのに全然聞く耳を持たない。この2週間で何回消太さんのことバカにされただろう。爆豪くんや轟くんなんかもバカにされたし、正直我慢の限界ではある。でも手なんか出したらオレが捕まるし、チームアップ先の切島くんにも迷惑がかかる。
「つまらない意地張ってないで乗り換えたらいいのに、ほぼ芸能人みたいなもんだから良い子いっぱいいるでしょ」
「……切島くんあと何分?」
「あと5分」
18時まで。
「まぁ私は天地がひっくり返ってもあんな男選ばないけどね……Neutralも見る目ないのねぇ、若い時って歳上とか寡黙ってだけでよく見えるものよね」
いけしゃあしゃあと……。お前に消太さんの何が分かるんだよ。黙ってコンビニで買ってきた水を飲む。せめてもの反抗として、宇治さんや宇治さんの会社経由で出されたものは一口も口にしなかった。飲み物やお弁当、間食なんか用意してくれてたけど全部処分してコンビニで買い直してる。なんか混入されてても嫌だし。
「はい、18時になったので警護を終了します。2週間お疲れ様でした」
あの切島くんでさえ笑顔を失うくらい今回は酷い任務だった。疲れたな〜〜…。
「ちなみにオレも、天地がひっくり返っても貴方みたいな人とは関わりたくありませんよ。自分のことだけしか見えてないから他者の魅力がわからないんですよね」
「は…?」
「そりゃ貴方みたいな人間性の人に心を開いてくれる人なんて稀ですよ、だから全員浅く見えるし何がいいの?ってなるんじゃあないですか?…つまり貴方はその程度の人間関係しか築けないんですよね、自分が未熟だから。消太さんは世界一カッコいい人ですよ、貴方には一生分からないでしょうけど。2週間お疲れ様でした」
切島くんに行こうか、と声をかける。あ〜今日は美味しいご飯食べたい。放心状態の宇治さんを放っておいてビルから出る。
「もう二度と誰かの護衛なんてやらない」
「まあまあ………何回か経験してるけど全員あんなんじゃねえからさ!」
呑んでく?と切島くんに誘われる。ん〜〜悩む…。
「……体分裂させたい」
「怖ぇこと言うなよ…!!禁断症状みたいの出てるし相澤センセに早く会って来いよ」
切島くんとご飯に行きたいのももちろんあるけど、そうさせてもらう。いの一番にお家に帰って消太さんに抱き付く。
「長期任務お疲れ様……どうした?」
「深刻な消太さん不足です」
「2週間だろ……半年帰ってこなかった時もあるくせに」
「うう…死ぬまでそれ言われるんだ……ね、ちゅーしていいですか?」
「………なんか変なの盛られた?」
しっっつれいだな!??!オレだってちゅーしたくなる時くらいあるんだけど!!??!むっすりしてると撫でられた。
「……もう二度とチームアップしたくないくらいには嫌な任務でした……」
「お疲れ様……ほらそんなしわしわの顔すんな」
顔をもにゅもにゅされる。もう終わったし言っていいかな……。この2週間誰の護衛してたかと、どんだけしんどかったか掻い摘んで話す。
「……そりゃしんどかったな、アイツ人の悪口しか言わないから聞くの疲れただろ」
「消太さんの悪口ばっか言うから心臓止めてやろうかと思うくらいには」
「こら」
「道端で倒れてる人に救急車呼んだら税金の無駄とか言うんですよ」
「……本当に変わってないな、アイツ……」
「……なんであんな人と付き合っちゃったんですか」
「しつこかったんだよ……でも手も繋いでないしキスも何もしてねえ」
「してたら怒ります」
「ふは……かわいい、やきもち?」
「……やっぱり歴代彼女教えてください」
「やだ、可愛がるならくましろがいい」
ぐぬぬ………っ!!消太さんの足の間に座らされ、後ろからぎゅってされる。あったか……。
「消太さんの良さ知ってる人いると思うと気が狂いそう」
「そりゃお前の倍生きてるからな……くましろ」
首や頭にキスされてちょっと擽ったい。……あ、お風呂入ってないじゃん。そう思うと名前を呼ばれるので見上げる。
「俺はあんまり独占欲とかねえ方だと思ってたが……くましろに1番依存して、独占したくて周りを牽制してるよ
そんで、くましろは全部俺が初めて……それで充分だろ?」
ニヤ、と悪い顔で笑う消太さんに顔中に熱が集まる感覚がする。急いで前を見て視線を反らしても首まで真っ赤だな、と揶揄われる。
「お前がマスコミとか、テレビ出たときのスタッフとかに俺のこととやかく言われてぷりぷりレッサーパンダみたいにキレてんのも、嬉しくて可愛くて仕方ないよ」
「え、ぅ……レッサーパンダ…??」
恥ずかしくて脳がショートしかけたけど、レッサーパンダという単語で我に帰る。
「あぁ…2本足で立って、前腕あげて威嚇すんだよ…可愛いだろ?」
「可愛くないです」
「可愛いよ」
何笑ってるんですか、この日本一ハンサムが……!したり顔でニヤニヤ笑う消太さんの左手を軽く叩く。消太さんからしたら怒ってるオレはレッサーパンダってことでしょ?全然可愛くない。
(ふ、はっはっ……拗ねちゃった?)
(拗ねてないです)
(機嫌直して、いっぱいちゅーするから)
(もういいですもん)
(やだ、俺がしたい)
(ん…??!どこ触ってるの!)
(胸とケツ)
(へ、変態!!!)
(変態だけど?いつもヒンヒン泣いてるくましろはどう?)
(ぐ、ぅ……)
(ふ…顔真っ赤。ほら、お風呂入るよ)
(え、やだ!一人で入る!)
(なんでだよ)
(消太さんとお風呂入ったら3時間は出れないから)