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92 番犬と忠犬
*プレゼント・マイク
どったんばったんとドアに体当りしたり物を咥えて投げたりして空き教室から出ようと暴れてやがる。見た目は相澤だし、犬にしちゃあめちゃくちゃ賢いけど自我はやっぱり無くなってんだな……。獲物と間違われて襲われかねないんで対面できない根津さんから連絡が来た。
獣化の個性、解除は2日。その獣化した特有の獣が持つ病原菌や寄生虫などは噛まれたり触れたりしても人には伝染しない、その獣が苦手とする植物を食べても元は人体なので影響はナシ……。
じゃあ神代は狂犬病になる可能性もねえってことだな、一安心だ。それに昼はおにぎり食ったって言ってたけどそれも相澤の体には問題ねえってこったな。
神代の言葉はきちんと聞いてたみてえだし、人語は通じるってことだな……。よし、少し勝負に出てみるか。
「ヘイ、相澤。ストップだ」
「ゥヴヴ……」
オーオー、そんなに毛を逆立てちゃって。可愛がってる神代の言うことは聞くくせによォ……。塚内さんが尋問した敵によれば、犬(にしちゃあ元は馬くらいデカイらしいけど)なら最初に目にしたり匂いを嗅ぎとった奴を主人として認めてるんじゃないかと言ってるみてえだが……人間のときのすべてを忘れるわけじゃねえらしいから、覚えてる一欠片の要素が神代だったんだろう。だから神代の言うことは素直に聞くし、触れられれば尻尾も振るんだろうなぁ……。
「神代は今病院だ、怪我を治療してる。さっき病院から帰ってるって連絡きた、だからンな暴れるな……お前に傷があれば悲しむのはアイツなんだぞ」
お……。唸るのは止めたな、相変わらず毛は逆立ってるけど。10年以上の関係なのに寂しいねぇ。やっと体当たりやらを止めた相澤を片手に部屋で待ってると少しフラフラの神代がミッドナイトに担がれて入ってくる。
「熱でも出たか?」
「噛まれちゃったしねぇ…安静にしてりゃ大丈夫よ…あら、大人しいのね」
「15分くらい前まで体当たりしたり暴れてたけどよ……説得したら不本意そうだけど大人しくなったぜ」
子犬みたいに甘えた声出して甘えてやがる……ほんとに相澤か??信じらんねえな。
「ふふ、いい子にしてたんですか?うお……なんか二足歩行になったらでかくなるの、クマみたいですね」
ソファに神代ごと連れていき、少し寝かせる。俺らはさっきの傷害沙汰起こした生徒の後始末しなくちゃならねえからな。教員用の給湯室から持ってきた水と、ちょっとしたお菓子を机の上に置いて仮眠室用の空き教室から出て行く。
*神代くましろ
近いな……ちょっと暑いくらいだ。だけど少しでも隙間が生じるとぴったりくっついてくる相澤さんから逃げられない。……水でも飲むか。
「……相澤さんも飲みますか?」
上半身を起こしてきたので水が飲みたいのかと思えば、そうじゃないみたい。またオレの足に頭乗っけて丸まってる。
そういえば出久くんどうなったんだろ……。
「相澤さん、おててとか見してください」
「ヴゥ」
「ヴゥじゃない!怪我とかしてないですか?」
手を取ると触られるの嫌だったみたいで唸られたけど、切り傷とかないかな?ゼンマイから聞いた様子だとケガの確認は出来なさそうだったし……。両の前足、お腹、背中、後ろ足、尻尾、耳や頭を確認。
「失礼しますよ……うわ……ふふ…ワンちゃんになってもハンサムなんですね」
相澤さんの伸びきった髪の毛の前髪部分を上げて右目を確認すると、傷がある。…この傷はUSJのときの傷だろう、こういうのも反映されるんだ。髪の毛を上げるといつもの相澤さんの両目が見えてものすごいハンサム。ワンちゃんってことを忘れるくらいにはビジュアルがいい。
「うん…怪我ないですね、よかった……ゼンマイに噛み付いたりしてません?普段貴方と仲良しなんだからダメですよ」
頭を撫でながらそういうと不服そうにワン、と返ってくる。ほんとに不服そう。ゼンマイちょっと可哀想で面白い……噛まれた腕がまだズキズキするので横になり、目を瞑る。横に添い寝するように相澤さんが寝転んできたのが分かる。
*緑谷出久
「おー、緑谷。わりぃけどこの先の3つ先の空き教室で神代と相澤寝てっから呼びに行ってくれねえか?」
くましろくんの容態を聞き安心したのもつかの間、普通科の生徒が傘やバットなんかを持ち出して暴力事件を起こしてきたことを聞き取り調査された。
いつも相澤先生……もといイレイザーヘッドに首ったけで、僕がオールマイトに向ける以上の気持ちを抱いてるくましろくんの番犬のように側を離れなかった相澤先生。獣化しちゃって記憶やらなんやらは恐らくない状態だっていうのに、くましろくんを守るのは運命めいた何かを感じちゃうな。
上鳴くんや切島くん、それにプレゼント・マイクも唸られてるって言うし一応ノックをして……ゆっくりドアを開けるか。
「ヒャアッッッ??!!?」
ほんの少しドアを開けたその先の隙間から犬化の相澤先生と目があってびっくりして尻もちついた。
「び、びっくりした……ぁあ……すみません、大声出して。僕、昼間の…くましろくんのクラスメイトの緑谷です。様子見に来ました、入って大丈夫ですか?」
何やってんだ?みたいな顔をしてたから一応挨拶をする。そうするとドア前から少し下がったのでドアをゆっくり開ける。本当に番犬じゃないか、これじゃ…!
「くましろくん、くましろくん」
熱とかはなさそう。犬やらいろんな獣にさせる個性らしいけど、例えば犬なら狂犬病みたいな野生の動物が保有する菌で人間に危険なものも元は人間なのもあるから伝染したりしないらしい。念の為に病院に行って予防接種を受けてきたらしいくましろくんに身の危険がなくてよかった。
「ん……?」
「僕、出久。そろそろ最後の授業始まるから起こしに来たよ、起きれそうかな?」
「……起きる……いて…」
包帯まみれの右腕と大きなガーゼが貼られた顔が痛々しい。
「ケガ、大丈夫?」
「うん……治癒で治してる……」
寝起きはいつも元気なくましろくんでも少し静か。体を起こして、伸びをして目を覚ましたくましろくんが立ち上がる。
「最後の授業なんだっけ…?」
「今日は緊急で時間割変わったのもあって、日本史!」
そういうと日本史かぁ…と肩を落としてる。わかる、眠くなっちゃうよね。
「…あ、いた。相澤先生、リード……よいしょっと。よし、A組行きましょう」
ちょっと緩めの首輪とリードをつけて職員室に寄って一声かけてからA組へ。
「出久くん、すぐいっぱい先生呼んできてくれてありがとうね」
「ううん、あの子達なんだったの?知り合い?」
そう尋ねると知らないって返ってきた。くましろくんのお母さんのこと揶揄っていたし、そもそもヒーローにあんまり良い思い入れないのかもね、と話す。
「うん……ともかく出久くんにも相澤先生に怪我なくて良かった!加減できなくなっちゃうとこだったよ」
「駄目だからね???!」
本当にやりかねないくましろくんに一応声をかける。分かってるって、と続けてるけど怪しいな……。
「ただいま〜」
間延びしたくましろくんの声が響き、A組の皆がバッとこちらを見やる。
「くましろくん!心配したよ、普通科の生徒と騒動になったって聞いて……病院いっとったん??」
「顔と腕に傷が……平気なのかい?」
麗日さんと飯田君が駆け寄ってくる。慣れたのか、相澤先生は今朝のように唸らないもののじっと見上げてる。
「うん、どっちも自分でも治してるし平気……たぶん帰りのホームルームでも話あると思うけど、相澤先生戻るの多分明日になるだろうって」
「なんと……大変な個性事故だな」
「この獣化した間の記憶は残らないらしいけど……でも見て、ワンちゃんになってもこんなにかっこいいの。ほら……まじでイケメン」
「ヴゥ」
「くましろくん、めちゃくちゃ先生唸っとるよ…」
「いちいち唸らないでくださいよ!」
「説得でいくんだ……」
ゴン、と軽めに相澤先生の口元に頭突きしたくましろくんをやれやれ…と言いたげな顔で見てる。元の記憶もないにしろ、やっぱりくましろくんの人懐こさは種族の垣根を超えるんだなぁ…。
*神代くましろ
帰宅するのも一苦労だった。玄関で待っててください、と告げてるのについてこようとするから土足なんだからダメ!と怒ると子犬が甘えるときの声がずっと聞こえる始末。
タオルを濡らして手足…というか肉球を拭こうとしたら唸られるし……これもう逆ギレされてるのと同じだよね?
「唸らない!土足は厳禁です!」
なんとか拭き終わって部屋に上がった相澤さんはソファの上に丸まってる。あんまり塩分濃くならないようにいつも通りのご飯を作って、よそったのではなくオレが食べようとするのだけ横取りしてくるので戦争みたいなご飯を終えてお風呂へ。
「……お風呂、入ります?」
別室になるから気にはなるみたいだけど、お風呂は嫌っぽい…?シャワーヘッドにめちゃくちゃ唸ってる。無理やりお風呂はこっちも大変だと感じてまあいっか…と入浴。脱衣所でずっと待ってたみたいで、あがってそうそうでっかいワンちゃんにのしかかられて汗が噴き出す。入った意味ない……!
ベッドにも当然です、って顔でのぼってきて隣に添い寝するように丸まってる。明日のいつ頃戻るんだろう?朝には戻ってるのかな……。犬になってもかっこいいなんてなんてわがままなワンちゃんなんだ。頭を撫でると尻尾がブンブン振ってるのが見える。
*相澤消太
目が覚めると、くましろの腕の中にいる。なんかいつもより近くないか…?抱き枕のように抱きしめられてる。昨日一昨日の記憶がない……個性事故か。……なんだこの顔の傷跡と腕の包帯は。
「くましろ、くましろ」
「……?」
「少し早いけど起きてくれ……起きれる?」
「はい……」
眠そうに目をこするくましろに少し胸が痛みつつ、頭を撫でて背中から支えて抱き起こす。ふにゃっふにゃで俺に寄りかかってくる。
「数日分の記憶がない、なんか知ってるか?」
「……かっこいいワンちゃんになってましたよ」
…犬?……本当だ、扉にリードと首輪が下がってる。眠そうに頭をすり寄せてくるくましろの背中を擦って起きるように促す。怪我のことはもう少し覚醒してからでいいか。利き手を怪我しているし俺が適当に朝ごはんを作る。
くましろが好きな分厚い食パンを焼いて、卵とハムを焼く。コーンスープも好きだからレトルト粉末に豆乳入れてレンチン。匂いにつられて起きてきたくましろが目を輝かせる……神代さんは滅多に家に帰ってこなくて、ずっとコンビニ飯やスーパーの惣菜で育ってきた幼少期のあるくましろだ。これだけで「人の作る暖かい手料理」と捉えて喜ぶのだから、俺もマイクも随分簡単なレシピを振る舞うことが増えた。
「すごい!ホテルの朝食みたい!待ってください写真撮るんだから」
「こんくらいならいくらでも作ってやるから早よ食え、遅刻すンぞ……んで、その怪我は何?」
「普通科の生徒にちょっと」
「普通科に?……やっかみかなんかか?」
「ミッドナイトとかセメントス先生たちが仲介?「仲裁。喧嘩取り持ってどうする」……してくれたんですが、理由までは教えてもらってなくて。相澤さんがワンちゃんになったので、さすがに食堂利用できないな〜って裏庭で食べてたら絡まれました…傘とかバットとか持って相澤さんに向かって振り回してて最悪でしたよ」
「そうか……バットか?右腕。折れたりしてねえか?」
「あ、右腕は大興奮の相澤さんにガブッていかれました、狂犬病とかなかったんでちょっと噛まれたくらいです」
ボト、とパンを落とす。よりによって俺が…?くましろを噛んだ?ショックを受けてるともう動かせるので気にしないで早く食べてください、と何故か怒られた。
職員室に行き、主にマイクから揶揄われたがミッドナイトやセメントス先生方に迷惑をかけた謝罪をして普通科の生徒の件を尋ねる。
「停学処分よ、武器を持って個性をむやみに使えないヒーロー科に複数人で一方的に暴力ふるったんだもの……でも右腕のケガはそんなに気にしちゃダメよ、だってイレイザーはくましろちゃんの番犬だったんだもの」
番犬?と聞き返すとマイクや根津さん、A組の連中にも見境なく唸り襲いかかろうとしたりしてかなり本能的に過ごして迷惑をかけていたらしい。再度謝罪したが、しばらくミッドナイトさんのいいネタになるんだろう。
「というわけだ、お前らにも迷惑かけたな」
「ぜんぜん!ワンちゃんのせんせー可愛かったよ!」
「嬉しくねえ感想をどうも」
「面白かったよなー、唸るたびにくましろに怒られてるセンセ」
「いちいち唸らない!って言われてほんとに静かになってたよね」
「番犬してたな」
「分かった分かった、静かにしろ。進められねえだろ」
(とりあえずまだ右腕完治してないから神代には後でノート写さしてやれよ)
(それと……他学科とのやっかみはヒーロー科の課題だ、喧嘩ふっかけられても買わないこと。売られても絶対に個性なんか使って応戦するなよ)
(はぁい)
(遅れた分のスケジュールに関するプリント回すから確認するように。時間割結構変わるからな)
(はーい、くましろちゃん1枚とって)
(む……左手でとるのむずい)
(貸せや……おらよ)
(ありがと!)