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88 ミニミニマリストと
*神代くましろ
たいとにお願いして容姿をかえてもらい色さんのお店に皆で行く。色さんは消太さんとゼンマイの同級生だから、その顔馴染み以外のメンバーを増やすのは初めてだ。OBってこともあってちょっと緊張してる出久くんの手を引いてれっつらごー!華の金曜日ってやつで繁華街もざわざわしてる。
「出久くん、何食べる?色さん何でも作ってくれるよ」
「えぇ?う〜ん迷うな…」
「オレの偏食にも付き合ってくれるくらいだから……たぶんお肉はあると思う」
毎回お肉頼んでるから。常備してる?って疑いたくなるくらいいつ来てもお肉ある。
繁華街からちょっと歩いて、脇道に入って一軒家みたいな日本家屋の扉をくぐる。あ……紅葉きれい。庭園の手入れも最近始めたみたいで、庭師さん呼んで大改革したんだ!と消太さんから写真見せてもらった。紅葉がピークに色づいていて、日本庭園とよく合ってる。
「よっ!山田!……うわ、ほんとに消ちゃん幼くなってる…!懐かしいね、俺彩度色。分かる?」
「あぁ………お前もあんまり変わんねえのな」
「こ、こんばんは、僕くましろくんと同じクラスだったみ、緑谷出久です!」
「そんな緊張しなくていいって、ただの料理屋なんだから……もちろん知ってるよ、くましろくんとか轟くんとか相当目立ってたメンツの一人だからね。あとよく話聞くし……あんまり多忙で連絡してくれないっていつもカウンターで泣いてるよ」
「泣いてません」
「悪酔いしてると泣いてるじゃん、『出久くんまた未読無視……ブロックされたんだぁぁあ〜!!!』って」
色さん、今日めちゃくちゃ意地悪。
「爆豪にブロックされてた時も荒れてたな」
「荒れてないってば!!!」
「ウソだろ、お前がわんわん泣くから爆豪にアシストしてやったの忘れたのか!??」
ゼンマイの言葉に朧げな記憶が……蘇ってきたような…。なんか仕事終わりの爆豪くんに怒鳴られた気もする。
「ふふ、思い出してきた?……緑谷くんは好き嫌いある?嫌いなものは出さないよ」
「嘘つき、野菜ばっかだしてくるくせに」
「君は少し好き嫌いなくしなさい……はい皆お店の中おいで、消ちゃんも呆然としてないで」
見やるとほんとだ……初めてやっちゃんとたいとの関西人まみれの会話を目の当たりにしたときのオレみたいな反応してる。会話のスピードが早すぎてついていけないんだよね。消太さんと出久くんの手を握って中に入る。
「…炊き込みご飯のにおいする!」
「ご飯食べるでしょ?サンマ入れといたよ」
わーい!サンマ大好き。大根おろしかけて食べる炊き込みご飯は…2年前から定期的にリクエストしてるメニューの一つ。
先に飲み物と、出久くんのリクエストを聞いて皆で乾杯。いつも苦いお酒飲んでる消太さんがジュースなの、なんか新鮮…!
「……ジロジロ見んな」
「美青年だから……ハァ〜顔面良すぎ、オレだけの写真集作っていいですか?お願いだから一枚、お願いします。」
「却下」
ぐう……子供の頃のアルバム写真も頑なに見せてくれないし頑固者め…!
「緑谷くんとも仲いいんだね」
「受験前からですよ!個性遅咲き組だったんで」
ね、と出久くんに聞くとそうだねって返ってくる。消太さんはなんだそのネーミングセンス…と当時と同じこと言ってきた。分かりやすく直結に、そうするとこうなる。
*相澤消太
鬱陶しい。酔わせたら面白くなるから飲め飲め、と山田と色が飲ませた結果(驚くことにそんなに酔わなさそうな酒を数杯程度で)ベロベロになったくましろは昼寝の時と同じように俺にべたべたしてくる。
「離れろ、食いにくい」
「色さんのごはん美味しいですよねぇ、どれがお気に入りですか?」
会話にならない…。ミョウガの和物と炊き込みご飯と答えるとじゃああげるとミョウガの和物の皿を渡される。色との会話によればコイツ、野菜があんまり好きじゃないらしい。肉が大好物とのことでトンテキは美味い美味いと2皿食ってたが。
「同級生なんだろ、なんとかしてくれ」
緑谷に助けを求めるもやんわりと否定された。
「くましろくんの幸せ邪魔しちゃあとでどんなに怒られるか……あ、そうだ!相澤先生はいつ頃進路固めたんですか?」
「オレサイドキックになるから雇って、消太さん」
「いらねえ。……まだ決まってないが事務所を立てたりするつもりはない」
ぐいっともたれかかってくるくましろを背中に回すとコアラのように抱きついてくる。酒くせえがほんのりいい匂いがする、香水か?
「高2の頃に固めてたと思うぜ……確かな」
山田も顔が赤い。酔ってるんだろう、笑い上戸にはなるが意外にも静かな山田を見やる。
「オーオー、見せつけちゃってくれて…迷惑そうな態度取ってっけど実はまんざらでもねえな?ホントに分かりやすいのなァ」
「ね、俺が悪戯したときなんて青筋立てて鼻折れるんじゃねえかってくらいボコボコにしてきたもんね」
「「そりゃお前のいたずらは度が過ぎてんだ」」
色まで続いて好き勝手言うので反論したら山田ともろ被りだった。同じ意見でよかった、が先のは訂正しておきたい。
「趣味は悪いと思う……がウソではねえんだなと思っただけだ」
数多いるだろうによりによって俺。物好きだ。
「なんの話ぃ?」
「寝てろ」
「寝ない!まだアイス食べてない……色さぁん、この間の…………アイス乗ってるやつ食べたい」
「カフェオレの?寝ちゃいそうじゃん、起きてな持ってくっから」
ぐしゃぐしゃと色に頭を撫でられたくましろは俺にめちゃくちゃ頬ずりしてくる。頬が熱い、熱でもあるのかと思うくらいだ。
「消太さん、昔からスタイルいいんだぁ…」
「お前も別に悪くないだろ」
「たっぱおっきい……ぐぅ」
寝るなと揺すって起こす。どうやって家に持ち帰るんだ、お前が寝たら。
「山田、コイツどうすんだ。雄英で寝泊まりか?」
「俺が根津さんに叱られるからそれは勘弁してくれ……タクシーで送ってく、緑谷もな」
結局カフェオレにアイスが乗ってるやつを色が持ってきたが起きず。代わりに俺が食った、たしかに美味い。食い終わる頃に起き出して横取りしたとわんわん泣かれる始末、お前が人の背中でぐーすか寝てたんだろうが…。
「消太さんひどい」
「寝てたんだろうが、俺の背中でぐーすかと」
「おこしてよっ!」
「暴れんな五月蝿い……起こしたよ、寝てたけど」
「また作るから泣かないでよ…これそんなお気に入りなんだ」
「アイスが美味しい、牛乳の味する」
また作る、と言われ満面の笑みになった。クソ単純だなコイツ……本当に成人したプロヒーローなのか??そして俺は本気でこいつと結婚してるのか…?
「消太さん、子供の頃ここにまだホクロないんだ」
するりと伸びてきた手が首筋を撫でる。ホクロ……気にしたこともない。
「あ、ほっぺのとこもない」
「おい、近……」
吸われた。キスじゃない、これは吸われてる。おでこやら瞼やら頬やらを文字通り吸われる。
「だっはっはっは!相澤固まっちまった!!色、今面白えぞ〜!」
「なになに…っふ、あっはっはっ!消ちゃん顔ヤバ!!!耳まで赤いよ…!?」
好き勝手笑う2人をあとではっ倒すことにして泣かれても面倒なのでくましろの好き勝手させておく。お前は早くアイス持ってこい、その念を込めて色を睨む。
「さすがのスルースキル……」
「泣かれても困るからな……おい長ぇぞ、アイス食え」
「はぁい」
気が済んだようでもそもそアイスを食べ始めたくましろはご機嫌なようだ。何よりで……。お開きとなり、色が呼んだタクシーに乗り込む。緑谷にもタクシー代渡しててちゃんと先輩してる山田にはちょっと感心した。
「ほんとに二人で暮らしてるんだな」
山田が住所を言って、爆睡してるくましろをおぶって部屋に入るとチラホラと写真が飾られている。思ったより物が少ない……なんとなく人形とかそういうの好きそうなのに置いてないあたり、こいつがきっと俺に合わせてるんだろう。そう思うくらいには整理整頓がされてる。
「もっと物置きゃあいいのに」
「へえ、ミニマリストのお前がなんでまた?」
「俺に合わせてる部屋だろう、これ」
「実家の自分の部屋はお前のポスターやら新聞記事で埋め尽くされてるってよ……おーい、くましろ家着いたぞ」
簡単に想像つく。流石に自分を飾られるのは落ち着かないから嫌だが、もう少し自分の好きなもの置けばいいのに。大人の俺だって許容するだろう……多分。
山田はリビングで寝るそうなのでシャワーを浴びて、恐らく俺チョイスの服に着替える。水を飲んでると後ろから気配もなく手が伸びてくるので心臓が跳ねた。
「どうした」
問いかけるも無言。起きてんのか?と思い振り返るとほぼ目が開いてない。
「ん……あれ、お風呂入った…?」
「あぁ」
猫のように頭を首に擦り付けられる。恐らく癖?なんだろう。シラフのときは犬みたいなテンションだったが、大人しいと猫みてえだ。
「おれもはいる」
「起きてからにしろ、危ない」
そう言うともごもご何か口にしてたが聞き取れない。頭を撫でると腹に回った腕がさらに強く抱きしめられる。
「いっしょにねる」
……寝袋が良かったが、コイツ入ってきそうな勢いだ。分かったと頷き寝室へ行く。なんだか落ち着かない、別々のベッドではなく1つだとは思ってなかった。横になるや否や抱きしめられる。
「おい、匂い嗅ぐな。擽ったい」
「いつも文句いわないじゃん」
「……なぁ」
「ん…?」
今にも寝そうなくましろが見上げてくる………ほんとに造形品みたいな顔してるな…顔がいい、という言葉がぴったりだ。
「俺で、よかったのか?拾われたのも、その先も」
「……んん…?消太さんが、いいんですよ……」
貴方だから、と続けられ少し恥ずかしくなってくる。惜しげもなく好きという感情をこんな美形から向けられるとそりゃ照れる。
「そうか」
そう返して目を瞑る。明日の午後には元に戻ってるはずだ。
起き抜けの1発目にアイツのドアップがあるので仰け反るほど驚いた。……まだ戻ってねえ。くましろの顔を見てるとわりかししっかりある隈に気づく。日頃からあんまり寝れてない、夏になるとバテて動けないらしく体重が毎年10キロ近く減ってるらしい。
「ん゛……消太さんいる…?」
「いる、もう少し寝ろ」
目元を撫でたからか意識が覚醒したくましろが手繰り寄せるように抱きしめてくる。もともと腕の中にいたのに更にゼロ距離だ、ひっつき虫と根津さんに言われていたがその通りだな…
頭を撫でてるとすぐまた寝落ちたので俺も目を瞑る。今日はこの個性事故のせいで俺も家に居るよう昨日指示された。
*神代くましろ
なんかめっちゃよく寝た気がする…目を開けると、いつもの消太さん。二度見した。昨日の美青年が今や国宝級のハンサムに成長してる。
「はわ……」
「起きたか、よく寝てたな」
「ヴッ……かっこいい゛…」
悶えてねえで起きろ、と抱き起こされる。昨日からの個性事故の間の記憶はないらしいけど、一度起きたみたいでゼンマイから話は聞いたらしい。二度寝しにわざわざここに戻ってきてくれるのめちゃくちゃ嬉しい。
「その……なんか色々言っちまったみたいで悪かった、なんともないか?」
「平気です、なんかむちゃくちゃ卑屈でしたよ消太さん」
「?卑屈…?」
「よりによってなんで俺なんだ、とか相手は数多いるだろとか。とかとか!」
拗ねてますよという顔を作ってジト目で睨むとちょっと居心地悪そうにしてる消太さんが頬を掻いてる。え、待って可愛すぎない???何その反応……キュンってした。
「ヘイ、起きたか?飯作ったから食おうぜ」
ゼンマイがやって来た。優しい、ご飯作ってくれたんだ。色さんのご飯も消太さんが主に俺が体調不良のときに作ってくれるご飯もゼンマイのご飯も全部好き。母さんの手作りの料理自体が思い出せないくらい、コンビニご飯とかで子供の頃育ってきたから人の手作りごはんに飢えてるんだと思う。
「ゼンマイおはよ〜ご飯ありがと!今日何?」
「多分嬉しさでダンスしちまう系のやつ」
めちゃくちゃハードル上げるじゃん……。ていうかそんな、感情昂ぶったらインド映画みたいな反応するって思われてるんだ、オレって。
(……!!!!ベーコンエッグじゃん!!!ハウルの!!!)
(オーオー予想の4倍喜んでる)
(ふっ、くましろほんとに踊ってる)
(色と緑谷からそれぞれ昨日の相澤との隠し撮り来てるぜ)
(流れるように盗撮する犯罪者を増やすな)
(ほしいです、いくらで売ってくれる?)
(買うな馬鹿)
(まあ〜そうだなァ…一枚200円で)
(売るな、マイクも)
(これで消太さんの実家からも写真もらってアルバム作るんだ…!!!俺が死ぬときはこれを棺桶に入れてくださいね)
(却下だ、俺よりあとに入れ。あと実家には行かせねえからな)