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87 思春期
*神代くましろ
「はわーーーーっ!??!」
「静かに、くましろくん。相澤くん怖がっちゃうから」
根津さんに怒られたけど無理じゃない???こんな……個性事故でちっちゃくなっちゃった消太さんを見てじっと黙っておくなんて。
な、なんて可愛らしい……!オレが出会った頃から知っている切れ長の目つきの消太さんとは違い、ちょっと丸くてくりくりしてる。美少年すぎなんなの???ちょうどオレが雄英に入ったときと同じくらいらしい。モテモテじゃんこんなハンサム、なんなの??
「かっ……きゃわ…!…え、待って人間国宝?」
「ブレねぇのな……ヘイ、相澤〜俺だぜプレゼント・マイク」
「……山田か?」
「オレは貴方のフィアンセです」
「………はあ??」
「ゔっ……ゴミ見るような目された……ほんとだもん!!!20歳の誕生日にプロポーズしてもらったもん!!!結婚5年目だもん!」
信じられないって気持ちがありありと顔に出てるので指輪とか一緒に撮った写真とか見せても、小さい消太さんは信じてくれない。
「趣味悪いんだな」
「ガーン……」
「そう照れんなよ、イレイザーヘッドのお前が大好きでお前が拾い上げてヒーローになるまで鍛えた愛弟子だぞ」
見兼ねたゼンマイがそう言ってくれたけど、あり得ないとか趣味悪いとか近寄るなってずっと怒られてる。
「冗談はよせ」
「本気だって!強情なのな〜いいじゃん神代可愛いぜ?何があってもお前LOVEで」
「ちょっと馬鹿にしてない?ゼンマイその言い方」
「相澤LOVEなのは事実だろ」
まあそうだけど。と言うとほらな?って一人でウケてるけど、相変わらずゴミを見るような目の消太さんの表情は変わらない。
「俺の結婚相手なのも、プロヒーローなのも信じられねぇ」
「ゔ………真っ直ぐ心に来る……」
確かに、貫禄もないし…あ〜!プロヒーローが助けに来てくれた!ってなる安心感みたいのも、まぁ薄いと思う……爆豪くんと俺だったら爆豪くんが来たときの方が安心するだろうし。
夏は食欲がガクンと落ちて体重も筋肉も落ちるし……。ヒーローらしからぬと言われれば頷くしかないのは、一理ある。
「とりあえず校長室で聞き取りするから、相澤くん来てくれる?あとはプレゼント・マイクも」
3人を見送りパソコンぽちぽちしてる出久くんに寄りかかる。
「心に来た」
「まあまあ……元々相澤先生ってツンデレっていうか、照れ屋なところあるから100%本心じゃないと思うよ」
「一理あるから凹むじゃん」
「一理?どこが?」
「プロヒーローぽくないって」
出久くんと椅子の間に座りコアラみたいにくっついて愚痴っていると振り返ってきた出久くんに頭を撫でられる。
「くましろくんはくましろくんらしいからNeutralなんだろ、そこが揺らいじゃだめだよ……あ!でもご飯はちゃんと食べたほうがいいとは思う」
「善処します……」
あとちゃんと寝てね?と有無を言わせない表情の出久くんに詰められる。こういう時は下手に言い訳とかすると消太さんばりにガン詰めされるから、素直に謝罪して反省しておくに限る。実は怒らせたら怖い部類の出久くんに逆らわないほうがいいんだ。
*相澤消太
何度聞いたって信じられねえが、目の前のどう見ても山田であるプロヒーローとオールマイトたちに説明されれば、個性事故で未来の俺が今の俺に退化したと信じるしかない………が。
さっきのやたらきゃぴきゃぴ五月蝿い女みたいな美人に俺が心底惚れていること、しかも俺が拾って育て上げてプロヒーローにしたというのだけは俄に信じ難い。
「……アイツは?」
「緊急要請があったから市街に行きました、名残惜しそうにしてましたよ」
俺の教え子らしい、緑谷という青年がテレビをつける。中継で写し出されてる火事現場の周りには暴れてる敵とちらりと見えた端正な顔立ち……本当だ、こんな写されて個性を使用しているってことはプロヒーローなのか。
「職場見学にでも行くか?お前そういの好きだったよな」
「俺の知らねえプロヒ達もいるんだろ?忘れるにしても見てはおきたい」
山田の申し出に有難く乗っかり、緑谷と三人で市街地へ。アイツの友人とやらに容姿を好き勝手弄れる個性のやつがいるので、顔が割れてる2人を中心に姿を変えて向かう。中継先に近づくにつれて人混みが多い……なんだありゃ、うちわ?アイツのフォロワーか??まるでアイドルだな……。
「くましろく〜ん!がんばれ〜!」
「……アイドルか?」
「はは……在学のときから人気凄かったからね」
「今や公式ファンクラブ100万人超えだぜ、凄えよなァ」
チャラチャラしてんだな、随分と。空をまるで飛ぶかのように飛び交うアイツと目が合った……気がした。次の瞬間俺と同じ捕縛武器を使いながらこっちへやって来たくましろは主にうちわを持ってるフォロワーたちへ指示を出す。
「ここらへん建物の損害が激しいので倒壊の恐れがあります、警察の指示に従って速やかに避難してくださ……い!ほら!」
指示の最中にお菓子が折れるかのようにビルが傾く。それを片手をかざしてぴたりと止めたくましろが焦らず、でも急いで避難しろと市民の誘導を開始した。
「アリャリャ、見学厳しそうだな」
「確かにひび割れてるビルが多い……今回結構損害額も大きそうですね。くましろくんも全部受け止めるのは難しいだろうし……先生、加勢しますか?」
緑谷が山田に確認している。山田の個性だとよりビルが倒壊しそうだが……敵をはっ倒すなら人手は多いほうがいい。
「……ん〜いや、根津さんに頼まれてるし…くましろいるなら大丈夫だろ」
そう言いながら避難を開始した市民も疎らになってきたタイミングで移動しようと背を向ける。
「取り残しみーっけ」
「チンピラか…」
いかにも手下、という風貌の男たち6人。俺は無免許だし仮免もまだ持ってないから個性使用は厳禁。山田たちに迷惑がかかるので前線から退く。
「なーにしようとしてんの」
早い、いつの間に……。気配も音もなく6人の中にいるくましろを見る。あっという間にチンピラをしばいて捕縛武器で縛りあげた。身のこなしや素早さ、周りへの意識……プロヒーローなのは本当なのか。ちょっとチャラチャラしてるけど。
「塚内さ〜ん、こっち武器所持の6人です!縛ってあります!」
「Neutral、こっち来れるか?遠距離型の個性持ちがいる」
「は〜い向かいまぁす……出久くん、小石ついちゃってる……ヨシ」
緩い返事をして激戦区へ向かったと思えば、すぐに敵が吹っ飛んでくる。……衝撃で気絶してるようだ。
「おーおー、暴れてんなァ…」
「早く帰りたいんでしょうね……ちっちゃい相澤先生いるし」
二人がそう言い俺に視線を寄越す。この吹っ飛んできた敵、アイツが?
「塚内さんごめんなさい、どっか行っちゃいました」
「あぁ、確保してるよ……くましろくん、無効化してくれるのは嬉しいけどいつも大体のところに蹴り飛ばすのは良くないよ。探すの大変なんだから」
「受け取ってくださいって言って蹴り飛ばす方が嫌じゃないですか???」
蹴り飛ばさない選択肢はないのかよ。塚内、と会話をしていた警察とのやり取りを見守り、そろそろ雄英に帰るかと腕を引かれる。帰ったあとテレビを見てもアイツは瓦礫の撤去やら残った市民がいないか探し回る姿が中継に映る。結局雄英に戻ってきたのは4時間後だった。
「消太さん、ただいま〜」
俺に近寄る前にシャワーを浴びる!と爆速でシャワー室へ向かい、着替えたくましろが俺の頭を撫で回す。目が回りそうだ。
「……マジで美少年すぎる……ジュノンボーイに出ませんか?」
「出ねえ」
物好きなやつだ、よっぽどお前のほうが美青年だと思う。フォロワーの多さもアイドルみたいな応援のされ方も納得の行く美形さだ。
「近い」
「ん〜…」
俺を抱き枕の様にして眠ろうとするくましろを押しのけ……力強ぇな……!この細い体のドコにんな力が残ってるんだよ。寝たあとに抜け出そう。諦めて力を抜くともっと近くなる。
「ようやっと仲良くなったな」
「なってねぇ」
山田が揶揄ってくるので脛を軽く蹴る。すぐからかってくるのは変わってねえんだな。すぐに眠りに落ちたくましろを見やると、本当に女みたいだ。まつげ長いし、鼻筋通ってるし……顔は小さいし目はくりっと大きい。犬や猫みたいなバランスしてる。
「なんで俺なんだ?このレベルなら引く手あまただろ」
「そりゃあ……くましろの言葉を借りるならお前は光だからだろ
母親分かるよな?死神って言われてる神代さん。あの人の一人息子で、家庭を顧みない性格の母親と、単身赴任で単純に接触機会が少ない父親の元で育った愛情不足、且つ…プロヒーローの母親から良くねえ個性だって言われて育ったのをお前が拾ってプロヒーローに育て上げたんだぜ。」
山田の言葉に眉をひそめる。……家庭環境がよくない家庭は、コイツ以外にもいる……その中でも特別にコイツを拾って雄英に通わせたとなると、何か放ってはおけないやり取りがあったんだろう。
「まぁもともとイレイザーヘッドのフォロワーだったらしいけどよ、お前は顔出してねえだろ?初対面のオッサンの言葉を鵜呑みにして雄英入学するために1年お前と特訓漬けで入試して本当に入学しちまうんだから、ヒーローっつうモンへの執着心は強いよな」
「……バカで正直っつーことか?」
「そうだな、くましろはバカで正直で素直だ。職員室でお前の忠犬って呼ばれてたし」
忠犬……。
「まさか山田も俺も雄英の教師になってるとは思わなかったが、少し納得がいく」
「お前が育て上げた奴らは今立派に活躍してるぜ、くましろもそうだがこの爆豪とか轟とか…そこにいる緑谷もだな」
そうか、と返す。ちゃんと教師としてヒーローできてるなら、まあ……いいか。
*神代くましろ
「……あれ…」
「やっと起きたか」
抱き枕させちゃってた消太さんの頭を撫でる。まだ中学生?とか高一くらいだ。朝起きてハンサムにもなれないのに、起きぬけの美青年本当に心臓に悪い。
「ねむい……今何時ですか?」
「そろそろ5時。山田が迎えに来るって」
「あ〜……定時近いのか…消太さん今日はどうするんです?個性事故終わるの明日?なんですよね」
「一応家に帰る」
「実家?」
そう尋ねると首を横に振られる。ってことは今の家だから……今日は消太さんの好きなご飯作ろう。
「今日きんぴらごぼう作りますね、消太さん好きなやつ……今も好き?」
「あぁ……頼む」
かっ、かわいい〜!!!!ぎゅ、と頭を抱きしめると苦しいって二の腕殴られた。相変わらず照れ隠しがバイオレンス……!でも可愛い!傷跡もない目元や右足を撫でる。
「……おい、何考えてんだ」
「勘がいいのは昔からなんですね…いだいいだいちぎれるちぎれる!!!」
ほっぺを無遠慮にぐい〜と摘まれる。ダメージ2倍なの聞いてないのか!??!ちぎれそうな痛みなんだけど??!?
「根津さんと山田たちからある程度は聞いてる、お前を拾ったっつー過程も、教師としての俺も、怪我のことも。
いちいち気負うな、生きてんだろ今も」
「そぉですけど……こんな美青年の目と足が……」
「お前も腹斬られたりしてんだろ、おあいこだろうが」
ぐぐぐ、と抓る手に力をさらに入れてるのか痛みが増す。勘弁してください。
「随分慕われてんだな」
「?」
「これ、山田が」
あぁ、消太さんが受け取り続けてるオレへのファンレターたち。少し読んだみたい。もう追いつけないから読むの辞めちゃったんだけど、精神的に落ち込んだ時とかに読んで元気を出してる。
「……オレだって消太さんに書こうとしたら、本気で睨まれてやめろって怒られたんですけど。こんなにファンがいるのにどうして男の俺なんだ?みたいなのやめてくれません??」
ファンレターの100枚200枚オレだって書けます!!!って言ってペン没収された。ノイローゼにする気か?って怒られたの未だに納得いかない。結婚する前にも、学生の頃から散々言われたことだ。
『よりによってなんで俺なんかを?』一回り以上違うし、男女ではない。肩書で言えば生徒と教え子。突かれて笑われて面白おかしく消費されるには十分なネームタグがいっぱいある。
「消太さんがいるから、今のオレが居るんです。ヒーロー続けてるのも消太さんがいるから。もし……消太さんが先にいなくなっても、オレは消太さんが守ろうとしたこの世界をちゃんと守ろうと思うくらいには貴方が全てです。オレが女でも、消太さんが女性でも、オレが年上でも絶対に貴方がいいんですもん、拾ってもらったから、育ててもらったから好きなんて状態はとっくに通り過ぎてるんですよ」
「………そ、うか」
あ、目逸らされた。握ってる指先が赤い……照れてる消太さん珍しい。
「可愛い……国をあげて保護すべきでは?」
見るなと背を向けられた。え?可愛すぎない?何…??あまりの可愛さに動悸してきた。
「ヘイ、くましろお取り込み中悪いがいまはお前が25で相澤は16だ。未成年淫行で捕まるぜ、口説くのもナシ」
「口説いてないよ!!!事実を述べただけ」
ゼンマイにあらぬこと言われたから訂正しておく。16才かぁ……ちょっとまだ筋肉も細くてトレードマークの髭もないつる太状態の消太さん、間違いなく轟くんばりにモテモテな気がするけど……。
(ゼンマイもお泊り?)
(あぁ、未成年淫行で捕まってほしくないからな)
(失礼な!!!しないってば!!)
(騒がしいぞお前ら、目立つからやめろ)
(色のとこでも行くか?あいつ喜びそうだ)
(色……?色ってあの色か?アイツは何してんだ?)
(料理屋さんしてますよ、超ごはん美味しい)
(連絡したら今日空いてるってよ、行くか!)
(消太さんお酒禁止ですからね)
(飲むわけねえだろ……お前は?見るからに弱そうだが)
(くましろは酔うと面白いから呑むだろ……ヘイ、緑谷!お前もどうだ?)
(え、い、いいんですか?)
(出久くん残業ばっかりって根津さんから聞いた。パソコンを水浸しにされたくなければ来て)
(脅しじゃねえかよ)
(まぁアレだ、くましろなりの心配の仕方だな)