MHA
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好きなタイプ
*神代くましろ
「消太さんどこ行くの」
「便所…ついてくんなアホ」
げし、とついて行こうと立ち上がった俺の膝を蹴って行ってしまった。久々のオフなんだからくっついてたっていいじゃんか……!!!フン、消太さんの分のレモンティー全部のんじゃお。
「何拗ねんてんだよ」
「冷たいこと言うから」
「お前……赤ん坊じゃねえんだから後追いすんな、トイレまで」
「お風呂まで後追いしてくるくせに!」
お風呂はいいんだよとか訳のわからない主張をされる。ソファに消太さんが座り、オレはその足の間に入る。
「見えねえ」
「普段テレビ見ないくせに」
アカデミーだかなんだかの受賞式だ。見たことある俳優さんたちがいっぱい写ってる。
「…あ、この俳優さんかっこいい」
「…どれ?」
ぐい、と前のめりになってくる消太さんに潰されそうになりながら今写ってるこの人、と指をさす。最近デビューして広告でよく見かける新人俳優さんらしい。
「ふぅん…」
「消太さん好きそうな感じ」
オレの頭にアゴを置いてきた消太さんにそう告げる。爽やかで可愛らしい感じ。でもちょっと猫っぽい……。
「…いや、そうでもない。くましろに似てねえだろ」
「え?」
「………忘れろ」
「いやいやいや!えっ??!」
今とんでもない発言しませんでしたか?!スゴイ力で抱きしめて動けないようにしてくる消太さんの猛攻を掻い潜って向き合う形に座り直す。……ええぇ待って耳赤いんだけど…!!!??!珍し……。
「……何見てんだ、ぶん殴るぞ」
「照れ隠しが攻撃的すぎますって……え、オレに似てる子がいいの?」
「……」
「メロ………無理……」
消太さんの肩に崩れ落ちて頭ぐりぐりすると頭を撫でられる。
「めっっちゃこの世のイレイザーファンにマウント取っていいですか?」
「結婚しといてこれ以上どこからマウントとんだよ」
「あーーーー!!!!好き……」
限界オタク化してるとツボったのか消太さんが笑い始める。
「一応俺の好きなタイプはくましろだからな」
「しぬ………」
でろでろにとける……。声を上げて笑いだした消太さんにぎゅっと抱きつく。右足痛くないかな…。
「耐えられないのでメロエピ投下します、ちょっと抱えきれない」
「呪いみてぇに言うんじゃねえ」
『この俳優さん好きそう、ってイレイザーに言ったらお前に似てないからそうでもないって返されたしぬ。今日を祝日とします』
「早……もう呟いたの?」
「だって死ぬ……こんなの惚気とマウントとらないとやってられないですもん」
凄まじい勢いでリツイートされてく。ほら皆尊いとかコメントしてる!!!やばくない?オレに似てないからそうでもないって……やばいキュンキュンしすぎて頭混乱してきた。
「…おい、2ヶ月ぶりの連休オフだろ。俺に構え」
「しぬ……」
「フッ……おまえ少し慣れろよ」
無理……。メロメロ……。唐突にマウントを取らせてもらうと、雄英で教員として働いてるとき…特に実技授業の監督とか、Vで動きを見てるときの鋭い目も大好きなんだけど、結婚してからオレだけに向けてくれるちょっと優しい目も大好き。特別なんだなあって実感できる。
「ちょっと離れてると消太さんのヤバさを忘れかけてくから、オフのたびに心拍数上がりすぎて危機を感じるんですが」
「それはご愁傷さまだ、早く慣れろ。また手から繋ぐ練習スタートは俺が死ぬ」
「いつまで擦るんですそのネタ……」
「仕方ねえだろ、こうやって顔近づけるだけで茹でダコみてえに顔赤くして目回してんだから」
ニンマリと笑う消太さん、完全に馬鹿にしてるときの顔だ。
「もういい悪口書いてやる」
「訴訟してやるよ」
『イレイザーずっと新婚のときの話擦ってくるひどい』
『手を繋ぐだけで大騒ぎしてたのは事実だろうが』
最近ゼンマイに背中を押されてついに消太さんもSNSアカウントデビューした。オレが精神的に参ったり、何も手付かずの状況になるのが多いから代理のお知らせみたいなことをしてくれてて、あんまり……というかそれ以外何も呟いてないのはものすごい消太さんらしい。皆のツイートのいいねだけはしてる。
『なんでこっちで言い返して来るんですかニヤけるな』
『耳まで赤いから』
『さっきアンタも赤かったでしょうが!!!』
『苦情が来るから魚みてえに飛び跳ねるなうるせえ』
お互いのリプライに返答しあってるけど全部いいねがすごい数だ。やっとイレイザーがお知らせ以外の呟きしてる!って喜んでるコメントもちらほらある。
『ムっっカつくモテないでくれます???』
『鏡の部屋に監禁してやろうか?こっちのセリフだ』
『え!?ムカついてくれてるんですか?』
『ねえ』
『ねーーーーえーーー!!!!寝室に逃げないでください』
『もうそれ口で言えよ』
『好きなタイプ、オレですもんね』
『撤回する』
「やだー!!!撤回しないで!!ごめんなさい嬉しくて調子乗りました撤回しないで!!!」
「苦情くるっつってんだろ!」
ゴン!とげんこつされた痛い……。蹲ってるとこっち来いと引っ張られて湯たんぽみたいに抱きしめられる。
「くすん」
「全然可愛くねえ泣きマネ辞めろ」
厳しいほんとに泣いちゃいそう。スマホを見るといっぱいコメント来てる。
『げんこつされた』
「お前……はっ倒すぞ」
「溜めないでくれます??」
見上げるとちょっと笑ってる消太さんと目が合う。
*相澤消太
うっかりしてた。口を滑らせてくましろに似てないから好きじゃないと溢してしまい、くましろは顔を赤くしながら照れて喜んでる。
「機嫌直せよ……何見てんの?」
抱きしめた腕の中からなかなか出てこないくましろにそう尋ねると、アプリを見てると返ってくる。くましろは手がかかる。生徒のときもだがプロヒーローになってもやれ働き詰めで数カ月帰ってこないだの、帰ってこない間に感染病にかかってみたり、ストレスで味覚障害になってみたり、精神的に参ってみたり………。
度々動けなくなるから俺名義でアカウントを作り、くましろがメディアに出られないときの代理でのお知らせアカウントをマイクの薦めもあって作成した。
そのアカウントはお知らせ以外の何一つ更新せず、飯田やら麗日だのの公式アカウントをいいねするくらいのものだったが、今日初めて使ったら凄まじい反響だ。
『イレイザーの好きなタイプくましろくんって言い合ってんの……?』
『会話内容が尊い』
『突然惚気を目の前で聞かされている』
『くましろくん嬉し泣きしてそう』
『構ってもらえて喜ぶくましろくんを飼いならすイレイザー』
またマイクが聞いたら爆笑しながら気に入ってそうな褒め言葉?がずらりと返信欄に並んでる。
『くましろくんのココ可愛いってとこありますか?イレイザー目線で!』
くましろはそもそも学生のときからイレイザーヘッドが好きだと公言してるし、度々SNSにも俺の好きなところを書いては暴走してる。「イレイザーヘッドから見たくましろ」が知りたいとの声があまりにも多い。
『全部かわいいよ、特に可愛いのは教えない』
まだ拗ねて布団から顔を出さないくましろが出てくるまでやるか。
『くましろくん急に静かになったけど喧嘩?』
『布団の中で拗ねて出てこない』
『くましろくんの好きな仕草教えて…オシエテ…』
『食う前に犬みたいに一回匂い嗅ぐとこ』
『布団…?いま一緒に寝室にいるの???』
『話しかけても無視』
『今でも覚えてる可愛いエピありますか?』
『1年の期末テストで俺に褒められたいから全科目100点叩き出して卒業までそれ維持したこと。褒めたら鼻血出して倒れた』
「ねえ!!!!」
「やっと出てきたか」
首まで真っ赤なくましろがおかしくてつい笑う。
「まじでもぉ〜…!!」
「いいだろ可愛いんだから。ほらおいで、明日どこ行くか決めたの?」
腕を引っ張り抱きしめる。後ろから抱きしめてるからくましろのスマホを一緒に覗き込む。
「ここの映画見に行きたいんですよ」
くましろが好きなディズニー映画だ。続編か?くましろのスマホで調べてるのを眺めてると、マイクからの通知だ。
「スマホを見ろ……?見てるけど…」
「…待て、俺のか?」
ベッドのフレームに置いていたスマホを確認すると真っ暗だがスタンドマイクの絵文字と10万以上の人のアイコンが見える。
「なんですかこれ?」
「………悪い、間違えた。多分配信?だ」
「これが……??コメントとか何もないですけど……」
「バツ押したら止まるのか?これ…マイクに聞いてくれ」
とりあえずこれ以上何も押さないように少し遠くにスマホを置く。危ねえ………くましろのこと襲ったりしてなくてよかった……血の気が引いた。
「バツじゃなくて終了ボタンがあるそうです」
「………どこだ?」
「なくないですか?ゼンマイ嘘ついてる?」
くましろのスマホを二人で覗いてマイクからの返答を待つ。スワイプして出てくる……本当だ。終了ボタンを押しても不安だったので電源を切る。
「名前言ってなくてよかった……っふ、そんな汗ダラダラにしなくても……っ!」
「いや……悪かった、慣れねえことはするもんじゃねえな……なんか書いてあるか?」
「……消太さんがゲロ甘い声で俺を呼ぶところから始まってたみたいですよ」
「…………はぁ……はず…」
下から覗き込むくましろのおでこを小突く。周明け絶対にマイクに揶揄われるだろうな…考えただけでもう気が滅入ってきた。
「相思相愛って書かれてる」
「別に書かれなくてもそうだろ」
嬉しそうにコメントを見てるくましろの横に並び俺も眺める。
『誤爆配信ヤバ』
『ほらおいでって言われて絶対ハグしにいった音した』
『終始声が甘い』
『デートを邪魔しないために国民は明日外を出歩くな』
「またモテちゃう……ぐぅ」
「お前とイチャついてる音声誤爆とはいえ世界に垂れ流したんだぞ、むしろ引かれるだろ」
「引かれるのもそれはそれでムカつく……こんなにハンサムでカッコイイのに……!」
なんなんだよ、って怒られた。
(トレンド上がってる)
(くそ……やらかした。もう慣れないことはしねえ)
(そんな落ち込まなくても…)
(お前が俺のこと一生懸命血眼になって隠してくれてるのに、俺から漏らすようなことしたらダメだろ)
(ホントは言い触らしたいですけどね、ほら見ろこのイケメンを!!!って)
(バカがよ……茶化すな。んで映画は何時から?)
(13時!ポップコーンとこのナゲット買いましょうね!あとこのアイスも)
(どんだけ食うんだよ)