TWST × 銀魂
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ほうれんそう
*神夜
ルチウスをまた抱っこしていると、すごい勢いでクルーウェルが部屋に入ってきた音が聞こえる。
「トレイン先生!…神夜を見かけませんでしたか」
「そこに居る……どうした、君らしくもない」
モーゼスさんが言うので気になって覗き込むと、クルーウェルの髪がぐちゃぐちゃだった。目が合うとクルーウェルが私を指差しながら近寄ってくる。
「子犬……お前、なにも言わずに消えるな!!はぁ……」
「クルーウェル、寝てたから……」
「はっはっは……やられましたね、クルーウェル先生。特別に紅茶を淹れましょう」
モーゼスさんが用意した椅子に座ったクルーウェルは仰け反って天井を見上げてる。走っていたらしい。
「クルーウェル」
「『様』をつけろ……なんだ」
「はい」
「ンナァァァ」
クルーウェルの顔にルチウスを押し付ける。
「……なんの真似だ、子犬」
「ルチウスいいにおいだから、あったかいし…‥」
見た限りのクルーウェルの髪型になるように髪の毛を分けていけば、モーゼスさんが後ろで笑っていた
「子犬に世話をされては飼い主は務まらんな」
「世話などされていません……子犬、今度からどこへ行くのか声をかけるかメモを残していけ」
分かったか?と聞かれて頷く。
*デイヴィス・クルーウェル
朝から走り回った。温室にも中庭にも図書室にもおらず見つけるのに大変苦労した。まさかルチウスを撫でるためにトレイン先生の部屋にいるとは……。どっと疲れた。座っていると、ルチウスを顔に押し付けてきた神夜に何を考えているか聞けば、『あたたかくていい匂いだから』と。
神夜なりの励ましというか、謝罪に近い行為なのだろう。素直さはいいことだと思っていると、走り回ったせいでボサボサになった髪までセットするようなたどたどしい手つきで分け始めたところでトレイン先生が意地悪く笑い始めた……全く意地の悪い。
「子犬、反省してるのは分かった。お前も座れ」
「うん」
「いいか、報告、連絡、相談。ほうれんそうを徹底しろ」
「ほうれんそう」
頷く。見目は新入生たちと変わらないが、中身はもっと幼い子犬には他の子犬以上にしっかり躾をしなければならない。
「……ほう、所作が綺麗だ。トレイン先生に教わったのか」
「うん」
「よい心がけだ」
「いい子?」
「いい子は脱走しない」
「なんだ、クルーウェル先生にも強請るのか」
何を?と眉をあげればトレイン先生のご令嬢のおさがりとして、幼少期に読んでいた猫の図鑑を渡す約束をしたそうで。俺にも何か本を貰おうとしたのだろう。
「犬がいい」
「ステイ、ご褒美をねだるなら今日一日いい子にしていろ」
犬の図鑑か……まぁ悪くないチョイスだ。今日一日の過ごし方で考えてやるのもいい。
「分かった」
「オァ〜〜」
「ルチウスが浮気だと嘆いているぞ」
「うわき?」
「ルチウス、神夜に余計な言葉を吹き込むなよ」
*神夜
「あ、エース」
「お前、昨日の…!つかこっち側じゃねえの?」
こっち?と聞くと生徒としてここに居ないのかと尋ねられた。
「だって魔力ないし」
「まぁそりゃそうだけど……グリムいるんだぜ?」
グリムを見る。今日も耳が青く燃えている。モーゼスさんがくれる猫の図鑑にグリムみたいなのいるのかな……
「こら、子犬。プリントを配れ」
「いてっ」
おでこを突かれた。クルーウェルの言うとおり各テーブルにプリントを配って、実験の材料を置いていく。
「宇宙人だ」
「戦闘民族なんだろ」
「こえ〜〜」
ひそひそと聞こえるように話してくる子たちは無視して配り終える。地球人じゃないからこそどうこう言われるのは慣れてる。
「?どうしたの?」
デュースがこっちを見て怒ってる。
「いや……聞こえるように陰口言うなんて卑怯な奴らだと思って」
卑怯?
「地球人じゃないのは本当だし合ってるよ?」
「いや……そうかもしれないが…」
「夜兎族は戦闘民族だし」
「そ、そう…そうなんだけど…‥」
デュースが何をそんなに気にしてるのかよく分からない。クルーウェルに怒られる前に戻る。
「配った。図鑑」
「ステイ……今日一日と言っただろう」
ケチ。ケチだ。クルーウェルによれば新入生は鍋を爆発させがちらしい。吹っ飛んだら危ないと思いながら見てたけど、誰も爆発させなかった。
授業のあと、ひたすら鍋と器具を洗って外に干した。滑って器具を割りかけたけど割らなかった。クルーウェルについていって温室に向かう。生ぬるい感じの温度は嫌いだけど、ここは見たことないのがわさわさしてる。
「……」
「子犬、子犬」
「?」
「水を飲め。脱水で倒れるだろう」
水を渡されたので飲む。
「それが気になるか」
頷く。
「見たことない」
そう答えると、ここらへんは触ってもいいけど他は危ないからだめって言われた。
「なんで危ないの?」
「食虫植物もあるし、毒を持つものもある。そして自我がある植物もある」
「……自我…?」
「あぁ、意思を持ってる。毎年新入生の子犬が誑かされて噛みつかれて怪我をするんだ」
「抜いちゃえば?」
そう言うと薬の材料にもなるから無理だって言われた。魔法も大変なんだな……。分かってて意地悪なやつおいておかなきゃいかないんだ。温室を散策してると、尻尾が落ちてる。尻尾をたどると、足、背中。この耳と尻尾は……たしか、入学式の日にいた子だ。ちょっと強そうな子。
「………」
死んでるのかと思って観察してたら尻尾で顔をべし!と叩かれた。鼻が痛い。
「見すぎだ……なんの用だよ」
「死んでるかと思った」
「………」
「クルーウェルが、ここらへん触ったら毒のやつあるって言ってたから」
そう言うとむくりと起き上がった長髪の子に睨まれる。
「んなヤワじゃねえよ……あぁ、お前か。魔力なしの宇宙人」
「?」
「先日は俺のトコの寮生を脅してくれてどうもなぁ?アレからキャンキャン震えちまって怯えてんだ」
「手は出してない」
「殺気は向けただろ」
「……ちょっと睨んだだけ」
そういえばまた尻尾で叩かれた。痛い。
「あの子は弱いから興味ないけど、君は強そう。強いの?」
「勘弁してくれ、ガキじゃねえんだから…ケンカがしてえなら他所でやれ」
「ケンカじゃない」
*デイヴィス・クルーウェル
賑やかな話し声が聞こえたと思えば、キングスカラーと神夜が話し合ってる。一瞬微笑ましく思えたが、会話の内容は全く微笑ましくない。
「ステイ……子犬、キングスカラーと乱闘騒ぎを起こしてみろ。図鑑はなしだ」
「まだやってない!」
「やるなと言っているんだ、駄犬が……キングスカラー、お前も煽るようなことを言うな」
地団駄を踏むように向かってきた子犬の額を教鞭の持ち手で抑え、キングスカラーに忠告する。
「不用意に煽り立てると痛い目を見るぞ……全員で立ち向かっても抑えられるかどうか危ういくらいだからな」
そう言うと察したのかキングスカラーは目を少しだけ見開いた。学園長もそこを案じている。普段は理性的だからこそ、そのタガが外れたときが未知数で、多大な損害が発生する可能性が高い。
「図鑑」
「そうやって飼い主に凄む態度をやめれば考えてやる」
「嘘つき。また今度、考えとく、次って言う地球人にほんとに次あったことない」
手早く神夜がそう返すとキングスカラーが笑い出す。
「また今度の内容に寄るだろうが……元のところで何を強請ったんだ」
「……アイス」
「アイス?」
「バナナのアイス。銀時は買ってくれなかった」
…思ったよりも子供らしいのが出てきて呆気にとられる。バナナのアイスくらい買ってやれという気持ちと、何かそれ以上に優先すべきことがあったのだろうという希望的観測をもって不貞腐れはじめた子犬にしゃがみこむ。
「俺は嘘をつかない。そして、そいつも嘘ではない。」
「嘘だ、次見かけたときも『次』って伸ばした」
「恐らくだが、何か他に優先すべきことがあったのではないか?……図鑑は本当に検討してやる。一日いい子に過ごしたらと最初から伝えただろう」
「はっ、完全に育児だな」
「キングスカラー……野次るな」
「嘘ついたらそれ毟る」
「いい度胸だ、バカ犬。そしたらとことん躾直してやる」
(……イヌ?)
(どこかのバカ犬が俺のコートを毟ろうと計画しているようなのでな……ステイ、まずはお座りだ)
(?)
(地面にではない。椅子に座れ……夜10時を過ぎて読んでいたら取り上げるからな)
(嫌だ)
(聞けぬならこれはやれない)
(………)
(睨んでも無駄だ)
(読まない)
(グッドガール、我慢を覚えろ)
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