TWST × 銀魂
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品定め
*モーゼス・トレイン
透き通るような白い肌、少女らしく華奢な体型。
オレンジ色の目を引く手入れされた長い髪に、青い瞳。
白く透ける馴染みのない東洋のレース生地の服と青いアクセサリーとこれまた東洋の黒いパンツ、靴。
戦闘民族とは思えない見目の少女に声をかける。
「神夜」
「ん?」
「地べたに座らないように。行儀が悪い」
「行儀」
「あぁ……楽かもしれないが、品のある佇まいの方が見ていて気持ちがいいだろう」
「品があるって例えば?」
「例えば、食事中に物音を立てられたら集中できず不快だろう。カトラリー同士を鳴らしたり、口を閉じずに音を立てたり」
「………」
眉間に皺が寄る。想像してしっかり嫌悪感があったようだ。
「嫌かも」
「だろう…だから床には座らない。ベンチや椅子に座りなさい」
「分かった」
反抗はしてこない。常識がなさすぎてそれは頭を抱えたが、ここの学園の生徒より幾分聞き分けがいい。それだけは救いだ。
「モーゼスさん、それ何?」
ルチウスを指差す神夜に驚く。猫も知らないのか。
「猫のルチウスだ。……見たことないか?」
「ネコって言葉は聞いたことある」
興味津々に見てくる神夜に一つの考えが浮かぶ。ルチウスの機嫌もいい。
「触ってみるか?」
「………いい」
「?何故だ、触りたそうにしているのに」
「……夜兎は力が強いから。前も…地球に妹がいて。妹がいる家の、人間が信用できなくて。待てって肩掴まれたときに払ったら、腕が折れた」
「腕が?」
「うん。……妹に、夜兎と地球人は力の感覚が違うって教えてもらった。妹もたまに加減を間違えてドア壊したりしてる……ルチウス、弱そう。だから触らない」
彼女なりの線引きに目を開く。戦闘民族と聞いていたし、本人も強いものを見たら本能的に戦いたくなるのが夜兎族というものと昨日の夜話していた。
その説明から、乱暴な者だと思いこんでしまいがちだったが反省すべき偏見だった。
「……では、神夜。一度そこに座りなさい」
「?うん」
神夜を座らせ、向かいに同じように座る。ルチウスも膝でリラックスしている……この子が警戒しないのなら、大丈夫だ。
「私の手を触ってみなさい。突いてみたり、撫でてみたり握ってみたり」
右手を出す。神夜はしばらく手を見て動かなかったがちょん、と人差し指を乗せてきた。随分控えめだ。しかし妹も加減をたまに間違える、と言っていたのでかなり気をつけているんだろう。
「……大丈夫だ、そのまま」
乗せたまま動かないので声をかける。
「……痛くないの?」
「あぁ、お前が加減をしているからな……そのままならルチウスに触れても平気だ」
神夜の膝にルチウスを乗せる。ルチウスは大人しく神夜を見上げているが、神夜は両手を上に上げたまま固まっている。
「トレイン先生、失礼………おや」
クルーウェル先生がやって来た。今の光景に目を瞬かせている。
「……神夜、固まらずにさっきやったようにしてみなさい」
固まったままの神夜に声をかける。ようやく左手が動き、また人差し指でルチウスの頭をちょん、と突いた。
「ナァ」
「痛がってる」
「違う、鳴いただけだ」
「ふっ……なんだ、猫が好きなのか?」
クルーウェル先生も隣に立って神夜を見ている。私の授業より、クルーウェル先生のほうが準備も器具も多いので日中の手伝いはクルーウェル先生に見てもらっている。
「ネコ、初めて見た」
「ンナァ〜」
「おお………」
神夜の人差し指から、手が開かれ手のひらが背中に置かれる。そのまま背中を撫でるようになり、ルチウスの喉も鳴る。
「ふわふわ」
「そうだろう」
「あったかい」
「生きているからな」
幼児のような感想だが、触れたことがないなら仕方ない。表情は乏しいが、感情はきちんとある。若干緩んだような口元と、大きく見開かれた目をみれば分かる。
「クルーウェルのそれも?」
クルーウェル先生のコートを指差した神夜。いい着眼点だ。
「クルーウェル『様』だ……あぁ、猫の毛ではないが。」
「………毟ったの?」
「ステイ、言い方を変えろ。俺のこのコートは素材にするために狩った動物の毛ではない。亡くなった動物から作られている」
一度アパレルブランドに勤めていたこともあり、拘りのある服らしい。魔法士らしくはないが、拘っているのは知っている。毛皮や革製品は動物が好きな私としてはあまり相容れない考えではあるが、犬を好むクルーウェル先生も同じようだ。
「ふわふわ」
「ふん。当たり前だ……こら、引っ張るな!バッドガール、お仕置きをされたくなければ引っ張るな」
「着たい」
「先にそれを言え。そしてだめだ」
神夜の額に鞭の持ち手を軽く当てたクルーウェル先生がため息をつく。やはり……少し言動は幼い。そして身体能力が優れているが故の力の強さ。無邪気に物を壊してしまう可能性があることは問題点だが、聞き分けの良さ、素直さは大きな評価点だ。問題点を打ち消すこともできる。
「けち」
「飼い主に向かって戯言を溢すのはこの口か?躾け直しだ……ルチウス、この子犬から降りてくれ」
「オァ〜〜」
ルチウスの間延びした声が響く。降りる気はないようだ。
「……はぁ……後で温室に来るように、子犬。分かったな?寄り道はなしだ」
「分かった」
クルーウェル先生も教育熱心だ。元いた場所とは様相が異なるようで、神夜はすべてのものと言っていいくらい周りのものを観察している。ベンチの横にいる蟻、動く絵画、ゴースト、たまたま見えた妖精、図書室の浮いている本、食堂のステンドグラス、そして燭台の炎………
猫のように動かなくなりずっと見ているのをバルガス先生や他の生徒からも報告を受ける。
「ルチウス、クルーウェル先生に呼ばれているから神夜から降りなさい。また明日だ」
そう声をかけるとルチウスは素直に私の膝に戻ってくる。……すこし不服そうだ。
*神夜
モーゼス先生に送り出された。クルーウェルの温室に向かう途中、クロウリーの怒鳴り声が聞こえた。
「クロウリー」
「おわっ!?驚いた、もう……神夜さん、気配を消して歩くなと言ってるじゃないですか!」
なんか怒られた。
「八つ当たりやだ」
クロウリーの肩を軽く叩くと、大きい声が止む。
「……コホン、たしかに。失礼しました。私としたことが…」
「なんで怒ってたの?」
「見てくださいよ、ほら」
ぐしゃぐしゃになったもの。上にあったやつだ
「落ちちゃったの?」
「いいえ、ここの二人と一匹の仕業です」
二人と一匹。見ると、赤と青と黒のネコ……耳が燃えてる。ルチウスとは違う。ネコって耳が燃えるんだ。
「戻せないの?クルーウェルは割ったビン直してたよ」
昼間見た光景を思い出し、言うもクロウリーは首を降る。大事な石…エネルギー源みたいなやつが壊れちゃったらしい。貴重で、なかなか手に入らないと。魔法もなかなか大変だ。
「なので、裏山の坑道で同じように魔法石があるかもしれないから取りに行くように、という話をしていました」
「坑道」
魔法石、見てみたいかも。怒られてる三人(?)は弁償できないなら退学!とクロウリーに言われて、目に見えるくらい落ち込んでいた。
「クルーウェル」
「クルーウェル『様』だ!……遅かったな、寄り道していたんだろう」
「クロウリーが怒ってた」
「……学園長が?」
魔法石を壊した赤と青と黒い猫の話をすると、クルーウェルが自分のクラスの生徒だと頭を抱えてた。
「わたしも行きたい」
「だめだ。」
「なんで?」
「坑道が崩れ落ちたら生き埋めになる」
「上に向かって掘ればいいんでしょ?」
「そうじゃない。……お前は平気でもあの駄犬たちが平気じゃない可能性がある」
「見に行くのは?」
「……そんなに坑道が気になるのか?廃坑だから何もないぞ」
首を振る。坑道じゃない。
「あっち、何かいる。強そうなの」
「……何か?」
「うん。気配で分かる」
クルーウェルが窓の外を見る。特徴は?と言われるけど、それは分からない。ただ気配がする。そこそこ強そうなもの。
「そこそこ……子犬、俺はどうだ」
「なにが?」
そう尋ねると強さだ、と言われる。
「……面倒くさそうって感じ」
「褒められていないことだけは分かるな。……ではバルガス先生は?」
「楽しそう」
「トレイン先生」
「楽しそう」
「学園長」
「……骨がありそう」
「では、廃坑にいるというそいつは一番誰に近い?」
「…バルガス」
(そういうことでしたら、護衛の意味も兼ねて様子を見に行かせます?しかし、神夜さん。魔法石に関しての助力は無用ですよ、壊したのは彼らなので。彼らの身に危険が起きたら護衛の意味で動いてください)
(分かった)
(そんな楽しそうな顔で言われても説得力がないんですけど……まぁ、私も大怪我して帰ってこられても後味悪いので!お願いしますよ)
(学園長、本気ですか?…神夜、もし危ないものがいたとしても坑道内で手をだすのはよしなさい。天井が落ちる可能性がある…広い外で、生徒の安全を確認してからだ)
(うん)
((瞳孔が開いている……夜兎族の本能というものか?))
(あとはこれを。ポケットに入れておきなさい)
(うん)