HQ 宮(侑)
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魔の手バイバイ
*宮侑
あんなちっこくてほっそくて吹けば飛ぶようなひよこみたいなん気の弱さやと勝手に思っとったのに、葵ちゃんがはっきり断った。
「信ちゃんは誰より真面目にバレーやっとるんで、ダシに使うみたいな勧誘なら、私ただの邪魔になるんでお断りします」
会う度会うたんび3年生のスタメンも入っとらんような奴らが葵ちゃん狙って「お兄ちゃんもおるんやしおいでや」とマネージャーに誘っとった。
毎回囲まれたら怖がっとる癖にはっきり断った。
「……は?」
「強豪校ってことしか知りませんけど……うちの北信介は、レギュラーであってもそうでなくても、1番ちゃんとやることやってるって知ってます。世代交代するんやし、信ちゃんのバレーを邪魔するようなら私は先輩方が引退するまでマネしません!」
「お、おぉ……言い切ったな…」
「宮くんもやで」
「え!?俺??!」
「ユースに選ばれるような凄い強い子ぉやって信ちゃんは褒めとったし、驕るような奴やないってフォローもされとったけど!
信ちゃんが1番やることやってきてんねんで!小学校からずーーーーーーっと!」
「……お、おう…北さんが凄いの分かっとるわ」
3年生からバカにされてもあの人ずっとボール磨きもやめへんし、シューズの手入れも怠らんしメニューに手ェ抜いてるのも見たことない。その波のなさは尊敬してる。そしてそれを長年継続させるのは北さんの性格もあるだろうが、意地なんやと思う。『やることちゃんとやらんと、強くても頭良くても人として、プレーヤーとしてあかんやろ』……前にそう言われた。
「ふん!行こ、宮くん!」
「……ふは、なんやねん!」
行くよ、と腕を引かれる。曲がり角を2回曲がったあと急に止まる葵ちゃんの顔を覗き込むと、顔面蒼白。
「ど……した?!腹でも痛いんか?」
「……こ、こわかっ、た……」
「はぁ?!あんな啖呵切っといて??!」
「……うぅ〜…」
そのままボロボロ泣き始めたせいで、俺が泣かせたみたいな図になってて通る人らがちらちら俺を責めるような目線で見てくる。誰が好き好んで泣かせるねん、クソ!!!
「あー侑、女の子泣かせてる」
「げ、角名……銀島…」
「あーあカワイソ、侑に悪口言われた?」
葵ちゃんに言うわけないやろ!!!変なこと吹き込むな!!角名や銀島、サムの前では擦り寄って来る女共に『触んな煩し豚』とか言っとる……いや、言い訳やけどここまで酷く言わんと練習邪魔してきよるし、ベタベタ触ってきよるし鬱陶しいんや。俺かて最初から女の子に『豚』なんて言わへん。普通に言っても通じひん相手にしか言わへん……しつこい奴とかな。
「言うわけ無いやろ!そういうんちゃうわ!!」
「でも泣いてるじゃん、はいハンカチ」
「何言ったんだよ侑……」
銀島まで俺がなんか言うたんやと思いこんで睨んできてる。めんどくさいゴタゴタを部活に持ち込むなっちゅー目。分かっとるわ、普段の暴言だって持ち込まんために言ってんねん。
「宮くんじゃなくて…「1年、何しとん。うるさ……葵?」あ、信ちゃん…」
最悪や。お先真っ暗や。サムと喧嘩した時よりも冷たくてこっっっっっわい視線をビシバシ受けながら北さんが俺と葵ちゃんの間に割り込んでくる。
「どぉしたん、葵。兄ちゃんに言うてみ」
部活内では見たことないやっっっさしい顔してる北さんが葵ちゃんの頭を撫でながら顔を覗きこんでる。
「……さ、3年生が……信ちゃんおるんやからマネやってやって執拗いから……嫌やって断ってん」
「おん、そうやな」
「き、今日6人くらいおって……怖かってん……ちゃんと真面目にやっとる信ちゃんたちの邪魔になるから、やるなら先輩たち辞めたらやる!って言ったら…ものすごい顔しててん…」
「……侑は付き添ってくれたんか?」
「ぅす……俺も怒られましたけど」
「怒られたん?」
なんで??って顔で三人が見てくる。俺だって訳わからんわ。
「北さんが1番やることちゃんとやってんねんで!って流れ弾喰らいました……」
「「ブッ」」
「何わろとんねん角名ァ!!!銀島ァ!!!」
「こら、侑。大きな声出すんやない、ここ廊下やで。……葵も3年生から守ってくれた侑に八つ当たりはあかんやろ?」
「うん……ごめんね、宮くん」
「……おん」
「ん。じゃあ終わりや……侑、あとで3年生のどの先輩か教えてくれるか?監督にも報告せなあかん。葵は一人で帰るの禁止や。しばらくアヤちゃんと帰り」
「アヤちゃんはバイトあるもん」
「……じゃあ兄ちゃんが部活終わるまで図書室で勉強しながら待っとき。茜と三人で帰ろか」
頷いた葵ちゃんの頭をもう一撫でした北さんは『可愛くて可愛くてしゃあない』って顔やった。先に教室戻りと葵ちゃんを見送って、北さんが振り返る。
「悪かったな、侑。付き添ってくれたんに」
「……俺もごめん、てっきり侑がいつもみたく暴言吐いた子泣かせたんだって思った」
「俺も」
「お前らはほんまに……少しは疑ってかからん北さん見習えや…!」
「ふは、葵が侑に泣かされたんならあんなぴったりくっつかんと思ってな……あ、そや。侑、チョコありがとぉな。葵からちゃんと貰ったで」
「………北さん、ちょっと面白がってません?」
「おん。葵には素直な侑可愛いらしいなって思うとる。」
3年の先輩の名前を北さんに告げて1年の教室に戻る最中、角名が爆弾発言を落としてきよった。
「治から聞いてたけど、あの子かぁ。侑の片思い相手」
「…は?!??!!」
「お、カマかけたのにその反応は正解?」
「てっめ……ふざけんなやアホ角名!!!」
「わ〜顔真っ赤……別に盗ろうとか思ってないからそんなキレないでよ」
「角名、お前も悪いなあ……侑、頑張れよ。俺は応援してるから。北さんの妹なんて絶対いい子だろうし」
「ガチでお前らは……どうせサムと一緒にバカにしてくんねやろ、分かっとんで」
「「まあそれはそうだけど」」
しばくぞ、こいつらほんまに…!!!その日の部活は一段と北さんの視線が鋭くて理由知らんサムが震え上がっとった。あと2年生たちもちょっと北さんに遠慮しとった。
*北葵
「おう、葵。待たせて堪忍な」
「信ちゃんお疲れさま!茜もお疲れ様〜」
「今日走り込みばっかさせられてくっったくたやぁ…」
たしかにいつもよりヨレヨレしてる。茜頑張れ、とサブバックを持ち上げたら重すぎて持てなかった。何入ってんの…???
「葵には無理や……タオル持っといて」
「ん、信ちゃんは?」
「俺は平気やで。……あ、そや。葵、信ちゃんポイントやるわ」
信ちゃんポイント?今このタイミングで…?と首を傾げていると、茜が大騒ぎ。
「えー!信ちゃんの審査もOKやったん?」
「まぁな」
「すげーなー…じゃあ明日立ち会うからな、葵!」
「うん…?」
立ち会う?誰かとの連絡先交換をOKになったんだろうけど、私から『〇〇くんと連絡先交換したい。審査をお願いします』って頼んだわけやないから、誰のこと言ってるんか分からん。ま、二人が許可出したんならええか。
「今日のご飯唐揚げやって」
「っしゃあ〜!早よ帰んで、葵!信ちゃん!」
「そんな引っ張ったら葵が転ぶやろ、暗いしちゃんと歩きや」
「もう転ばへん!」
「唐揚げ冷めてまう!」
「お前ら双子は……同時に違うこと話すんいい加減やめろ、俺やちーちゃんくらいしか聞き取れへんで」
分かったから落ち着き、と何故か私まで宥められるターンに入った。信ちゃんの右手と手をつなぎ、茜は左手と繋いでた。三人でゆっくり帰って、揚げたての唐揚げいっぱい食べた。今日はちーちゃんもお父さんも早い帰宅の日で、久々に家族揃ってご飯食べた。
「葵、あとこれとこれだけ食べて。もうちょいやから」
「くるしい…」
「信じられへん、少食すぎや……この世から葵がなくなってまう」
「なくならへんなくならへん、お父さん大げさや」
ちーちゃんだっていっぱい食べる方じゃない。茜や信ちゃんがいっぱい食べすぎなんや。
「生まれたときだってこんな豆粒みたいな大きさやってんで?お父さんしっっかり覚えてんねんから!!」
「豆粒は妊娠初期すぎるやろ……」
「いやいやいや、葵ほんま豆粒みたいやったで。茜普通に赤ちゃんやったのに、葵は小さかってん」
ちーちゃんまで参戦してきた。
「ほんまにな。栄養全部茜が吸い取って出てきたんやって看護師の人にも言われたな」
「…‥も〜!分かった、食べればいいんやね!」
唐揚げとおしんこ。そしておかわりした味噌汁。未熟児で生まれてん……みたいな空気になるけど、茜は普通体重、私はほんの少し低体重やっただけや。それも私だけ逆子の難産で茜3500gと私2400gで差があったから、ちょっと看護師さんがピリついただけで。
ていうか今むっちゃ元気やんか。
なんとか食べきった夕飯のせいでお腹ぱんっぱんや。
*宮侑
「ぇっ」
「ほい、QRコード」
いつもの如くしれっと席をくっつけて昼飯食っとった。葵ちゃんの弁当、ちっさすぎて4度見したころから全然慣れない。そんで弁当食ってたら葵ちゃんが「そういえばね…」と茜ポイント、信ちゃんポイントが溜まったと言ってきた。サムはもちろん知らんから『なんやそれ…?』って本気で戸惑った顔しとった。
そのタイミングで茜がやってきて、俺とLINE交換してもええって。
「ほ、ほんま?」
「したくないんなら俺が代わりに交換すんで」
「だめや、治くんは茜ポイントも信ちゃんポイントも獲得してへんもん。例外はなしや」
「つかしたくないなんて言うてへんし!……いった?」
アイコンかわえ……彼氏に撮ってもらったみたいなんがちょお気になるけど、なんやこれ……?ぬいぐるみ?
「宮くんの写真、これなに?」
「飼っとる犬。かわええやろ」
「ワンコ家族におるんや!ええね〜名前は?」
「柴太郎」
「「「しっっぶ」」」
工藤さん、葵ちゃん、茜が揃って返事してくる。なんや、ごっつイカした名前やろ。強そうやし。
「柴やけん『柴』って名前は絶対入れとかなあかんよな」
「あかんな。強さが失われる」
「ワンコに何求めてんの…?」
「これ、なんなん?」
「かわええやろ、ちーちゃん……お姉ちゃんがな、東京行ったときに買ってきてくれてん。ポケモン」
「あの東京駅にあるおっきいポケセン?」
「多分そう!人むっちゃいたって言っとった」
なんかやり取りしてるサムと葵ちゃんの会話をよそにアイコン見直す。ポケモン詳しくないねんけど……なんのポケモンなんやろか?ピカチュウであれよ。誰やねんこいつ。手のひらくらいに乗る大きさのぬいぐるみを嬉しそうに頬ずりしてる写真。彼氏ちゃうくて、お姉ちゃんに撮ってもろたんやんな、そうやんな。
(……サム、おれお年玉でゲーム買うわ)
(は?急になんやの)
(ポケモンやる)
(……………お前、そんな一途やったっけ?)
(むっちゃ一途やろが!!!!ヤリチンみたいなあらぬイメージつけんなや!お前のほうが女とっかえひっかえしとるやろが)
(誰がヤリチンじゃボケツム!!!!仕方ないやろ勝手に病んで勝手に重くなってくんやから!!素人童貞黙っとれ!!)
(じゃかしい!!!お前みたいなヤリチンより素人童貞の方がよっぽどええやろ!!)
(………侑、治。そこに直り)
((だっ………はい、すみません))
(ギャーギャー喧嘩するのもよぉないし、喧嘩内容も品がないわ。大きな声で何を怒鳴り合っとんのや、お前らは)
(すんませんした………けど、サムが最初にバカにしてきたんです!)
(品がないワード言い出したんはツムやろ)
(……あんな、お互い言い分があるんは分かるけど今はどっちが悪い、どっちが先の話しとるんちゃうで。分かるか?)
((ひゅ………))
急に喧嘩し始めた、またか…と思ったらヤリチンだの童貞だの聞こえてきてすっ飛んできた北さん。