HQ 宮(侑)
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反撃の狼煙を
*北葵
「……私は、転校するつもりもあの子許すつもりもないです。関わりない、初対面の子が片思いしとる子と仲ええってだけで暴言言われて、抑えつけられて怪我させられました。私が転校したり、泣き寝入りすれば収まるかもしやんけど……2年生になってクラス離れて、他の子ぉが仲良うしはったら?その前に、その子と違う子が付き合うたりしたら?あの子何しでかすか分からん。私やのうて、向こうを動かしてください」
橋本先生と、学年主任の目を見てきっぱりと伝える。学年主任は和解に持っていきたいようやけど、橋本先生は私の味方やったんが言葉にならんくらい嬉しかった。話し合って、和解を…って学年主任が言い出した途端「それは無理やと思います、話し合う前に既に手が出てるじゃないですか」って橋本先生が学年主任を抑えた。
「先生……あ、橋本先生やのうて。…問題ごと起こしたくないって言う気持ちは会社員の私もよう分かります。他の保護者から責め立てられたりしたら窓口は全部貴方やろうし。教育委員会やら県の会に色々始末書書いたりせなあかんし、そら『面倒』でしょう。……けど、なんや娘が大人に分かりにくいように無視されたとか、ハブられた、陰口言われたとかそういうレベルちゃいますよね。
娘は、怪我をしたんです。たかが小指の骨折やのうて頭を回し蹴りされとるんです。取り巻きに抑えつけさせて、その子一方的に人の急所の頭に蹴り入れるような子ですよ?和解なんかで終わらすつもりありません。その加害者に反省の様子ナシなら警察に被害届出します。そして、取り巻き含めて退学処分を望みます」
お父さんもきっぱりそう言うもんやから、学年主任も態度を変えて対応すると言ってきた。和解なんかしてやらへん。聞き取り調査を行ううちに、部屋に角名くんが入ってくる。
「角名くん?」
「こんにちは、バレー部1年の角名です。友達含めて葵ちゃんとお昼ご飯食べて、試験前に勉強教えてもらったりお世話になってます」
ぺこ、と頭を下げた角名くんと不思議そうなお母さんと目が合う。
「なんか…『たまたま』?腕引きずられて行く葵ちゃん見かけて、嫌な予感して。女子トイレ入っていったから。あ、絶対良くないことするつもりなんだって思ってこれ」
差し出されたのはスマホ。私が手を踏みつけられてるところが映像で流れる。
「………これで言い逃れできないかなって。勝手に撮ってごめんね、葵ちゃん」
「え、あ、ううん、ありがとう角名くん……この子ら、しらばっくれてるらしいから」
大きく状況変わるわ、とお礼を告げるとお父さんも頭下げてお礼を言って角名くん慌てとった。まさか大人にこんなに深々と頭を下げられるとは思ってなかったんやと思う。
角名くん撮影の映像もあり、認めざるを得なくなった女の子たちに反省の色なしと判断した学年主任が校長に転校を促すように話をすることに。教育委員会の聞き取り調査なんかも重なって、かなり大事になっとる。先生にお願いしたのは、絶対に侑くんに矛先を向けないことと外部に話を漏らさないようにすること。
保健室登校から徐々にクラスに復帰しつつ、あの子らの転校するまでになったんは2ヶ月かかった。学年集会でも匿名やけどこういうことあったって話がされた。転校した子らはもう隠せる余地ないからすぐにバレとったけど。最後まであの子らは私にちゃんとした謝罪はなかった。転校したくない、大事にしたくないから形式上の謝罪はあったけど心から反省しとるようには思えんかった。
「ちょ、宮くん!あかんで!」
「離してください!……おった、お前やな」
「侑くん……」
え?なんで笑うてはるん…?この状況下で自分にいい言葉を向けてもらえると思ってるん??急に校長室入ってきた侑くんと、何故か笑顔になったその子と驚いている取り巻きの子らを2度見していると侑くんが口を開く。
「お前らが抑えつけて怪我させたらしいな?あ?なんでそんなカスみたいなん奴を俺が好きになると思うねん。勘違いも程々にしろや。この先、この子に限らず勝手に逆恨みして俺の周りの人傷つけてみぃ、弁護士でも何でも雇ってお前が地球の裏にいようが追い詰めたるからな。自分のゴミみたいな生き様と腐った性根、その面の皮の厚さを少しは恥じろや」
「宮くん!あかん!!関係者やないんやから…」
橋本先生によって連れ出された侑くんの背中を見ていると、女の子らがぽろぽろ泣き出した。泣きたいのこっちや。
「何の涙なんかは知らんけど…とりあえず君たちは被害届出してあるから、警察に一度名前が上がっています。今後、自分の行いによって今の状況があるというのに筋違いな逆恨みで北家の人間に接触しようとした場合、学校を通じず即警察に介入してもらいます。……年齢が年齢だし、在学生だからと校長先生たちは転校という温情措置をとってくださいましたがもう一度私の娘の胸ぐらを掴んだり、殴ったりしてみろ。暴行と傷害で逮捕してもらうからな」
「お父さん…」
見たことないくらい怒ってるお父さんの袖を掴む。そんな気力ないであろう女の子たちは声を上げて泣き始めた。校長室から出て職員室奥の応接室に向かおうと歩いていると、橋本先生に怒られとる侑くんが見えた。
「……お父さん、侑くんとこ話に行ってきてええ?」
「5分ね」
「うん……先生、侑くん!」
「あ、北さん……ごめんね、さっき。びっくりしたでしょ」
「ふふ、びっくりしました。……侑くん、ありがとぉな。嬉しかった」
「……おん……手、大丈夫なん?」
「うん、もうくっついたで!ほら」
じゃんけんできるねん、と手をグーパーチョキにしてると侑くんが泣きそうな顔してることに気付く。
「なん、気にしとん?私や侑くんが誰と仲良うしようが、自由やねんってちーちゃんも言っとったで。」
「気にするやろ……」
「弁護士でも何でも雇って追い詰めてくれるんやろ?私は安心やわ」
「!……や、まぁそう、やけど……」
「侑くんは侑くんに集中してな?私はそっちの方が嫌や……お母さんと離れて治くんと稲荷崎にバレーしに来たんやろ?『あん時ちゃんとやっとけば良かったな』って後悔してほしくないよ」
「……おん、葵ちゃん、ありがとう。怖い思いさせてごめんな」
「ふふ、ええで。ぶっちゃけあの子らとトイレいた時よりさっきお父さんブチ切れた方が怖かったわ」
「「え?!」」
「葵、もう5分や!そんでお父さんのネガキャンせんとって!怖くないやんな?侑くん?」
「ほら、そうやって詰寄るんも怖いやん」
侑くんに『怖くないやんな?え?怖い?!ほんまに?!』って気にしいなお父さんは詰め寄っとったけど、私が引き剥がして職員室に向かう。橋本先生もちょっと笑っとった。
最後まで対応してくれてありがとうの菓子折りを渡す。ちーちゃんと買いに行ったお菓子。橋本先生には別でチョコパイとかポッキーとか詰め合わせを渡した。角名くんと角名くんのお母さんたちにも郵送して送ってある。
「疲れた………」
「…長い間ありがとう、お父さん、お母さん。」
「何言ってんの、当たり前やろ。担任の先生ええ人やなあ、あの先生やなかったらお母さんもっと暴れてるとこやったわ」
「暴れんのは堪忍して」
「お父さんも……ま、最後ちょっとキレとったけど我慢したほうよな、アンタもお疲れさんやわ」
お母さんとお父さんがお互いを労ってる。信ちゃんたちにもちゃんとお礼せな。今日は皆で焼肉行こう!と家族グループにお母さんが連絡。
ちょっとええ焼肉屋で報告して、茜がまた泣きだしたりもしたけど無事に解決して良かった。いじめやのうて、初手暴力やったんも大きいと思う。家に帰って、焼肉臭い服を脱いでお風呂入ってスマホを見ると侑くんから連絡来とる。
『明日から教室来る?席替えしてん』
『侑くん、ほんまにありがとぉな!明日から行く予定やよ。席どう変わってん?』
『お礼言われるようなことはしてへん。キレただけやし。葵ちゃんバリええとこやで、窓際のいっちゃん後ろ』
『個人的に言いたいだけやから言いたい分だけ言うで。
え〜!むっちゃええとこやん、ラッキーや』
『んで、隣は俺。俺もラッキーや』
『そおなん?教科書忘れんといてな』
『貸してくれへんの?』
『貸すけど寝とったら起こさへんよ』
*宮侑
葵ちゃんが左手骨折したって聞いたとき、あの子おっちょこちょいやし転んだんやろか?って思った自分を殴り飛ばしたいくらい葵ちゃんが危ない目に遭っとった。しかも原因突き詰めれば俺。俺に片思いした女が、逆恨みで葵ちゃんに暴力振って怪我させた。
角名が撮影してくれとったから最初言い逃れしとったらしいクソ女共もようやく認めて、転校決まった。葵ちゃんはお父さんらも含めて自分たちは転校なんかせえへんって初めから先生に訴えとったらしい。そりゃそうや、なんで怪我したほうが転校せなあかんねん。させた方が後ろ指刺されながら出ていくんが正しい。
保健室登校したり、たまに教室来たりしとったけどもう2ヶ月葵ちゃんとお昼ご飯食うてへん。最初はツムも冗談言わんくらい落ち込んどったけど、角名やら銀島、工藤さん、橋本先生にも励まされて、葵ちゃんが戻ってくるって聞いてようやく元に戻れそうな気ぃする。席替えも、最初は俺葵ちゃんから1個挟んだ隣やったんに、野球部が交換してくれた。葵ちゃん居らんからって好き放題言われた。
『宮くん、北さんの隣がええやんな?代わんで』
『え?』
『ほら……俺ら、2組、キューピッドや思ってくれて構わへんからさ』
「…!葵ちゃん、おはよう」
「侑くん、おはよお!なんか朝から会うん久々やね」
もうだいぶ涼しくなって、もうすぐ文化祭の季節や。芸術鑑賞会以降、学校で会うんがほんまになくて久々に制服着て席で笑う葵ちゃん見て安心した。連絡先だけゲットしとったん、ほんまに良かった。
「……?どうかした?」
「いや……久しぶりやなって。葵ちゃん髪伸びたな」
「…確かに!伸ばしっぱや。今度美容室行こかな」
「切っちゃうん?」
「毛先揃ってへんし揃えてもらうねん……でもほんとはショートにしたくて」
「ショート……似合うんやない?」
髪長くてふわふわな葵ちゃんもかわええけど、ボブとかそんくらいでも多分かわええやろな。ロングが定着しすぎてイメージが固まらんねんけど、元がかわええし似合うやろ。
「そう?じゃ切ってこようかな」
「楽しみにしとるわ」
アカン、口むっちゃニヤけとる。手で口元隠したけど普通に遅かったやろな。隣に葵ちゃんがおる1日、なんか幸せすぎてお昼まであっという間やったし1秒も眠くならへんかった。
「アヤちゃ〜ん、お弁当たべよ〜」
「うん、お邪魔するね……?宮くん、どおしたん?なんかニコニコしとるね」
「え、あ、なんでもあらへん」
「工藤さんにはモロバレやで、ツム。葵ちゃん久々やな〜!元気しとった?」
「うん!」
「うっさいわアホサム……撮るなや、角名ァ!!!」
角名のカメラに手をかざす。
「オッホホ……久々にやかましい侑見れた」
「やかましないわ……ん?」
ちょんちょん、と袖を引かれて振り返る。右隣りに座るんは葵ちゃんしか居らへん。
「これ、ミスド!この間のお礼」
「え……ええの?」
「うん!オールドファッション好き言うとったやんな?」
お、俺の好きなもん覚えててくれたんか……入学初日の自己紹介は聞き流しとったんに……あかん泣きそうや、それくらい仲良うなったってことやんな???
「ありがと、飾るわ」
「食べてな???そんな好きやったん?」
何にも分かってへん、葵ちゃんから貰ったオールドファッション食えるわけないやん。真空パックとかに入れて神棚飾られへんかな……いや、サムが食って殴り合いする未来が見えるわ。やめとこ。
(ツム、お前少し顔引き締めた方がええで?にやけすぎや)
(しゃあないやろ、3ヶ月近くおらんかったんやぞ)
(まあ侑の気持ちも分かるけど……ニヤけてるのは事実だしね)
(お、侑……ってみんなおるんやな)
(北さん、お疲れ様です)
(おん、お疲れ………葵大丈夫やったか?)
(?はい…おにぎり食うてました)
(そおか……連絡寄越したら邪魔するかもって思うてな)
(北さんとお姉さんの自慢してはりましたよ)
(え?)
(この2ヶ月、北さんがおにぎり作ってくれたんだよってドヤ顔してましたね)
(………忘れてくれ、ほんまに)
(珍しい、北さんが照れとる!)
(侑、うるさい。先輩を揶揄うなや)
(北さんかていつも俺のこと見て笑うてはりますやん)
(葵の兄ちゃんやからな、気になるやろ)