HQ 宮(侑)
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悪趣味なセンス
※不快な発言をする人間が出てきます。(○ね等の直接的な言葉ではないです)
*北葵
2時間目のあと、知らない子たちに呼び出された。1組と2組ではないキラキラした子……あ、夏休みのとき体育館に居った子らや!余裕で校則違反のスカート丈を翻しながら、5人居る中の真ん中の子が口を開いた。
「あー……なんやったっけ?北さん?やったっけ…?まあなんでもえぇけど……アンタ侑くんのなんなん?」
「…え?」
「いや、え?やなくて。何?聞こえへんかった?」
攻撃的な感情をありありと前にしてその子が1歩前に近寄ってくる。怖くて反射的に下がってしまった。ちーちゃんの昔の雑誌で見たことある、ガングロギャル……の今版!って感じの子。細い眉毛を釣り上げて私のこと睨んどる。
半笑いの他の子に腕を掴まれる。どう考えてもやばいと脳が警告を出しとる。殴られんちゃうか?ってくらいピリついた空気の中、顔が近付いてくる。
「なんなん、メイクもせんと芋臭いくせに……今日から侑くんとお昼ご飯一緒に食べるんやめてもろてええ?」
「え、と……」
「何を迷うことがあるん?はいかいいえやろ、さっさと答えろし」
「リナ、こっわ〜可哀想じゃん、泣きそうだよ」
「知らんわ。アタシ純粋に侑くんのこと応援して好きなんやんか、アンタみたいなのがウロチョロしてっと邪魔なんよ。……てか角名くんと治くんともご飯食べてんねんやろ?清楚です〜って顔して実はヤリマン?」
「なっ……失礼なこと言わんとって!」
「は?うっせーよブス、調子のんな」
私にも他にも失礼な物言いに思わず言い返すと、思い切り前髪を掴まれる。引きちぎられる勢いで掴まれて痛い。
「いたっ…!離して!」
「可愛こちゃんぶってバリキモいねんけど。身の程弁えろよ」
ぐん、と押されて尻もちつく。女の子にこんな思い切り暴力振られるん初めてで体がうまく動かない。見上げてると左手の指先をかかとで思いっきり踏まれる。中履きのかかとってソールもあるし一番堅いところで何回も体重かけて踏まれて折れたんちゃうんかって思うくらい痛む。
「いたっ…!?!痛い、痛い!!!」
「ッチ」
「……っ!!」
左手から足が退かされ、ほっとしていると頭に衝撃がくる。頭、蹴られた…??
「うわ…回し蹴り綺麗に入ったなぁ」
「痛そ〜」
「侑くんたちにベタベタ擦り寄ったら次これじゃ済まさへんからな、覚えとき。……ていうかその芋臭さどうにかしたほうがええで、高校生にもなって恥ずかしくないん?…‥行こ」
ガンガン痛む頭を抑えてドアに寄りかかる。痛くて怖くて泣きながらスマホを出す。信ちゃんにも茜にも言えない。
『もしもし?葵どうしたん?なんか忘れ物した?』
「ち、ちー、ちーちゃん、ちーちゃん…っ…ぐす、」
『…どうしたん?車でお迎え行ったるから保健室行ける?先生には私から連絡しとく』
「や、嫌や、切らんとって……ちーちゃん、ごめん、ごめんね」
『今日空きコマやしなんにも気にせんで?切らんで向かうから……今どこおる?言える?』
1階の別棟の女子トイレの個室に居ると泣きながら返事をして震えながらちーちゃんの到着を待った。はじめての経験で怖くてパニックになっとって、訳わからん状態になっとった。
「葵?ちーちゃん来たで、開けれる?」
「ちーちゃん………」
「……誰にやられたん、これ…」
「わ、わからん、分からん……っ」
「大丈夫、大丈夫。怖かったなあ、痛かったやろ……ちーちゃんと保健室行こ、な?警備のおっちゃんもおるから、大丈夫よ」
ちーちゃんと泣きながら廊下を歩いたけど、授業中やから誰も居らんくて助かった。先生以外誰も居ら保健室についてやっと安心して泣きじゃくる私をちーちゃんはずっと抱きしめてくれた。
「左手の小指折れてるかもしれんわ…今日病院行って?先生は担任の先生に知らせてくるから」
「……葵、他は?大丈夫?」
「頭蹴られた…ここ…」
こめかみを抑えるとコブできてる。コブで済んでよかった。切り傷もないしと診てもらって、担任の橋本先生が慌ててすっ飛んできてくれた。
「ど……え?!…ど、いや違う、えと…?!」
「橋本先生、落ち着いて。本人より慌ててどうするん……誰にどうこうっていうお話は一旦明日にしよか。痛むやろうし、今日はお姉さんと病院行ってきて?私も橋本先生も明日もおるから、朝でも昼でも保健室来れる?」
「はい……あの、すみません、お騒がせしました…」
「何言ってるの、こんなん騒ぐに決まっとるよ…!北さんは被害者なんやからね、一方的に怪我させられて……何も悪くないからね」
橋本先生、目がうるうるしてる。つられ泣きしてしまった。病院行って一応頭もCT撮ったりして…頭は大丈夫。左手は小指の第二関節と薬指の第一関節にそれぞれ骨折とヒビ。包帯ぐるぐるにして帰った。
「ちーちゃん……付き添いありがとう、ごめんね」
「なんっっで謝るんよぉ、葵それは間違ってんで?……大事な家族が大怪我して、心配で病院付き添うののなにがごめんなんよ……骨折までしてもうて…可哀想に、痛かったやろ」
「い、痛かった……っ…怖かった…」
「そうやんな、そらそうや……女子トイレ居ったってことは女の子にやられたん?」
「うん……侑くんのこと好きなのに、私みたいな……ブスがウロチョロしとったら邪魔やって、……毎日侑くんたちとお昼ご飯食べてるから、ヤリマンなん?って馬鹿にされて……言い返したらキレて……左手踏み始めてん」
「………ほ〜〜ぉ???その子視力悪いか盲目なんはよおく分かったわ」
「ちーちゃん、くるし…」
締まってる、ぎゅうぎゅう抱きしめられて締まってる。動く右手で肩を軽く叩いても怒り狂ったちーちゃんの耳には届いてない。
「……まずな。その子が誰を好きになろうと自由や。」
「うん」
「でもな、好きになったからって必ず自分のこと好きになるもんちゃうやろ?その八つ当たりを葵にするんは、絶対に間違うとる。……分かる?」
頷く。
「相手が侑くんであろうと、治くんであろうと自分の好きな人が仲良うしたい子、仲良うしてはる子に『ウロチョロするな』はお門違いやねん。誰とその子が仲良うしようが、その子の自由やろ。そりゃ例外はあるで、素行が悪いとかな?
けど、好きな人には印象良くいたいからおすましさんしといて仲良くしてる相手側に暴力振るうんは、絶対に、間違うとる。暴力やのうても間違うとる……ほんまに好きなら己で勝ち取れって話やし『アンタさえ居らんかったらうまく行く』とか、大した努力もしてへんくせにどの口が言うねんな」
「うん」
「葵は、侑くんの場合だけじゃなく…その子と仲良うしたいなって思うとるんやったら胸張って仲良うしとってええんよ。誰かのために自分を曲げることない。……二人を応援したいから、少し距離置くって葵が納得してるんなら別やけどな。」
「うん」
「あと!!!!ウチの葵は!!!ブスでもないし、芋臭くもないわ!!!!!ほんっっっま腹立つ!!!!」
「ちーちゃん、落ち着いて……外の人びっくりしてはるから…」
「ほんまのことしか言ってへん」
「私以上に怒らんとってよ……」
「……真に受けてへんよね?」
「……ちょっと、傷ついた…けど、私ちーちゃんたち以外にも可愛い可愛いって褒められるもん、私が可愛いんは変わらんやろ。……あの子の可愛い思う範囲におらんかっただけで」
「よう言うた!!!」
ちーちゃんの頭をこれでもかと撫で回される。まあ、侑くんたちに「可愛い」って言われたことはないねんけど。私は私のこと好きやし、顔もまあこれが自分やなって気に入っとる。あともう少し背が高ければなぁと思うけど、この信ちゃんにも似た目もちーちゃんと同じ位置にあるほくろも、お父さんに似た口も、茜と同じ形の鼻も。可愛いと思ってるし、自分の顔やと受け入れてる。
………もしかしたらそう思うようにちーちゃんたちに小さい頃から教育されてきたんかもしれんけど……。でも自己肯定感低すぎて僻んでばっかでもないし、私以外はみーんなブス!って人を見下してる訳でもないしええか、とも思う。
家に帰ってからもう大変やった。お父さんも仕事を切り上げて早上がりしてお母さんと学校向かったし、お母さんたちと一緒に帰ってきた信ちゃんたちが文字通り血相変えて駆け寄って来た。
「葵、怪我大丈夫か?……骨折したってお母さんに聞いてん」
「信ちゃん、茜おかえり!折れとったけど……指やで?ほら」
「「折れとる部分をそんな動かしたらあかん!!」」
お母さんとお父さん、ハモった。お医者さんにもどっちも骨折なら逆に早く治るんですけど、片方ヒビだとねえ……ヒビって骨折まであともう一歩だから、骨折より扱い気をつけんとポキって折れるし、治りも遅いんですって言われたから、あんま動かさんようにせんと。
「誰にやられたん?俺ほんまに許せへん」
「茜、やり返すんはあかん」
「………一方的にやられてなんでやり返すんは駄目なんよ!やられ損やんか!」
「暴力に暴力で返したって意味ないやろ、停学なり退学が適切な処置や………ご飯前に少し頭冷やしてき」
「……信ちゃんの分からずや!!」
「茜、信ちゃんに八つ当たりせんとって?……私は、もしええよ言われても同じことするんも、誰かが代わりにやるんも嫌や」
「…………お母さん、ぜっっったいに退学に持ってってな。少し停学したくらいじゃ俺許さへん。転校する気もない。するんなら向こうやからな!!!」
捨て台詞みたくお母さんたちにそう言って茜は部屋に閉じこもった。
「どんな捨て台詞やんな……葵、えらいな。大丈夫、お天道さんは見とるから」
信ちゃんに頭を撫でられる……信ちゃん、苦しそうや。見たことない顔の信ちゃんを見上げるとあの信ちゃんが泣きだした。
「……代わってやりたいわ、ほんまに」
「信ちゃん、泣かないで?タオルあるよ」
タオルを差し出すも信ちゃんはぽろぽろ泣き続けてちーちゃんも慌てて私ごと抱きしめてきた。昔、寝る前に私と茜が生まれる前の話をしとった時に信ちゃんが転んだりとか、お友達に意地悪なことされたり、夜勤してるお母さんたちが居らんくて寂しくて泣いてたとき、ちーちゃんもあやし方が分からんくてひたすら抱きしめて頭撫でてたって話を思い出した。
「信ちゃん、大丈夫やで。お父さんたちがちゃんとしてくれるから……お父さんアカンならちーちゃんが打って出るわ」
「ほんまに辞めてくれ、千明。乱闘騒ぎになるやろ」
「ほんまに私をバーサーカーか何やと思うてるん?失礼やわ……ほら、ご飯食べよ!今日のご飯は葵も右手で焼くのとか手伝ってくれたんやで」
「……そうやな、姉ちゃんありがと」
「茜もそろそろ泣きやんだやろ……茜〜!ご飯!皆で食べるから降りてきいや!」
「ちーちゃん、やっぱりかっこいいね。お姉ちゃんや」
「そうやな、北家の長女やからな……葵は座って待っとって。左手つこたらあかんよ」
お箸の準備くらいしか許されんくて座って待っとると、目が真っ赤の茜が降りてくる。
「ふ、はは……っ!茜、すごい真っ赤や」
「ずび……誰のせいやねん、よいしょ」
茜が隣にひっついてくる。昔から私との勝負に負けたときとか、サッカーの試合で悔しいことあったりとかで落ち込むと絶対に隣にぴったりくっついてご飯を食べる。すごい量をやけ食いする癖?みたいなんがある。痛いし、怖かったんは事実やけど……私以上に怒ったり泣いて悔しがってくれる人がこんなに居るんやってことが心強くて嬉しい。
明日は状況説明のために先生と4者面談になるってお母さんに聞いた。学年主任も同席するようにお父さんが強く強く言うたらしいし、『泣き寝入りするつもりない』って啖呵切ってきたって。
「ちーちゃん」
「ん?どうした?」
「……侑くんに、どう説明すればええんかな」
体調不良で早退ってことにしてくれた橋本先生のおかげで、まだ知らん侑くんから体調を気遣う連絡が来とった。侑くんのせいやって間違ってもお思ってほしくないけど話の流れを聞いたら間違いなく責任があるって感じると思う。
「んー…素直にそのまま伝えればええと思うよ?葵は侑くんの名前が出てきたけど侑くんのせいとは思ってへんねやろ?…ちーちゃんも侑くん悪いと思わんしな」
「うん」
「大丈夫や。フォロー必要ならちーちゃん話するし…‥まずは気持ち伝えてみ?」
「……分かった」
(あかん、返事がとまらん。どおしよ、ちーちゃん)
(ふふ、心配性やもんなあ…侑くん。けどほら、寝る時間やで?信ちゃん来るで〜)
(ちーちゃん、葵入るで……あかん、もう寝る時間や。明日先生たちと話すんやろ)
(ほら来た)
(やって信ちゃん、侑くんが…)
(侑?……俺からも話しとくから、今日はもう寝ぇや)
(せやせや、ちーちゃんみたく視力落ちたくなかったら寝る前のスマホあかんで〜信ちゃんありがとう、私も寝るわぁ)
(おん、おやすみ。…葵もおやすみ)
(おやすみ〜)
(明日卒論発表会なんが悔やまれるわあ……ちーちゃん頑張ってくるから、葵も頑張り)
(うん!)