HQ 宮(侑)
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回復のきざし
*宮侑
芸術鑑賞鑑賞会から帰ってきて葵ちゃんが2日も学校来おへん。LINEも既読ついたまんまや。
「………」
「宮くん、またスマホ見とる」
「……見るやろ、そりゃ」
「葵ちゃんのことやろ?……なぁ、今日部活何時に終わるん?」
「え?」
「……理由、分からんやんか。熱かもやし……お見舞い、行かへん?」
「……おん、行く。部活大体6時半には終わるわ、今日は自主練切り上げて行く」
工藤さんに誘われて頷く。今日は見舞いに行くから自主練せんことをサムにもLINE送る。北さんにも相談したほうがええやろか……?工藤さんは親がおるんやから、会えん状況やっても伝達位はしてくれるやろうしええんちゃうかと。確かに……北さんに聞けば来れてへん理由も分かるんやろうけど、葵ちゃんにちゃんと会いたいから聞かんかった。
「…‥なんかこういうの緊張するな」
「おん……大丈夫、やろ」
ピンポン押す。ちょっと間あって体育祭で会うたことあるお姉さんの声がする。
『はーい、北です』
「あ、あの…‥宮侑です。あと、工藤さんも居って……葵ちゃん居てはります、か」
『え?!侑くんとアヤちゃん?…ちょっと待っとってな!』
返事する前にドタバタ走る音聞こえてきた。
「暑いやろ、中入り?…‥アヤちゃん、お母さんに連絡した?大丈夫?」
「はい、しました!」
「ええ子や〜、侑くん洗面台の場所分かるやんな?手ぇ洗って上がっとって!葵呼んでくるからね」
「お邪魔します」
「お母さん、侑くんとアヤちゃん来はったよ〜」
「あらあらあら、何飲む?麦茶とかアクエリあるよ」
「麦茶でお願いします……あの、葵ちゃんママ…」
手ぇ洗ってタオルで拭いて、ニッコニコの葵ちゃんのお母さんにリビングまで背中を押される。なんか思っとったより明るい…?工藤さんと顔を見合わせて座って待っとると、だぼついたティガーのスウェット着た葵ちゃんが降りてくる。
「……!!!ちーちゃん、アヤちゃんしか言わんかったやん!ちょ、着替えてくる!」
「もう見られたやないの……変わらんし待たせるん悪いから早よおいで」
「も〜…最悪……二人とも、堪忍してな……だる着でごめん」
「ええで、もしかしてお姉さんのお下がり?」
「ううん、これは信ちゃんの。でっっかいねん」
北さんの……確かにぶっっかぶかや。顔色は…ええし、表情は固くない。
「えーと……あれやんな、休んでること、やんな……うんと…」
言いにくそうに葵ちゃんが俯く。時計がカチカチなる無言の数秒が数分くらいえっらい長く感じた。
「……結論からいえば、ズル休みやねん」
「……」
「ちょっと……朝起きたら体、しんどくて。今日も昨日も、制服に着替えてん…ただ…その…玄関で、靴、履けんくて…」
「……ズルじゃないやろ」
「でも…体は元気やから」
「いつも出来とったことが簡単に出来んくなって、参っとるんやろ。全然ズルじゃないやろ。……あかんで、自分責めたら」
「ふふ、私もそう思うわ……私もさぁ、中学の時から電車通学やねんけど……2年生のときに、知らんジジイに……痴漢されたことあってな」
あの工藤さんが「ジジイ」と言葉を崩したことにびっくりして振り返る。そのあとに聞こえてきた痴漢の単語に体が固まる。
「3ヶ月くらいかな、電車乗れんくなっちゃって…一時的に不登校やったんよ…今思えば、本当は1ヶ月くらいで乗れるようになっとったと思うんよ、私の性格上な。でも3ヶ月に延びたのは、担任の先生のせいやねん。あいつな……私の心配やのうて内申の心配したんよ、信じられんくない?受験は後回しやん、一旦」
「信じられんわぁ」
葵ちゃんやのうて、お姉さんが反応した。お母さんもうんうん頷いとる。
「義務教育の中学と高校じゃ、もしかしたらいろいろちゃうんかもしれんけどさ……葵ちゃん、普段から授業ちゃんと受けとったし、いつも成績良かったんやし少しくらいお休みしても大丈夫やよ。担任の先生もウチの中学の時とは全然ちゃう人やし…動いてくれはる人やと思う。
やから……大丈夫!ってなるまで、ゆっくりしてええんよ。な!宮くん」
「お、おん……待っとるわ」
「…ありがとお、二人とも。元気出たわ」
「けど私も寂しいし、たった2日で宮くんもあり得んくらい元気ないねん。スタンプだけでもええから連絡だけはしてあげてな」
「いっ…わんでええねん、工藤さん!!」
「本音やろ、本音は伝えてなんぼや。察してくんはあかん」
やからって今言わんでもええやろ…!
「え〜?意外と寂しんぼくんなん?」
「ちーちゃん、やめてよ……ごめん、なんか……気遣わせたみたいで返事悩んでて……気軽に送るわ」
俺だけむちゃくちゃ恥かいたけど葵ちゃん笑っとったから……まぁええか。俺は…そういう経験ないし、バレーで負けたときくらいしか凹まん鈍感人間やけど……たとえば、いつも当たり前にしとったバレーのルーティンどころか、体育館に向かえんくなったら。そう思ったら、葵ちゃんみたく『ズルしてる』とか『甘えてる』とか考えてまうやろうし……。
そうやって話しとったら北さんと茜が帰ってきた。二人とも目まんまるにして俺と工藤さんのこと見とった。
「侑、アヤちゃん…来てくれはったん?」
「はい、お邪魔してます」
「ぅす……お邪魔してます」
「……ふ、なんや珍しく練習切り上げて速攻着替えてた思ったわ……侑、この時間やと寮のご飯もしまっとるやろ。…お母さん」
「もちろん作るよ、アヤちゃんは?車で送ってくけど……ついでに食べてく?アレルギーとかないやんな」
「ええんですか?!手伝います!角名くんたちが葵ちゃんママのご飯美味しかった〜って言ってて……食べてみたかったんです」
「嬉しいこと言うてくれるやん…あ!でも先にアヤちゃん家のお家の番号知りたいかも!ご挨拶しとかな」
「信ちゃん、茜おかえり!お風呂できてんで」
「うん、ありがとさん……なんやにこにこさんやな」
「ふふ」
か、かわええ〜〜〜…っ!!!北さんに頭撫でられて葵ちゃんニッコニコしとる。かわええ……。
「葵はもう風呂入ったん?」
「うん、先に入ったで」
「これから工藤さんたちのご飯追加やんな、信ちゃん先入る?俺靴下の泥落とさんと」
「ほな先入るわ…侑、あれやったら着替え貸すで?新品あるし」
「あ、や、そこまでしてもらわんくても」
「寮ってお風呂どうなってるん?ビジホみたく個室にシャワー付いとるん?」
茜に聞かれ、首振る。大浴場があってスーパー銭湯みたいな感じやって答える。意外と綺麗で初めて風呂入った日驚いたんよな。金かかっとるだけあるわ〜ってサムと言い合ったん覚えてる。
「9時くらいに閉まるやんな?まあ過ぎたら入り」
頷く。なんやかんやワイワイしとったら過ぎるかもしれんな。……俺汗くさくないんかな、大丈夫やろか。
葵ちゃんと茜とゲームしたり、手伝おて皿出したりして皆で食卓囲む。葵ちゃんたちのお父さんは今日出張らしい。大量の春巻き出てきた。葵ちゃんか包むんまでお姉さんと手伝ったらしい。またもや葵ちゃんの手作り飯に心躍らせながら食う………美味い。
「美味いな」
「美味しいなあ、私ひとりっ子やしこんな賑やかなん初めてやわ」
「あっという間に色々なくなってくから死守せなあかんで、アヤちゃん」
「そういうYouTube見とるみたいやわ」
葵ちゃんと工藤さんが会話してる間にも俺と茜と北さんがもくもくと食べてるから春巻きどんどんなくなってく。葵ちゃんと工藤さんになくなるでと声かける。
「噛んでるん?」
「味わっとるし噛んどるわ」
「メンズは倍速なんよ、私達より。ちーちゃんとお母さん見てみて……あれが普通やねん」
「俺らも普通やで……なぁ、茜」
北さん米おかわりにしに行った。なんやろ、所作はキレイなんやけどむちゃくちゃ早いんよな……一口むっちゃでかいとか?合宿のときもあっという間におかわり行っとったの思い出した。
なんやかんやしてたら9時過ぎてしもたので、北さんから新品のパンツとお古のTシャツとジャージ借りる。風呂もでかくてびびったしシャンプー何個あんねんってくらい置かれとった。
俺が風呂上がるの待っとってくれたみたいで、工藤さんと葵ちゃんと車に乗り込む。
工藤さん家の寺について、葵ちゃんのお母さんも車降りて挨拶向かった。
「……侑くん、今日ほんまにありがと。元気出た!」
「ご馳走になって風呂まで入って…俺のほうがいろいろ世話してもろたけどな」
「ふふ、シャンプーの数びっくりしたんちゃう?」
「おん、売り場かと思ったわ」
「なんか……ん〜…あともうちょいで大丈夫な気する」
「無理はしやんでな……心配や」
「ありがとお……侑くんほんまに優しいね」
「別に…葵ちゃんが優しくしたい子、なんよ」
やべ。完全に脳死で言ってた。気づいたら言っとった。言い終わってから顔から火が出るほど恥ずかしくなって下向く。葵ちゃんはずっと無言で、引かれた?思ってチラ見したら耳真っ赤っかやった。
「……すまん、脳死で垂れ流した」
「謝らんとってよ……余計恥ずかしいやん」
「しゃあないやん、本音やし」
「……アヤちゃんの受け売り?」
「おん、本音は伝えてなんぼや」
葵ちゃんも俺も同じタイミングで笑い出す。寮に送ってもろて、寮母さんにはちょっとばかし叱られたけど理由が理由やからなんも気にせんで聞き流した。部屋に戻ったらサムがニヤニヤして待ち構えとった。腹立つ顔やの。
「遅かったや〜ん」
「早いやろ。9時半や」
「葵ちゃん大丈夫そおか?」
「おん……多分な。玄関から動けんくなったんやて」
「あ〜…そういう。……夏言っとったやん、怖い思いしてはるって」
「おん…俺も茜から聞いただけやけどな」
「やから、トラウマとかそういうんかなとは思っとった。……けどまあ、あれやで」
「?」
「木下さんらに食って掛かるツムを見て、俺は安心した。圧出しすぎやろとは思ったけど、あれは最悪やったからな」
「……思い出さすな、マジでイラつくねん」
サムの隣に布団を敷いて寝転がる。何が大袈裟、何がそれだけやねん。腹立つわ。俺やって嫌や、好きでもない知らんやつに一方的に近寄られてぐいぐい引っ張られたら。酔っ払って理性ない奴に家の近くまでついてこられたら。突然裸見せられたら。むちゃくちゃ嫌やし気色悪い。
ぽこん、と通知が鳴る。誰や?と思いスマホ見ると葵ちゃん。
「葵ちゃんか」
「じゃかしい、盗み見すんなアホサム」
「見てへんわ、バカツムの反応速度で分かんねん惚気野郎が」
「うるさいわ」
『今日な、アヤちゃんと侑くん送るときに2日ぶりに外出てん』
『帰り、コンビニでアイス買ってもらった』
『そしたら散歩中のワンコおってな。最近のワンコは光るんやね』
「最近のワンコは光るんやね……????」
「ブッ」
「どういうことや???葵ちゃん幻覚見とんのか?」
4回くらい読み返したけど光る犬が分からんくてサムに聞く。ヒーヒー笑ってるサム泣いとるわ。どんだけ笑っとんねん。
『どういうこと?体が発光しとんのか?』
『ちゃうよ!光る服とか、首輪みたいなんつけとってん』
『びっくりしたわ…葵ちゃん幻覚でも見てんのかと思うたわ』
ウチのおかんが柴太郎に光る首輪つけてエレクトリカルパレード言うとったな。
『これ、ウチのエレクトリカルパレード』
『すごい!虹色に光ってる』
『なんかアレやね』
『暗いとこにワンコが下から照らされてるん、じわじわ来るね』
(今日の朝ごはんこれやった)
(美味そうやん)
(ホットサンド作ろうかと思ってんけど軽く火傷して信ちゃんに機械取り上げられた)
(グッジョブや、北さん)
(私やってホットサンドくらい作れるよ、ほんまに)
(ほんまよ)
(疑ってへんて。重ねるん早いわ)
(今日はお母さんとな、お昼に公民館行って図書館で勉強しようって約束してるんよ)
(ええやん…けど本読むくらいにしたらええんちゃう?わざわざ脳を痛めつけんでも)
(侑くん、勉強のことそんな苦行に思っとったん??)
(おん。小学校の頃からやで)
(そんな小さい頃から……?)
(けど人生山あり谷ありいうやん?バレーを山なら勉強谷やと思うて、しゃあなしに受け止めてる)
(初めて聞いたわ、その理論)
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