HQ 宮(侑)
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知らないすがお
*宮侑
ほんっっっまに目が離せへん。優しいお姉さんが教えてくれたこじんまりした和食屋でばり美味いお昼食うて、博物館に戻る。恐竜やクジラの骨の展示に工藤さんが大興奮しとった。葵ちゃんはたまたま今展示しとった「毒のある虫」に悲鳴あげながら回っとった。
「ゴ…‥‥!!!!」
「葵ちゃんまじまじ見やんと歩いて!」
海外のでっかいゴキ展示の前で固まってもうた葵ちゃんの背中をぐいぐい押して先へ進ます。虫苦手なんや……まあゴキは俺も嫌や。興味深い展示やけど、4人とも虫が好きって訳ちゃうから少し足早にスペース回る。
「ゔうう……っ!」
ぶるぶる震えとる……どんだけビビリなんや。
「葵ちゃん、平気か?」
「うん………虫キツかった…」
「あんな居るとは思わんかったな」
「うん……」
元気なくなってもうた。科学の方の展示でロケットやら潜水艦見てまたはしゃいどった。おみやげ屋寄る前にトイレ行こうと2:2で別れてトイレ行った。工藤さんおるし平気やと思ってん。トイレの通路の少し先……展示スペースに戻る開けた空間で葵ちゃんと工藤さんがおっさんに詰め寄られとる。
「おじさんが案内しようか?ね?東京初めてなんでしょ?」
「いや、あの、グループで回っとるんでいいです」
「そう固いこと言わずにさぁ〜!」
何肩触っとんねん、人攫いと同じやんか。堀川くんに怖い顔しろとお願いしておっさんに声をかける。
「おっさんが学生に何しとんねん、なぁ?」
少し大きな声で言えば通路の人もなんや?と振り返り始める。
「な、なんだお前らは…!俺は、案内しようと…」
「グループで回っとんねん、怖がる女の子の肩掴んで『何処』に案内する気やってん?」
堀川くん、話せば葵ちゃんくらいふにゃっとる天然な子ぉやけど空手する時とかの目つきは鋭い。体格もええし、坊主や。俺も背低くない方やし、睨むように2人でおっさん見とったら展示スペース歩いとった係の人が飛んでくる。
「ど、どうしましたか?」
「お兄さん、このおっさんがな同じグループの俺らのこと待っとった女の子の肩掴んで『案内するよ』とか声かけとったから、何してはるんか聞いとったんです」
そう言えば大体察したのかお兄さんがおっさん引き連れてどっか行っとった。警備員まで来とったし、やっぱああいう奴居るんやな。
「葵ちゃん、工藤さん、平気やった?」
「うん……堀川くんの圧凄すぎておもろかったわ」
「……葵ちゃん?」
「………結構……嫌やった……」
ちっちゃい声でそう言った葵ちゃんの両手を潰さんように握る。
「少し座ろぉか、な?」
「うん、休憩しよ!あ、自販機あるしなんか買って……」
「や、工藤さん隣おったげて…俺買うてくる!宮くんもボディーガードしとってな?何がええ?」
「ありがとな、堀川くん。俺水かお茶でええよ」
「ありがと、堀川くん。私も暖かいお茶でお願いします」
「葵ちゃんは?暖かいもん飲むか?」
顔色が悪くなってしまった葵ちゃんを覗き込む。……見たことないくらい表情固いわ、本格的にアカンかもな。茜に連絡しといたほうが………いや俺茜のLINE持っとらんわ。サムなら持っとるか?サムにLINEしておくか。
「………ココア…がいい、ごめんな、堀川くん」
「えーよえーよ、お互い様やろ!」
なんてええ子なんや、堀川くん………。体育祭以来女の子に告白されることあるって言っとって『なんや天然くんのくせにスカしやがって』とか思ってごめん。かっこよくてスポーツできてええ子ならそりゃ好きになるわ。葵ちゃんはならんでほしいけど。
「なぁ、この博物館の裏手に古民家カフェあるってさっきのお姉さん言っとったやん?あそこ気になるんやけど」
「確かに!写真綺麗かったな!堀川くんって甘いもん好きやったっけ?好きならカフェ入ってもええな〜」
「結構歩いたもんなぁ……葵ちゃんは?甘いもん食べる?」
「……え、?あ、ごめん……ぼーっとしとった」
「なんやぁ、次の計画立てとったのに…あのお姉さんが教えてくれた古民家カフェや」
「古民家カフェ……」
あかん、今急に思い出した。俺葵ちゃんの左手繋ぎっぱなしや。急に緊張して汗かいてきた。さっきはあんまリ顔面蒼白なもんで夢中で両手握っとったけど、あかん。手ばりちっちゃい。ちょっと力込めたら折れてしまいそうや。手のケアは人一倍しとる自信あるけど、葵ちゃんの手すべすべや………いやあかんな、今のキモいわ。我ながらキモい。
「抹茶美味しそうやったで」
工藤さんも俺も、聞かずとしてもなんとなくさっきのおっさんのことは話題に出さんほうがいいって思って次の計画とか、モネのこととか。美味しかった昼ごはんの話して気ぃ逸らす……あ、サムや。
『博物館のどこおる?こっちも見終わって自由時間やし、同じ班の子も博物館見たいしで茜が向かうって』
『1階のおみやげ屋の前のソファ。でかい入り口入って左。なんかやばい気しとるから急ぎで頼む』
『おん』
やり取りしてると堀川くんが戻ってきてくれた。自分の飲みモン買うん忘れたってわろうてた……どんだけいい子やねん。息切らしてまで買ってきてくれたから次のカフェ奢るわと受け取る。
「堀川くん、ありがとう」
「ええよええよ!自販機にも恐竜おってん、小ちゃい子がはしゃいどったわ」
ちびちび水飲みながら様子を見とるけど、葵ちゃんずっと下向いとる。5分しないうちにサムたちが来た。サムと茜は多分なんとなく分かっとるみたいやけど、同じ班の女子らは不思議そうにこっち見とった。
「葵、どしたん?」
「茜…?」
「おん、なんかされたん?侑か?」
「おっっっっ前………」
「…ふ、ふふ、ちゃうよ。侑くんがする訳ないやろ」
工藤さんとサムが同じ顔しながら見てきたので見んなと睨む。なんやねんこの二人、面白がるとこだけ似とるわ……!視線を逸らすと堀川くんもなんかニヤニヤしとった。何がええ子や、前言撤回や。
「なんか……おっちゃんが…肩掴んできて嫌やってん…」
葵ちゃんがそうぽつりと溢す。この間茜に聞いた付きまといやらの被害で全部と思えへんし、葵ちゃんからしたら何回目かも分からんことなんやと思う。
「え、そんだけ?大袈裟ちゃう?」
「………は?」
「おい、ツム落ち着けや」
「落ち着いてられっかいな、なんや今大袈裟っつったか?あ?肩掴まれて鼻息荒いおっさんに引っ張れとったんやで?何が大袈裟やねん、オイ」
「宮くん、大きな声出しやんと!落ち着いて!……ここ学校ちゃうねんで……木下さんたちやって、自分より大きい背丈のおっちゃんにこんな距離で詰められたら、嫌やろ」
「……ごめん、知らんかってん…」
「うん、私はええよ。葵ちゃんに、ちゃんと言うて。葵ちゃんが前に立っとったから、葵ちゃんが一番怖い思いしてん」
「ッチ……人の辛さ怖さしんどさ頑張りを自分の物差しで測って大したことないって何様やねん」
「侑、もうええやろ。責めすぎや……葵、先生呼ぶからこっちきい……木下さんら、ごめんな。あれやったら……いや、そのおっちゃんみたいなんに会うかもしれへんから……ちょっと待っとって」
サムに肩パンされて堀川くんにそこ擦られた。なんやねん。
*北葵
「平気か?」
「うん………それよりも空気最悪にしたんがもっと嫌や……ごめん、茜」
あのピリついた空気はもう元に戻らない、だろうし。それだけ?って言われたことは確かにちょっと傷ついた……茜よりも侑くんがあんなに怒ると思ってなくて、驚きやったけどちょっとだけ嬉しかった。
『人の辛さ怖さしんどさ頑張りを自分の物差しで測って大したことないって何様やねん』
露出魔の人に会ったときも、別に触られてへんのやろ?って警察官に言われた。酔っぱらいのおっちゃんに近所まで付いてこられたときも、帰り道たまたま一緒やった可能性もあるし…って向こうの肩持つ発言ばっかやった。
中学の頃の友達の、画像流出もそうや。『そもそもそういうん撮らせる方が悪ない?』『考えてない方が頭悪いよな』……私が怖い、嫌やって思うもの大袈裟で、対策してへん方が悪いみたいな言い方する人のほうが多いのに、侑くんは怒ってくれたのが嬉しかった。
茜が先生呼んでくれて、担任の先生にひっつく。
「北さん、怖かったね……大丈夫?休憩できる個室とか行こうか?」
「や、大丈夫です。先生ここまだいてはる?」
「うん、隣座っとくよ。あと……宮くんたちは先生がちゃーんと宥めておいたし、木下さんたちも反省しとったからね。気にしやんでね、大袈裟なんかやないからね」
「……ふ、ありがとうございます。そう言ってくれるん大人、家族以外やと先生が初めて」
「そうなん??!そりゃ……色々しんどかったね、全然!北さんに落ち度なんかないからね」
あかん、ちょっと泣きそう。そう言いながらほぼ笑い泣きやったけどずっと先生は肩擦って側に居ってくれた。優しい大人も居るんや。
(葵ちゃん、あの……ごめん、目立つん嫌やったよな)
(ふふ、ええで。私ああいう時パッと怒れんねん……ほんまに、嬉しかった。ありがと)
(!??!?!な、泣かんで、ごめん、あ、ティッシュいる?!なんか飲むか??!)
(宮くん慌てすぎや……でも怒ってくれたん嬉しかったのは私もや、ありがと!葵ちゃんこれ生ラムネ買っといてん、帰りの新幹線一緒に食べよう)
(ゔん……)
(宮くんのせいやないけど、宮くんのせいってやつやね!)
(うっっっさいわ堀川くん、笑顔で何なんマジで)
(ほら、そんな大きな声出したらまた茜くんすっ飛んでくるで?侑か?って)
(じゃかしいわほんまに……)
(ツム、一応さっき北さんに電話しといた)
(ぉん……)
(お前のせいやないやろ、何凹んどんねんみっともな)
(うるさいわボケ)
(嬉し泣きくらい慌てず受け止められるようなれや……ほら女子だけにすんな、学べやアホ)
(うっっさいなぁ!言われんでもそうするわっ!!)
(はぁ………堀川くん、ごめんなあ。アホツム煩いしフォロー大変やろ)
(え?見てて微笑まし〜って楽しく見とるで!おっちゃんの時も、木下さんらの時も侑くんかっこよかったし)
(お、おぉ…楽しいならええわ)
(やっぱ反射神経ええからあんな反応早いんかな?流石球技の部活やっとるだけあるなぁ)
(それは関係ないかもな……)