ふゆ・ちび主
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クリスマス
待ちに待ったクリスマスまであと3日。
屋敷にはツリーが装飾され、木の選定やオーナメントの作成・飾り付けは音が主体でやりきった。すこし歪な星のオーナメントも音の手作りだ。小さな手を動かして、たまに指を切りながら紙粘土で作った星は中にガラスが仕込まれているため淡く光る仕様だ。
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時は遡り先日、ベリアン主導でサンタへの手紙を書かせて中身を執事全員で読んだ。一体何を欲しがるんだろう?用意できるものだろうか?主様の世界にはあるけどこちらにないものだったら…?と執事たちは緊張しながらベリアンの言葉を待つ。
「では……『サンタさんへ こんにちは!きょうはサンタさんへてがみをかいていいと言われたので書きました。前にお店にいたクマのぬいぐるみがほしいです。体から下げれるやつ、大事にしたら物にはいのちが宿るっておばあちゃん言ってたので』………クマのぬいぐるみ……心当たりある方はいらっしゃいますか?」
ほしいものが子供らしいもので大変良かったと安堵する者が多い中、そろりとバスティンが挙手。
「……前に、主様と買い物に出かけたときに見た……と思う。が、その時天使が街に出没して……どんなだったかは正直朧気だ」
「なるほど……では、バスティンくんとナックくんで近々店に視察に行ってもらってもよろしいでしょうか?体から下げれる、ということは普通のではなく紐がついているもの?なのでしょうか」
「ポシェットになってるやつかもしれませんね」
「フルーレが作ったら喜びそうだけどな」
「何言ってるの、主様がほしいものなんだから似せたものじゃ違うしダメでしょ」
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そうして主には伏せながらも緻密に準備したくまのぬいぐるみ。フルーレの推察どおり、背中にチャックがあり本当に小物しか入らないものの、ぬいぐるみに紐がつけられておりポシェットとなっているため持ち運べる。何色がいいかと執事たちは頭を悩ませたが、ザ!オーソドックスなベージュ色にした。ラムリとフルーレに1番顔が可愛らしいものを選ばせて、キラキラしたラッピングに包み、倉庫の1番上の見えない場所に隠してある。クリスマスの前夜、寝付いたあとにそっと用意すれば完璧だ。
初めてだという音に大盤振る舞いしすぎたか…?と心配になるくらいご馳走を計画しているロノはいちごのケーキにするか、フルーツケーキにするか未だに迷っていた。主様が来てから依頼が増え、疲労しているのも事実。しかしそれ以上に自分たちを気にかけてくれる優しい主人を喜ばせたい気持ちのほうが遥かに大きい。依頼もたくさんこなしたおかげでナックとルカスが交渉しつづけて資金も余裕がある。初めてのクリスマス、そして1年お疲れ様の気持ちを込めた豪華な会にしても罰は当たらないだろう。
「ゔ〜ん……どっちにすっかなぁ」
「ロノ?」
「うぉ!主様……びっくりした」
「唸ってどおしたの?」
「……クリスマスのケーキ、フルーツケーキかいちごのケーキどっちがいいですか?」
「…………いちご!ベリアン冬にはいちごのケーキ食べたいって言ってた」
「もお……主様が食べたい方を教えてくださいよ」
全く、この可愛い主人はいつも〇〇が……と気を回すのだ。フェネスさんやベリアンさんにそっくりだと思いつつ音を抱きかかえるロノ。
「え〜?へへ……ん〜いちごがいい、音いちご最後に食べるんだよ」
好物は最後に取っておくタイプだ。こんなに分かりやすい人もなかなか居ないだろう。少し前にアップルパイを焼いたらシナモンで煮込んだリンゴが大層美味しかったようで、パイ生地から器用にリンゴを抜いてパイ生地のみを食べたあとにリンゴを食べていたときは笑ってしまった。それからしばらくリンゴのコンポートがおやつに続いたくらいだ。
「いっぱい美味いいちご用意しときますね」
「ふふ〜〜いちごみるくにしてもいいねぇ」
「いちごみるく?ジューサーにでもかけるんですか?」
「?牛乳かけてスプーンでいちご潰すんだよ……あと砂糖かける」
「なるほど……今日はそれ飲みますか?」
「うん!」
力を入れすぎたスプーンから逃げるようにいちごが皿から飛んでいき、ムーが砂糖と牛乳でべたべたになったのはここだけの話である。
そして12月24日の夜。予想外の出来事が起きた。まさかの天使が襲来したのだ。天使にはクリスマスも年末年始も関係ない。急いで音たちが街に駆けつけると、まだ街の損害は大きくないようだ。怪我人もなしと判断し、悪魔執事たちが力を開放して懸命に戦う。幸いにも個体数は少なかったため、すぐに戦いは終わった……が問題はその後だ。
「せっかくのクリスマスが台無しよ!」
「来るのが遅いんだ!怪我したらどう責任とってくれるんだ!」
やり場のない怒りが執事と音にぶつけられ始めた。自分に向かって怒号を浴びせる中年の男を見て音は暴力をふるう母親の彼氏たちを嫌でも重ね合わせてしまった。
「ぅ、あ…っごめんなさい、ごめんなさい…」
「主様、こちらへ。大丈夫ですよ……私の目を見てください」
様子がおかしいことに気づいたベリアンが素早く馬車に乗せ、外から隔てる。未だに執事たちに筋違いの罵倒を浴びせる声が響くが、ベリアンは両手で耳を塞ぎそのまま抱きしめる。ちょうど胸元に音の頭があるので、音は少しこもって聞こえにくくなった人の怒鳴り声とベリアンの心音に耳を傾ける。
「主様、大丈夫ですよ。大丈夫……今日もお疲れ様でした。怪我人も0でした、素晴らしいです」
「……でも、おじさんが…」
「おじさんが?」
「どうするんだって…」
「怪我をしたら…と仰っていましたが、あの人は無傷で人に怒鳴るくらい元気があるお方ですよ?心配ご無用です」
貴方が抱えて落ち込むことではない、と背中を擦る。街に損害もあったが、命があるだけ感謝してほしいものなのに貴族によく似て、人間だと思ってない悪魔執事に対して言いたい放題の町民を見やるベリアンの目つきは鋭く刃のようだった。せっかくのクリスマス、というのはこちらも同じだ。クリスマスの準備に向けて天使討伐や街の盗難騒ぎの警備、民家の修繕なんかもこなしてきた12月だ。蔑む執事の手を借りて生きているくせに、礼はおろか更に要求してくるなどなんと傲慢な生き物なのだ。
「先に屋敷に戻りましょうか……警備のものも来たので、街の修繕は彼らに任せましょう」
「や!音も手伝う」
「しかし、主様……」
「今日はクリスマスで、皆でごはん食べるの!」
「……ふふ、分かりました。私もお供します……ガラスの破片などにはくれぐれも触らないようにお願いしますね」
「わかった!」
悪魔執事の主とはいえ幼い子供が文句の一つも言わず瓦礫を拾い上げ始めるものだから、執事に罵声を浴びせていた大人たちの声が萎み、一人、また一人と去っていく。しかし主はそれを許さない。
「皆の街なんだから皆も手伝ってください!今日はクリスマスなの!」
皆でやれば早く終わる、そしてお前たちの家や店なのだから手伝えと含めて言えば流石に無視できないのかブツブツ文句を言いながらも作業をともにする。しかし人間とは不思議なもので、寝食をともにしたり苦労をともにすると絆が生まれるのだ。
「お嬢ちゃん、ありがとう」
「みんなにも!音より皆のほうが働きました」
「…ぅ……その、さっきは悪かった。助かった」
「いいえいいえ、せっかくのクリスマスですもの。皆さんで楽しまないと意味がないですから」
「そうだね……怪我人もいなくて何よりでした。協力感謝いたします」
ルカスとナックがうまく場を収めて解散。馬車の中で疲れ果てた音は気絶するように眠り、なんとか夕食に起きた。
「主様、メリークリスマス!ちょっとトラブルもあったけど……さっきカッコ良かったです!ボクたちのためにありがとうございました!」
「ラムリ、抜け駆けは禁止と言ったでしょう?!……すみません、主様。疲れは取れましたか?先程はありがとうございました」
「ふふ〜おはよぉ」
少し寝ぼけた音はナックに抱きつきそのまま席へ。見たことのないごちそうに囲まれながら全員で食卓を囲む。
「じゃあ乾杯の合図は主様にお願いしましょうか」
「かんぱい?」
「かんぱーい!ってやるんですよ」
大人がよくやってるやつだ、と音は記憶を呼び起こす。確か……乾杯の前に何か言ってたはずだ。
「……えんもしめなわですが…?」
「しめなわ?」
「主様、どういう意味ですか?」
「分かんない」
えん、は縁か?と執事たちが考える中、音が口を開く。
「…音のひつじでありがとう、みんな!かんぱい!」
「ゔっ……」
「ベリアン、ちょっと早いよ」
「ボスキさんも泣くには早いっす」
「うるせえ、泣いてねえよ」
あまりに嬉しい一言に何名か咽び泣く者が現れたが、楽しいクリスマスパーティは続き。音は苦手なピーマンを克服したり、初めて食べるというミヤジ作のグリーンカレーを好きになったり、そこにラトおすすめのパセリを大量に入れてみたり。
「主様、今日は疲れたでしょう……そろそろ眠らないと」
「や!サンタさんと握手するの」
「……実は、サンタさんから手紙を預かってるんです」
「え?!」
「代わりに読んでもよいですか?」
字のきれいなナックに頼んで書いてもらった雪を思わせる真っ白な便箋をひらく。
「『良い子の音ちゃんへ……お手紙どうもありがとう、とっても嬉しかったよ。しかし残念なことに、サンタは世界中の良い子にプレゼントを配らなきゃいけない。良い子の音ちゃんに会ってお話をしてみたいが、他の子を待たせてプレゼントが渡せなくては可哀想だ。だから、悪魔執事ときちんと寝てプレゼントを受け取って欲しい…どうか夢の中で会えることを祈って。』……だそうです」
少し文面がロマンティックすぎないか?と読みながらベリアンは思ったが、書いたのはナックだから仕方ない。
「え〜………配りに来るの見れないかなあ」
「良い子は早く寝ないと、ですよ」
「……ベリアンたちにはサンタさんこないの?」
「え?」
「良い子って大人も入る?」
「ふふ…来てくれたら嬉しいですけど、私達よりもやはり幼い子たちの元を優先してほしいですからね。私は先に大丈夫ですと断っておきました」
(そうなのぉ…?)
(ふふ、はい。……主様、手は冷えてませんか?)
(ちべたい)
(失礼しますね)
(…………)
(よし、ぐっすりと…!あとはホール前のツリーの下にプレゼントを設置すれば完了です)
(ベリアンさん、主様は寝たのか?)
(おや、ボスキくんが起きてるのなんて珍しい……はい、もうぐっすりです。ムーちゃんと添い寝してもらってます)
(いや…今日くらいはな。これから設置か?)
(はい!明日の反応が楽しみですね)
(そうだな……明日はアモンとフェネスに俺も叩き起こせって頼んであるんだ)
(ふふふ…ますます楽しみです)
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