にちじょう・ちび主
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まるごと
「ミャジーせんせ!」
「ふふ、主様おはよう……可愛い跡がついてるね」
「とれなかった」
「それなら俺がブラッシングしましょうか?」
おしゃれが大好きな音はここに来た当初、プリンセスと同じドレスを自分が…?!??と嬉しくてたまらなかった。ドレスだけではなく、髪の毛もパパっとキレイに美しく、音曰く「プリンセス仕様」に仕上げるフルーレを尊敬の眼差しで見つめている。なのでそんなフルーレが子どもの肌にも使えるという無添加の日焼け止めを買ってきて塗るように言われれば塗り、風呂上がりに保湿クリームを塗るように言われればこれもまた素直に塗る。
「やってやって〜」
「ふふ、じゃあこちらへ…今日はミヤジ先生と文字の読み書き練習でしたよね?」
「うん、音の上の子が読む本にチャレンジするの」
「流石です、主様!もうマスターしたんですね」
ここに来て困った事の第一位は文化が違うことによる生活様式の違い、そして第二位は文字の違いだろう。齢10にも満たない音は母国語の漢字さえまだ漢数字程度しか習ってないレベルなのに、アルファベットが来て大混乱だった。何度泣きだして辞めると言ったか分からない程に投げ出したくなるものだった……それがいまや、児童文庫を読めるようにまでなった。フェネスと並んで本を読む姿にミヤジは泣きそうになったとか既に泣いてたとか……。
「はい、今日はお勉強の日なので邪魔にならないように三つ編みにしてみました……ラトとお揃いですよ」
「おそろい?おんなじ?」
「同じです!主様の髪の毛はストレートだから扱いやすくて助かります」
「ふふん」
よく分からないが褒められていることに違いはない。そう感じ取った音は鼻高々にふんぞり返った。ラトはまだ眠ってるということで、一足先にミヤジと文字の練習を開始。きっと学校にきちんと通えていればこういうことを授業で習ったのだろう、と途切れ途切れの学校の記憶を呼び覚ましながら音は思う。
「ミャジーせんせ、音も皆とお勉強したらだめ?」
「……誰かと一緒のほうがいいのかな?」
「……音、学校行きたい。給食食べたりとか…」
「給食?」
給食文化のないミヤジは聞き返す。お弁当を持ち寄るのではなく、各学校ごとに担当の者があらかじめ決められた献立を昼に間に合うように作り、それを皆で食べる……そういうものが手厚い音の国の文化に驚きつつ、ミヤジは考え込む。この子は子供であるが先ずは自分たちの主なのだ、それに孤児の子たちと触れ合うにはまだ早いのではないか……と。
「考えておくよ」
お昼まで集中を切らすことなく読み、綴りの練習を終えた音。途中からラトもやってきて勉強に参加し、音のやる気にも繋がっていた。人に見られている、誰かがいるほうが勉強が捗る子だと見抜いたミヤジは近々街での勉強会に混ぜてみても良いのかもしれない、と思い始めていた。
「つかれたあ」
「お疲れ様です、主様」
「ラトだっこ」
「ふふ、はい……主様は軽いですね」
「そぉかな?」
「とってもとっても軽いです。ミヤジ先生と一緒にお昼食べに行きましょう」
「そうだね…そうだ、主様の世界の給食というものを教えてくれると嬉しいな」
「任せて!」
張り切る音に頬が緩むミヤジとラトが食堂につくと、音がロノに配膳を手伝わせてほしいと挙手。最初こそ断られたものの、「給食の再現」だと言エバ付き合ってくれる。
「スープはここ、おかずここ、サラダここ」
「ふんふん」
「牛乳とご飯は別で係が先に配るんだよ」
「ほう…自分で取りに行くんだね」
「うん、皆でよそうんだよ」
ワンプレートになるが、まあ今日はいいかとサラダともも肉のハニーマスタード焼きをよそっていく。スープはボウルにして手渡しし、ミヤジ、ラト、ロノ、ムー、そして音の分をよそい着席。
「手を合わせましょー、いただきます!」
「ふふ、いただきます」
「いただきま〜す!」
音の掛け声に笑みを浮かべながら皆でご飯を食べる。たしかに子供の頃から皆で食卓を囲むという体験はどんな家庭の子にも必要だし、家庭で難しいのなら公共の学校で行うのが理に適っている……「給食」文化に興味が湧いたミヤジは勉強会でも全員で配膳、机を囲んで食べるところまでをやってみようと思案した。
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「主様?……わわ、手が真っ赤じゃないですかぁ!」
「雪だるま作ってるの」
ラムリが指差された先を見ると、ズラっと並ぶ雪だるまたち。行進でもしてるのか?と言いたくなるくらい1列にきっちりと。
「ラムリはこれ」
ちょんちょん、と左右に耳のように突起がついた雪だるまはボタンが目になっており、特徴的なギザギザした歯は小枝で表現されておりとても可愛いらしい。主様が自分を…?!という喜びとともに、もしかして執事全員分を作っているのでは?と数を数える……ラムリの懸念どおりで10体目を今作ろうとしてるところらしい。
「主様、霜焼けになっちゃいますよ」
「なんない!いまナックつくってるの」
「ナックなら適当でいいじゃないですか……明日も雪降るし、一旦部屋で休憩しませんか?ね?」
また風邪を引いてしまうかもしれないし、熱も出してしまうかもしれない。耳も鼻も真っ赤な音はどれほど寒い中黙々と雪だるまを作っていたんだろうか?とラムリはゾッとした。子ども……というより音の集中力は時に素晴らしく、時に恐ろしい。
「ナック作ったら休憩する」
そう宣言したものの、手が痺れてきたと申告したことによって無理やりラムリに部屋に押し込められた音はかなり不満気だ。しかしラムリとて負けていられない。可愛い主様の楽しい時間を中断させたことは胸が痛むが、体調を崩しては本末転倒だ。その気持ちをもって心を鬼として接する。
「今日はもうだめです!ルカス様に言いつけますからね」
「やぁ〜!!!」
ぽろぽろと椅子の上で泣き出した音の涙を拭いつつ、指を擦りマッサージをするラムリ。氷のように冷たい手を暖炉の前に持っていき、暖めていく。
「おやおや、主様の鳴き声が廊下まで響いてるけど……どうしたの?」
「「ルカス様!/ルカシュ!!」」
ぱあ、と同じ顔でルカスを招き入れたと思いきや左右からそれぞれの言い分を弾丸で浴びせる2人にルカスは微笑ましいなあと笑いつつ、手が痺れたという一言を聞き逃さなかった。
「ん〜…本当だ、随分と手が………いや体も冷たいね、主様?」
「ちべたくないもん」
「冷たいよ、氷のようだよ」
「……ナック作ったら休憩するって言ったもん」
「うん、きちんとラインを決められて偉いですね……でも、痺れてきちゃうほど限界迎えるのは良くないよね?……主様、あまりにも冷やしすぎると凍傷になって、最悪切断しなきゃいけなくなっちゃうんだよ。ラムリくんはそれを心配して、ここに連れてきた…のは分かるよね?」
「………並べたかったんだもん」
「また明日一緒に作りましょうよ、主様……ね?ボクが下の体の部分の雪玉作りますから!」
「う〜……溶けちゃうよ…」
「ふふふ、まだまだ冬だから溶けない溶けない。……あぁ、でも雪が積もって埋まらないようにあとで屋根の下に移動しておこうか」
流石はルカス。子供の扱いがなんと上手い。ラムリが尊敬の眼差しでルカスを見上げた時、珍しく駆けてくる足音が聞こえた。バン!と少し乱暴に開かれた扉の先にいるのは、肩で息を切らしたベリアン。片手には、先ほど列に並んでいた雪だるまのうち、ベリアンを模した雪だるま。
「ルカスさん、見てください!裏庭に私の雪だる………し、失礼しました」
「ベリアン見っけちゃった?」
あまりに嬉しそうな顔で話していたベリアンも、まさか主とラムリまでいるとは思ってなかったようで顔が真っ赤になっている。ベリアンの足元に抱きつき、見上げる音はとても嬉しそうだ。
「ぅ、あの…はい、主様……可愛らしい雪だるまですね、えへへ」
「ふふ、ベリアンが駆け込んでくるなんて珍しいねぇ。やはり溶ける前に屋根の下に移動させようか。ベリアン、主様と留守番してくれるかな?手が霜焼けになっちゃっててね」
「なってないよ」
「こ〜ら主様!ルカス様の診断を白紙にしないでください…!じゃ、ベリアンさんの雪だるまはボクが持って行きますね」
そう言い残してルカスとラムリは雪だるまを移動させに医務室から出ていった。少し顔の赤いままのベリアンが音を暖炉の前に移動させる。
「あらら…こんなに冷たくなってしまわれて。寒かったでしょう……ミルクティーはいかがでしょうか?」
「のみたい!音もくるくるやる〜」
「ふふ、かしこまりました。ではもう少し暖まってから食堂に行きましょうか」
ふとベリアンは思いついたことを尋ねる。主様は本当に雪が好きだな、と。冬が好きというわけではなさそうだ……朝は置きたくないと一層寝起きが悪くなってしまったし、かなりの厚着をしてもブルブル震えていることもある。
「主様は雪がお好きなんですか?」
「うん、音こーーーんな積もったのテレビでしか見たことないよ!」
テレビ、というのは以前教えてもらった液晶の画面で、いろいろなニュースやドラマ、映画や音楽を楽しむ娯楽商品だとベリアンは聞いている。……つまり、本物の雪を知らない、雪が積もらないところに住んでいたのか。
「なるほど、確かに本物を目にしたら楽しくなりますね……主様の世界のこと、もっと知りたいです。年末年始はどうお過ごしになるんですか?」
音が来て、初めての年末年始を控えている。クリスマスの文化もあるのだろうか?準備も兼ねて、今のうちに聞いておかないと。そう思ったベリアンは音の辛い記憶に触れない程度に探りを入れる。
「年末……はおばあちゃん家に言って、コーハク見るんだよ。しろ組あか組に分かれて、いろんなお歌を歌って…そのあとお寺にいってゴーンってするの。ひゃく……ひゃく何回かゴンゴンするんだよ」
「お寺で鐘を……なるほど。そうやって新年をお祝いするのですね」
「うん!音はそのままはつもうでに並んで、帰って、おせち食べるんだよ」
「コーハク」に「はつもうで」に「おせち」……聞いたことのない単語がつらつら出てくる。寺や神社というところは東の大地と文化が似ているかもしれない。そうなるともしかして料理も向こうのほうが近しいかも……?あとでフェネスと書庫を漁らなくては。
「おせち、とは?」
「……なんかいっぱい入ってる!音はかまぼこと〜、くるくる甘いたまごと〜えびとか好き!
たしかねえ……かまぼこは、あかとしろで日の出にみえるから縁起がいいって。まきまきたまごは、巻物に見えるから頭良くなるようにって!おばあちゃん言ってた!えびは長生きするようにって」
「なるほど!ひとつひとつの食材や料理に開運の意味を込めて頂くものなのですね!……ふふ、異文化は面白いですね……そういえば、主様はクリスマスはご存知ですか?」
「クリスマス?しってるよ、いい子のところにサンタくるって」
先ほどとは打って変わって寂しそうな顔をした音の手を握るベリアンは踏み込んで良いものか悩む。子供の認識としては100点の認識だ。だがこの反応は……いい思い出がない、そういう類だろう。
「クリスマスは好きじゃない、ですか?」
「……音いい子じゃないから、サンタさん来たことない」
「主様……」
「ままにいつも怒られてるから、サンタこないんだって……ままのかれしが言ってた」
「主様。お言葉ですが……私の話を聞いてくださいますか?」
「??」
「何度も申しているとおり、主様は違う世界から私たちの元へやってきて私たちの「主様」となってくださいました。
その役目は、放棄……つまりやりたくないと拒否できるものです。ですが、主様は見知らぬ私たちの主様になってくれることを選んでくださいました。
それから、早々に主様の世界にはないテーブルマナーや立ち居振る舞いを学んでくださいました。それに……私たち執事が主様の身の回りのお世話をするのが当然の中で、主様はいつも進んでお手伝いして下さいますね。
私たちが怪我をすれば駆けつけてくれたり、街の人たちから身を挺して庇ってくださったこともありましたね。
そんな主様のどこが「良い子でない」のでしょうか?私には……分かりません。勿体無いくらい良い子で、すばらしい主様です。元の世界の、主様のお母様たちの考えは聞いてないので理解はできませんが……私は、主様のことを良い子でないと思ったことは今の一度もありませんよ」
「……ほんと?サンタさんくる?」
「きっと来てくださいます。……そうだ、お手紙を出してみませんか?私がポストに出しておきますよ」
書く書く!とやる気と希望に満ちた音の表情を見てベリアンは目尻を下げる。どんなに高価なものを強請られても、ナックになんとか掛け合おうと決意しながら。
(書けましたか?)
(まだ!デコる!)
(デコ…?)
(デコレーションする!シール貼って〜きらきらつけて〜)
(ふふ、豪華なお手紙ですね。サンタさんもきっと喜びますよ)
(サンタさんって同じ人なのかなぁ)
(私が聞いたところによれば……流石に一人で世界中を回るのは難しいので、何人かに別れていると)
(へぇ!ベリアンもサンタさん好きなんだ)
(ふふ、そうなんです……では、明日お手紙出してきますね)
(おねがいします)
(…………というわけで、今日は真面目な議題の後に主様のクリスマスプレゼントの議題があります。サンタさんは複数人いる、ということをお伝えしたので、もし街にサンタの格好をした人がいてこの手紙のことを知らなくてもフォローはお願いしますね)
(おお、いつになくベリアンさんがやる気だ…!クリスマスの料理も考えなくちゃなあ)
(俺はチキンがいい)
(お前のリクエスト聞いてねーよ)
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