わんぱく・ちび主
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ボスキとマッサージ
音はここ最近ルカスとフェネスにベッタリだ。二人には実験台と監修・指導役としていてもらっている…ある日の夜、音は痛みに蹲るボスキの姿を見てから義手の話を聞きつけ、冬場は特に材質上義手を腕にはめ込む瞬間が痛むのだとルカスたちに教えてもらった。定期的なマッサージが必要で、フェネスがよくボスキにしてあげてるというもののボスキは無頓着なのでたまにすっぽかしてしまうことも聞いた。
「主様、お上手です」
フェネスの筋肉まみれの腕をマッサージできるようになってきた音は勢いでオイルをくまきちにしまい込み、ボスキを探し出す。
「ボスキ〜?」
しかしいつものボスキのサボり場所を巡ってもおらず、段々と肩が下がる。かくれんぼの名人だとラムリも言っていたがここまで見つからないとは。
「……ボスキいない…」
「俺がなんだ?」
「わっ!」
いきなり頭の上から聞こえた声に飛び跳ねながら見上げるとボスキがこちらを見下ろしていた。全く気付かなかったぞ…と訝しげに見ながら音はボスキの手を引く。マッサージは温かい場所でないと意味がないのだ。
「ボスキすわって〜」
「なんだ?」
ボスキが座ったのを確認して音は服の上から徐々に徐々に力を込めてマッサージをしていく。
「……フェネスに教わったのか?」
「ルカシュも」
「……主様にこんなことさせて悪いな」
「ふひひ、いいよぉ」
子どもの力加減だからこそ痛すぎない。フェネス力加減が的確にツボを刺激して血流を良くするタイプなら、音のは周りからじんわりとほぐすようなタイプだ。早朝なんかの急いで血行を良くしないといけないときはフェネスの力加減が痛くも助かりつつあるが、日常ならこの優しさがありがたい。ボスキは微睡みながら瞼を閉じるが音は視線を腕に集中させ習ったことを思い返しながら全意識を腕に向けていたため、眠ったボスキにしばらく気づかなかった。
「フェネス、ルカシュ」
「あ、主様…ボスキ見つかりましたか?」
「うん……ボスキ寝ちゃった」
「へぇ…!珍しいねえ、ボスキくんがマッサージ中に寝ちゃうなんて……主様の腕がそれほどよかったんだね」
ブランケットをかけて寝かせてきたという音にフェネスが着いていき、書庫室で寝息を立てて眠るボスキの姿を2度見した。
「ほんとだ……寝てる」
「フェネスはここでしょ?ハウレス言ってた」
しゃがんでいたフェネスの首の後ろをグリグリと押し込む音にフェネスは思わず脱力する。ピンポイントだったからだ。
「バレバレですね……俺も」
「本こーやって読むから首凝るって言ってた」
「ふふ……主様ありがとうございます。ですが、腕が疲れてしまいませんか?」
「疲れてないよぉ〜フェネスも座って!」
10分もしない内にフェネスまでボスキに寄りかかって眠ってしまった。ルカスを呼びに行き、ルカスはこの光景に声を出さないように笑うのに必死だと言う。
「もしかして、次は私?」
「そうだよ」
「ふふ……じゃあやってもらっちゃおうかな…主様、無理はしないで下さいね」
「うん!」
ルカスは肩、そして首。フェネスとは違うがあまりの肩の凝り具合に今度は音が2度見する番だった。岩か石でも入ってるのか?と思うくらい子どもでも固く、手をグーにした人差し指と中指の第二関節でグリグリと押し込むことでしか指が入り込まない。しかし子どもの手の小ささがコリにピンポイントで当たるため、ルカスも15分ほど音が夢中で凝りをほぐす頃には眠っていた。
「すごい……音の特技かも!」
3人にブランケットをかける。次はナックだ。ナックもよく首を回してるからルカスのように肩が凝ってるはず。最速凝りハンターと化した音は屋敷中を駆け回り、肩、腰、腕、背中、首をマッサージして全員からお墨付きを貰った。最後まで遠慮したのはミヤジだった。
「主様、聞いたよ……執事皆にマッサージして回ってるって……腕が疲れただろう?」
「んーん!」
体感では全くだが、いきなり酷使した腕に披露が溜まってないはずがない。ミヤジは膝の上に音乗せて両手を優しく握る。
「……ミャジーせんせ、あったか…」
「ふふ、暖炉の前にいたからね。主様の体も冷えてる、一緒に温まろうか」
「ん……」
揺れる炎とぱちぱちと薪が燃える音、そして炎とミヤジの体温で眠くなった音が目を閉じる。1階から上では次々に目を覚ました執事がどこに行った?とお礼をしたくて探し回ってることを知らずに。
「ボスキ、きたよぉ」
「主様……俺は「座る座る」……はぁ…どこでんな強引になっちまったんだ」
ボスキが喜んでいた、とフェネスから聞きつけ寝る前のボスキの右腕マッサージがルーティン化された。申し訳無さでボスキが断るも、音が通っていた幼稚園に義足の父親が父兄におり、ボスキのものと比べると現代の為材質は遥かにいいものだが、それでも時々動かしにくそうだったりと苦労していた姿をやけに覚えている。
お金も技術もないため、負担のない義手は送ってやれない。だからせめて毎日の過ごしやすさに繋がるマッサージくらいはと名乗り出ている。風呂上がりに義手をはめ込み、メンテナンスするのはフェネスのままだとボスキは頑なに譲らなかった。苦痛に悶える声を聞いてしまえば、音がもっと心配してしまうからだ。
「……元のとこでもやってたのか?」
「え?」
「母親とかによ……主様があんまりに上手いもんでな」
「やってないよぉ……あ、でもねままがこーやって寝て、足の裏踏んだりはしてた」
子供の体重がいい具合に重しになり、ただふくらはぎや土踏まずあたりを軽く踏むだけでマッサージになっていた。手を使ってリンパや筋肉を意識しながらマッサージするのはパレスに来てからが初めてだ。
「そうか……主様は優しいんだな」
「?」
「疲れるだろ、こんなちっちゃい手で俺らのことマッサージするなんてよ」
「え〜?……ふふ、皆コテンって寝ちゃうの見ててたのしーよ」
「…ふ、なんだ。主様は人の寝顔を見て楽しんでんのかぁ?随分なご趣味で……」
「きゃ〜っ!!!はははっ!!」
近頃は夜20時頃になると2階の執事室から音とボスキの笑い合う声が聞こえるようになった。廊下にいても聞こえるくらいの明るい笑い声は通りがかった者も笑顔にしていく。
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「というわけでマッサージやさんやる!」
「ダメです」
「なぁんでっ!」
音としてはこれで屋敷の資金になるなら、と街に出て屋台のように〇分〇ゼニーとマッサージやさんをやるとハウレスに持ちかけた。ベリアンとルカスには音はまだ口では全然勝てないからだ。
「……ご覧ください」
「?」
鏡の前に連れてこられた音がハウレスを見上げる。
「俺たちの主様はこんなに可愛くて愛らしいんです。良くないことを思った大人が殺到するに違いありません」
現に一度、音にはもちろん接触させていないが可愛らしい子供ということで息を荒げた貴族を会合から叩き出したことがあるハウレスは、年齢問わず主より歳上の見知らぬ男に接触させるのが若干トラウマになっていた。自分に向けての気持ちならまだしも、力もない、疑う心も持ち合わせてない無垢な少女に近づこうとする奴がいるという事実が恐ろしかった。
「よくないこと…?」
「主様に無断で触れようとしたり…マッサージというものは、体が触れ合うでしょう?信頼関係がないとなりたちません」
「………でも、音のとこ、マッサージのお店あったもん……」
「ここにももちろんあります。しかし、誰でもなれるということではないでしょう?俺たち、施術を受ける側はお店側には認められた資格があることや、許容してないことをしないと信頼してないとお店に通おうと思えません。
主様に資格がないから、とか信頼してないということではなく……施術を受ける立場を利用して、主様だけではなくお店側に良くないことをしでかす輩がいるのです。」
「…良くないことってなに?」
「マッサージとは関係のない体の部位を無断で触る、などです」
「………」
なんとなく想像できたようで音は眉間にシワを寄せてしまった。
「……ボスキの…」
「ボスキ?」
「ボスキの、ぎしゅ……いいやつ…」
「……ふふ、主様は本当にお優しいですね。その資金は俺たちが依頼を受けて貯めていくのでご安心ください」
ちょっとばかし納得のいってなさそうな音の頭を撫でてハウレスは立ち去る。ボスキにこの件を伝えなければ。
「ボスキ」
「っち……んだよ、ハウレス」
「主様についてだ……真剣な話だから聞いてくれ」
「主様?なんかあったのか?」
「お前の義手を良いものに買い替えたいと、主様がエスポワールでマッサージ屋を開くと言ってきた」
「……は?」
「もちろん許可してない。前回の会合で……ほら、主様に迫ろうとしたあの男がいただろ。ああいう存在に目をつけられてはいけないしダメだと……主様には「良くないことを考えるやつもいる」とぼかした伝え方をしたが、イマイチ伝わってない……から、ボスキからも伝えてくれないか?」
「どこにいる」
「動いてなければ主様の寝室だ」
慌てて駆けて行ったボスキをハウレスは見送り、ベリアンとルカスに報告しに会議室へ向かう。あの二人も頭を抱えそうな事だ。
「主様……どうした、背中丸めて」
敢えて知らないふりをしてボスキは音に声をかける。
「……ハウレスがけち」
「ふは…あいつが真面目でけちなのは元々だろ?何お願いしたんだ」
「…‥マッサージやさんひらくって言ったら、だめって」
「何かほしいものでもあるのか?」
「ひみつ!」
隠し通そうとするとはなかなか殊勝なことを考える。執事にこんなにも与えたがる主様がこの世に存在するのかと目の前の主を見てさえも信じられないボスキは音のサラサラの髪に指を通す。
「どうしても欲しいのか?それは」
「うん……でも、ナックに買ってもらうんじゃやなの」
「そうか。主様のためのものか?」
「ちがう」
「じゃあ誰かへの贈り物か?」
「ん!」
「随分幸せモンだなぁ、そいつは……なぁ、主様」
「?」
「もし……俺がその贈られる相手だとしたら飛び跳ねちまうくらい嬉しいが……よくよく考えてくれ。主様今いくつだ?」
「7」
「なぁ、両の手もいかない年齢だろ?主様の世界でも子どもの労働は禁止のはずだ。ここでも、主様かそうかじゃなく…家の手伝いとかそういうのじゃない限り子どもは働くモンじゃねえよ」
「……」
「主様自らが労働をして、金を貯めなきゃいけねえくらい高価なモンなら……せめて主様が正式に働ける年齢まで待ってくれねえか?ここの執事は気が長い。数年待つくらいへっちゃらだろうよ」
「………分かった」
ようやく音がきっぱり納得した表情で返事をしたので、ボスキは安堵して音を膝に乗せて頭を撫でる。執事と主の体裁もあるし、法律の問題もあるし、マッサージという資格がいる職となるといろいろややこしい問題も絡む。純粋な善意で行動しようとした主様の気持ちを結果、踏みにじるような行為だけはしたくない。余計なことをしたと落胆してほしくない……そう考えて、適齢期までの先延ばしの結論だった。
(主様、今日は疲れたろ……俺とこのままサボってくれやしねえか?)
(ふふ、音サボり好き)
(将来有望だな)
(ふふん)
(さてそれじゃ……陽のあたるところで雪でも見るか)
(みる〜)
(本当に主様は雪が好きだな)
(ふわふわだもん)
(………あれから食ってないよな?)
(食べてない、ボスキけちだから)
(こんくらいでけちと言われんのは心外だな…)
(無料のかき氷って思えばいいのに)
(主様に洗えねえモン食わせらんねえよ……主様はかき氷何味が好きなんだ?俺も東の国で食べたことあるぜ)
(ん〜〜ブルーハワイとレモン!)
(ぶるーはわい……???)
(青くて甘くておいしんだよ)
(青くて甘い……?想像できねえが…食ってみてえな、主様の好きな味)
(ボスキは何味?)
(たしか……練乳といちごだったか。抹茶もあった)
(にがにが抹茶?)
(…ふ、なんだって?)
(にがにが抹茶!)
(あぁ、にがにが抹茶)
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