わんぱく・ちび主
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ベリアンとチーズケーキ
音はロノとバスティンと秘密の計画を立てていた。それは……いつも見かけるたびに働いている、休みのないベリアンをどう休憩させるかというものだ。
「やっぱりさぁ……」
「「?」」
「おくすりで眠らせよっ!」
「だーーーめですってそれは!」
「あぁ、それは本当の最終手段にするべきだと思う」
「えー?」
……こんな調子でまともな案が出ていないが。
「ベリアンってさぁ……1日どぉしてるの?」
「スケジュールってことですか?……決まったことはしてないと思いますけど……困ってそうな執事の世話焼いてばっかで、休んでないんですよ」
「夜も俺たちに合わせて夕食を食べたあとは天使の研究をしている」
「んー……」
音は頭を捻って考える。日中にお休みさせるのは不可能だと察していた。何故なら、朝ごはんやお昼ご飯、夜ご飯の支度をするロノ、馬の世話をするバスティン、屋敷の修繕に見回るハウレス、庭園の手入れをするアモン、薬の調合や仕入れをするルカス、お金の管理をするナック、清掃するラムリ……など訓練や趣味の時間を除いた担当業務は各々行っているからだ。ベリアンを休ませたくば皆を休ませなければ納得するような人じゃないというのは、音でも分かることだった。
「……音は夜ゆっくりしてもらうのがいいと思う」
「夜…?」
「音、バスチが夜遅くまでくんれんしてるの知ってるからね」
「ぐ……」
「バスチも明日は、寝る!」
「……承知した」
「おー…鶴の一声……」
「ロノも!ムゥちゃんとかとお夜食たべてるの音しってます」
「……控えます…」
「ふふん。バスチとロノが寝たら、ベリアンも寝るしかなくなるのだ!」
「そんな上手く行くかな……」
「いくの!……皆でチーズケーキつくろう、ベリアンが前にアモと雑誌読んでたんだよ」
つくづくベリアンさんのように執事をよく見ているとロノは思った。好みや悩みなんかも主様には筒抜けだったりする。音考案のスフレチーズケーキを3人で分担しながら焼き上げる。これで寝る前に日頃の感謝も込めたご褒美おやつタイムを差し込んで、寝るように差し向ける作戦らしい。
本当にこれでうまくいくんだろうか?ロノは懐疑的だった。しかし、主様の言う事ならあのベリアンさんも流石に聞くのではないか?とも思っていた。
「ベーリーアン」
「おや……主様、どうされたのです?こんな時間に…」
いつものごとく天使の研究をしようと地下室へ潜ると既に音が居た…なぜか仁王立ちで。
「音はベリアンに文句があります」
「えっ!?も、文句ですか……」
動揺を隠せないベリアンはなんだろうと音を見やる。
「最近音と寝てくれないどころか、ちゃんと寝てないって聞いた」
「そ、それは……」
「週に1日、音とゆっくり寝る日を増やしてほしいです」
「!……ふふふ、いいんですか?」
ベリアンからすれば願ったり叶ったりだ。大好きな主様と一緒に眠っていい日が週に一度あるとは。確かに最近、ルカスやロノたちに心配をかけてしまっていたと内省していると音がベリアンの手を握って地下室から出て行く。
「じゃん」
「……これは?」
「ロノとバスチと音で作ったチーズケーキ!……おくすりは入ってないよ」
「主様、それ言っちゃ逆に怪しいんですってば」
「ロノくん……バスティンくんも」
「本当に薬は入ってない」
薬混入の有無を念押ししてくるので、そもそも疑ってないと答えるとロノが事の発端を説明し出す。最近ベリアンの休む時間が目に見えて減っていること、しかし前々から休んでほしいと進言しているから自分たちが進言する回数を増やしても効果はないと思っていたこと、音考案の週1日の休暇日ルールのこと、最終的に睡眠薬を入れてまで休ませようとしていたこと……
「ふふ、なるほど。それでお薬の有無を言ってらしたんですね」
「本当に入ってないですからね?……いやなんかオレまで言うと怪しいな……」
「ベリアンがやだーっていったらお薬混ぜる」
「あらら……怖いこと言うんですね、主様」
「ベリアンは音に休んで休んでっていうのに自分が休んでなかったら音も心配だもん、ルカシュも薬作るよって」
医者まで敵に回したら本当に寝かせるための睡眠薬を盛られかねない。音たちの心配してる気持ちの本気度の強さにベリアンは驚きつつ、嬉しさに笑みを浮かべる。
「ありがとうございます……確かに、最近根を詰めていたと思います……ぜひ、主様と過ごせるのなら」
「ふふ……週1日のお休みは、お休みだからベリアンは座ってるだけなんだよ」
「え……しかし、主様を働かせるのは…」
「おくすり入れるよ!」
「主様、それじゃ脅しっすよ」
「そうだ、リラックスしてもらわないと……予告なしで入れるのはどうだ?」
「何で入れること肯定的なんだよ!入れないように持っていくんだろ」
「そうか…」
相変わらずのロノとバスティンに笑みを浮かべつつ、週に一度のこの時だけ!と音が言うため慣れないものの世話を焼かれる側に回ることに。たどたどしく紅茶を淹れた音からティーカップを受け取り、3人が焼いてくれたチーズケーキを口へ運ぶ。レモンの効いた爽やかな甘さと軽い口どけ。いつもはクッキーやマドレーヌなどの焼き菓子ばかりでチーズケーキは久々に食べた。どんなお店のものより美味しく感じると感想を溢せば3人は分かりやすく笑顔になった。
「音が片すんだよ」
「……慣れないですね…」
「まぁ……夢みたいな光景ですからね…だけど、休んでほしいっていうのはオレも……バスティンも同じですよ」
「ふふ、ありがとうございます。とっても嬉しいです」
ベリアンとロノが談笑していると、「あちっ」という声が聞こえ思わず3人は立ち上がる。
「ロノ〜」
「どうかしました?」
「ここじゅってやった」
前腕部分を鍋の縁につけてしまったらしく少し赤くなっていた。
「大変…‥すぐに冷やすものを…」
「痛くないよ?」
「だめです、跡になっては大変ですから」
バスティンに抱えられ流し場まで連れて行かれた音は問答無用手で腕を水につけられ、お茶のおかわりどころではなくなってしまった。やはりまだ火の元を任せるには誰かの目がないと安心できない、と結論づけお湯の用意はベリアン、注ぐのは音となった。
「ベリアンのお休みなのに……」
「ふふ、私は主様とゆっくり過ごせてとっても休まってますよ?」
「動いちゃだめなの」
「おや…そうしたら主様をこうして抱きしめられないですよ」
また始まった……とロノとバスティンは顔を見合わせる。このバカップルぶりのイチャイチャタイムは毎度のことながら二人とも無意識に行っているのだから凄い。
「主様、そろそろお休みの時間だ……ベリアンさんと寝るのだろう?」
「うん!ムゥちゃんはバスチと寝るんだよ」
「ふ……楽しみだ。今日は凍えなくて済む」
心なしかルンルンしてるバスティンを見てロノは笑ってる……?!と2度見していた。部屋からロノたちが去っていき、ベリアンと二人残される。音は密かに決意していた……今日はベリアンが寝るまで寝ないと。
「ベリアンが寝たら音も寝るよ」
「おや……それは困りました。私も主様が眠ったのを確認しないと安心して眠れません」
「………ベリアンちゃんと寝る?」
「ええ、せっかくのお休みを頂いたので」
「ん〜……」
温かい音と温かいベリアンは互いにすり寄りお互いの熱で微睡む。こんな贅沢があっていいものなのだろうか、と最後までベリアンは悩んだが同室の執事たちと、他の執事からも休むように言われているし、何より主様さえ悩ませてしまった。素直に休むのが1番喜んでくれるだろうと目を閉じる。
「ベリアン、ベリアン」
「……っ…!主様…?どうかなさいましたか?」
「ベリアン、ゔ〜って魘されてたよ……大丈夫?やな夢見た?」
確かに夢見がものすごく悪かった気がする……がなんの夢を見ていたかは今の瞬間にすっかり忘れてしまった。しかし……汗がすごい。側にいた音を起こすほどには魘されていたベリアンは額の汗を拭った。
「申し訳ありません……起こしてしまいましたね」
「いいよぉ……音がよしよししながら寝かせたげる」
素早く着替えてきたベリアンは最初は恥ずかしさから断ったものの、音が悲しそうな顔をしたので寝かしつけをお願いする。恥ずかしさでドキドキしてしまい全く眠くはないが、音の温かくて小さな手に撫でられているのを感じて目を閉じていると不思議と落ち着いてくる。
「主様は流石ですね……ふふ、すごく安心します」
「ふふん」
「主様、寒くはありませんか?」
「うん……だいじょぶ…」
音の方が先に寝落ちそうになっていることに気付いたベリアンはそっと布団に音を抱き寄せ潰さぬよう優しく抱きしめる。子どもはなぜ日向の匂いがするのだろう……ムーと共に日向ぼっこしながら過ごしているからだろうか。そんなことを考えながら息を吸い込む。
「ベリアン……明日…」
「はい?」
「明日…お山いきたい…」
「山……ピクニックでしょうか?」
たしか明日は暖かくなりそうだとラムリが言っていたような気もする。気温が高ければお昼どきのピクニックも良いだろう。
「ふふ、明日の天気次第でまた決めましょうか」
「ん」
(ベリアン、主様……朝ですよ〜)
(……おやおや?ふふ、ベリアンがこんなにお寝坊さんなのは珍しいなぁ)
(ん……)
(ベリアン、ベリアン……もうお昼に差しかかるよ、もう少し眠るかい?)
(……っ!…お昼…!?)
(わぁ、飛び起きた……おはようベリアン。よく眠れたかい?)
(ルカスさん、おはようございます……えと…今日の気温はどのくらいですか?)
(気温?昨日に比べたら高いね)
(実は…天気が良ければ裏山へピクニックをしようと主様と眠る前に話をしていたのですが………)
(あはは、寝心地よくてお昼まで寝ちゃったと。……この調子じゃ主様も起きるの難しそうだね…主様の身支度は私が代わるから、寝癖を直しておいで)
(……すみません…お恥ずかしいところを…)
(ふふふ、主様とならこんなにしっかり休息を取ってくれるなら私からも主様に定期的にベリアンを休むようお願いしておかないとね)
(……くぁ…)
(おはようございます、主様……まだ寝てるかな?)
(ねてるぅ)
(ふふ、随分はっきりした寝言ですねえ?じゃあ可愛い寝顔を堪能しちゃおうかな)
(………っふは!擽ったいよぉ、ルカシュ)
(おや〜?まだ寝言かなあ?)
