ふゆ・ちび主
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子どもとの交流
ナックは不安だった。東の大地、フガヤマの宿へ執事を含めて旅行に来ている最中最愛の主様は地元の子とモチツキを通して仲良くなった。幸いなことに1人姉のように面倒を見ているカエデという子どもがいるが、三人とも主様よりも遥に体が大きい。ちょっと走っただけで歩幅がそもそも違う主様との距離はかなり空いてしまう。しかし、子ども同士の屋敷にはない貴重な交流に執事の自分が混じってしまうと子ども同士で距離が空いてしまう……邪魔をするようなことはしたくないが、全面に信頼をおけはしない。
「私はどうしたら……やはり後ろからこっそりついていくしかないのでしょうか」
「ふふふ、ナックくんは心配症だね」
今日の担当は自分と、添い寝する際に態度の悪い自分が出てしまった時のフォロー役のルカスの二人だ。ナックはルカスにずっと眉を下げて心配だという話をしていた。
「ん〜もう遊ぶようになって6日も経つし、その間一度も怪我がない。ちょっと服が汚れたり、ほつれて帰ってきたけどそれは枝とかに引っ掛けちゃったんだろうね……あの1番背の高いケンスケくんが気を回して商店街につれてってくれたりとか、まだ休みのスクールの校庭で遊んだりしてるようだよ?
ベリアンの裏山に行かないとか、大人の目がない場所には行くなって約束を守ってくれてるから心配しすぎなくてもいいと思うなぁ……ほら、宿の人もそうだけどここはいい意味で世話焼きな人が多いし」
「………確かに、そうですね…」
昨日も音は町内の大人から貰ったというお菓子をしこたま持って帰ってきた。これもルカスと約束した『知らない人からもらったものはその場で口にせず、屋敷に持ち帰って執事に見せてほしい』という約束をきちんと守っている。全て安全な市販品のもので、子供だけでいるからとたくさんのお菓子を渡されるそのいい意味で近い距離感にルカスは素敵な街だなぁと感じていた。
「あのヘイタくんっていう子が『冒険しよう』って言ってるのは確かにちょっと気にはなるけど……ケンスケくんが止めてると思うな」
「……迎えに来たメンバーによって対応は変えたいと思います……主様の楽しそうなあのお顔を曇らせたくはありませんから」
ナックの言うことはルカスも同意だ。やはり子どもは子ども同士で遊ぶのが1番なのだと思うと同時に、屋敷があるあの場所ではそれすら難しいことに胸を痛める。自分たちにさえ石を投げてきたり、退治してやる!と親からの刷り込みによって手を上げてくる子どもがいる。そんな中に主様を混ぜることはできないとスクールに通わせるのも慎重になっているくらいだ。
そんな中、ナックの不安が的中するかのように事件が起こってしまった。よりによって主が出かけている際に天使が出現したのだ。宿から離すように誘導し、悪魔の力無しでできるだけ損害が出ぬよう闘っていると音の声がする。
「ハウレス!バスチ!」
「主様……!力を開放してください」
頷く音が悪魔の力を開放し、そこからはあっという間に天使を撃退した。執事側に負傷者が出たもののフガヤマの宿と住民に怪我はなし。ほっとしたのも束の間、ヘイタが声を荒らげる。
「悪魔だったのか?!」
「ヘイタ!」
「オレかーちゃんから聞いてんだ、悪魔執事って怖いって……音、お前も悪魔なのか?!騙してたのか!?」
騙すも何も、見たことが事実だろう。ヘイタに続かない大人たちにも動揺は見られるものの、怪我をしないよう避難誘導をしてくれ、自分たちじゃ歯が立たない天使を撃退してくれたのも目の前の悪魔執事と少女なのだ。
「……だましてないよ、音も皆も人間だもん。お湯は熱いし、氷は冷たいし。……みんなのこと助けたのに、ひどいこと言わないでよ」
音の少し震えた声がやけに大きく響く。
「音ちゃん、あの…」
「カエデ!その子から離れなさい!悪魔執事だったなんて……」
「お母さん、音ちゃんは…」
また身勝手な大人によって傷つけられた挙句、分断されてしまう。そう判断したナックは音の手を握る。どよどよした空気を切り裂いたのはケンスケだった。
「助けてもらったんだ!そん人たちに!……恩を仇で返すのか?じじとばばたちは」
「なにを…」
「カエデのかーちゃんもだ!カエデやおれ、ヘイタに怪我ないのはあそこで蹲って怪我してる人が庇ってくれたからだ。それで厄介モン扱いすんのか?」
「ケンちゃん………カエデ、ヘイタくん。本当なの?」
「音が帰るって言うから帰ってきたら天使がいたんだよ」
「音ちゃんが悪魔執事の力を強くして、そしたらあっという間に倒しちゃってた」
子どもというのは素直で、時に残酷になる。しかし素直な故、発言に虚偽がなく力を持つ。得体のしれないものではあるけども、助けてもらったという事実を大人も再確認し、纏う雰囲気が変わるのをナックは感じた。エスポワールの民とはまた違う。
「音ちゃん、悪かった…ヘイタ、お前も謝れ!騙したのかなんて酷いこと言っただろ」
「わ、悪かった……泣くなよ、ちび!」
「何がちびだ馬鹿ヘイタ!恩人に向かってなんて口の聞き方だい!……先程はうちのバカ息子が申し訳ありません」
「私も……すみませんでした、知らないのに」
カエデの母親もしおらしく謝ってきた。得体のしれないものに恐怖する心理を責めるつもりはない。ナックとルカスがうまく自分たちのことを交えつつ、気にしてないと話すと何度も何度も頭を下げながらカエデとヘイタたちは帰って行った。
「音ちゃん」
「ケンスケくん」
「それに、皆さんも……気ぃ悪くしたらすみません。じじもばばも悪気はないんです……ヘイタも。ごめんな、音ちゃん」
「……いいよ!」
子どもというのはこれで遺恨がキレイになくなるのだから、凄いとナックは目を見張らずにはいられない。
「ふふ、それにしても……大人に向かって発言するケンスケくんはカッコよかったねえ…!私達のことまで庇ってくれて嬉しかったよ、ありがとうケンスケくん」
ルカスがそう褒めると耳まで真っ赤にしたケンスケは『別にあんたたちのためにやったんじゃなくて音ちゃんの名誉のためにやったんだ』と変な動きをしながら言い訳して帰って行った。
「ふふ、照れ屋さんだねえ……主様、部屋に帰りましょうか」
「や!ラト怪我してる」
「ラトくんはミヤジが治療したし…バスティンくんも手当済みですよ」
「むう」
「主様が帰ってきてくださって助かりました、フガヤマの人に怪我人もなく…町や宿に損害がないのも主様の迅速な行動のおかげです!流石主様…!」
ナックが心の底からそう褒めるとようやく音も笑顔になった。ヘイタも親の刷り込みによる意見だし、ヘイタの親も子を守るための価値観だ。誰も悪くはないものの矛先が小さな主に向けられるのはどうしても胸が痛む。
「ナック、だっこ」
「はい、もちろん」
「ナックいいこ」
「え゜」
「ルカシュもいいこ」
「ふふふ、やった!主様に褒めてもらえるなんて」
ナックは喜びのあまり固まってしまったが、音は軽傷を負ったラトも含めいつも自分がしてもらうように執事全員の頭を撫でて、ケンスケたちと立ち寄っていた駄菓子屋さんで買ってきた駄菓子を配りつつ褒め回した。自分がショックを受けたということは、怖い存在だと誤解されてた執事も慣れていますと話しているとはいえ、傷ついているだろうと考えたのだ。
「ナックも寝るの」
「し、しかし」
「ルカシュ〜」
「おやおや、ナックくん……主様が寂しそうだよ」
ずる賢くなったものだ。誰を頼れば誰が動くかをしっかり見極めるようになった音に勝てるはずもなく、ナックは渋々並べられた布団に入る。ルカスとナックの手を握った音は満足気に目を閉じる。
「ぅぐ」
苦しいし暑い。なんだ?と目線を上に上げるとルカスが自分をぬいぐるみのように抱きしめている。抜け出せそうにもないため諦めて寝返りを打つとナックが珍しく寝ているのが視界に入る。ナックの手を握るとぐいぐいと凄い力で引っ張られ、あっという間にルカスの腕の中から抜ける。
「じっとしろ、寝れねえだろ」
「?!な、ナック…?」
本当にあのナックか?と見上げようとするも頭の上に顎が置かれて動けないようにされている。はあとため息が聞こえたかと思いきや「ガキは寝ろ」と言われて音はナックが知らない人に思えて怖くてどんどん目が冴える。
「……チっ、寒いのか?……おい」
「さむくない」
「震えてんじゃねえか……めんどくせえな」
それはいつものナックと打って変わりすぎているから、とは言えない音はナックの胸元にくっつく。本当は引き剥がしたいが泣かれたら面倒だと寝起きのナックはひとまずそのまま同じように目を瞑る……次の日、自分を見てわんわん泣き出す音に平謝りすることになるとは知らずに。
(ナッ、ナックが、ナックがあ〜っ!!!)
(あらら……主様、ごめんね?私も説明しておけばよかったよね……ナックくんは寝起きがちょっと……人が変わったようになっちゃうんだよ)
(主様、大変申し訳ありません………)
(ナックくんも、ほらほら。そんな泣きそうな顔しないで?主様のこと抱きしめて寝てたんだし)
(ルカス様、主様〜………何事です?)
(ラムリくん……ナックくんの寝起きの姿を夜中に主様が目撃したみたいでね)
(あ〜………主様、よいしょ…失礼しますね。よーしよし、睨みつけてくるし舌打ちするし口は悪いし怖かったですよねえ)
(ゔ……っ)
(大丈夫ですよ、一応同じナックなので。主様にはどんなに寝ぼけてても手を上げたりしませんよ〜、少しワイルドなナックだと思えば!あと起こさなければいいんですよ)
(ラ、ラムリくん……それフォローなのかな…?)
(フォローです!ナックももう仕方ないんだから落ち込まないで主様元気にしてよね)
(なんと非礼をお詫びすればいいか……)
(はいはい、へにょへにょしてないでまず朝ごはん用意して)
(ただいまお持ちします!!)
(めんどくせえなって…ゔぅ〜)
(あ〜主様、泣かない泣かない!しっかり起きたナックのあのへにょへにょより、寝ぼけたナックの言うこと信じるんですか?全員に対してああなっちゃうから主様が面倒なんじゃなくて、ナックが面倒なんですよ!)
(うぅ……)
(ふふふ、今日はボクと一緒に眠るんですからそんなに泣かないで?)
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