ふゆ・ちび主
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はじめてのサンタ
AM6:00──
寝起きの悪いルカス、ナック、ボスキでさえルームメイトに頼んで起きてきた。今日は……主様の初めてのクリスマスだ。夜明け、起きるとツリーの下にはサンタからプレゼント。子供の頃少なくとも絵本で見たり、実際に体験してきた執事たちはどうしても初めてサンタからプレゼントをもらう音の様子を見届けたかった。
もはやリクエストのあったくまのぬいぐるみ以外にも1人1個ずつ贈り物があるので、包み紙が大量にある。皆サンタのラッピングとは差別化を図り、あえておとなしいラッピング包装にした。
7時になり、ベリアンが起こしに行く。今日はいつもより早く起きるんじゃないか?と皆で予想しながら隠れて覗いていると寝ぼけてふにゃふにゃのまだパジャマにカーディガンを羽織った音が歩いてくる。先にプレゼントを開けさせようという魂胆だ。
「……??!?」
音の目が見開かれ、綺麗な2度見。そして硬直。思った倍以上のプレゼントの多さにびっくりしたようだ。
「お、多くない…??」
「いえいえ、サンタさんからも私達からも1つずつしかございませんよ」
計14個だから多いのだが、今までの年数分サンタさんが来なかった分も含めればむしろ足りないくらいだろう。1番装飾がキラキラしてるのがサンタさんですよ、とベリアンが指し示す。気が利くナックはサンタより、の付箋も貼ることを忘れておらずサンタさんだ!と音の表情は一気に輝く。
「ベリアンはサンタさんと会えなかったの?」
「ええ、残念ながら……起きたらすでに置いてありました。そのあとに私たちの分もぽつぽつ置いていったんですよ」
「そぉなんだ〜…ラトも起きなかったのかなぁ……ナックは?サンタさん、凄いね」
このあたりの会話で悶え始めたロノとバスティンにハウレスが落ち着け、と声をかける。まだ開けてもいないのだ。まだ堪えろ、と小声で励まし?ていると、包装を綺麗に開けた音の声が一気に弾む。
「…!ベリアン、取ってぇ」
「ふふ、はい」
「おぉ……!くまちゃんだー!」
きらきら、わくわく。そんな効果音がぴったりの声の弾みように何人かの執事は目頭が熱くなる。
「良かったですね、主様」
「うんっ!サンタさんありがとーっ!」
ぬいぐるみとベリアンをぎゅう、と抱きしめてぴょんぴょん跳ねる音にベリアンも笑みをこぼす。ここまで喜んでくれて、緻密に計画した甲斐があったというものだ。その後、たまたま起きてきましたと言わんばかりに執事が大集合しこれは自分から、とプレゼントを直接手渡しになった。
あるものはチクチクしない猫の耳の形になったフード付きのマフラー、あるものは手袋、あるものは学習帳とペン、あるものは髪留め……両手に持ちきれないくらい一気に渡されて音は喜びを隠せない。誕生日だって好きなもの、欲しいといったものを素直に買ってもらえたことがないのだ。下位互換のような、そういうもの。貰えないよりマシだ、と思い込んでいた音に「自分のことを考えて買ってくれたこと」の喜びの気持ちが芽生える。
「これくまきちにつける」
「も、もう名前が…?!」
「女の子かと思ってた、くまきち」
「みんなありがとぉ!音うれし!めちゃうれし!!」
「ふふ……では包装紙は片付けておくので、主様。お着替えしてきてください。皆で朝ごはん食べましょう」
「ルカス様は泣きやみました?」
「ラムリくん……泣いてないよ」
「無理がありますよ、ルカスさん……」
「フルーレ、これつけて〜」
フルーレが贈った髪留めだ。黒い前髪によく映える黄色の髪留めで、ひまわりのような音の笑顔を思い浮かべながらフルーレがビーズと刺繍で作り上げたお手製のもの。
「ばっちりです、主様!やっぱり黄色が似合う」
「ふふん」
「くまきち連れて行くんですか?」
「うん、ルカシュがくれたクリーム入れたよ」
唇にも手にも使えるチューブタイプの保湿クリーム。フルーレの言いつけどおり塗っているものの、慣れない土地の乾燥に肌がまだ対応しきれてないのか乾燥やひび割れに悩む音のために保湿特化のクリームをプレゼントとした。この世界にスマホなどがあれば指紋で画面がベタベタになるくらいの保湿効果だ。くまきちの背中に入れてあるとくまきちを捧げた音はご機嫌でスキップしてる。
「おはようございます、主様!ちょっと昨日の残りがあるんですけど……」
「おべんとにできるね」
「お弁当?どこか行くんですか?」
そんな予定聞いてたか?とロノはフルーレを見やるがフルーレもベリアンももちろん知らないので首を横に振る。
「雪見ながら食べる」
「花見ならぬ雪見……!ほんっと雪好きですねえ、主様」
「きらきらしててきれいだしふわふわで美味しいからね」
………美味しい???
最後の一言に全員引っかかり、積もった雪を食べるなという注意のちルールが課された。
「音の国は氷食べるもん!夏に食べるよ」
「氷削るやつですか?あれは綺麗な氷だからいいんですよ、主様」
「そうだ、外に降った雪を食べたら主様のお腹が悪くなる」
バスティンにも咎められ、音は雪を食べませんと宣誓する他なかった。大好きなコーンスープと、温め直したマッシュポテト、それにビーフシチューをかけ、音の好きなライ麦パン、小ぶりのチキンを添える。
「パセリほしー」
「主様まで…?!そんな美味いかなぁ、パセリ……」
ロノは震えた。このままパセリにハマってパセリしか食べなくなったらどうしようと。現に1人そういう執事がいるのだ。最近は音と同じご飯を食べたい、とスープにパセリを入れる、などの方法で食べてはいるものの……。
「にがにががなくなる」
「ふふ、たくさん食べて主様は良い子ですねえ」
「ラトも少しは主様見習って他のもの食べてみなよ…」
「お芋美味しいよ……なんだっけ…むっしゅ?」
「ふふ、惜しいね。マッシュポテトだ」
ポテトフライは食べない。がポトフのじゃがいもは食べる。ポテトチップスも食べないが、グラタンやコロッケは食べる。そして単体だと牛乳も飲まないがマッシュポテトにすれば食べる。音は一手間加えられれば別物だと認識して食べることができるのだ。
「じゃあ挑戦しようかな…私もいっぱいパセリ入れます」
「音が今度ロノのパセリの混ぜ混ぜソース作ってあげる」
「混ぜ混ぜソース?」
「スパゲッティに混ぜるやつ」
それはバジルのソースかもしれない……とロノは勘付いたが突っ込むのをやめた。バジルソースと同じようにパセリもソースにすれば例えば野菜ディップやステーキ、もしかしたらパスタも食べてくれるようになるかもしれない。だとすれば大きな進歩だ。
「ふむ……主様が作ってくださるなら」
─────────────────────────────────
「ベリアン、お疲れ様……ようやく一大イベントが終わったね」
「ルカスさん!……ふふ、あんなに喜んでもらえて…自分の事のように嬉しかったです」
「ロノくんもバスティンくんも……うっかり言っちゃうかなと思ってたけど最後まで貫き通したね」
「えぇ……あの二人…っふふ、毎日寝る前に『言わない、言わない、言わない…』って呟きながら寝てたんですよ」
「えぇ?そうなの?!……いやでも、こっちもラムリくんがプレゼントがあるってことを言いたい気持ちとサプライズで驚かせたい気持ちで葛藤していたよ」
1階も3階も阿鼻叫喚で、挟まれた2階メンバーは少し不眠気味になっていたとか。
「無事に終わって何よりです…あれから片時もくまきちを手放さない主様を見ていると、計画して良かったと心から思います」
「本当にそうだね……誕生日はどうしようか」
「誕生日も皆で盛大にお祝いしましょうね」
ワインを片手にお互いを労っていた時だった。廊下からたどたどしい足音が聞こえ、それが音の足音だと気づいた二人は顔を見合わせる。起きてしまったのだろうか?そっとドアをあけ、廊下を見やるとくまきちを連れた音がトイレとは別方向に歩いていくのが見えた。
「どこかの執事の部屋に行くんでしょうか…?」
「うーん……3階にはラムリくんはいるけど……2階のメンバーも今出払ってるんじゃないかなぁ…」
プレイルームで酒を呑みながら4人で過ごしていることを知っているルカスはベリアンに答える。寝ぼけているのか?と気になり、こっそりあとを着いていくとツリーの下に座り込んだ。そのまま動かない様子にベリアンが声をかけに行く。
「主様、主様……どうされました?風邪を引いてしまいますよ」
「……サンタさん見えないかなぁって…」
半分寝ている音の頭を撫でながら、来年また来てくれますよとベリアンは返す。プレゼントを強請る気はなさそうだが、きっとひと目見てみたいのだろう。もしくはお礼が言いたいのかもしれない。
「うん……」
「寝ちゃったかな…?主様、私達が側にいるから部屋で寝ましょう?」
ルカスがそう声をかけ、小さな頷きが返ってくる。朝からよくはしゃいで今日も駆け回ってたいたから体力の限界なのだろう。
「おやすみなさい、主様…‥いい夢を」
「おやすぃ…」
(ふふ、寝付きの早さが赤ちゃんみたいだね)
(確かに主様の入眠の速さは凄いですね)
(しっかり日中にエネルギーを発散できてるってことだよね……良かった良かった)
(そういえば、ミヤジさんが前に麓の街のスクールに通うかどうか迷っていらして)
(スクールに……?あぁ……う〜ん……難しい問題だね…お酒を飲んでないときにまた考えようか)
(そうですね……あ、ムーちゃん)
(主様寝ちゃいましたかぁ…?)
(ふふ、ええたった今…まだ間に合いますよ)
(くまきちにはまだこの役目は譲りませんからね!…ルカスさんもベリアンさんもおやすみなさい)
(うん、ムーちゃんもおやすみ)
