拾われたさきに・逆トリ・男主
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
拉致
*ミョウジナマエ
有給を取得して、労基からパワハラと暴行が認められて、上司は居なくなった。今月末での退職を許可されたから有給をギリギリまで使って引き伸ばしてそのまま辞めることに。長いことお世話になってた会社ではあるけど、あっけない。
雑渡さんに告げたらよかったね、とニコニコ喜んでくれた。
雑渡昆奈門さん。漢字を教えてもらい、雑渡さんの時代の文字も教えてもらった。筆ペンでスラスラ書かれた文字は教科書に出てくるタイプの文字で、本当にパッと見じゃ読めない。
雑渡さんからしたら、オレらの文字がそうらしい。パッと見じゃほとんど読めないと。
「雑渡さん」
「……」
熱い。最近寒くなったからか、抱き枕とされていてがっちり抱きしめられている。もうそれはいいとして、筋肉のせいかものすごい暑い。どんだけ発熱してるんだと問いただしたくなる。筋肉って発熱するのか?
「……眠れない?」
違くて。ぽんぽん、と背中を叩かれる。そうじゃなくて、暑いんです。平熱もオレより高そうな雑渡さんは冬になっても薄着な方だ。オレはもうニットにマフラーに靴下に…と着込まないと寒くて寒くて耐えられない。
「あつ……」
もう諦めるしかない。目を瞑る。
─────────────────────────────────
急激な痛みに飛び起きる。はぁ、と吐いた息は真っ白。雪…?!すごい、見たことないくらい積もってる……!のはいいけど、夢にしてはリアルに寒い。パジャマでもこもこの靴下しか履いてないから、足先が濡れてしまってとにかく寒い。横になってたからか右側にも雪がついてて払う。指先が真っ赤だ……。刺すような痛みに蹲る。
見渡す限り平野で、凌げそうな場所なんかない。森じゃないからどこか建物につくかもしれない。とりあえず歩き出す。
歩き始めて体感は10分くらい、踏み出すたびに足先に激痛が走る。やばい、凍死しちゃう……もう歩けない。
「寒い……ねむい……雑渡さん…」
一緒に寝ていた雑渡さんはどこ行っちゃったんだろう?あの人は筋肉発熱があるから平気だといいけど。雪山で遭難したとき寝たらだめっていうのはこういう意味か。たしかにこのまま死んじゃうんだろうな、寒くて動けないのに眠くて仕方ない。冬眠に入るような感覚で目を瞑る。
「ぅ……っけほ!」
「あ、起きました?…っちょちょっと、まだ無理して起きちゃだめですよ!」
「……?」
「まずはお水を飲みましょう、すこし口開けてくださいね」
誰…?これまたイケメンな子だ。言われたとおり口を開けると急須みたいな容器からぬるめの水が流れてくる。
「………だれ…?」
「ちょっと待ってくださいね、熱測りますからね……ちょっと高いなあ……僕は善法寺伊作といいます。」
ぜん、ぜんぽうじ…?寺の息子か?と聞きたくなる名字だ。かっこいい名前だなぁ。
「ぜんぽうじ…?」
「はい、善法寺伊作です……熱が上がってしまうので寝ましょうか」
「……ここはどこですか?」
「ここは……」
聞いたくせに横になった途端また眠気が増して、全然聞き取れなかった。落ちてくる瞼に抗えず、そのまま眠る。さっきと違って部屋が暖かい。ぜんぽうじくんが助けてくれたのかな……?夢じゃなかったってこと?
次に起きたときはぐわんぐわんした頭がすこしスッキリしていた。節々が痛い……絶対に熱出てる。そりゃそうか、雪の中にいたんだもんな……嫌だな…節々の痛みで風邪を自覚するの。
「起きましたか?」
「おき、ました…」
「雪の中薄着で倒れていたんですよ……戦から逃げてきたのですか?」
戦…?
「……さぁ…?」
首を傾げるしかない。足には包帯がぐるっぐる巻きだ。視線をやったせいかぜんぽうじくんが説明してくれる。
「あぁ、大丈夫です!壊死せずにすみましたよ」
「……いろいろ、ありがとうございます」
「いえ!怪我人を助けるのが僕の使命ですから!……完治ではないので無理は禁物ですよ。
そういえば……貴方のお名前は?」
「ミョウジナマエ、です」
「ミョウジナマエさん………不思議な響きの名前ですね。あの近くの村の方……ではないですよね。お召し物が見たことないものでした」
「そ、うですね…?」
村?と首を傾げる。
「善法寺伊作先輩、しつれいしまぁす」
間延びした声が聞こえて振り返る。メガネをかけた可愛い子供と、茶色い髪の毛の子供が入ってくる。
「あ、怪我人の方!起きたんですね」
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
マイペースだな、この子たち…。
「乱太郎、どうかしたかい?」
「学園長が、この方が起きたらすぐに連れてきてほしいって言ってました……でも、歩けないですよね」
「僕がおぶっていこう」
「わわわ、だめですよぉ!また怪我しちゃったらどうするんですか!」
おんぶが苦手なのかな?隣のぜんぽうじくんを見るとトホホ、としょんぼりしてる様子。
「どうした、伊作」
「あ!七松小平太先輩!こんにちは!」
ものすごい情報量で名前だけ流れてくる。少し尖ったような目でこっちを見てきたので、会釈だけしておく……この目線、どこかで覚えが。らんたろう、と呼ばれていた子供が訳を話すとななまつくんは高笑いしだす。
「なんだそんなことか!では行くぞ!」
「うわっ!?!何、何!?」
「いけいけどんどーーーん!!!」
「うわあぁああっ!??!!」
すごい速さと浮遊感に心の底からの悲鳴が出る。振り落とされないように申し訳ないけどななまつくんに抱きつく形でしがみつくしかない。走るぞとかそういう声かけはしてほしかったな…!??!
平面の道を歩いてる(爆走)はずなのにジェットコースターに乗っていたのか?と勘違いするくらいには上下左右に揺れたせいでぐったりしてしまった。怪我がなくてもすぐには立てないレベルだ。
「学園長!七松小平太です!」
「おや?保健委員に頼んだのじゃが……まあいい、入ってくれ」
「失礼します!」
スパン!ともう少し優しく開けたらどう?という力加減で障子を開けたななまつくんに習って目線をやると、忍者。雑渡さんと同じ感じの衣装。でも色が違う……世間一般にイメージする忍者の色、黒色だ。目つきが厳しい人と、少し不安そうにこちらを見ている2人と、殊更目が鋭いおじさん……学園長って人だろう。
立てないので下ろしてもらい、這いずるように部屋に入る。
普通に指先めちゃくちゃ痛い。正座も厳しいけど、皆正座してるからなんとか座る。
「目が覚めたようで何よりじゃ、聞いたと思うが保健委員長の善法寺伊作くんが雪道で倒れていた君を担ぎ込んできた……して、衣服の違いからこの付近の村の者ではないと判断してな。治療に当たって体は調べさせてもらった。」
「……!?!」
体は調べさせてもらった…?!な、にそれ。勝手に触ったってこと?
「どこぞのスパイでもないようだし…記憶があるなら名乗ってくれんか?」
「……ミョウジナマエです。歳は29、東京都で会社員で…」
「とうきょうと?」
「はい、東京都。私の国の都市です」
ピリ、とした威圧的な空気が強まる。下手に雑渡さんの話はあまり聞いてない。どこまで聞いていいか分からなかったから。忍んで裏でいろいろやる忍者がたくさんいるということだけはしってる。雑渡さんと同じ世界の、同じ時代かもわからないし忍者がそもそもいっぱいいるということは戦国時代に繋がる……治安もへったくれもない。ここの人たちが雑渡さんと敵対勢力なら名前を出すだけでオレが殺されてしまうだろう。
「あの、えと……」
「なんじゃ?」
「忍者……ですか?」
「あぁ、そうだ」
一際厳しい顔つきの人が答えてくれる。半信半疑どころか、9割くらい疑ってますって顔してる。まあ……オレも最初の数週間は雑渡さんに対してそうだったから仕方ない。
「……忍者は、オレの国の歴史では500年くらい前の時代にいた、過去のものです。
さっき、助けてくれたときに声をかけてくれたぜんぽうじ……いさく?くんの名前からしても、言葉を選ばずに言うと古い時代の名前の人、です」
「500年じゃと?ほう、これはまた……」
学園長と呼ばれた人だけが楽しそうに笑ってる。対してオレは、指先の痛みが酷くなってきて集中できなくなってきた。ズキズキと痛む。
「学園長、お待ちください……顔色が悪い、休ませたほうが…」
「七松小平太に運ばれたらぶり返してもおかしくはないな……立てるか?」
首を横に振る。座ってるのに目眩がする。どこに力を入れればいいかも分からずに手をつくも、手にすらうまく力が入らない。
「お、っと……吐き気はないか?」
目を開けられないけど頷く。指先が痛い。そのまま不安そうにこっちを見ていた人に運ばれた。
*土井半助
くたり、と気を失ってしまった。ミョウジナマエ……と名乗った華奢な人。同じ男だというのに、下手したら4年生の方が逞しいんじゃないか?というくらい細い。伊作が慌てて私と山田先生の部屋に飛び込んできたときはどうしたものかと焦った。
『先生、先生っ!!!』
『どうした、伊作。走るとまた転ぶぞ』
『あの、雪道で倒れてた方を手当しようと思ってるんですが、手足の凍傷が酷いのと…見慣れない服を着ていて……っ先生のどちらか、一緒に確認してもらえないでしょうか?!』
『雪道で?この真冬に?』
『はい、薄着で……僕が気づいて駆け寄ったときにはもう、意識無くて……もしかしたら……』
だめかもしれない。そう言いたげな伊作の頭を撫でた。困ってる、怪我をしてる人がいれば身分立場無く手当をする彼がそこまで言い淀むとは、かなり酷く一刻を争う状況なんだろう。結果、私も山田先生もつきっきりで下級生の代わりに伊作と手当を続けた。
「……熱が高い、ぶり返したか?」
「先生……あ、ミョウジさん、どうしました?」
「指先が傷むのに正座して話しこんだせいで気分が悪くなってしまったようで……熱も高い」
「そうですか……後日にすればよかったかな…」
「伊作、落ち込むのはあとだ。……もしかしたら、この人は特段体が弱いのかもしれない……伊作と比べてご覧。手足も細いしくの一みたいだろう?」
「確かに……お名前以外は何か分かったんですか?」
「不確定事項だからなんとも言えん、いまから山田先生たちと話してくる……ミョウジさんを頼んだ」
*ミョウジナマエ
あのあと目が覚めたら、やたらと体がスッキリしてるなと思った。そしたらぜんぽうじくんが半泣きで更に5日間ほど寝込んでいたと教えてくれた。温かいタオルで体を吹いてくれたり、頭皮を洗ってくれたり、色々手間をかけさせてしまったみたいで申し訳無さが募る。
指はその間に治ってきていて、あとは軟膏を塗り続ければいいとのこと。久しぶりに立ち上がるため、肩を借りて立ち上がると体がものすごいふらつく。元からない筋力が更に落ちたみたいで、つかまり立ちしてる赤ちゃんみたいな……恥ずかしい光景だった。
「う、あ…ぶな……ごめんね、肩」
「全然平気です!歩けそうですか?結構寝込んでいたから、ゆっくりですよ」
「……ふふ、赤ちゃんみたい」
「ではこうしましょうか」
本当につかまり立ちのごとく、両手を繋がれて誘導されている。数分そうしていると歩く感覚が戻ってくる。ていうかいつの間にか和装に……。まあ治療してもらったからもう裸がどうこう言ってる場合じゃない……のか。
小袖、というものと半纏、さらに足袋のようなものを履いて食堂へおかゆをもらいに行こう!と声をかけられる。
「え、いや、あの……オレ、あんまりウロウロしないほうが…」
「?あぁ、異世界から来たんですよね?大丈夫です、のちほど土井先生たちから話があると思いますが…今は先に!栄養を取りましょう!」
「い、いいの?……わ、雪!すごいね」
「雪で倒れてたのによくはしゃげますね……」
「ゔ……それもそうか…」
イメージ通りの食堂に入ると、ふくよかな寮母さんのような人と目が合う。にっこり笑ってくれて安心した。
「こ、こんにちは」
「こんにちは、土井先生たちが話してた子だね?AとB、どっちにする?」
文字が読めないせいで指さされたメニューが分からないけどとりあえずAで、と答える。梅干しとおかゆと、かぶの漬物。それにお茶。美味しそう…‥。
「お残しは許しまへんで!」
「いただきます!」
ちょっとぽかんとしてたけどまたニコニコ顔に戻ってた。
「良かった、食欲ありそうで」
「ふふ、おかゆ大好き」
「えぇ?!珍しいですね」
「そうかな…?梅干しも大好き」
「そしたら僕の梅干しもどうぞ!少しでも食べれれば元気になりますからね」
「わ、ありがとう…何日も診ていてくれたんだ?手間をかけさせてしまって申し訳ない……ここは学校?なの?」
「いいえ、保健委員として当然です!ええ、ここは忍術学園です」
忍術学園……?!?え、忍者って専門校あるの?!すごいな……じゃあ、ぜんぽうじくんも忍者の専門生ってことか。
「あ、善法寺伊作先輩!」
「寝込んでたひと!」
あ、この間一瞬だけ見た二人だ。
「伏木蔵、失礼だよ…ミョウジナマエさんだ」
「ミョウジナマエさん……ナマエさん、元気になりました?」
「あともう少しってところかな、君もこんにちは」
「こんにちは!僕は猪名寺乱太郎です!」
なんでみんな揃いも揃って名字がそんなにカッコイイんだ??昔はこれが普通なの?
雑渡さんに多少字を教わったのはあるけどまだまだ……多分幼稚園児くらいのぎりぎり解読できないレベルだろうから、元気になったら文字の練習からしようかな……ここを出てけとか言われない限りは。
おかゆを食べて、ぜんぽうじくんと寒い廊下を歩きながら見覚えのある障子の前へ。学園長たちがいたところか。
「失礼しま…「ヘムッ!」わぁ!?!」
……犬?…い、いぬ…?二足歩行の犬、らしき生物が出てきて腰を抜かした。
「ふふ、怖がりなの変わらないね」
聞き覚えのある声に部屋の中を見る。
「雑渡さん……!」
「うん、雑渡だよ」
「本物ですか…?こんなに忍者いると信じられない…」
「おや、警戒心が身についてしまった」
「まさか雑渡殿とお知り合いだとは」
「彼は私の恩人でね……伊作くんと同じだ。先に私が彼の世界へお邪魔していたんだ、まさか雪道に埋もれていたとは思わなかったけど…無事で何より」
(ほ、本物だ……!)
(おや、何故急に信じる気に?)
(匂いがしません!無臭!)
(そこ?なんか複雑だなあ)
(伊作くんも座って座って、大まかなココの話をナマエくんに叩き込んだら今後を決めるから)
(叩き込む…?オレ暗記苦手って話しましたよね)
(うん、でもほら。ここでは絶対に必要な知識だから覚えてね)
(鬼……)