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守ってあげる
※津波、地震の話が出てきます。トラウマを抱えている方は読むのをやめるか、自分の心と相談してください。
*ミョウジナマエ
苦しい、息苦しい。真っ暗な中閉じ込められているようだ。足元が冷たくて水が流れてきているのが分かる。身動きも取れないのに酸素も薄く、水。溺死してしまう。ジタバタもがいてもまず可動できる範囲が狭くどうにもならない。
「…ナマエ、ナマエっ!」
「っ!!……は、ぁ…っ…」
「ナマエ、私の目を見て?大丈夫だから」
「ふ、ぅ…ふ……っ」
息が苦しい。走ったあとのように気道が狭くて吸い込んでるのにうまく酸素が取り込めない。
「大丈夫、大丈夫……ゆっくり吸って、もっとゆっくり吐いて……」
昆奈門さんに抱きしめられていると気付いたのは呼吸が戻ってきてからだ。離れようと身動ぐ昆奈門さんにしがみつく。
「やだ、やだ離れないで、昆奈門さん」
「離れないよ……顔を見せて?」
「暗いの嫌だ、昆奈門さん、外出たい」
「外はもっと真っ暗だよ……ろうそくに火を灯そうか。ナマエくんが前に作ってくれた、香りを練り込んでくれたやつに」
香り…?手早くろうそくに火を付けた昆奈門さんの言うとおり、ゆずのような柑橘の香りが広がる。いい匂い……。
「……随分魘されてたけど…嫌な夢でも見た?」
「はい……怖かった…」
昆奈門さんに抱きつく。背中を優しく擦ってくれるだけで気が楽になる。
「オレ、オレが……伊作くんくらいのときは…あの、昆奈門さんが来たときの場所にはまだ住んでなくて」
「うん」
「東北の産まれなので……えと、陸奥国の」
「へえ!君あっちの産まれなんだ……にしては訛りも癖もないね?」
「頑張って直したんです」
昆奈門さんの手がほっぺを包むように置かれる。あったかい……安心する。
「その時、その……過去にも類を見ないくらいの大地震と津波がきて……倒れた家屋に押しつぶされて、閉じ込められてたんです」
「……その時の夢を見たの?」
「はい……玄関付近だったのもあったので津波がくる直前に、近所の……おじさんがぎりぎり助けてくれて…海から決して遠くなかったので」
「そっか……それは怖い思いをしたね」
「……ごめんなさい、夜中に起こして」
「何を言うの、泣かないで?……ナマエくん、生きていてくれてありがとう……大地震と津波が同時にきて被災するなんて私も聞いたことがないよ。怖かっただろう」
思い出しただけで冷や汗をかく記憶が無理やり夢によって想起されて、情緒不安定に泣きじゃくるオレに昆奈門さんはずっと抱きしめて背中を擦ってくれた。
*雑渡昆奈門
もがくように苦しみだしたナマエくんの肩を強く揺すって呼びかけて、眠りから無理やり起こした。起きたあとも暗闇を怖がるし、とにかく情緒が不安定で離れることすら拒む。もしかして父親のこと?と思っていたら、幼い頃の記憶を夢で追体験していたらしい。大地震に津波か………ナマエくんによれば街中の家屋が崩れ、そこに津波が直撃して波が引いたあとは瓦礫と泥と、逃げようとした車のいう乗り物の残骸しか残ってなかったと言うくらいだ。大層大きな津波がすべてを呑み込んで行ったのだろう。ナマエくんも家屋の下敷きになっていたというのだから、あと数秒、数分遅かったら溺れ死んでいたかもしれない。
「……っ、昆奈門さ…」
「いるよ、大丈夫」
うとうとして落ちかけるとナマエくんは嫌がるように私が近くにいるかを確認する。抱きしめて安心すればと思っていたが、私がぎゅうぎゅうと抱き締めれば抱き締めるほど身動きが取れず、記憶の追体験にならないか?と腕を緩めるとナマエくんが泣きそうな顔で抱きしめろと強請るから腕を回す。
「寝ても大丈夫だよ……ここは時盤がしっかりした山の上だからね」
「…はい」
眠くて仕方ない声なのに眠れないなんて可哀想に。酒でも飲ませるか?……いやこれで更に悪夢を見たらもっと心苦しい。
「狭いところ、きらいなんです」
「うん」
「でも……昆奈門さんにぎゅってされるのは、安心する……せまいけど…」
狭いんだ。筋肉のせいかな?
「私も、君を抱きしめると安心するよ」
ふわりと香る君の匂いも、最近伸びてきた髪の匂いも体温も。独り占めできるしここにいるんだと実感できて安心できる。
「……ふ」
「?」
「ふ……くふ…っ」
一人でくつくつ笑ってる。何か面白い夢でも見てるんだろうか?夢と正気の間を行ったり来たりしてるんだろう。寝言みたいなもの?
「ふ…ふふふっ……???…あぇ…?わらってた…?」
「ふは……っ!起きちゃった?」
自分の笑い声で起きたらしいナマエくんが不思議そうに見上げてくるものだからついつい笑ってしまった。寝ぼけてるナマエくんは首を傾げているが、ゆっくりと頭を撫でる。
明け方までこんな調子で、ロクに寝付けなかったナマエくんは初めて大寝坊した。……‥まあ私が起こさなかったんだけど。
「……??!、今何時ですか?!」
「こら、飛び起きないの……君眠れてないんだから」
「こ、…んなもんさ……」
「おはよう……少しは寝れた?」
「はい……あの、すみませんでした…起こしちゃって」
「まぁだそんな事言う。少しは私にわがまま言ってよね」
隈がうっすらできちゃってるけど、顔色はまあまあ。寝てないよりマシな顔色だ。丸くて可愛い額に唇を落として顔を覗き込む。耳が赤い。
「女中たちがおにぎり作ってくれてるよ…大葉味噌で」
「お腹減りますね……着替えて向かいます。今日こそ雑巾がけレース勝つんです」
「ふふ、健闘を祈るよ」
昨年の秋頃から下男も巻き込んでやってる競争。ナマエくんは尊奈門たちからも訓練を受けるようになってほんの少しばかり、体つきが良くなってきた。どうにも筋肉がつきにくい体質らしく痩せながら締まっていってるけれど。体力も私との目合いでひんひん鳴いてることもあってか、若干バテにくくなってきた?と思う。リベンジだ!と燃えるナマエくんに体力増強と言い訳をつけて好きなだけ可愛がれるから万々歳。
「陣左、尊奈門……陣内も呼んできて。話したいことがあるから」
「承知」
ナマエくんがご飯を食べて競争に夢中になってる間に今朝方のことを話す。生まれは陸奥国の南の方であること、今の尊奈門くらいの年齢時に大災害に巻き込まれたこと、その際に閉所にただならぬ恐怖心を覚えてしまったこと。
「大地震に津波……そんなことが…」
「私達もたまに地震や、川の増水なんかで災害はちらほら耳にする程度だけれど……その地その地で人が再起不能になるまでの想いをしてることを忘れてはならないよ…あと、もし。ナマエくんと暗がりに閉じ込められたりしたら、必ず手を繋ぐなりなんなりで側にきちんと人がいることを伝えてあげて。そのあと脱出のことに意識を向ければいい」
「……わ、かりました」
「なぁに、尊奈門。私だって緊急時くらい触るななんて言わず弁えるよ」
じっとりと睨むと考えてることが筒抜けの尊奈門が慌てだす。
「普段あんなに牽制しておいてたら尚更でしょう……暗所は大丈夫なのですか?」
「うーん……昨日は明かりつけたら落ち着いたから…暗所もだめかもしれないね」
「なるほど…覚えておきます」
「頼んだよ、一度慌てるとあの子は立ち直すのが時間かかるから」
*ミョウジナマエ
「………くそ…惨敗……」
「ミョウジさま、寝てないのでしょう?無理をしてはいけません」
雑巾がけレース惨敗のオレに蒼さんがお茶をくれる。美味しいほうじ茶だ。あったかいお茶ってどうしてこんな安心するんだろう。香ばしいいい香りを堪能しているとふわりと昆奈門さんに編んで渡したブランケットがかけられる。
「昆奈門さん」
「休憩中?体を冷やしてはいけないよ」
「休憩というか……なんというか…」
「あらら、その顔じゃあ雑巾がけ競争は芳しくなかったんだ」
「惨敗です」
「ふふ……悔しがっちゃって可愛いね」
「む……」
拗ねないの、と睨むように見上げたオレを優しく撫でてくる昆奈門さんの手に目を瞑る。季節は3月。梅の花は咲きかけてるだけで風は冷たい。日差しは暖かいけど……日陰は寒いくらい。
「……っと……蒼」
「はい…座布団はこちらに」
「……寝たくない…」
「大丈夫だよ、蒼も芳花もいるから。火をくべてくれてるし暖かい。それにここは下忍の訓練してる物音もよく聞こえる……人がたくさんいるから、安心して」
昆奈門さんに頭を撫でられ、体が横になる。ブランケットから昆奈門さんの匂いがして一気に朝から強張ってた心が緩まる。
「いい匂い……」
「ふふ、最高の口説き文句だね…おやすみ、ナマエくん。また起こしに来るよ」
*雑渡昆奈門
上忍たちへの訓練を手早く終わらせてそのままの足でナマエくんの元へ。ちょうど2刻半……仮眠には充分だろう。寒いだろうと私に編んでくれた毛布の代わりにもなるひざ掛けに包まり、丸く小さくなったナマエくんはすうすうと寝息を立てて眠っている。
「雑渡様……1時間ほどは寝たり起きたりでしたけれど、そのあともう一度お茶を飲んでほっとしたのか、深い眠りになりましたわ」
「そっか……魘されたりは?」
「いいえ」
「上出来だね…ありがとう。ナマエくん、ナマエくん」
「ん゛……」
「もう酉の刻だよ、そろそろ起きよう」
肩を優しく揺する。頬を指で擦るとナマエくんの眉が寄せられる。可愛い……身じろいでる。
「ん……ぅ…こんなも…さ…?」
「うん、昆奈門だよ……お待たせ」
とろんとした目と視線を合わせていると頬を擦っていた指にナマエくんがすり寄ってくる。か、かわ………!!!!これを愛いとせず何が愛いなのか???
「ちょっと、可愛いナマエくんを見ないでよね」
「まあ!お言葉ですけど、私は契を交わす相手がいる方を好いて寝取るような趣味はございませんわ!」
蒼め……ほんと減らず口な女子なんだから。気が強くて頼もしいけれど。
「喧嘩…?」
「ううん、違うよ……夕餉どうする?ナマエくん。今日は寝ちゃう?」
「…お粥…食べます…」
うーん、これは食べてる最中に寝るか起きれない可能性が高いな。
「雑渡様はいかがなさいます?ちなみに今日は、ナマエさまが前に考案してくださったセリの混ぜご飯ですわ!あとはさやえんどうの炒めものと、白菜のお漬物と……」
「いただくよ、けど部屋でにしようかな……尊奈門から今朝のことについて夕餉前に話をするようにしてあるから、手間をかけるけど頼むね」
「はい!」
こてん、と寝落ちてしまったナマエくんを抱きかかえて部屋に戻る。そんなに大事そうに私の匂いのするものを抱きしめて……嬉しいけど少し妬けるね。半刻もしないうちに粥と夕餉が届く。ナマエくんは……起きれなそうだけど、匂いで起きるかな?
「……すぅ……すぅ…」
「しっかり寝たね」
「眠れることは良いことですわ!あの……夢の、話なのですが」
「?」
「すみません、夕餉の前にどうしても雑渡様にはお耳に入れてほしくて……私も、村が津波でなくなりました。堤防を大きく超えてきた津波に、生身の人間が巻き込まれてしまえばたちまち抗う術はございませんわ」
「そうだったの……ご愁傷さま。今度花を手向けに行こう」
「ふふ……嬉しいですわ!私は冬の…雪が降る前でしたけれど…やはり、そろそろ雪が降る寒さだと感じたときには夢に見たり、思い出したりします。確かに問われれば辛い記憶ではありますが…その、なんていうか…全てまるごと忘れたとなれば、それはそれで…良いのかと迷うことです。私はあそこですべてを失い、黄昏殿に拾っていただいたからこそ今の命があるので」
「うん」
「きっと……ナマエ様も同じかと思います。自分の要素として成り立つことなので、扱いが難しいですが……」
「そうだね……蒼は閉所が苦手とかないの?」
「お恥ずかしいですが……私は高所が苦手ですわ……特に吊橋のような」
「なるほど」
(…………)
(ナマエくん、どこ行くの?)
(………?あれ…?朝?)
(まだ夜中だよ、こちらへ戻っておいで)
(……昆奈門さん…)
(ふふ、私の匂い好き?)
(すき)
(……私も君の匂い、とても好き)
(ふふふ……ひひ、擽ったい)
(君の柔い頬も好き、餅みたいだ)
(……ふとってるってこと?)
(違う違う、それなら君はもっと肥えたほうがいい)
(???……昆奈門さんも、ここもちもち)
(……そこ、胸だね)
(もちもち)
(…………はぁ〜……私の理性に感謝してよね)
(?)
(はい、寝るよ……ぎゅうってしてあげるから、安心して眠って)
(はい……ふふふ…昆奈門さんのにおい)
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