療養の冬・トリップ・男主
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安静に!
*ミョウジナマエ
………ひま!!!!!
いや、分かってる。寝るしかないってこと。でも座ってるとお尻痛いし、寝てると床ずれするし。定期的に蒼さんたちが体勢を変えに来てくれるけど、暇で暇で仕方ない。
「尊奈門くん、暇だよぉ………手習いもだめ?」
「ミョウジさんは集中すると足を組む癖があるので駄目です」
組めないよ、折れてるんだから。そう言って食い下がっても尊奈門くんは首を縦に振らなかった。くそう……トイレも一人で行けないんだ。介護されてる気分になる。……もうここまでくると看病というより介護か。仕方ないとはいえ恥ずかしいものはある。
這いずるなら動けるのでは?と思い、廊下に出た瞬間鬼の形相の高坂さんが居て心臓止まったかと思った。
「ひぇっ」
「…………何をしているのです」
「運動……違う出るつもりなんかなかったって!」
「安静に!!!と言っているでしょう!!!!!」
雷が落ちたかと思った。屋敷揺れなかった?今。
しょんぼり部屋で落ち込んでいると、上から笑い声がする。
「押都さん……笑い声聞こえてますよ」
「ふ、くくく…すまん、あんなに陣左を怒らせるとは……あっはっは!!」
オレはなんにも面白くないのに。布団をつついていると毛糸とかぎ針が振ってくる。
「尊奈門や女中の小娘たちがやってるのを見かけてな……組頭に何か作ってやったらどうだ?泣いて喜ぶぞ」
「え、やり方なんて知らないんですが」
「じゃあな」
渡して帰っていった……。たしかにいい暇つぶしになるかもしれない。尊奈門くんは確か昆奈門さんとオレに靴下を編んでくれてるらしい。基本の編み方教わるか。
「まあ!ミョウジさまも編み物を?蒼に任せてください!」
「よろしくお願いします……不器用なので覚えられるかどうか…」
「喜べないですけれど、時間はたっぷりありますから…ではまず基本から!こちらに糸を持ち、」
「糸を持ち、」
「針に通します」
「針に通す」
「くるりと回して」
「回して」
「ここに通す…これを繰り返して行くと真っ直ぐな直線となります。10回繰り返してみましょう」
ふむ、なるほど。この直線だけなら簡単だ。次は折り返し、や曲線のときのカーブの付け方、色の違う糸の差し込み方などを教わる。
「何を作られますか?最初はマフラーなども良いですわね」
「………丸いぬいぐるみって作れます?」
「ぬいぐるみ……人形ですか?」
「はい」
「先程のを応用すれば可能かと!」
応用。とりあえず作ってみようかな。昆奈門さんのあみぐるみ。縫っては解いてやり直して3日、手のひらサイズの昆奈門さんのあみぐるみが完成した。顔の部分の包帯の白と衣装の黒のみで顔がないみたくなってるけど……
「か、かわいい…!」
「何それ?」
「ゔぁ!?!」
顔のすぐ横に昆奈門さんの顔があってびっくりした。……また気配なしで来るんだから。
「ちょっと、ナマエくん。なんで隠すの……見せて」
「見せるようなクオリティじゃないんですけど……」
「……お、私?」
「はい、あみぐるみの昆奈門さん」
「……私がいながら、こんな布の私がいいって??」
「あー!取り上げないでくださいよ!!」
立てないから取り返せない。まあ立ち上がっても大きい昆奈門さんの腕には届かないんだけど…。
「いない時に一緒にいるんです」
「じゃあ今は要らないね?」
ぽふ、と机に置かれたあみぐるみの昆奈門さんは寂しそうに斜めになってるけど実物の昆奈門さんの機嫌をとらなくては。
「そんな…編み物に敵意を出さないでくださいよ」
「大事そうに抱えちゃってさ。ふん」
「ふふふ……ちっちゃい昆奈門さんですよ?」
「じゃあ私でいいじゃんっ」
「昆奈門さんは大きすぎて抱えられないですよ……」
いつも抱っこされる側だし。昆奈門さんはいつも足をマッサージしてくれる。右足は膝から下が折れてて、左足は足首。だから腰くらいから太ももを解すように毎日マッサージしてくれてる。そのおかげで、むくみが最低限な気がする。寝る前は座布団を差し込んで足を高くして寝てる。
「昆奈門さん、肩もみくらいしますよ?お返しさせてくださいよ」
「いいの……せめて元気になってからにして」
なんだかオレが怪我してから元気がない。まあ優しい人だから色々思うところはあるんだろう。オレの一個人の意見は、小さい頃から鍛えて覚悟を決めて忍者として生きるすべてを丸ごと否定する意見だ。
『戦争なんてない方がいい』これがオレの気持ち。でもこうやって争う過程があって、オレが生まれた時代の日本が形づくられてるのも理解してる。今は国内で争ってるけど、外と争うようになって痛い目を見てようやく絶対に戦争をしないと総意見として決めたような国だ。
手違いとはいえ、この時代に来てしまったことは後悔してない。怖かったのは事実だけど……背負いすぎてほしくない。
「昆奈門さん」
「ん?」
「ん〜……うまく言えないんですが……あまり抱えすぎないでほしいです」
「………」
「辛そうなので」
「………私が代わってやりたいよ…」
「それ、昆奈門さんが怪我したら同じこと言うでしょうね……ふふ、怪我しても最悪なことにならないくらいには運があるのでそれでよかった、にしましょう」
「……うん……君がボロボロになって横たわるの見たとき心臓が止まるかと思った」
「ですよね……オレも目が開かないの初めてでしたもん」
「……ナマエくん」
「?」
「怖かったでしょ、ごめんね」
「昆奈門さんのおにぎりで手を打ちます」
「ふふ……叶わないな」
少し下がった目元を撫でると昆奈門さんが手にすりすりと擦り寄って来る。猫みたい。
「もう一回さつまいも掘りしたかったな…」
「また来年ね」
「ふふ……そうですね。あ!明日善法寺くんに手紙を書きたいので、尊奈門くんに筆を解禁するように口添えしてもらえませんか?」
「あぁ……そうだね。伊作くんまた心配するだろうね」
「申し訳ないです……茶碗蒸しも作りたかったのに」
「ふふ…治るまでだめ」
だめだよねえ。せめて片足だったら立ち上がることはできるのに両足だとそれも叶わない。
*雑渡昆奈門
ナマエくんの上半身の怪我は問題なく治っていった。近隣の里の医者を複数呼んで薬や軟膏を処方してもらったからか、痣も綺麗に治り傷跡はほぼない。ミミズ腫れのようになって痛々しかったから治って何より。足はひたすら経過観察。
聞けば、ナマエくんの時代になれば『えこー』という技術を使って骨やお腹の中などを白黒にはなるものの見れる技術があるらしい。そういったものを駆使して骨折の場合は骨がくっついたかどうかの確認をするらしい。
こちらでは大体の目安を基にその辺りの日付まで動かさず、腫れや痣の有無を確認しながら動かせるか調整していく。手探りになるものの……無理は厳禁だ。
帰ってきたあの日からナマエくんは魘されて飛び起きることが増えた。あの日の夢を見ているのか、また違うのかは分からないけど……。泣いて震えているので心が痛む。
「っう……」
「ナマエくん」
「っひ…ぐすっ……ぇ…?」
頭を撫でられる感覚で目が覚めたのか不思議そうにこちらを見上げている。寝呆けてるな……このまますぐ眠れるかな。
「昆奈門さん……手つなぐ、」
「うん、繋ごうか…こう?」
腕枕をした私の右手とナマエくんの右手を繋ぐと違う!とむっとした顔で怒られてしまった。指を絡めて満足気な可愛いナマエくんのおでこに唇を落とし、左手も同じように繋いでおく。
「むふ」
「嬉しそうだね」
「はい、昆奈門さんの手あったかいから……晴れてるし…」
わぁ、支離滅裂だ。ナマエくん半分くらい寝てるな?魘されるようになって見れるこの姿は可哀想である反面、可愛らしくてもっと見たくなってしまう。
「晴れてるんだ」
「うん……」
眠そうだ。抱きしめていると簡単に瞼を閉じる。ナマエくん曰く私は相当温かいらしい。夏はたまに嫌がられるが寒がりのナマエくんは基本的に私で暖を取るため、役得だと思ってる。そのまま私も目を瞑り眠る。
「昆奈門さん」
「………ごめん、眠ってた。どうした?」
「……唸り声が聞こえて……狼?熊?」
それはまずいね。怖がるナマエくんの頭をなでて窓の外を伺うと気配はない。熊でも狼でも、里に降りてきたらけが人が出てしまう。
「調べてくるから、おとと」
「やです、行かないで」
「……腹が立つけど…ほら」
腹立たしいから机に放置してたら昆奈門さんを雑に扱うなとナマエくんに怒られて、神棚に飾るみたく飾ってあったあみぐるみを渡す。
「少しだけ待ってて、長引きそうならまた来るから」
……ただの毛糸なのに、ナマエくんに抱きしめられて満足気のように見えてきた。疲れてるのかもしれない。
廊下を歩くと陣内も声を聞いて起きてきたようで合流する。
「……ぐっすり眠ってた、全く気付かなかった…」
「ミョウジさんのことでつきっきりだからな……少し休んでいいんだぞ、私や尊奈門なら無駄な嫉妬もせず済むだろう」
「無駄って……」
悪いけどそうしようかな。いざってときに使い物にならなきゃ意味がない。ナマエくんの様子を聞かれたので、あの腹立たしいあみぐるみと居ると答えると笑われた。
外に出てぐるりと屋敷周辺を見たが獣自体は居らず…しかし1本木に爪痕があった。熊だ、里へ降りてきてる。これは明日里中に話と対策をしなくてはならない。寝ている忍たちを起こして民家へ居ないか確認させ、城内に紛れ込んでいないか確認してナマエくんの様子を見に部屋に戻る。
「ナマエくん」
「昆奈門さん…大丈夫でした?」
「熊が降りてきてるかもって……木に爪研ぎの跡があってね…お手柄だね、ナマエくん」
「うう…嫌すぎます…」
「大丈夫、鍋にしてやろう」
「食べるんですか」
けらけら笑うナマエくんを見て少し安心した。熊の怖さを分かってるナマエくんからしたら相当怖かっただろう。何より今は動けないから。
「今民家の方に行ってないか確認しててね…屋敷の周りにも城内にも居なかったから、明日里中へ報せを出す予定だよ。」
「山に帰ってくれるといいですけど……」
「そうだね、一瞬迷っただけならいいけど……ちょっと、浮気は禁止だよ」
「浮気じゃないですってば」
腹立たしいあみぐるみを取り上げて代わりに抱きしめる。眠いのか体温が高い……陣内からも眠れと言われたし眠ろう。
(大丈夫、眠ろう)
(はい……)
(甘えんぼだ……昔熊に襲われたの?)
(いえ…あの…小さな村で熊が複数の人間を食べたって事件思い出しちゃって)
(わあ、そんな凶暴な熊が?)
(はい)
(そんなに餌がないの?)
(それもオレが生まれる前だったんで、現代よりはあるでしょうけど…今に比べたら全然ないと思います)
(そうなんだ……大丈夫、熊が降りてくることのほうがよっぽど珍しいからね)
(はい)
(40人くらい起こして見回りさせてるし)
(結構たくさん起こされてる…)
(民家に行ったらね…農夫とかならまだしも抗う術を持たない人もいるから)