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冥土の土産
*ミョウジナマエ
連れ去られるまであっという間だった。食材の買出し中、蒼さんたちと少し離れて茶屋のトイレへ。水洗トイレが恋しい、と思いながら扉を開けると男がぬ、と入り込んできた。
あとはもう口元を抑えられて、恐らく薬品で眠らされて起きたら真っ暗なここにいる。
「ぅ……」
風が吹いている。つまり、奥まった建物ではなくて用具室のような場所なのかもしれない。外に出たい……山の中だったら?それでもここにいるよりかは生き延びるチャンスは増えるだろう。
まさか自分が誘拐されるとは、しかも忍者に。タソガレドキと敵勢力のどこかの忍者なんだろう。
昆奈門さんたちは強い。忍術学園に定期手にお邪魔して上級生の訓練の様子を見せてもらったりしてるけど、タソガレドキの皆は大人だからというのも勿論あるんだろうけど全員本当に身のこなしが軽くて目に負えないスピードだ。
強い分、任務によって恨みを買ってもいるんだろう。仕方ない部分ではある。こうしてまた恨みが連鎖していく…時代の流れ的にオレひとりが反対したって変わらないのは知ってる。けれど、だから戦争や争いごとが嫌いなんだ。誰も幸せになんかならない。
悶々と考えていると、いきなり冷水をかけられる。寒い……夜の風が吹いてくるこの状況で水をかけられたら低体温症になって死ぬ。
「目が覚めたか」
「………」
蝋燭がゆらゆら揺れてる。今日はせっかく、茶碗蒸しを作ろうって蒼さんたちと話してたのに。こんな寒くて怖い目に遭うなんて。
「越中国の者だ、お主はタソガレドキ城忍軍組頭の雑渡昆奈門の情か」
なさけ…?どういう意味だ?こういう時日本語の言い回しの多さに頭を抱える。直接言うと下品だから…明け透けだから…と他の言葉が生まれて単語数が多いんだ。無知や教養のなさも露呈してるとは思うけど、知らないものは知らない。
多分、恋人か?って聞かれてる気がする。忍軍の下っ端とか言われてないし。
「分かりません」
素直に答えておこう。知ったかぶりして怒らせたりするほうが良くない。松明が顔の近くにやってくる。顔の確認してる……?写真もないのに顔まで流通するのか?
「目の下の黒子…間違いない。貴様には悪いがここで死んでもらおう……だがその前にタソガレドキ城当主やタソガレドキ忍軍について全て吐いてもらう、全て」
木刀を構えた人たちがぞろぞろと出てきて身を固くする。これから来る痛みに覚悟して目を瞑る。
バキッ!!!!
「ぐぁ……ッ!!!!!」
ひゅーひゅー細い息が漏れる。痛いなんてもんじゃない、死んたほうがマシだとすら思う激痛がかれこれ……2時間位続いてる。
もう足も動かなくて折れてるんだと嫌でも分かる。顔や頭は木刀で殴るともしかしたら即死するかもしれないから、と足や腕で蹴られて殴られて、腫れすぎて目が開かない。
「っげほ……ひゅ……」
「虫の息だな」
「…ひゅ……ぅ……」
こんなんじゃ喋ろうと思ったって喋れないよ。何考えてるのこの人たち。木刀を振り下ろしてくる人の中に数名、「良くも息子を」とか聞こえた。怒りに任せて復讐したい人を集めて、自分は情報聞き出そうって魂胆か。ウィンウィンだもんね、人を殴り続けるのだって疲れるだろうし。
でも怒りに身を任せる人ばかりのせいでもう口が回らない。本末転倒だろ、これ。
「話せばせめて楽にしてやる」
「はな、す…?」
「あぁ」
少し声色が優しくなった。何か有利になることを話すと思ってるんだろう……馬鹿だな。
「雑渡さんは……生姜のたきこみご飯がすき」
「……は?」
「肉だと唐揚げ、魚だと焼き鮭がすき……野菜はじゃがいもが好きで、味噌は赤味噌派」
「……ふざけてるのか…?!」
「……ふざけてなどいない、オレの知る雑渡さんだ……任務にかかわることは触れてない。何も知らない、お前が欲しいことなど……ふ、何も」
言い終わる前に顔を殴られる。体が浮いた。地面にいた人を殴るのに浮かせるってどんだけ怪力なんだ。もう左側の歯とか全部ないかもしれない。やだなぁ、死に顔がこんな不細工なの。いくら何でも可愛いって言う若い女の子みたいな雑渡さんでも、さすがに可愛いとは言えぬ見た目だろう。
「もういい、晒し首にしてやる…刀を用意しろ」
髪の毛を掴まれて起こされ足が折れてるのに無理矢理座らされる。痛くてがくがく震える体を無理矢理抑えつけられる。見えないからいつ死ぬのかもわからない。
刀かぁ……スパって斬られたら痛くないらしいけどどうなんだろう。そこは侍の仁義を持って楽にしてくれるのかな。敵国って言ってたし苦しめってなるのかな……?
それでもあんまり怖くないのは昆奈門さんがくれた思い出たちがたくさんあるからだろう。一人じゃないってこんなに心強いんだな。
「おい、刀は!!!!」
「ここだよ」
「!」
「私のに許可なく触れるな」
昆奈門さんの声だ。幻聴?目が開かないからなんにも見えない。抑えつけられてた体から手を離されて地面に横になる。寒い……。
「ミョウジさん!……足が……!」
「だれ…?尊奈門くん…?」
「っ…はい、尊奈門です……ナマエさん、間に合って何より……足が折れてるので、添え木で固定します。一瞬痛むので私の手を噛んで耐えてください」
嫌だと言う前に口に手が差し込まれ、両足に痛みが走る。
「っっ〜〜〜!!!ゔぅぅぅ゛…っ!」
「息を。吸って、吐いて……体を起こします、感覚のない場所他にはありますか?」
痛かったろうに、ごめんねを言う暇もない。首を横に振ると体が浮く。
「よく頑張った…タソガレドキに戻るぞ、ミョウジさん」
山本さんの声がする。頷いて返すのに精いっぱいだ。
*雑渡昆奈門
「は?」
「ミョウジさんがいません!」
「茶屋にいたのに…っ!気配を探ったけどどこにもおらず」
泣きじゃくる小娘たちをどかして茶屋を見下ろす。…攫われた。直感的にそう思った。
「長烈!」
「調べてる…怪しいのは越中国の侍たちだ、最近周りの国を彷徨いてる」
「越中国………陣内行くぞ、お前たちも泣いてないですべきことをしろ。医者を呼んで薬とタオル、包帯などありったけ準備」
「「はい!」」
恨みを買うとは分かってる。何人も手にかけてきた。それも黄昏甚兵衛殿のため。だけど当主に手を出されるのと同じくらい、ナマエくんに手出ししたのは許せない。
長烈の確定情報を待って、越中国の忍が街をうろついていたと証言があった。町娘や商人に変装もせず里をうろつくなど、タソガレドキも舐められたものだ。
門番のいる裏手から忍び込み、道中のやつらは眠らせていく。……居た。体が止まる。……あの横たわってるのがナマエくん?足はあらぬ方向へ曲がり、手も打撲痕まみれ、そこらの地面は血を吐いた跡もある。顔は殴られたのか腫れ、目も開いてない。
「組頭、殺気を抑えろ」
「………………一人も逃すな」
そう返すので精いっぱいだった。侍が座り込み、ナマエくんの髪を掴んで揺さぶっている。彼は何も知らない。答えようがない。
「雑渡さんは……生姜のたきこみご飯がすき」
聞こえてきた細い声に胸が締め付けられる。
「……は?」
「肉だと唐揚げ、魚だと焼き鮭がすき……野菜はじゃがいもが好きで、味噌は赤味噌派」
「筒抜けだな」
「そうだね……動こう。長烈頼んだよ」
木刀を持った侍たちを縛り上げてナマエくんを誘拐するように仕組んだ主犯格の前に立ちはだかる。尊奈門が泣きかけでナマエくんに話しかけているのは聞こえた。
「よくも私のに手を出してくれたな、忍軍でもなく侍でもない子をいたぶるのは楽しかったかい?」
「………雑渡昆奈門、貴様も落ちぶれたものだな。女に見向きもされず男に縋るとは」
「……質問に答えろ、義理人情が得意の侍が!大勢で!里の人間を虫の息にして、恥ずかしくないのかと問うてるんだ…!」
「昆……抑えろ」
「私の前に正面きって来れやしないくせに非力な里のものを攫って大勢でリンチなど姑息な真似をして……侍より忍のほうが向いてるんじゃないの?」
城主同士、国としては冷戦状態を貫いてる。このことは城主にきっちり報告させてもらうと告げてタソガレドキに戻る。
「雑渡さま、あの…」
「いい。お前たちのせいじゃない」
恨まれるようなことしてる、私のせいだ。医師から許可を得て部屋に入る。こんなに顔が腫れて………ナマエくんだと言われても気付けないくらいだ。
「…足は」
「右は膝から、左は足首が折れてます。打撲痕がひどすぎて他にも骨折しているかもしれませんが見目や腫れ具合だけではなんとも……刺されたりという傷はないため、内蔵などは無事です。咥内も…血まみれでしたが歯の欠損などはなし。」
「そう」
全治5ヶ月程度を目安に、と言われる。熱っぽい手をそっと取り握る。生きている……脈拍を感じる。その日から3日間ナマエくんは目を覚まさなかった。
「っけほ……ぅ゛……」
「!ナマエくん……分かる?」
「……昆奈門さん…?」
頷く。顔の腫れは引いたものの、まだ話しにくそうだ。
「水飲む?」
「飲む……」
動けないナマエくんをの体を抱き起こす。水差しで水を与えて医者を呼ぶ。
「…昆奈門さん、オレ……辛くなって、話しちゃった」
「ふふ、私の好きなものを?ありがとう、耐えてくれて……ごめんね、こんなになるまで」
ポロポロと涙を流すナマエくんを抱きしめる。ナマエくんは拷問されたのに一言も機密を漏らさなかった。知る由もない機密を。うまく時間を稼いでくれた。
「途中、諦めちゃった」
「……ナマエくん。君が死ぬときは私が必ず側にいる……だから私が死ぬときも側にいて」
私は戦場で死ぬつもりもないし、ナマエくんのことも今回のような場所で死なせるつもりもない。年齢で弱り床に伏せった君を私が看取り、君も看取るんだ。そう告げるとナマエくんはそれいいですねと微笑んでくれた。
「両足、折れてるからナマエくん、絶対安静だよ」
「……えっ???両足??」
「うん」
「雪遊びの権利を得たのに?」
「うん、だめ」
ガーンという効果音が聞こえてくるくらい落ち込んだナマエくんを撫でる。しばらく自力じゃ歩けない。松葉杖もつけないのだ。ナマエくんには私と基本女中の補助がつく。まるまる私がやると引き受けたが、陣内と長烈に倒れる気か?と怒られた。
「他に痛いところとかない?背中とか…」
「ん……大丈夫そうです」
「良かった……」
「昆奈門さん、助けに来てくれてありがとうございます」
「君のためなら地獄だって行くよ……粥なら食べられそう?」
「おにぎり食べたいです」
「うーん、徐々にね」
(ナマエくんの目が覚めた、記憶障害もなくやり取りも可能……尊奈門にお礼も言ってたよ)
(ずび……)
(泣きすぎだろお前……他に骨折などは無しですか?)
(うん、腕回しながら背中とか捻ってたけど平気そうだった)
(しかし両足ですか……)
(うん、かなり筋力落ちて寝たきりになるだろうから春は連れ出して上げて。今年は雪は諦めてって言っといたから)
(ははは……雪遊びする気でいたとは)
(おにぎり食べたいって言いながらお粥もりもり食べてたよ、やはり熱とは勝手が変わるね……尊、涙拭きなさい)